三日夜の餅はハイティーと共に

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第八章 暗雲

21.伊靖君と少輔さん

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 翌朝、目を覚ますと、自分の部屋の御帳台にいた。
 明け方バタバタしていたのは何となく覚えているけど、何しろ眠くて…

 東宮は、朝早くに御所へ移送されたらしい。
 とはいってもまだ罪が確定したわけではないし、なにしろ東宮だから、扱いはとても丁重だったそうで安心した。

 あたしが起きて、すぐにお医師が来た。
 御帳台で着替えながら話を聞く。

 「東宮殿下のお熱は今朝には下がりまして、高熱が出た後の割にはお元気そうでした。
 食欲も少しお有りで、好物のうどんを召し上がられました」

 「怪我のご様子についてでございます。
 左足の大きなお怪我は、姫様のお手当てが大変宜しかったのでしょう、腫れも引き、傷口は非常に綺麗で膏薬を貼り換えました。
 打ち身は、色が変わって居りましたが、骨に異常はございませんでした」

 黙って帰っちゃったんだ…
 とあたしは、少し寂しかったのだが、東宮が起こさなくて良いと言ったらしい。
 昨日は無理させてしまったから、と。

 東宮らしからぬ気の遣いように、あたしは心配になってしまった。
 昨夜のこと、どう思ってるのかな。

 その後、東宮から手紙が来た。
 いつもの巻物みたいな分厚いものではなく、綺麗な色つきの和紙一葉にひとこと。
 
 『必ず、迎えに行く』

 あたしは底なしの沼に落とされたような気がした。
 どうしたらいいんだろう…
  
 朝食後に、二の姫に会いに行くか迷う。
 会って昨夜のお礼を言いたいけど…

 東宮のこと、なんて話そう。
 東宮は昨夜、熱に浮かされて頭がおかしかったのよ、とか?
 
 あたしは元信様のことが好きだから、東宮のことは何とも思っていないと言ったら、納得してくれるのかな。

 その時、伊靖君の大きな声がした。
 家の中から聞こえる。
 すごい、切羽詰まった声…?

 なんだどうした、と内廊下に出てみると、「あ、姉上!助けてください!」と必死の形相で駆け寄ってくる。

 「なあに、どうしたの」
 あたしはただならぬ伊靖君の様子に、心配になって訊いた。
 「少輔が…姉上、説得してください!」
 伊靖君はあたしの腕をつかみ、自分の部屋の方へ引っ張っていく。

 部屋の前に来ると、今しも部屋から出ようとする少輔さんとぶつかりそうになった。
 んん?
 壺装束じゃないの、宿下がり?

 「…姫様、お世話になりました…」
 少輔さんは床に額ずく。
 えっ…泣いてるの?

 「少輔、ちょっと落ち着いて。
 話を聞かせてくださる?」
 あたしはしゃがみこんで少輔さんを起こす。

 「少輔の言ってることはめちゃくちゃだ。
 俺は絶対に認めないから!」
 伊靖君が喚く。

 「うるさい。
 伊靖がいると、話にならないわ。
 わたくしの部屋に来てちょうだい」

 尋常ではない二人の雰囲気に、あたしはとにかく別にして話を聞こうと思った。
 少輔さんだけ連れて、部屋に戻る。
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