障王

泉出康一

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第1章『チハーヤ編〜ポヤウェスト編』

第23障『紅』

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インキャーン王国、闘技場、コート内にて…

第2クオーターが開始した。

ナツカは頻繁に目を擦ったり、瞬きをしている。

「(くそ…目の中の霧が、どんどん濃くなってきやがる…)」

ボールはエッチャが運んでいる。しかし、ナツカと雷尿は動けずにいた。

実況席にて…

「おーっと?どうしたのでしょう?ナツカ選手に雷尿選手、一向に動く気配がありません。」

コート内にて…

雷尿は第2クオーター開始前に、ニキから言われた言葉を思い出している。

〈雷尿のだんなとナツカのだんなは、DFに専念してくだせぇ。点はアッシらで取ってきやす。〉

「(ドピュっと頼んだぞ。ニキ、エッチャ…あ、後ジャック。)」

エッチャは相手ゴールまでドリブルしている。

「えっちゃ、卑怯なマネしやがって…!」

エッチャはダンクシュートをする為、飛び上がった。

「ちゃ~ぁあ!!!」

その時、ソラが指笛を吹いた。
すると、エッチャの左右に鳥が飛んできた。

「ちゃッ⁈」

その鳥達はエッチャを襲う。

「えっちゃ!やめろっちぃぃ!」

エッチャはシュートを決められず、地面に落下した。
その際に、エッチャが手放したボールはエンドラインを越えた。

実況席にて…

「なんと!何処からともなく鳥がやってきて、エッチャ選手のシュートを妨害しました!アレもタレントなのでしょうか!」
「はい。十中八九、ソラ選手のタレントでしょう。指笛を吹いたところ、それが発動条件だと思われます。」
「鳥を操るタレントって事ですかね?」
「操作対象が生物全体か、鳥類限定かは分かりませんが、今のところはその解釈で間違っていないかと。」

