障王

泉出康一

文字の大きさ
88 / 211
第2章『ガイ-過去編-』

第24障『知らずの記憶』

しおりを挟む
【8月26日、伊寄村の北端、森の中にて…】

あまり日の届かない森の奥深く。ガイは巨大クマのハンディーキャッパー、竹本と戦闘を続けていた。

次の瞬間、辺りに血飛沫が散る。その出血量は半端なものではない。動脈が切断され、常人ならば数分、いや、数秒たらずで死に至るものだ。

ガイは死を覚悟した。この血は間違いなく自分のものだからだ。ガイは竹本の攻撃を回避できなかったのだ。

「「えっ………」」

ふと、ガイと竹本は同時に困惑の声を上げた。
その数秒後、地面に巨大な物が落下する音がしな。そう。竹本の腕だ。

「うっぐッッがァァァァアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァア!!!?!?!」

竹本は右腕を切断された痛みにより、苦痛の叫びを上げた。

「(なんだ…何が起こった…)」

なんと、ガイは無意識の内に竹本の振り下ろされた右腕を切断していたのだ。
何故、こんな事が起こったのか。それは、自己に対する驚異的なまでの防衛本能が働いた。そう考える他ない。しかし、実際はそうではなかった。

「コロスッ!!!!!」

しかし、竹本にとってそんな事はどうでもいい。竹本は今、自身の右腕を切り落とされた怒りに身を任せ、ガイを殺そうとしている。

「(来るッ…!)」

ガイの方も、いったん考えをやめ、戦いに集中した。
すると次の瞬間、竹本はガイに向かって走り出した。先程と同じ超スピード。しかし、今回のガイはそれを回避した。どうやら、ガイはたったの一回で、竹本のスピードに順応したようだ。
そして、ガイはさっき竹本に投げつけた金槌を拾い、またもや、木の上まで飛び上がった。

「逃げんジャねェェェェェエ!!!!!」

竹本はガイが乗っている木の方へ走ってきた。
それと同時に、ガイはPSIを纏い、車に向かって金槌を投げた。車からはガソリンが溢れている。

「ウガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァア!!!!!」

竹本は木をなぎ倒し、木から落下したガイに馬乗りになった。

「(やばい…!)」

次の瞬間、竹本はガイの左腕を殴りつけた。

「あ"あ"ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!」

ガイは苦痛の叫びを上げた。どうやら、左腕の骨は完全に砕けてしまったようだ。

「嬲り殺シテやルッ!!!!!」

その時、今度は右腕を破壊しようとする竹本に向かって、ガイはポケットからカッターを取り出し、竹本の目に突き刺した。

「ヌグォォオ!!!?!?!」
ガイはカッターの芯を竹本の目の中で折り、もう片方の目も突き刺した。

「グヌァァァァァァァァァァァアァアァァァァア!!!?!?!」

竹本は両目を抑え、苦しみもがいている。その隙に、ガイはPSIを身に纏い、竹本の下から抜け出した。
しかし、抜け出す際に右肩を引っ掻かれてしまった。

「うぅッ…!」

右肩の傷は深く、大量に血が流れ出ている。

「どォこダァあ!!!どぉこニイるぅうゥ!!!」

竹本はガイに両目をやられた為、手探りであたりを探っている。
ガイは車の方へ行き、車内からライターを手に入れた。そして、ガイは車の屋根を叩いて、音を立てた。

「そぉこォかァァァァア!!!!!」

音を聞いた竹本は猛ダッシュで車の方へ突っ込んできた。
ガイは木の上まで飛び上がり、それを回避した。木の下では竹本が車に激突している。

「クソガァ!!!何処ニいル!!!!!」

ガイはライターの火をつけ、木の上から竹本に投げつけた。

「ヌグガァァァァアァアァアァアァアァアァァァァア!!!!!!」

竹本の体には車から溢れたガソリンが付着していた。その為、竹本は火だるまとなった。
その時、ガイはその場から逃げ出した。車に引火したのに気づいたからだ。

そして次の瞬間、車が爆発した。竹本はその爆発を間近に受けた。きっと無事では済まない。
その時、ガイは爆発に巻き込まれない所まで避難していた。

「ハァ…!ハァ…!ハァ…!」

左腕の骨折と右肩の出血。さらにはPSIの消費。ガイの疲労はピークに達していた。今すぐにでもヤブ助達を追って、村まで行きたいところではあるが、体がいう事を聞かなかったのだ。

