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第九章 二度目の死と伊都子姫
10.出家の翻意
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主上は急ぎ都へ帰るといい、慌ただしく皆が見送りに出る。
公達の何人かも一緒に帰るということで、あたしの枕元で挨拶してくれる。
都での再会を約束して、別れた。
騒ぎが収まった後、東宮が枕元に来て座った。
あたしは手を差し伸べた。
「東宮様…出家の、ご意思は…」
あたしが言いかけると、東宮はあたしの手を抱きしめるように自分の頬に押し付ける。
「もう、出家などしませんよ…
姫が文字通りの命がけで、止めに来てくれたのだ。
何があっても絶対に出家だけはしない」
良かった…あたしはほっとする。
元信様との約束を、辛うじて守れたな。
「主上と、手を携えてこの国を治めていっていただきたいの。
若公達も皆、お二人のお味方でお仲間ですわ。
わたくしだってそうです」
東宮は頷きかけ、いやいや、と首を横に振った。
「私は、謀反の罪で島流しに遭って月子姫と会えなくなるかもしれない、と思ったらこの世のすべてが嫌になった。
そこへ右大臣から、伊都子は左近衛中将にやると言われて、深く傷つき絶望した。
この生き地獄のような苦しみから逃れたいとその一心で出家を決意してしまった」
お殿様は「東宮殿下は、聞いて居られないようだった」と言ってたけど、ちゃんと聴いてたんだ。
それで、出家を決意するほど絶望した…
傍若無人に明るく振舞う笑顔の裏で、この人はとても傷つきやすく繊細な心を持っている。
「しかし…月子姫には、あんな形ででもひとこと伝えてから出家しようと思う心を押さえられなかった。
少しでも私を気にかけてくれたら、と儚い願いを託してしまった。
月子姫が自分の命の危険も顧みず、止めに来てくれたと知って、私はもう涙が止まらなかった」
東宮は涙を零しながら、あたしの頬を優しくそっと撫でる。
「私はその瞬間、月子姫はもしかして、私に心を寄せてくれているのではないかと錯覚してしまったのだよ。
そうではないことは、すぐに判ったがね。
熱に浮かされて、ずっと左近衛中将の名を呼ぶあなたを見て嫌という程思い知らされた」
あたしの頬を撫でて、少し微笑む。
「出家しないとなれば、私は流罪になるかもしれない。
何とか近場か蟄居で済むように、形振り構わず歎願しようと思う。
そうしたら、会いに来てくれますか」
あたしが頷いて「淡香花に乗って、行きますわ」と笑うと、「ありがとう…」とまた涙を零して頬にキスした。
公達の何人かも一緒に帰るということで、あたしの枕元で挨拶してくれる。
都での再会を約束して、別れた。
騒ぎが収まった後、東宮が枕元に来て座った。
あたしは手を差し伸べた。
「東宮様…出家の、ご意思は…」
あたしが言いかけると、東宮はあたしの手を抱きしめるように自分の頬に押し付ける。
「もう、出家などしませんよ…
姫が文字通りの命がけで、止めに来てくれたのだ。
何があっても絶対に出家だけはしない」
良かった…あたしはほっとする。
元信様との約束を、辛うじて守れたな。
「主上と、手を携えてこの国を治めていっていただきたいの。
若公達も皆、お二人のお味方でお仲間ですわ。
わたくしだってそうです」
東宮は頷きかけ、いやいや、と首を横に振った。
「私は、謀反の罪で島流しに遭って月子姫と会えなくなるかもしれない、と思ったらこの世のすべてが嫌になった。
そこへ右大臣から、伊都子は左近衛中将にやると言われて、深く傷つき絶望した。
この生き地獄のような苦しみから逃れたいとその一心で出家を決意してしまった」
お殿様は「東宮殿下は、聞いて居られないようだった」と言ってたけど、ちゃんと聴いてたんだ。
それで、出家を決意するほど絶望した…
傍若無人に明るく振舞う笑顔の裏で、この人はとても傷つきやすく繊細な心を持っている。
「しかし…月子姫には、あんな形ででもひとこと伝えてから出家しようと思う心を押さえられなかった。
少しでも私を気にかけてくれたら、と儚い願いを託してしまった。
月子姫が自分の命の危険も顧みず、止めに来てくれたと知って、私はもう涙が止まらなかった」
東宮は涙を零しながら、あたしの頬を優しくそっと撫でる。
「私はその瞬間、月子姫はもしかして、私に心を寄せてくれているのではないかと錯覚してしまったのだよ。
そうではないことは、すぐに判ったがね。
熱に浮かされて、ずっと左近衛中将の名を呼ぶあなたを見て嫌という程思い知らされた」
あたしの頬を撫でて、少し微笑む。
「出家しないとなれば、私は流罪になるかもしれない。
何とか近場か蟄居で済むように、形振り構わず歎願しようと思う。
そうしたら、会いに来てくれますか」
あたしが頷いて「淡香花に乗って、行きますわ」と笑うと、「ありがとう…」とまた涙を零して頬にキスした。
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