前世を思い出した我儘王女は心を入れ替える。人は見た目だけではありませんわよ(おまいう)

多賀 はるみ

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「私じゃーーーーん」

 ガバっと勢いよく布団から起き上がる。

「ミリアリア様!   お目覚めになられたのですね」

「え、あ、え」

「只今、お医者様をお呼びいたしますのでお待ち下さい」

 そう言って、侍女のライザが部屋を足早に出ていった。

 待って待って待って。少し、落ち着こう。
 さっきまで、私は日本人の柴田 美亜しばた みあとして男の子や女の子たちが、言い争ってる夢を見ていた気がする。
 けど、今の私はミリアリア・フォン・シュツットとして、このミターメ王国の王女としての記憶がある。

 もしかして、柴田 美亜は私の前世のようなものかしら。そして、この世界にミリアリアとして転生したってこと……?

 これが噂に言う、異世界転生!

 改めて、落ち着こうと目を閉じて深呼吸。
 徐々に、柴田 美亜として生きていた記憶と、ミリアリアとして生きてきた記憶が鮮明になってくる。

 そう、やっぱり私の前世は柴田 美亜だわ。日本で暮らしていた、38歳。独身。家族仲は悪くて、大学入学と同時に上京。奨学金とバイト代でなんとか生活費を賄っていたのよね。
 大学卒業後に入った企業がまさかのブラックで朝も夜も必死に働かないと奨学金の返済もできず、ダブルワークもしていたせいで、過労のせいでぽっくり逝ってしまったことを思い出す。

 そして、今の私はミターメ王国の第一王女ミリアリア・フォン・シュツット。
 正真正銘のお姫様。やったね! 作らなくてもご飯は出てくるし、みんなにチヤホヤしてもらえる! 最高!

 と、思ったのもつかの間。美亜としての記憶を思い出したせいで、今まで自分がいかにわがままでヤバい子どもだったかということに気づいてしまった。

 しかも、前世の美的感覚で言うと自分はとても可愛いとは言えない。
 いや、この世界では絶世の美少女として有名なんだけどね。でも、記憶を取り戻してしまった私には、今までしていた容姿マウントがとてつもなく恥ずかしいっっ。

 このミターメ王国や近隣諸国では、美の基準は【存在感がなければないほど美しい】ということになっている。
 慎ましい見た目こそ美しい、と。

 だから、目が二重でパッチリ大きいと、主張し過ぎで何をそんなに見たいのかしらみたいな偏見があるし、鼻は高いと、そんなに匂いをかぎたいの?    変態!    みたいな偏見がある。
 他にも口が大きいとなぜか野蛮とみなされるし、身長が高くてゴツい体だと暴力的。耳がでかいと噂好きで、信用におけない人間という偏見がある。
 などなど、とにかくそんな感じなものだから、この世界の絶世の美少女の私の外見はとにかく全てが小さい。

 身長も、平均より小さいし、顔も小さい(これだけは嬉しい)。目は一重で、開いてるのか開いてないのかわからないぐらいだし、鼻はぺちゃんこ。口もめちゃくちゃ小さくて、御飯食べれるの?
 髪の毛も肌も白くて、ぶっちゃけ私って、ほんとにこの世界に存在してるのかなって感じ。

 あーあ、どうせ異世界転生するのなら、とびきり可愛い女の子になりたかった。……いや、一応この世界的には絶世の美少女なんだった。うーん、人生ってままならないなぁ。

 はっ!   そういえば、お兄様とエドワルド様ってどうなったんだろう。ケガは大丈夫だったのかしら。
 前世を思い出した私には、あの二人は国宝級イケメンなんだから嫌われたくない。散々、容姿マウントとって嫌な子だったから、もう嫌われてるかもしれないけれど……


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