障王

泉出康一

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第1章『チハーヤ編〜ポヤウェスト編』

第34障『秘密兵器』

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インキャーン王国、闘技場、通路にて…

ハルカと小謝茸は対峙している。跪いている雷尿とパパンダはその様子に呆気に取られ、ただ見ているだけだった。

説明しよう!
ハルカのタレントは『歌視ミエル』。視力を著しく向上させる能力である。また、透視やPSI視(MSCの可視)、相手の行動予測なども可能で汎用性が高い。発動条件は歌っている間。
タイプ:感知型

ハルカはこのタレントを使い、小謝茸の次の動きを予測、回避していたのだ。

「(あの陰キャ、思った以上にできる…!)」
「(ハルカ王子…なんて便利なタレントなんだ…ドピュっと歌は下手だけど。)」

2人の様子を見ていたパパンダと雷尿は、ハルカに対する評価が上がった。

「攻撃がかわされるのは厄介ですね。こちらもあまり時間をかけたくないのです。少し、本気を出しますよ…!」

小謝茸は手の平にPSIを集めた。

「ッ⁈」

ハルカは何かを感じ取り、後ろに下がった。

「やはり、貴方のタレントには、相手の攻撃を予測する効果があるようですね。まぁいいでしょう。見せて差し上げます。私のダブルタレントを…ッ!」

次の瞬間、小謝茸は自身の手の平に集めたPSIを爆発させた。

「『爆PSIドンパ』。PSIを爆発させる能力です。」

ハルカはその爆発の威力を見て、さらに後ろへ下がった。

「(コレか…ドピュっと俺の両腕を爆破させたのは…!)」

その時、小謝茸は下半身を鉄化させ、足裏にPSIを集めた。

「『爆PSIドンパ』!!!」

小謝茸は足裏のPSIを爆発させた。そして、その爆発を推進力として、ものすごいスピードでハルカの元へ飛んだ。下半身を鉄化させたのは、爆破によるダメージを無くす為である。

「ふはぁッ⁈」

ハルカは飛んできた小謝茸を、横に飛んで回避した。
しかしその時、小謝茸は肉体に纏わせたPSIの一部を、ハルカの方へ伸ばした。

「(PSIをあんな所まで…⁈)」

雷尿が驚くのも無理はない。通常、PSIは肉体外に纏う事を維持し続けるのさえ困難だ。しかし、小謝茸はそれをさらに、自身の肉体から数メートル離れたハルカが居る場所にまでPSIを伸ばしたのだ。

