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第八章 暗雲

25.式部さんと内侍さん

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 ふたりが寄り添って部屋を出て行くと、あたしは大きくため息をついた。
 あー疲れた。

 でも、伊靖君と少輔さんの恋は成就させることができたし、良かった。
 心配してたんだよね密かに。
 明後日には三日夜の餅かな?
 
 あーあ。あたしの三日夜の餅は、いつになるんだろう。
 秋の除目が延期になったってことは、まだカミングアウトできないってことだよね。
 あたしは元信様と一緒になりたいって…

 「姫様…」
 気が付くと、式部さんと内侍さんが傍に来ていた。

 「少輔のこと…ありがとうございます…」
 とふたりで言って、床に手をつき頭を下げる。

 「わたくしどもも、以前から話を聞いて居りまして、心配していたのでございます。
 姫様の温情で、想いを遂げしかも居場所もできて」

 あ、そうなんだ。
 結構、女房さん同士の交流というか、情報のやり取りもあるんだな。
 同じ職場で働いてるんだから、当然か。

 「伊靖の来ているときは、休みにしてあげたいの。
 あなた達に負担かけちゃうんだけど…」
 申し訳ないと言うと、ふたりは笑って「とんでもないことですわ!」と首を振った。

 「姫様が生き返られてから、わたくしどもも毎日がとても楽しゅうございますの。
 姫様付きの女房でいることに、名誉を感じておりますわ。
 衛門とてそれは同じでございます」

 「物の怪憑きの月子姫だけどね。
 中宮様を毒殺しようとしたみたいだし。
 それに、東宮殿下の謀反の教唆をしたらしいわ」
 
 あたしは自虐的に言って微笑む。
 伊都子姫ごめんね、とんでもない不名誉だよね…

 「それは捏造された冤罪だということは、皆が承知しております。
 わたくしどもはどこまでも姫様と一緒でございます」

 ふたりはにっこり笑う。
 「姫様がどこのどなたであっても」

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