「(少し…休憩するか……)」

木の陰に座ろうとしたその時、ガイはとんでもないモノを目の端に捉えた。

「なッ…⁈」

ガイは振り返った。するとそこには、体長10メートルを超える竹本の姿があった。
この時、ガイは理解した。コレが竹本のタレント。自身の体を巨大化させる能力だという事に。
しかし、竹本は両目を潰されていた為、ガイの姿を取られられずにいた。竹本は手当たり次第に森の木々を破壊し続けている。

「(両目を潰しておいて正解だった。けど…)」

その時、ガイのすぐ近くの木々が、竹本の腕一振りで吹き飛んだ。

「(このままココに居たらまずい。早く逃げないと…)」

ガイは森から出る為に走り出そうとした。しかし次の瞬間、ガイは地面に倒れ込んでしまった。
先程も言ったが、ガイの疲労はピークに達していた。本来なら気を失っているレベルだ。しかし、ガイは気力と危機感でなんとか持ち堪えている状態だった。

「(動け…!早く…逃げろ…!)」

自分の体に鞭を打ち、ガイはなんとか立ち上がった。

「ハァ…!ハァ…!ハァ…!」

息は荒く、足は震え、視界もぼやけている。しかしガイは、森の出口に向かって歩き続けた。帰らねばならない理由があったから。

「(約束したんだ…絶対帰るって…)」

3人との約束。自身を心配してくれる十谷の為。信じてくれた村上とヤブ助の為。ガイは何としてでも帰らねばならなかった。例え、どんなに傷を負っていたとしても。

【数分後、森の出口付近にて…】

ガイは森の出口前まで辿り着いた。

「やった……」

森を抜けられる。しかし、安堵した束の間、ガイは妙な違和感を覚えた。

「(そういえば…さっきから静かすぎる…)」

そう。数分前、巨大化した竹本は手当たり次第に森の木々を破壊していた。当然、騒音が辺りに響き渡る。しかし、今は音一つない。
ガイは振り返った。

「へぇ。コレがPSIって奴か。」
「ッ⁈」

なんと、ガイの背後には通常サイズの竹本が立っていたのだ。

「キミ、ハンディーキャッパーだったんだね。僕と同じだぁ~。」

次の瞬間、竹本はPSIを身に纏い、爪でガイの腹部を切り裂いた。

「がはッ…!!!」

竹本の爪は背骨をも切断し、ガイの体は上半身と下半身に分けられた。
ガイは地面に倒れた。

「僕のPSIは感じにくいらしいね。そのせいで、僕も今までPSIとかわからなかったんだよ。」

PSIは波動性のエネルギー。つまり、波長がある。そして、竹本のPSIは波長が通常のハンディーキャッパーのPSIとは少し違う。そうなるように、竹本は作られたのだ。ガイが竹本のPSIを感知できなかったのはその為である。

「まぁいいや。キミ、どうせ死ぬもんね。」

胴体を切断されたガイに、まだ意識はあった。しかし、それも時間の問題だ。
薄れゆく意識の中、ガイが最後に思い返したのはあの記憶。

〈今は2012年よ。〉
〈連合って知ってるか?〉
〈僕はリアム・エルバイド。〉

身に覚えの無い記憶。しかし、ひどく懐かしい。目を閉じれば、そこに、この記憶の答えがある。

「(ダメ…だ……俺は…まだ……死ね……な………)」

ガイは意識を失った。

〈仲間になれ。障坂。〉
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗
ファンタジー
俺と相棒二人だけの冴えない冒険者パーティー。普段はスライム退治が専門だ。その冴えない日常を語る。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...