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第2章『ガイ-過去編-』
第23障『もっともぉ〜っとタケモット』
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【8月26日、伊寄村の北端、森の中にて…】
ガイ,ヤブ助,十谷,村上の乗った車は人語を話す巨大クマ、竹本に持ち上げられ、森の中へと運ばれていた。
「おい、ガイ。」
ヤブ助はヒソヒソ声でガイに話しかけた。
「このまま黙って運ばれても良いのか…?」
「良い訳ないだろ。」
「じゃあ早く逃げようぜ。」
その時、ガイは村上や十谷にも聞こえるように話を始めた。
「クマの走行速度は50~60キロメートル。人間の足じゃ無理だ。猫化したとしても、猫の走行速度は時速40~50キロメートル。俺とお前は猫に慣れてるからそれ以上の速さで走ることはできる。けど、初めて猫になった十谷と村上は最高でも時速20~30㎞ぐらいしか走れない。しかも、村上は今、足を怪我してる。」
そんな思考を巡らせるガイに、ヤブ助は結論を求めた。
「じゃあ、どうするんだ。」
「全員では逃げ切れない。けど、誰かが囮になれば話は別だ。」
囮。その言葉を聞いて、村上はとある事に気づいた。
「ま、まさか、ガイ様…!」
ガイは村上の言いたい事を察し、頷いた。
「俺が奴をおびき寄せる。その隙にヤブ助は2人を猫化して、みんなで逃げてくれ。」
「お前はどうするんだよ。」
「俺も後から追いかける。」
すると、それを聞いた十谷が声を荒げた。
「いけませんぞ!そんな危険なこと、ガイ様にさせられません!囮なら、この十谷が!」
しかし、ガイは首を横に振った。
「それじゃダメだ。」
「何故ですか!」
「…」
言いづらそうに黙り込むガイ。そんなガイに代わって、ヤブ助は十谷に説明を始めた。
「十谷さん。アンタじゃ時間稼ぎにもならない。そういう事ですよ。」
「うっ…」
十谷は自分の力不足を嘆いた。
「すまない十谷。お前の気持ちは嬉しいよ。でも、囮役は俺しかいない。」
この中で時間稼ぎをできるのはガイとヤブ助。しかし、ヤブ助には村に着いた時に猫化を解除する役目がある。ガイ以外に囮役はいなかった。
「いいや、いけませんぞ!それだけは絶対に…」
ガイの身を案じ、何としてでもガイを制止しようとする十谷。
「ガイ様。」
しかし、その声を遮るかのように、村上はガイの名を呼んだ。
「どうした?」
ガイは村上の顔を見た。村上は真剣な眼差しでガイを見ている。
「絶対に…帰って来ると約束できますか…」
「村上…」
意外。村上からそんな言葉を聞くなんて。ガイはいつになく真剣な表情の村上に、多少の驚嘆を表した。
しかし、十谷は強い口調で村上に話しかけた。
「村上!何言ってるんだ!」
当然の意見。使用人として、主人の身を危険に晒す事など言語道断。
しかし、村上の表情から、その真剣さが薄れる事はない。
「…どうなんだ、ガイ。」
そんな村上に同調し、ヤブ助はガイに尋ねた。
2人の顔を見た後、ガイは決意の表情を浮かべ、頷いた。
「あぁ。約束する。絶対帰って来るから。」
ガイの覚悟を察したヤブ助と村上。
「決まりだな。」
しかし、1人だけ納得していない者がいた。
「ダメだダメだ!絶対にダメだ!」
十谷だ。十谷はガイが危険を犯す事に断固反対のようだ。
「十谷さん。ガイ様が約束してくれたんです。信じましょう。」
「しかし、ガイ様にもしもの事があったら、私は…私は…!」
十谷は泣いていた。
十谷はガイが産まれる前から使用人として障坂邸で働いていた。産まれた時から知っている。妻子を持たない十谷にとって、ガイは自身の本当の息子同然の存在であった。
その時、ガイは泣き崩れる十谷の肩に手を置いた。
「心配してくれてありがとう。でも大丈夫。絶対、帰ってくるから。」
「うぅ…ガイ様…!」
【車外にて…】
巨大クマの竹本は車を頭上に持ち上げて運んでいる。
「(車の中が騒がしいな。誰か泣いてるのか?)」
竹本は車内の様子を見る為、車を前方に降ろした。
「おーい、何かあったの?」
竹本がフロントガラスから中を覗き込んだ。
すると次の瞬間、フロントガラスから金槌が飛んできた。
「フガッ!!!」
