障王

泉出康一

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第1章『チハーヤ編〜ポヤウェスト編』

第29障『仲間』

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実況席にて…

「なんとガイ選手!いつの間にかシュートを決めていましたー!いつ打ったのでしょう⁈実況席にいる私にも気がつきませんでした!」

コート内にて…

ナツカ達は唖然としていた。

「(何なんだ、コイツ…)」

ジャックがそう思うのも無理はない。やる事なす事その全てが、ガイには通用しないからだ。そして、最後にはやはりガイが勝っている。
強大な力で押さえつけられている訳でも、神がかる名策を仕掛けられた訳でもない。何故か勝てない。そんな実感と、敗北感だけが、ナツカ達の心に積もっていく。
その時、ガイはナツカ達に言い放った。

「どした?シュート決まったぞ?早くエンドスロー行ったら?」

次の瞬間、ナツカはPSIを纏い、ガイに殴りかかった。

「悔しそうな顔してるな、ナツカ。」

何度も何度もナツカは殴った。しかし、ガイはそれら全てを回避している。

「負けず嫌いは良い事だと思うよ~。イコール向上心じゃん。でもな…」

その時、ナツカは体力とPSIを消耗し、地面に跪いた。

「そりゃ無謀だわ。多少強くなったみたいだけど、そもそもお前、元はただの農民だろ。戦闘の訓練受けてない奴が、俺に一発でも当てられると思ってんのか?」
「ハァ…!ハァ…!ハァ…!」

ナツカは息を切らしている。

「ほら。早くエンドスロー行けよ。」
「うるせぇ…」

ナツカはガイの顔を見上げた。

「そのニヤケ顔…どこまでワシらを見下せば気が済むんダッ!!!」

次の瞬間、ナツカはPSIを最大まで纏い、床を殴った。
床は抉れ、大きく凹んだ。

「ハァ…ハァ…見ろや。オメェが見下してるワシでさえ、この威力ダ。コレを見ても、オメェはまだ、PSIを使わねぇ気か!」

そう。ガイは肉体外に一切のPSIも纏っていなかったのだ。これでは、いくらナツカの一撃といえど致命傷、当たり所が悪けば即死。
ナツカは自分達が舐められているが故、ガイが肉体外にPSIを纏わなかったと考えている。しかし、理由は別にあった。

「オメェだけは許せねぇ!オメェが魔王を復活させたせいで、ワシもみんなも…どれだけ迷惑してると思ってんダ!」
「…」

ナツカのその発言を聞き、会場はざわつき始めた。 

「オメェにとっちゃ、魔王の復活なんてゲームか何かのつもりなんダろうがよぉ…」
「ゲーム…だと…」

その言葉を聞いた時、ガイの様子が変わった。

「そのせいでワシは!母ちゃんもリョーカも!村の連中も死んだんダぞ!!!」

実況席にて…

「な、何やら、とんでもない話をしていますが…ちょっとお二人さん!試合の途中ですよ!チーム『カメッセッセ』はエンドスローから再開してください!」

コート内にて…

「何が俺を楽しませろダ!ふざけんなクソが!魔王を復活させたんダって、どうせ大した理由なんてねぇんダろ!」
「…」

ガイは黙り込んでいる。

「本気で来いや!このまま舐められたまま負けるぐらいなら、死んだ方がマシ…」
「黙れ。」

その時、ガイはナツカを睨んだ。

「殺すぞ…」

ガイのその冷たい視線と言葉により、怒りに溢れたナツカの頭を冷静にした。いや、恐怖したのだ。
死んだ方がマシ、とナツカは言った。嘘ではない。しかし、それでも尚、ナツカの怒りの感情を恐怖で埋め尽くすまでに、ガイの言動に死よりも恐ろしいナニカを感じたのだ。

