三日夜の餅はハイティーと共に

Dry_Socket

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第七章 宮中

17.検非違使の訪問

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 お殿様は「ありがとうございます…!」と涙を流して深くぬかずいた。
 あたしもホッとして、御帳台の中で頭を下げる。

 「良かったですね。
 私どもも、一応は安堵いたしました。
 誰が厨司長に命じたのか、その真犯人を突き止める仕事が残ってはおりますが…」
 案外、気さくなお役人は笑みを浮かべて寿いでくれた。
 
 「とにかく、主上や東宮殿下、その他若公達のご活躍がめざましいものでございました。
 あの方たちのご尽力のお陰で、こんなに早い解決を見たと存じます。
 検非違使庁は報告を受けるだけ、という感じで」
 と苦笑して、長く厚みのある巻物を取り出して、お殿様に渡す。

 「皆様のご協力で作り上げた、伊都子姫様の一日の行動記録です。
 一分いちぶの隙も無いほどの出来栄えで、検非違使庁別当であられる左衛門督殿も陣頭指揮をお取りになって、御自おんみずから捜査に走り回って居られました」

 お殿様が巻物を広げて「おお…これは…」と言ったまま絶句する。
 御帳台の御簾を少し上げてあたしにも見せてくれた。

 朝から夕刻まで時間を追って、あたしの行動が逐一記されている。
 午の刻にどこにいて、誰に何を言った何をした、という感じで事細かに記されている。

 すごい…
 皆、ありがとう…
 
 あたしは溢れてくる涙を止めることができなかった。
 
 お殿様は家人に命じて、たくさんのお礼の品を役人に渡す。
 役人は押し頂いて、帰っていった。

 「伊都子、本当に良かった。
 父も生きた心地がしませなんだ…」
 上げられた御簾の向こうで、お殿様が涙を拭いながら言う。

 「お父様…ご心配かけて申し訳ありません」
 あたしは頭を下げる。
 
 「いやいや、姫を責めておるのではないのだ。
 誰の差し金かなんて、殿上人ならだれでも解っておる。
 そなたが標的にされたのは、この父のせいでもあるのだから…」

 「主上や殿下が、本当に強いお味方になってくださった。
 有り難いことだ。
 姫が、夜な夜な若公達とどんちゃん騒ぎするのを苦く眺めておったが、いやはや、恐れ入った」

 夜な夜などんちゃん騒ぎ…ってほどでもないと思うが…
 いくら婚約者がいるとはいえ、嫁入り前の娘が、男に顔晒して遊んでたらそりゃ心配するよね。
 ごめんなさい。

 あたしが黙ってうつむいていると、お殿様は御帳台に近づいて、声を潜めた。

 「伊都子、貴女と話し合わなければと思っていた。
 実は最近、非公式にではあるのだが、主上それから殿下から、貴女を娶りたいとの思し召しを頂戴している」

 えっ…
 主上も東宮も、お殿様に話しちゃってんの?!
 あたしは思わず顔を上げて、お殿様の顔を見る。
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