三日夜の餅はハイティーと共に

Dry_Socket

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第六章 運命の歯車

27.密談

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 東宮が帰るとすぐに、元信様と権中納言様、右近衛大将様が部屋に入ってきた。

 「月子姫!
 女房達が『お人払いでございます』と言って入らせてくれなかったんだが…
 殿下と何かありましたか?!」
 権中納言様が咳き込むように言う。

 「泣いて…居られるのか。
 どうなさいましたか」
 右近衛大将様はあたしの傍らに膝をついた。

 あたしは首を横に振る。
 東宮と暁の上だけの秘密だった話。
 絶対に言えない。

 「もしかして…東宮殿下のお子様のこと…暁の上様のことですか」
 と元信様が厳しい表情で言う。

 あたしははっと顔を上げ、慌ててまたうつむいた。
 ヤバい…返事しちゃったようなもんだわ。

 元信様の言葉を聞いて、権中納言様と右近衛大将様は顔を見合わせる。
 そして沈痛な面持ちになった。

 「やはり、あの噂は本当だったのだな」
 右近衛大将様は呟くように言う。
 「生まれくるお子様のこと、暁の上様の話に触れようとすると、恐ろしくご機嫌が悪くなられるのでもしやと思ってはいたのだが…」

 「腹心の友である私たち二人にも隠しておられたことを、貴女にはお話しになったのですね」
 苦く笑って、権中納言様も呟く。
 
 うう…ごめんなさい…って、あたしが悪いんだろうか…

 「それで、東宮殿下はどうなさるおつもりだと?」
 元信様が訊いてくる。

 「暁の上様、お子様のことをどうなさるおつもりかは…判りません。
 何もおっしゃっては居られませんでした」
 あたしはうつむいたまま、言葉を絞り出す。

 「ただ…今まではわたくしの意思を尊重してきたが、我慢の限界だと…
 どういう手を使っても、と…」
 胸が苦しくなって、両手を床につき、荒い呼吸を繰り返した。

 元信様があたしの隣に来て、抱きかかえて呼吸を楽にしてくれる。
 権中納言様と右近衛大将様も、あたしの顔を心配そうに覗き込む。
 
 「姫…顔色が真っ青だ…
 殿下がとうとう、そんなことをおっしゃったのか」
 右近衛大将様が膝の上で拳を握り締める。

 「殿下にしてはずいぶんお気の長いなさりようでしたけどね。
 今回はさすがに、主上と許嫁の左近衛中将に遠慮なさったのでしょうね」
 考え込みながら権中納言様は腕を組んだ。

 「公にした方が良いんじゃないか?」
 と右近衛大将様。
 「え、何を?…まさか、暁の上様のお子は殿下のたねじゃないと?」
 驚いたように権中納言様が言った。

 「だって殿下が一方的に我慢させられるのはおかしいだろう。
 暁の上様をかばって黙っている必要があるのか?
 もし男皇子だったら、太政大臣が関白になるかもしれないんだぞ」
 
 右近衛大将様が噛みつくように権中納言様に言い、権中納言様は身を引いた。
 「そりゃそうだけど…公にして暁の上様と相手の処遇を考えると…」

 「関白殿も、そろそろ動き出されるかもしれません」
 と元信様が昏い声で言う。
 
 「主上には今現在、内親王様しか居られません。
 そして、東宮に嫁いでおられる関白殿の御娘御おんむすめごであられる、綾の上様にはまだお子はいらっしゃらない」

 「東宮殿下を廃し奉るってことか?!」
 と二人が同時に声を上げ、しっとお互いに声をひそめる。
 
 「そこまでなさるかどうかは…判りませんが、私の父や兄を使って、何かを探って居られるようです」
 と元信様は唇を噛んだ。

 さっき、お兄様が訊いてきたことか!
 あたしは元信様の顔を見上げ、元信様は頷いた。
 
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