金槌はフロントガラスを割り、クマの鼻に直撃した。
次の瞬間、ガイが車の屋根を突き破って外へ出た。それに続き、猫化したヤブ助達もそこから外へ出た。
「逃げちゃダメだヨぉ!!!」
竹本はガイに掴みかかろうとした。しかし、ガイはPSIを纏い、鉈で竹本の右腕を切り落とそうとした。
「ッ⁈」
しかし、竹本の腕は切断できなかった。
「(PSI…⁈)」
そう。竹本はハンディーキャッパーだったのだ。PSIを身に纏い、守備力を上げて腕の切断を防いだのだ。
しかしこの時、ガイはとある疑問を抱いた。
「(PSIを感じない…⁈)」
なんと、竹本からはPSIを感じなかった。しかし、実際に、竹本の体にはPSIが纏われている。
「(どういう事だ…)」
そんなガイの疑問をよそに、竹本はガイに襲いかかってきた。
「もぅ~!痛いじゃナイかぁ~!」
竹本はガイに掴みかかった。しかし、ガイはPSIを纏って、木の高いところまで飛び上がった。
「ちょこまかとぉぉ…!」
次の瞬間、竹本はPSIを纏い、ガイの乗っている木を幹ごと殴り倒した。
「うおッ…!」
ガイは竹本の力に驚嘆しつつ、別の木に飛び移った。そして、ガイは竹本の背後に回り、PSIを纏い、木刀で竹本の頭部を殴った。
「(どうだ…)」
渾身の一撃。ガイは竹本から数メートル離れ、様子を見た。
その時、竹本は殴られた後頭部を触り、振り返った。
「キミ、あんまり悪い事すると痛い目見るよ?」
竹本の頭には小さなタンコブができていた。
「ッ…⁈」
それよりも驚いたのは、竹本の殺気だ。竹本は優しくガイに忠告した。しかし、その眼差しからはとてつもない殺気を放っていた。ガイにとって、攻撃が通用しなかった事よりも、放たれた殺気の凄まじさに実力さを感じ取ってしまった事が何よりの誤算。
ガイはPSIを纏い、木刀を構えた。
すると、それを見た竹本の雰囲気が変わった。
「はぁ…めんどくさいなぁキミ…」
竹本は今までとは比べ物にならない程のPSIを身に纏った。
「もうコロスよッ!!!!!」
次の瞬間、竹本は数メートル離れたガイの元まで一瞬で跳躍した。
「ッ⁈」
ガイは反応できなかった。しかし、竹本の爪は無慈悲にもそのスピードを緩める事はない。
「(ダメだ…かわしきれない…!)」
次の瞬間、辺りに血飛沫が散る。
ガイ,ヤブ助,十谷,村上の乗った車は人語を話す巨大クマ、竹本に持ち上げられ、森の中へと運ばれていた。
「おい、ガイ。」
ヤブ助はヒソヒソ声でガイに話しかけた。
「このまま黙って運ばれても良いのか…?」
「良い訳ないだろ。」
「じゃあ早く逃げようぜ。」
その時、ガイは村上や十谷にも聞こえるように話を始めた。
「クマの走行速度は50~60キロメートル。人間の足じゃ無理だ。猫化したとしても、猫の走行速度は時速40~50キロメートル。俺とお前は猫に慣れてるからそれ以上の速さで走ることはできる。けど、初めて猫になった十谷と村上は最高でも時速20~30㎞ぐらいしか走れない。しかも、村上は今、足を怪我してる。」
そんな思考を巡らせるガイに、ヤブ助は結論を求めた。
「じゃあ、どうするんだ。」
「全員では逃げ切れない。けど、誰かが囮になれば話は別だ。」
囮。その言葉を聞いて、村上はとある事に気づいた。
「ま、まさか、ガイ様…!」
ガイは村上の言いたい事を察し、頷いた。
「俺が奴をおびき寄せる。その隙にヤブ助は2人を猫化して、みんなで逃げてくれ。」
「お前はどうするんだよ。」
「俺も後から追いかける。」
すると、それを聞いた十谷が声を荒げた。
「いけませんぞ!そんな危険なこと、ガイ様にさせられません!囮なら、この十谷が!」
しかし、ガイは首を横に振った。
「それじゃダメだ。」
「何故ですか!」
「…」
言いづらそうに黙り込むガイ。そんなガイに代わって、ヤブ助は十谷に説明を始めた。
「十谷さん。アンタじゃ時間稼ぎにもならない。そういう事ですよ。」
「うっ…」
十谷は自分の力不足を嘆いた。
「すまない十谷。お前の気持ちは嬉しいよ。でも、囮役は俺しかいない。」
この中で時間稼ぎをできるのはガイとヤブ助。しかし、ヤブ助には村に着いた時に猫化を解除する役目がある。ガイ以外に囮役はいなかった。
「いいや、いけませんぞ!それだけは絶対に…」