「(PSIの扱いが上手すぎる…!ドピュっとこんな奴が居るなんて…!)」

次の瞬間、ハルカの方へと伸ばされたPSIが爆発した。

「くわぁッ!!!」

至近距離からの爆破により、ハルカは壁に激突した。

「うくぅッ……」

ハルカは地面に倒れた。

「ハルカ王子!!!」

しかし、ハルカは意識を失っている。
小謝茸はハルカにトドメを刺すべく、ハルカに近づいた。

「彼に手を出すな!ドピュっと俺を殺せ!」
「安心して下さい。どちらも殺します。」

雷尿は痛みを堪え、立ちあがろうとした。
しかしその時、パパンダが雷尿の背中を踏みつけた。

「ぐぬぁッ!!!」
「おおっとぉお!邪魔はさせないぞぉお!キぃぃミはそこで見てるんだなぁあ!」

雷尿は歯を食いしばった。

「(くそッ…!痛みでタレントが…!ドピュっと…ドピュっと、ムラムラさえ出来れば…!)」

小謝茸は腕を鉄化させ、PSIを纏った。

「さようなら。」

小謝茸がハルカにトドメを刺そうとしたその時、小謝茸は頭を押さえ、苦しみ始めた。

「ど、どうしたんだぁあ⁈小謝茸くん⁈」

パパンダの問いかけに、小謝茸は痛みを堪え、呟いた。

「く…」
「く…?」

小謝茸は叫んだ。

「紅ですぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅう!!!?!?!」
「はぁぁあ⁈」

パパンダが疑問の叫びを上げた時、背後に何者かのPSIを感じた。

「はッ⁈」

パパンダは後ろを振り返った。

「助けに来ましたよ!」

そこには、第2試合での対戦相手であるドレ,ソラ,シドが立っていた。

「(そうか…シド君のタレント…!)」

雷尿は小謝茸が苦しみ始めた理由を悟った。

「(仲間…⁈僕とした事が、敵のPSIを感知し損ねた…!)」

ソラは指笛を吹いた。

「『従順たる翼勇者ブレイドスター』!!!」

次の瞬間、ソラの衣服の中に隠れていた鳥達がパパンダに襲いかかった。

「こんな鳥ごとき…!」

パパンダは襲い来る鳥達を対処している。
そんなパパンダに向けて、ドレはPSIを纏い、パパンダに蹴りを放った。

「フォォン!!!」

パパンダは両腕でガードした。しかし、パパンダの体は2メートルほど背後に飛ばされた。

「大丈夫ですか⁈」

ドレは倒れている雷尿に手を差し伸べた。

「あ…あぁ…何とか…」

雷尿はドレの手を取り、立ち上がった。

「あ、そうだ。コレを…」

ドレは雷尿に、雷尿のカバンとデカマーラの槍を渡した。

「ドピュっとどうして君が…」
「ヤスって人に頼まれたんです。もし会ったら渡してくれって。そして、共闘して欲しいと。魔物と戦ってるだろうからって。」

雷尿はそれらを受け取った。

「ありがとう。コレで…」

その時、パパンダの叫び声が響いた。

「動くなぁあ!!!」

雷尿達はパパンダの方を向いた。

「ハルカ王子…⁈」

なんと、パパンダと小謝茸はハルカを人質に取っていたのだ。

「動くと、この陰キャ王子の首が飛ぶぞぉお?」

小謝茸はハルカの首を強く締めた。

「ゔぐッ…!!!」

ハルカは苦しそうだ。

「ドピュっとやめろ!」

ソラも人質を取られたことにより、鳥達を自身のところへ戻した。

「人質なんて卑怯だぞ!」

その時、小謝茸は何か思いついたかのように険しい表情が一転して優しいものとなった。

「貴方。」

小謝茸はドレを指差した。

「そこにいる残・雷尿を殺しなさい。」
「なに…?」
「我々の目的は障王の子孫を殺す事。彼を殺せば、貴方達3人には手を出さないとお約束しましょう。それと早く、『紅』を止めて下さい。お願いします。」

ドレはひとまず、シドにタレントを解除するように指示した。

「ありがとうございます。では次です。彼を殺しなさい。」
「…」

ドレは困り果て、雷尿に助けを求めた。

「ど、どうすれば良いですか…」
「…大丈夫。ドピュっと任せてくれ。」

そう言うと、雷尿はおもむろに自身のカバンを漁り始めた。

「動くなと言っただろぉお!バカ野郎かぁあ!キぃぃミはぁあ!」

パパンダの言葉に一切耳を貸さず、カバンからとある本を取り出した。

「ドピュっ!」

そして、雷尿はその本を読み始めた。

「(ま、まさかアレは…!)」

パパンダはデカマーラでの戦いを思い出した。

「まずいぞぉお!小謝茸くぅん!」
「え?まずいとは?」

パパンダは小謝茸からハルカを取り上げた。

「コイツは僕に任せて、小謝茸くんは奴を…」

するとその時、パパンダの話を遮るように雷尿は叫んだ。

「ドドドドドドドドドドピュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥウ!!!?!?!」

次の瞬間、雷尿はデカマーラの槍を、まるで如意棒のように伸ばして、小謝茸に放った。

「(まずい…!)『鉄化メタル』!!!」

小謝茸は全身を鉄化させた。
しかし、硬質化されたデカマーラの槍は、鉄化された小謝茸の頭部を貫いた。

「小謝茸くぅん!!!」

雷尿はそのまま、延伸・硬質化した槍でパパンダを薙ぎ払った。

「フォォォォォオオン!!!」

パパンダは壁にめり込んだ。

「雷尿さん、一体何を…」

ドレは地面に落ちていた本を拾った。その本は、雷尿が先ほど読んでいたものだ。

「ぬがッ⁈」

ドレはその本の表紙を見て驚嘆した。

「こ、コレは…!インキャーンで最もヌける事で有名なムフフ本!『Sister Vacation 2』じゃないかぁぁぁぁあ!!!」

ドレはテンション上がっている。

「ビンッッッビンやでぇぇえ!!!」

雷尿はメチャクチャに勃起していた。
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