障王

泉出康一

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第1章『チハーヤ編〜ポヤウェスト編』

第11障『障王の印』

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夕方、旧エツピ王国跡地にて…

ナツカ達は荒れ果てた城下町を歩いている。

「ココがあの有名なエツピか。」
「ドピュっとボロボロだな。」
「ケモテイ。」

ナツカや雷尿、エッチャはあたりを見渡している。
一方のカメッセッセはひたすら瓦礫を蹴り飛ばしていた。

「えっちゃ、もう夕方やし、今日はココで休もう。」
「そうだな。そうしよう。」

エッチャと雷尿がそんな話をする中、誰よりも早く地面に座り込んだのはナツカであった。

「はぁ…疲れた…」

ナツカが座り込んだ瞬間、カメッセッセはナツカの襟元を掴み、無理やり立ち上がらせた。

「許すぁんぞ!今から見学会や!楽すぃめ!」

カメッセッセは3人を引き連れて、旧エツピ城内へと入った。

旧エツピ城内にて…

4人は城の中を歩いている。

「ワシもう寝たいんダが。」

ナツカは半分寝かけの状態で歩いていた。

「えっちゃ、エツピって2万5000年前に滅んでんやろ?ボロボロやけど城の形が残ってるってすごない?」
「確かに…ドピュっと何で出来てるんだろうな…」

エッチャと雷尿には全く眠気はなく、エツピ城に興味津々であった。

「なぁ、もう出よぉぜぇ。疲れた。」
「アカン!オレのまつ毛が長いと認めるまで帰らすぇへん!」
「はいはい長ぇ長ぇ。」

次の瞬間、通路の奥から1本のナイフが飛んできた。

「ダッ⁈」

そのナイフはナツカに向かって飛んできた。

「微分魔法『x=0バーティカル』!!!」

カメッセッセの咄嗟の判断で、ナイフの方向が変わり、床に突き刺さった。

「誰だ!ドピュっと出て来い!」

すると、通路の奥から2人の盗賊が現れた。

「お前ら、ハンディーキャッパーだな。」
「さすがアニキ!一目でそれを見抜くなんて!」

エッチャは2人の格好を見てすぐに盗賊であることがわかった。

「えっちゃ、盗賊か。」
「悪いが、金目の物なんてデカマーラの槍ぐらしいか持ってないぞ。」

雷尿はあからさまに布に包まれたデカマーラの槍を後ろに隠した。隠しきれていないが。

「やめろバカ、言うんじゃねぇ。」

ナツカは雷尿の肩を軽く叩いた。

「ごちゃごちゃうるせぇぞ。死にたくなかったら荷物全部置いて失せな。」
「言うこと聞かねぇと痛い目見るでヤンスよ!」
「痛い目…か…」

ナツカ達は武器を取り出し、構えた。

「こっちが逆に拝んでやるよ…!」

盗賊達もナイフを取り出し、構えた。
するとその時、馬鹿デカいマヌケな笑い声が聞こえてきた。

「えっちゃ、何や…?」

次の瞬間、天井が崩れ、そこからジャックが落ちてきた。

「アタァ!!!?!?!」

ジャックは又もや着地に失敗した。

「何ダお前…?」
「俺の名はジャック。悪に導かれ、悪に染まり、悪を制する者だ…ア~ハ~ハ~ハ~ハ~!!!」

その時、2人の盗賊はジャックに駆け寄った。

「ジャックアニキ!」
「オヤビン!」
「お前達、ココは俺に任せろ…アァァッハァァァァア~!!!」

盗賊達はジャックに信頼を寄せているようだ。

「えっちゃ、コイツらの仲間か。」

その時、雷尿はジャックから何かを感じ取った。

「みんな、ドピュっと気をつけろ。コイツ、ハンディーキャッパーだ!」

それを聞き、皆一斉に警戒を強めた。
その時、ジャックは額に手を当てた。

「風は言っている…コレは俺の…悪に身を染めてしまった俺への試練、だとな…アハ~!!!」

ジャックは手を叩いた。

「喰らえッ!『感嘆の波動劇ラムダーハンド』!!!」

すると、ジャックの拍手により衝撃波が生まれた。
その衝撃波がナツカ達を襲う。

「微分魔法『y=0ホライゾン』!!!」

ナツカはその衝撃波の方向を変えた。
衝撃波は壁を破壊し、城外へと消えていった。

「なんやてぇぇぇええへへへぇえ⁈」

ジャックは馬鹿でかい声で驚いている。

「今だ!『勃起ビルド』!!!」

雷尿は腕を巨大・硬質化させて、ジャックを殴り飛ばした。

「おととい来やがれ!」

ジャックは床に倒れた。

「ア、アニキ!!!」
「オヤビ~ン!!!」

盗賊達はジャックの元へ駆け寄った。

「し、信じてたぜ…お前らなら…悪に染まった俺を…止めてくれる…って…な…アハッ…」

ジャックは気絶した。

「マジ何なんダ、コイツ…」

旧エツピ城内、とある部屋にて…

ナツカ達は部屋の中で横になっていた。その中にはジャックや盗賊達の姿もあった。

「俺の名はジャック。悪に導かれ、悪に染まり、悪を制する者だ。少し、昔話をしてやろう。」
「えっちゃ、せんでええわ。」
「あれは俺がまだガキの頃…」
「要らねぇっつってんダろが。死ねや。」