ガイの身を案じ、何としてでもガイを制止しようとする十谷。
「ガイ様。」
しかし、その声を遮るかのように、村上はガイの名を呼んだ。
「どうした?」
ガイは村上の顔を見た。村上は真剣な眼差しでガイを見ている。
「絶対に…帰って来ると約束できますか…」
「村上…」
意外。村上からそんな言葉を聞くなんて。ガイはいつになく真剣な表情の村上に、多少の驚嘆を表した。
しかし、十谷は強い口調で村上に話しかけた。
「村上!何言ってるんだ!」
当然の意見。使用人として、主人の身を危険に晒す事など言語道断。
しかし、村上の表情から、その真剣さが薄れる事はない。
「…どうなんだ、ガイ。」
そんな村上に同調し、ヤブ助はガイに尋ねた。
2人の顔を見た後、ガイは決意の表情を浮かべ、頷いた。
「あぁ。約束する。絶対帰って来るから。」
ガイの覚悟を察したヤブ助と村上。
「決まりだな。」
しかし、1人だけ納得していない者がいた。
「ダメだダメだ!絶対にダメだ!」
十谷だ。十谷はガイが危険を犯す事に断固反対のようだ。
「十谷さん。ガイ様が約束してくれたんです。信じましょう。」
「しかし、ガイ様にもしもの事があったら、私は…私は…!」
十谷は泣いていた。
十谷はガイが産まれる前から使用人として障坂邸で働いていた。産まれた時から知っている。妻子を持たない十谷にとって、ガイは自身の本当の息子同然の存在であった。
その時、ガイは泣き崩れる十谷の肩に手を置いた。
「心配してくれてありがとう。でも大丈夫。絶対、帰ってくるから。」
「うぅ…ガイ様…!」
【車外にて…】
巨大クマの竹本は車を頭上に持ち上げて運んでいる。
「(車の中が騒がしいな。誰か泣いてるのか?)」
竹本は車内の様子を見る為、車を前方に降ろした。
「おーい、何かあったの?」
竹本がフロントガラスから中を覗き込んだ。
すると次の瞬間、フロントガラスから金槌が飛んできた。
「フガッ!!!」
金槌はフロントガラスを割り、クマの鼻に直撃した。
次の瞬間、ガイが車の屋根を突き破って外へ出た。それに続き、猫化したヤブ助達もそこから外へ出た。
「逃げちゃダメだヨぉ!!!」
竹本はガイに掴みかかろうとした。しかし、ガイはPSIを纏い、鉈で竹本の右腕を切り落とそうとした。
「ッ⁈」
しかし、竹本の腕は切断できなかった。
「(PSI…⁈)」
そう。竹本はハンディーキャッパーだったのだ。PSIを身に纏い、守備力を上げて腕の切断を防いだのだ。
しかしこの時、ガイはとある疑問を抱いた。
「(PSIを感じない…⁈)」
なんと、竹本からはPSIを感じなかった。しかし、実際に、竹本の体にはPSIが纏われている。
「(どういう事だ…)」
そんなガイの疑問をよそに、竹本はガイに襲いかかってきた。
「もぅ~!痛いじゃナイかぁ~!」
竹本はガイに掴みかかった。しかし、ガイはPSIを纏って、木の高いところまで飛び上がった。
「ちょこまかとぉぉ…!」
次の瞬間、竹本はPSIを纏い、ガイの乗っている木を幹ごと殴り倒した。
「うおッ…!」
ガイは竹本の力に驚嘆しつつ、別の木に飛び移った。そして、ガイは竹本の背後に回り、PSIを纏い、木刀で竹本の頭部を殴った。
「(どうだ…)」
渾身の一撃。ガイは竹本から数メートル離れ、様子を見た。
その時、竹本は殴られた後頭部を触り、振り返った。
「キミ、あんまり悪い事すると痛い目見るよ?」
竹本の頭には小さなタンコブができていた。
「ッ…⁈」
それよりも驚いたのは、竹本の殺気だ。竹本は優しくガイに忠告した。しかし、その眼差しからはとてつもない殺気を放っていた。ガイにとって、攻撃が通用しなかった事よりも、放たれた殺気の凄まじさに実力さを感じ取ってしまった事が何よりの誤算。
ガイはPSIを纏い、木刀を構えた。
すると、それを見た竹本の雰囲気が変わった。
「はぁ…めんどくさいなぁキミ…」
竹本は今までとは比べ物にならない程のPSIを身に纏った。
「もうコロスよッ!!!!!」
次の瞬間、竹本は数メートル離れたガイの元まで一瞬で跳躍した。
「ッ⁈」
ガイは反応できなかった。しかし、竹本の爪は無慈悲にもそのスピードを緩める事はない。
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