「こっちの事情も知らないで…」

ガイの顔が強張った。

「俺がどれだけ………」

数秒間、沈黙が続いた。
するとその時、ガイは手を上げた。

「タイムアウト、いーっすか?」

実況席の方を向いたガイの表情は、いつものニヤケ顔に戻っていた。

「え…あ、はい…勿論…」

イオはガイのチームのタイムアウトを了承した。
その時、ガイはナツカを見た。

「お前のご所望通り、本気でやってやる。後悔すると思うけど、まぁ頑張って。」

ガイは自分のベンチの方へ戻っていった。

ガイのチームのベンチにて…

ガイがベンチに座ると、隣にヤブ助がやってきた。

「大丈夫か…?」
「何が?」
「…いや、なんでもない…」

チーム『カメッセッセ』のベンチにて…

「うっ…いてて…」

ニキが目を覚ました。

「大丈夫か?」
「すいやせん。足手纏いで…」
「えっちゃ、そんな事ないって…雷尿も大丈夫?」
「ドピュっと、な。」

その時、ナツカが喋った。

「すまねぇ、みんな…アイツ、本気出すって言ってた…ワシのせいだ…」
「えっちゃ、別に俺らは…」

次の瞬間、ナツカの口から衝撃的な一言が発せられた。

「降参しよう…」

ナツカのその発言を聞き、皆は驚いた。

「ドピュっと何を言ってるんだ⁈降参⁈ドピュっとここまできたんだぞ!」
「雷尿の言う通りだ!降参なんてふざけた事言うな!」

雷尿とジャックはナツカの発言を受け入れられない。

「ふざけてねぇ!ワシは冷静ダ!」

その時、ナツカは下を向いた。

「冷静じゃなかったんダ…あの時のワシは…」

ナツカは拳を強く握った。

「認めたくはねぇが、アイツは強い。ワシが今まで出会ってきた誰よりも。アイツが本気出すって言ってんダ。勝ち目なんて無ぇ。そんな戦い、やるダけ無駄…」

ナツカは皆の顔を見た。

「オメェらが傷つく姿なんて、見たくねぇ…」
「ナツカ…」

ナツカは明らかに傷心していた。ガイとの圧倒的な力の差を見せつけられ、恐怖を与えられ、さらには自身の感情でチームの勝機を捨てるに等しい行いをした。弱気になるのも無理はない。
するとその時、エッチャはベンチに座っていたナツカの足を掴んだ。

「な…」

次の瞬間、エッチャは掴んだナツカの足を上に引っ張り、ナツカをベンチ裏に転倒させた。

「フンダッ⁈」

ナツカは後頭部を強打した。

「な、何すんでぃ!痛ぇじゃねぇか馬鹿野郎ぉお!」
「ア~ッハ~ッハ~ッハ~ッハ~!!!」

エッチャは糸が吹っ切れたかのように笑っている。

「えっちゃ、もし試合でナツカやられたら、今みたいに笑ったるわ!」
「てんめぇ、ぶん殴んぞ…」

ナツカはエッチャの奇行に、当然怒っている。
その時、エッチャはそんなナツカに微笑みかけた。

「やからさ、俺がもし試合でやられてもさ、今みたいに笑ってくれよ。」
「ッ…」

そう。エッチャのこの行為には意味があったのだ。ナツカを元気付ける為。そして、自分達に気を遣うな。例え怪我をしても、自分達は平気だ。そう伝える為に。

「えっちゃ、お前らの事も笑ったるからな。」

エッチャは雷尿達に向けても言った。

「勿論でさぁ!」
「こっちだってドピュドピュ笑ってやる!」
「ふっ。だが、あまりにも無様な姿は見せてくれるなよ。無様すぎて、笑う気すら起こらなくなってしまうからな…ア~ハ~ハ~ハ~ハ~!!!」

エッチャはジャックに突っ込む。

「お前は笑われる専門やろ。」
「あ~ほ~ぬ~か~せぇ~!!!」

ナツカはエッチャ達を見ている。

「オメェら…」

その時、タイムアウト終了10秒前のブザーが鳴った。

「よし!それじゃあ、みんな!ドピュっとイクぞぉぉぉお!!!」
「「「おーーーーー!!!」」」
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