障王

泉出康一

文字の大きさ
24 / 211
第1章『チハーヤ編〜ポヤウェスト編』

第24障『貸しと借り』

しおりを挟む
インキャーン王国、闘技場にて…

第2クオーターは26-42で、チーム『カメッセッセ』の劣勢で終了した。

選手用ベンチにて…

ナツカ達はベンチや床に座り、ぐったりしている。

「音がドピュっと止まらない…」
「アハ~!!!うるさぁ~!!!」
「えっちゃ、俺、頭痛くなってきた…」
「霧もめちゃくちゃ濃くなってきたダ。真っ白で何も見えねぇ。」

ニキはそんな彼らの様子を見て、自分の不甲斐無さを感じていた。

「すいやせん…何の力にもなれなくて…」
「まだ前半終了したばかりだ。ドピュっときにするな。後半で巻き返そう。」
「…」

観客席にて…

ヤスはチーム『カメッセッセ』側のベンチの様子を眺めていた。

「アニキ達、大丈夫でゲスかねぇ…」

一方、カメッセッセは後ろの人と何やら話をしていた。

「また喧嘩でゲスか?いい加減やめるでヤン…」

次の瞬間、カメッセッセと後ろの人はキスをした。

「えっ…」

ヤスは開いた口が塞がらない。

「かわいい…♡」
「お前もかわえぇ…♡」

どうやら、仲直りしたようだ。

「(理解できないでヤンス…)」

コート内にて…

第3クオーターが開始した。

エッチャはエンドラインからニキにボールをパスした。

「(だんな方はもう限界だ。アッシが何とかしねぇと…)」

ニキはドリブルで相手コートまでボールを運んだ。
その時、ソラが指笛を吹いた。

「アイツを止めろ!」

ソラは複数の鳥を操り、ニキに襲わせた。
しかし、ニキは鳥の猛攻に構わず、ダンクシュートを決めた。

「なにッ⁈」

実況席にて…

「なんとニキ選手!捨て身のダンクでシュートを決めましたー!しかし、鳥達の猛攻で血だらけです!大丈夫なのでしょうか⁈」
「ニキ選手のPSIの量では、身体強化の十分な恩恵は得られません。先程の攻撃ですら、相当なダメージを受けたはず。」

コート内にて…

ニキは配置につく際、すれ違いざまにソラに話しかけた。

「この俺が、たかが鳥如きに怯むとでも思ってんのか?あぁ?」

ニキはソラを睨みつけた。

「調子乗ってんじゃねーぞ、ガキ…!」
「ッ…⁈」

ソラはニキの迫力に気圧けおされた。
メロはその様子を見ている。

「(試合の流れを変える為に、強引に決めてきたわね。ソラへの威圧も…見かけによらず、策略家じゃない。)」

その時、メロはニヤリと笑った。

「潰すしかないわね。『想伝テレパス』!!!」

説明しよう!
メロのタレント『想伝テレパス』は、自身の思考を直接他人の脳内に送り込む能力である。しかし、相手の思考を受け取る事はできない為、あくまで一方通行のテレパシーである。
タイプ:感知型

メロはソラに思考を送った。

〈怯んでんじゃないわよ、ソラ。アイツがどれだけ覚悟を見せようと、タレントを使えない雑魚って事に変わりはないんだから。〉

「(そ、そうだ…そうだった。アイツはタレントを使えないんだ。俺の方が強い…!)」

〈命令よ、ソラ。アイツを殺しなさい。〉
「なッ…⁈」

ソラはメロの方を向いた。メロは無言のまま、ソラの目を見ている。

〈構わないわ。死んだ後の事は考えがある。全部私に任せて。アンタは言われた事だけやればいいの。〉

「…」

ソラは歯を食いしばり、走り出した。

「(分かったよ、姉さん…)」

ドレがボールを運んでいる。
そんなドレの前に、ニキが現れた。

「ファウルありだ。多少荒っぽくても悪く思うなよ。」
「それはこっちも同じですよ。」

次の瞬間、鳥達がニキを襲った。
しかし、ニキは動じない。

「(死んでも…知らねーからな…!)」

ソラが指笛を吹くと、さらに数匹の鳥が現れ、その鳥達がニキの頭上高く舞い上がった。
そして次の瞬間、鳥達がニキに向かって一斉に急降下した。

「(すまない…ッ!)」

ニキは自身の頭上故、それに気がついていない。

「ニキ!上だ!」

ジャックが気づき、叫んだ時にはもう遅かった。
しかし、ジャックよりも早く頭上の鳥に気がついていたエッチャが、ニキを突き飛ばした。

「ッ⁈」

それにより、ニキは頭上の鳥の攻撃を避ける事ができた。しかし、ニキを助けたエッチャが、それの被害に遭った。

「ぐあぁぁぁぁあッ!!!」

エッチャは地面に倒れた。
エッチャの肩や背中は、鳥のクチバシによって浅く抉られていた。

「エッチャのだんな!」

ニキはエッチャに駆け寄った。
大量の血がエッチャの体から流れ出ている。だが、致命傷になるような傷はなかった。

実況席にて…

「なんとエッチャ選手!身をていしてニキ選手をかばいました!」
「エッチャ選手はニキ選手よりもPSCが多い。その為、ニキ選手ほどダメージを受けなかったと思われます。」
「なるほど。」
「もし、ニキ選手があの攻撃を受けていれば、致命的なダメージを負う事になったでしょう。」
「それにしても、いささかやり過ぎな気もしますね…」

