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第六章 運命の歯車
24.土産と散会
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東宮は、元信様となにか打ち合わせて、元信様が一度外へ出ていき、また戻ってきた。
何事かと思っていると、東宮があたしを横目で見て悪戯っぽく笑った。
「今宵は、貴女のために珍しいお土産を持ってきました。
きっとお喜びになりますよ」
「御簾を上げ!」
と元信様が、部屋の端に片膝をついて、号令をかける。
部屋と廊下の境、それから外廊下の御簾が一斉に上げられ、庭が見える。
松明に照らされ、昼間のように明るい庭にいたのは、舎人に口縄を引かれた…
乳牛!
「うそっ…」
あたしは思わず呟く。
「ちょ、東宮様!
わたくしは、実験的に御料牧場での飼育、それから牛乳の採取をお願い申し上げたのです。
こんな…ことして…」
大丈夫なのか?
数少ない乳牛、国の財産じゃないの?
「お気に召しましたか?
これが居れば、月子姫がお望みの牛乳も蘇も、ラクに手に入りますよ」
東宮はニコニコして、どさくさに紛れてあたしの手の甲に口づける。
「いえ…これはダメです、とても頂戴することはできません。
飼育の方法も環境も判りませんし」
あたしは手を振りほどき、真剣に東宮を見据える。
東宮はその綺麗な顔立ちに、一瞬困惑の表情を浮かべ、それからまた笑う。
今度の笑みは、不敵で不穏で…なんか、嫌な感じ。
「だったら貴女が私のところへいらっしゃれば良い。
お望み通り、御料牧場での飼育、採取ができますよ。
私だってこんなところまで何度も来なくても良くなる」
えっ…急に何を…
「私の皇子をお産みなさい。
将来、絶対に東宮に擁立するから。
貴女は国母になるのだ」
あたしの肩を抱いて抱き寄せ、額に口づける。
ちょっ…嫌だ!
あたしは渾身の力を籠めて身を起こす。
「嫌です!
わた、くしは、元信様の、北の方、になるの!
だ、いたい、東宮様には、もうお子様が生まれるんでしょう」
あたしは権中納言様の忠告を忘れ、息を切らしながら言ってしまった。
東宮は、一瞬、殺意を感じさせるほど険しい表情になり、それを隠すかのようにぎゅっと目をつぶった。
「その話は…しないでくれ。
しかも姫の口から…耐え難い苦痛だ…」
「今日はもう散会だ。
皆、ご苦労だった」
苦しげに言葉を吐き出す。
参議様と蔵人の頭様は顔を見合わせ、あたしに向かって手をついて頭を下げる。
「伊都子姫、本日は本当に楽しく過ごさせていただきました。
また機会があればぜひ」
参議様がまたぎくしゃくとロボットのように動いた。
「伊都子姫、たくさんのお土産を頂戴し、ありがとうございました!
創作料理がとても美味しかったので、また遊びに参りますね」
蔵人の頭様は明るく言って、あたしの心を少し和ませてくれる。
二人は立ち上がると、部屋の出口で参加者全員にまたひとくさり挨拶を述べ、出て行った。
牛車が外に待ち受けていたようで、大門が開かれる、大きな声と音が聞こえてくる。
何事かと思っていると、東宮があたしを横目で見て悪戯っぽく笑った。
「今宵は、貴女のために珍しいお土産を持ってきました。
きっとお喜びになりますよ」
「御簾を上げ!」
と元信様が、部屋の端に片膝をついて、号令をかける。
部屋と廊下の境、それから外廊下の御簾が一斉に上げられ、庭が見える。
松明に照らされ、昼間のように明るい庭にいたのは、舎人に口縄を引かれた…
乳牛!
「うそっ…」
あたしは思わず呟く。
「ちょ、東宮様!
わたくしは、実験的に御料牧場での飼育、それから牛乳の採取をお願い申し上げたのです。
こんな…ことして…」
大丈夫なのか?
数少ない乳牛、国の財産じゃないの?
「お気に召しましたか?
これが居れば、月子姫がお望みの牛乳も蘇も、ラクに手に入りますよ」
東宮はニコニコして、どさくさに紛れてあたしの手の甲に口づける。
「いえ…これはダメです、とても頂戴することはできません。
飼育の方法も環境も判りませんし」
あたしは手を振りほどき、真剣に東宮を見据える。
東宮はその綺麗な顔立ちに、一瞬困惑の表情を浮かべ、それからまた笑う。
今度の笑みは、不敵で不穏で…なんか、嫌な感じ。
「だったら貴女が私のところへいらっしゃれば良い。
お望み通り、御料牧場での飼育、採取ができますよ。
私だってこんなところまで何度も来なくても良くなる」
えっ…急に何を…
「私の皇子をお産みなさい。
将来、絶対に東宮に擁立するから。
貴女は国母になるのだ」
あたしの肩を抱いて抱き寄せ、額に口づける。
ちょっ…嫌だ!
あたしは渾身の力を籠めて身を起こす。
「嫌です!
わた、くしは、元信様の、北の方、になるの!
だ、いたい、東宮様には、もうお子様が生まれるんでしょう」
あたしは権中納言様の忠告を忘れ、息を切らしながら言ってしまった。
東宮は、一瞬、殺意を感じさせるほど険しい表情になり、それを隠すかのようにぎゅっと目をつぶった。
「その話は…しないでくれ。
しかも姫の口から…耐え難い苦痛だ…」
「今日はもう散会だ。
皆、ご苦労だった」
苦しげに言葉を吐き出す。
参議様と蔵人の頭様は顔を見合わせ、あたしに向かって手をついて頭を下げる。
「伊都子姫、本日は本当に楽しく過ごさせていただきました。
また機会があればぜひ」
参議様がまたぎくしゃくとロボットのように動いた。
「伊都子姫、たくさんのお土産を頂戴し、ありがとうございました!
創作料理がとても美味しかったので、また遊びに参りますね」
蔵人の頭様は明るく言って、あたしの心を少し和ませてくれる。
二人は立ち上がると、部屋の出口で参加者全員にまたひとくさり挨拶を述べ、出て行った。
牛車が外に待ち受けていたようで、大門が開かれる、大きな声と音が聞こえてくる。
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