エッチャに続きナツカも断固拒否の姿勢だ。

ジャックの回想…

俺はとある国の貴族だった。と言っても、小国すぎて国と呼べるものでもなかったがな。
俺は障王の末裔だった。

現在…

「え⁈ちょっと待て!はぁ?障王⁈オメェそれマジで言っちゃってくれちゃってんのか⁈」

ナツカはその話に驚いた。

「当たり前だ…ア~ハ~!!!」
「やったじゃないか!まさか、こんな所でドピュっと障王の末裔に出会えるなんて!」

雷尿も突然の出会いに少し嬉しそうにしている。

「えっちゃ、でも嘘かもしれんやん。コイツ頭おかしいし。」

エッチャの一言で盛り上がっていた空気も束の間、冷めてしまった。

「そダな。」

ナツカはジャックに話しかけた。

「おい、バカ。証拠見せろや。」

すると、ジャックは背中に隠し持っていたチャクラムをナツカに渡した。

「んダよ、ゴミじゃねぇか。要らね。」

ナツカはそれを雷尿に渡した。

「やめろよ!ドピュっと汚いじゃないか!」
「汚くないわ!ちゃんと見ろそれ!」

雷尿は嫌々ながら、そのチャクラムをよく見た。
すると、そのチャクラムにはとある紋章が刻まれていた事に気づいた。

「コレは!障王の印!」
「何ダそれ?」

ナツカは雷尿の持つチャクラムを覗き込んだ。

「2万5000年前、8人の障王達が魔王を倒した証として、初代エツピ王からドピュっと譲り受けた武器。それに彫られているのがドピュっとコレ。障王の印さ。」

その時、雷尿はデカマーラの槍を見せた。

「俺の槍にも、その印がドピュっと刻まれている。」

盗賊達は驚いている。

「お前さんも障王なのか⁈」
「スゴいでヤンス!」

その時、ナツカは顔をしかめた。

「つまり…何ダ?障王なら障王の印がついた物を持ってるって事か?」
「ドピュっとそういう事だ。ナツカのその剣、それもそうじゃないのか?」

ナツカは自身の剣をよく見た。すると、柄の部分に障王の印が刻まれている事に気づいた。

「あ、ほんとダ。全然気づかなかった。たダの鉄の剣ダと思ってたわ。」
「えっちゃ、王子にそんなもん渡す訳ないやろ。」

その時、ナツカは印の側に〈ちんこ〉と刻まれている事に気づいた。
ナツカはカメッセッセを見た。

「オメェか?」
「オモロいやろ。」
「キレそう…」

ナツカは頭を掻きむしった。

「(王家代々伝えられる物になんて事を…)」

雷尿はカメッセッセの愚行にかなり引いていた。
その時、ジャックは立ち上がった。

「話を戻すぞ。アレは俺がまだガキだった頃…」

しかし、誰もジャックの話など聞かず、それに被せるように貫禄のある盗賊が喋り出した。

「お前さんも、障王の末裔なんですかい?」
「あぁ。ワシはナツカ・チハーヤ。チハーヤの王子ダ。そういや、オメェら名前は?」
「アッシはニキでさぁ。」
「その子分のヤスでヤンス。」

ニキとヤスは軽く会釈をした。

「オレ、カメッセッセ。」
「お~れ~の~は~な~し~聞~け~や~!!!!!」

カメッセッセとジャックの激しい自己主張に他のメンバーは少し苛立ちを覚えている。

「えっちゃ、お前の過去に興味なんかないわボケ。」
「壁に向かって喋ってろや。」

ナツカの一言でとどめが刺されたのか、ジャックは壁に向かって泣き出した。

「ちょ、ちょっと…ドピュっといじめちゃダメだよ、みんな…」

雷尿はジャックに話しかけた。

「あ、あのさ、ジャック君。君はどうして、ドピュっとこの国に来たんだい?」

ジャックは急に泣き止み、待ってましたと言わんばかりに勢いよく振り返り、中二病ポーズを決めた。

「ふっ。悪に呼ばれたのさ…ア~ハ~ハ~ハ~ハ~!!!」
「聞くんじゃなかった。」
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