三日夜の餅はハイティーと共に

Dry_Socket

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第六章 運命の歯車

28.政治の内幕

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 「関白殿は、今までは無関心を装って居られましたが、ご自分の地位が脅かされる可能性が出てくれば、何かしらの手を打たれるかと」
 元信様は低い声で言う。

 「殿下を廃嫡なさって、今は僧籍に居られる、主上と東宮殿下の弟宮を還俗させて東宮に、という手もあるな…
 そういうところ、やはり関白殿はやり手というか、ご自分の力をたのむところが篤い方だから、ご無理もご承知で突き進むかもしれない」
 右近衛大将様は腕を組んで唸るように話す。

 権中納言様は眉間を揉むように触り、言葉を続ける。
 「そこへ急に、主上と東宮殿下、それから私や右近衛大将、左近衛中将の真ん中に、右大臣殿の大君おおいぎみの伊都子姫が現れて、表立ってはいないけれど争っている」

 えっそんなにたくさんになってたの?!
 いつの間に…
 でも義光は入ってないんだ、カワイソウ。

 あたしがびっくりして権中納言様の顔を見ていると、あたしを抱く元信様の腕にぎゅっと力がこもる。
 
 「右大臣殿だって、朝廷の重臣に返り咲きたいはずだ。
 言い方は悪いが、月子姫を手駒にしてご自分の立場を有利になさろうと画策する可能性は十分にある」
 右近衛大将様があたしを見て、切なく笑う。
 
 なんか、すごい話になってきちゃった…
 あたしは、ただ、元信様と幸せになりたいだけなのに。

 あたしは元信様の胸に顔を埋める。
 あたしが調合した、元信様の薫り…
 これからもずっと、あたしが作るの。
 
 元信様はあたしをきつく抱きしめる。
 元信様の鬢付けの油の匂い。
 愛しい…

 「…今日のところは、退散するか」
 と右近衛大将様が苦笑交じりに言っているのが聞こえる。

 「そうだな…月子姫も急にこんな話を聞かされて、動揺なさって居られるようだし。
 私たちはもともと招かれざる客だったんだしね」
 権中納言様も答えている。

 二人は自分で言っていた通り、あたしが招いたわけではないので、あたしは元信様に抱きしめられたまま放っとく。
 元信様も、顔も上げずにずっとあたしを抱きしめている。

 二人はそっと、部屋を出て行った。
 牛車がガラガラと音を立てて遠ざかっていくのが聞こえる。

 あたしは腕を伸ばして、元信様の首に回し引き寄せる。
 元信様はあたしの後頭部に手を回し、あたしの唇に深く口づけた。

 そのまま床にあたしを寝かせて唇を離し、あたしを見つめる。
 髪を優しく撫でながら囁く。
 「姫…先ほどは殿下に、私の北の方になるとおっしゃってくださってありがとう。
 震えるほど嬉しかった…」

 「でも、このまますんなりとはいかないと思います。
 さっきはお二人がいらっしゃったので言いませんでしたが、主上は東宮殿下のお子が男皇子だったら、御位みくらいを東宮殿下に譲位なさるおつもりです」

 え…天皇辞めちゃうの?
 何で?!

 「そして自由の御身の上になられたら…改めて姫に求婚なさるのだと…私は感じています。
 政治と無関係になられて、ご自分の本当に好きな方と…添い遂げられるおつもりなのだと」

 えーっ!
 それはでも…無理だよ!
 だって、あたし、伊都子姫じゃない!

 あたしは愕然として、それから震えだす。
 どうしよう…そんなことになっているなんて!

 「姫?どうしたのですか?
 …震えているの?」
 元信様はあたしを起こして、またぎゅっと抱きしめた。
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