コート内にて…

「エッチャのだんな…どうして…!」
「コレで…貸し借り無し…や……」
「貸し…?」

ソラは2人を睨んでいる。

「今度こそ…!」

またもや鳥達がニキとエッチャに向かって急降下した。
ニキとエッチャはそれに気づいた。

「逃げろ…お前だけでも…!」
「そんな事できるかよ!」

その時、ジャックが鳥に向かって衝撃波を放とうとした。

「待ってろ!今俺のラムダーハンドでッ⁈」

しかし次の瞬間、大量のモグラがジャックを邪魔した。

「くっ!離れろ!」

頭上の鳥達はニキとエッチャに迫っている。

〈良いわよ!2人まとめて始末しなさい!〉

メロの指示がソラの脳内に飛ぶ。

「(どうする…!負けを宣言…しても、今からじゃ鳥共が急停止できるとは思えねぇ…!どうすれば…どうすればいい…!)」

その時、エッチャが喋った。

「ニキ…早よ逃げろ…!」
「ッ…」

ニキはエッチャの言葉を思い出した。

〈コレで…貸し借り無し…や……〉

「そんな事、気にすんじゃねぇ…」

ニキは立ち上がり、頭上の鳥達を見た。

「仲間なら、貸し借りあって当然だろが!」

その時、ニキは上着を脱いだ。

「(分からねぇ…俺は一体、何をする気だ…)」

ニキ自身、なぜ今、上着を脱いだか分からなかった。しかし、どうしたら良いかは分かっていた。『なんとなく…』分かっていたのだ。
次の瞬間、ニキは急降下してきた鳥達をタイミングよく、上着で薙ぎ払った。

「(そんなもので防げるもんか!)」

そして、ニキはその上着を地面に投げつけた。

「なッ⁈」

なんと、鳥達はニキが地面に投げつけた上着と同じ所に落下していたのだ。

「(なんで…鳥達があんな場所に…)くそっ!もう一回だ!」

ソラは指笛を吹いた。しかし、鳥達は地面から動かない。

「お、おい!なんで飛ばないんだ!」

ソラは再び、指笛を吹いた。だが、鳥達は動かない。

「なんで!」

鳥達は地面でもがいている。

「無駄だ。コイツらはもうこっから動く事はできねぇ。俺のタレントでな。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

軽トラの荷台にダンジョンができました★車ごと【非破壊オブジェクト化】して移動要塞になったので快適探索者生活を始めたいと思います

こげ丸
ファンタジー
===運べるプライベートダンジョンで自由気ままな快適最強探索者生活!=== ダンジョンが出来て三〇年。平凡なエンジニアとして過ごしていた主人公だが、ある日突然軽トラの荷台にダンジョンゲートが発生したことをきっかけに、遅咲きながら探索者デビューすることを決意する。 でも別に最強なんて目指さない。 それなりに強くなって、それなりに稼げるようになれれば十分と思っていたのだが……。 フィールドボス化した愛犬(パグ)に非破壊オブジェクト化して移動要塞と化した軽トラ。ユニークスキル「ダンジョンアドミニストレーター」を得てダンジョンの管理者となった主人公が「それなり」ですむわけがなかった。 これは、プライベートダンジョンを利用した快適生活を送りつつ、最強探索者へと駆け上がっていく一人と一匹……とその他大勢の配下たちの物語。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

おいでよ!死にゲーの森~異世界転生したら地獄のような死にゲーファンタジー世界だったが俺のステータスとスキルだけがスローライフゲーム仕様

あけちともあき
ファンタジー
上澄タマルは過労死した。 死に際にスローライフを夢見た彼が目覚めた時、そこはファンタジー世界だった。 「異世界転生……!? 俺のスローライフの夢が叶うのか!」 だが、その世界はダークファンタジーばりばり。 人々が争い、魔が跳梁跋扈し、天はかき曇り地は荒れ果て、死と滅びがすぐ隣りにあるような地獄だった。 こんな世界でタマルが手にしたスキルは、スローライフ。 あらゆる環境でスローライフを敢行するためのスキルである。 ダンジョンを採掘して素材を得、毒沼を干拓して畑にし、モンスターを捕獲して飼いならす。 死にゲー世界よ、これがほんわかスローライフの力だ! タマルを異世界に呼び込んだ謎の神ヌキチータ。 様々な道具を売ってくれ、何でも買い取ってくれる怪しい双子の魔人が経営する店。 世界の異形をコレクションし、タマルのゲットしたモンスターやアイテムたちを寄付できる博物館。 地獄のような世界をスローライフで侵食しながら、タマルのドキドキワクワクの日常が始まる。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

少し冷めた村人少年の冒険記 2

mizuno sei
ファンタジー
 地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。  不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。  旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...