コート内にて…

「大丈夫ですかい⁈」

ニキがエッチャの元へ駆け寄った。

「いちゃちゃ…」

エッチャの顔や手足には、鳥に引っ掻かれた痕が残っていた。
そこへ、ソラがやってきた。

「俺達が卑怯だってぇ?お前らが悪いんだろ。ろくに俺達のタレントも調べないから。」
「えっちゃ、論破せんとってぇや…」

ドレのエンドスローから、試合が再開された。
するとその時、ソラの脳内に直接、メロが語りかけた。

「(コレは…メロ姉ちゃんの『想伝テレパス』…)」

〈自陣から動かないあの2人が気がかりだわ。先にそっちを片付けなさい。〉

「(おうよ!)『従順たる翼勇者ブレイドスター』!!!」

ソラは指笛を吹いた。
すると次の瞬間、鳥達が雷尿を襲った。

実況席にて…

「またもや鳥達がコート内に!しかし、今度は自陣から動かない雷尿選手に向かって飛んできています!」

コート内にて…

「行け!そいつをやっつけろ!」

鳥達は雷尿を襲う。

「雷尿のだんなぁ!」

しかし、ニキの心配は杞憂に終わった。
そう。雷尿はその鳥達の猛攻を全て回避しているからだ。

「何故だ…僕のタレントは効いてるはずじゃ…」

ドレの呟きに雷尿は返答した。

「あぁ。ドピュっと効いてるよ。正直めちゃくちゃ鬱陶しいさ。でも…!」

雷尿は鳥達を全て地面に叩き落とした。

「目がダメなら、他の感覚器官でドピュっと補えばいい。それだけの話だ。」

雷尿は鳥達の翼音や気配だけを頼りに対処したのだ。

「デカマーラの英才教育だ!ドピュっとなめるなよ!」

実況席にて…

「雷尿選手!鳥達の猛攻を華麗に対処!デカマーラ王国出身なのでしょうか!デカマーラの戦闘教育を豪語しています!」

コート内にて…

メロが雷尿を見た。

「(思いの外やるわね。霧だけじゃ心許ない、かしら。それなら…)」

その時、メロはタレントを使い、シドの脳内に直接語りかけた。

〈シド。出番よ。〉

「…了解…」

シドは腕を上に掲げた。

「(タレントを使うつもりか…?)だんな方!気をつけてくだせぇ!」

ニキの忠告と同時に、シドは指パッチンをした。

「『雑音波ウィスパ』!!!」

しかし、何も起こらない。

「(なんだ…一体、何をした…)」

すると次の瞬間、エッチャ,ジャック,雷尿が頭を抱えて苦しみ始めた。

「ちゃぁぁあ~ん!!!」
「ア"ア"~!!!うるさぁ~!!!」

ニキとナツカには、何も起こっていないようだ。

「お、オメェら⁈一体どうしたんダ⁈」
「く…」
「く…?」

次の瞬間、雷尿は叫んだ。

「紅だァァァァァァァァァァァァァァァァァア!!!?!?!」

ナツカはポカンとしている。

「…は?」
「頭の中に…大音量の『紅』が…!しかもサビだけ…!」
「オメェ、何言っちゃってくれちゃってんの?ふざけてる場合じゃ…」

その時、メロが喋り出した。

「ふざけてる訳じゃないわ。」
「あぁ?」
「対象の頭の中に直接、大音量の曲を流す能力。それがシドの『雑音波ウィスパ』。」
「なんダと…⁈」

シドのタレントを喰らった3人は苦しんでいる。

「嫌ぁあぁあぁあ!!!止めて~へ~へ~へ~へ~!!!」
「ドピュっと頭が割れそうだ…!」
「えっちゃ、こんなんまともに戦われへんって!」

メロは笑みを浮かべ、その様子を見ている。

「(シドのタレントは3人が限度。本当はドレのタレントが効いていないあの3人に使わせるつもりだったけど。まさか、あの下ネタ男が気配だけで戦えるなんて。まぁ、問題はないわ。)」

ドレはそんなメロを見ている。

「(あのニキって人に、シドの『雑音波ウィスパ』を使わせなかった姉さんの判断は正しい。おそらく彼はタレントを使えない。)」
「(まずい…実質戦える状態なのは俺しかいねぇ…くそッ…タレントさえ使えれば…)」

その時、ソラが鳥を操り、ボールを相手ゴールまで運び始めた。

「さぁせぇるぅかぁ!!!ラムダーハン…」

次の瞬間、ジャックの両腕に鋭い痛みが走った。

「いでぇえぇ⁈モグラぁ⁈」

なんと、ジャックの腕には数匹のモグラがしがみついていた。ジャックはそのモグラ達に腕を引っかかれていたのだ。

「そのタレントは使わせませんよ!」

その時、ミファは地面を強く踏んだ。

「『土竜の長ベストアナグラー』!!!」

すると次の瞬間、大量のモグラが地面から現れ、ジャックに襲いかかった。

「あひやぁ~!!!やぁんめてやめてぇ~!!!」

実況席にて…

「大量のモグラがジャック選手を襲っている!しかし何故、タレントを使ってモグラを吹き飛ばさないのでしょうか?」
「モグラは地面から出てきます。つまり、下方向に向けてあの衝撃波を放たなければなりません。そうなれば、衝撃波は地面に反射して自身に直撃する事となるでしょう。」
「なるほど。ジャック選手はタレントを使わないのではなく、使えない、と言う事ですか。」

コート内にて…

「喰らえぇえ!!!『感嘆の波動劇ラムダーハンド』!!!」

実況席にて…

「…使ってますけど。」
「…」

コート内にて…

ジャックは下方向に向けて『感嘆の波動劇ラムダーハンド』を使った。その為、メラの言う通り、衝撃波はジャック自身に跳ね返ってきた。

「しまったーーーッ!!!」

ジャックは壁まで吹き飛ばされた。

「あの人、自滅してる…」
「バカだ。」

ミファとソラはその光景に呆気に取られている。
ジャックはバカだった。
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