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第十章 裁きと除目と薫物合わせ
5.薫物合わせの課題
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部屋に帰ってくると、女房さん達が紙を広げて何やら楽しげに話している。
何?…図面?
「ただいま~」
何気なく声をかけると、女房さん達は一斉にビクッとして、紙を裏返した。
え、何よそのリアクション…
「皆で何を話していたの?」
とあたしが覗き込もうとすると、内侍さんがさっと紙を巻いて文箱にしまった。
「いえ…姫様、左近衛中将様からまたお文が来ておりますわ。
左近衛中将様とお呼びするのもあと少しになりそうですわね。
今日の除目では、昇進なさるでしょうから…」
式部さんが焦ったように笑いながら言う。
「そうそう、姫様、この後主上からの御使いがお越しになるそうです。
薫物合わせを来週には行うとのことで、宝鏡殿の女御様のお文も一緒に来るでしょう」
ら、いしゅー?!
何でそんなに急なんだ!
あたしは慌てて薫物の箱を開けて吟味を始めた。
皆の挙動不審のことはすっかり忘れてしまった。
今回の薫物合わせには、皆共通の課題があるという。
それがまた、雅というか何というか…
『晩秋の、わずかに寂しく涼やかな夕暮れを思わせる薫り』
だそーで。
抽象的すぎる!!
判るかそんなもん、このあたしにっ!
だいたい、主上はあたしが伊都子姫じゃないことを知ってるんだから、あたしに薫物ができるかなんて判らないはずなのに、なにこの無茶ブリ。
あたしに会いたいなら、美味しい食べ物で釣るのが一番よっ!
東宮みたいにさ。
東宮…あれから文も来ないけれど、元気かな。
あんなに頑張って、暁の上を守ってたのに…
なんかちょっと可哀相。
とか、少しでも同情すると、倍返しにされるのが、THE・東宮。
とんでもねー貴公子だよまったく。
その後すぐに主上の勅使が来て、薫物合わせは7日後に行われることを口上で述べて行った。
あたしはお礼の品を渡してねぎらい、宝鏡殿の女御様からの手紙をもらって開いた。
崩し字すぎて、最初読むのに戸惑ってしまった。
慣れてくると優しい綺麗な手蹟《て》であることが判り、この時代の人もクセ字使うんだぁ…と新たな発見をしたことだった。
そこへ、衛門さんが「姫様…」と声をかけてきた。
「なあに?」
衛門さんは床に手をついて頭を下げる。
「長いことお世話になりました。
わたくし、明日、お暇をいただきます」
あ、そうか…
なんかバタバタしてて、忘れてた。
「長いこと、ありがとう。
彼とお幸せにね。
たまには遊びに来てちょうだい」
あたしは式部さんを呼んだ。
衛門さんに「何か、お祝いをあげたいのだけど、欲しいものはある?」と訊くと、少し考えて「わたくし、姫様のお作りになる石鹸の香りがとても好きで…」と恥ずかしそうに言った。
石鹸、女性には好評だなあ。
あとは右近衛大将様ね。
あの人は、石鹸が好きなんじゃなくて女好きなだけだけど。
「姫様には本当に、いろいろ良くして頂いて。
楽しゅうございました」
衛門さんは涙をそっと拭く。
いえいえこちらこそ…
振り回しちゃってごめんなさいね。
あたしは式部さんが持ってきてくれた石鹸を、綺麗な紙に包んで蓋つきの箱に入れ、衛門さんに渡した。
それから、あたしの調合した衛門さんイメージのお香も付ける。
「わぁ…ありがとうございます!とても良い香り…」
はしゃぐ衛門さんを見て、あたしはなんか嬉しかった。
薫物合わせ…気が重いけど、宝鏡殿の女御様も頼りにしてくださっているみたいだし、頑張ろう…
何?…図面?
「ただいま~」
何気なく声をかけると、女房さん達は一斉にビクッとして、紙を裏返した。
え、何よそのリアクション…
「皆で何を話していたの?」
とあたしが覗き込もうとすると、内侍さんがさっと紙を巻いて文箱にしまった。
「いえ…姫様、左近衛中将様からまたお文が来ておりますわ。
左近衛中将様とお呼びするのもあと少しになりそうですわね。
今日の除目では、昇進なさるでしょうから…」
式部さんが焦ったように笑いながら言う。
「そうそう、姫様、この後主上からの御使いがお越しになるそうです。
薫物合わせを来週には行うとのことで、宝鏡殿の女御様のお文も一緒に来るでしょう」
ら、いしゅー?!
何でそんなに急なんだ!
あたしは慌てて薫物の箱を開けて吟味を始めた。
皆の挙動不審のことはすっかり忘れてしまった。
今回の薫物合わせには、皆共通の課題があるという。
それがまた、雅というか何というか…
『晩秋の、わずかに寂しく涼やかな夕暮れを思わせる薫り』
だそーで。
抽象的すぎる!!
判るかそんなもん、このあたしにっ!
だいたい、主上はあたしが伊都子姫じゃないことを知ってるんだから、あたしに薫物ができるかなんて判らないはずなのに、なにこの無茶ブリ。
あたしに会いたいなら、美味しい食べ物で釣るのが一番よっ!
東宮みたいにさ。
東宮…あれから文も来ないけれど、元気かな。
あんなに頑張って、暁の上を守ってたのに…
なんかちょっと可哀相。
とか、少しでも同情すると、倍返しにされるのが、THE・東宮。
とんでもねー貴公子だよまったく。
その後すぐに主上の勅使が来て、薫物合わせは7日後に行われることを口上で述べて行った。
あたしはお礼の品を渡してねぎらい、宝鏡殿の女御様からの手紙をもらって開いた。
崩し字すぎて、最初読むのに戸惑ってしまった。
慣れてくると優しい綺麗な手蹟《て》であることが判り、この時代の人もクセ字使うんだぁ…と新たな発見をしたことだった。
そこへ、衛門さんが「姫様…」と声をかけてきた。
「なあに?」
衛門さんは床に手をついて頭を下げる。
「長いことお世話になりました。
わたくし、明日、お暇をいただきます」
あ、そうか…
なんかバタバタしてて、忘れてた。
「長いこと、ありがとう。
彼とお幸せにね。
たまには遊びに来てちょうだい」
あたしは式部さんを呼んだ。
衛門さんに「何か、お祝いをあげたいのだけど、欲しいものはある?」と訊くと、少し考えて「わたくし、姫様のお作りになる石鹸の香りがとても好きで…」と恥ずかしそうに言った。
石鹸、女性には好評だなあ。
あとは右近衛大将様ね。
あの人は、石鹸が好きなんじゃなくて女好きなだけだけど。
「姫様には本当に、いろいろ良くして頂いて。
楽しゅうございました」
衛門さんは涙をそっと拭く。
いえいえこちらこそ…
振り回しちゃってごめんなさいね。
あたしは式部さんが持ってきてくれた石鹸を、綺麗な紙に包んで蓋つきの箱に入れ、衛門さんに渡した。
それから、あたしの調合した衛門さんイメージのお香も付ける。
「わぁ…ありがとうございます!とても良い香り…」
はしゃぐ衛門さんを見て、あたしはなんか嬉しかった。
薫物合わせ…気が重いけど、宝鏡殿の女御様も頼りにしてくださっているみたいだし、頑張ろう…
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