障王

泉出康一

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第2章『ガイ-過去編-』

第26障『グゥ〜』

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【8月26日、昼、伊寄村にて…】

ついに、伊寄村にバケモノ達が攻めてきた。

「うわぁ~!!!」
「バケモノでぇ~い!!!」

村人達はパニックに陥っている。

「何なのさぁ⁈アイツらは!」
「早く逃げるんだよ!」
「逃げるってどこに逃げるっぺ⁈」
「わかんないっピ!」

【交番前にて…】

交番前には人間の姿のヤブ助,十谷,警官がいる。
ヤブ助と十谷は村の騒ぎを聞き、村にバケモノが攻めてきた事に気がついたようだ。一方、警官は村人同様、パニックに陥っている。

「い、一体何が起こってるんだ!警察!警察の方ぁあ!!!」
「警察はお前だろ。」

ヤブ助は的確にツッコミを入れた。

「早く村人達を避難させた方がいいんじゃないですか⁈」

十谷のその意見を聞き、警官は少し冷静になった。

「そ、そうですね!」

するとその時、ヤブ助はバケモノに襲われている女の子を発見した。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」 

それは先程、交番に兄の捜索報告を聞きにきた氷室の妹、亜美だった。亜美の目の前には、カマキリのようなバケモノが鎌を振り上げていた。
バケモノが亜美に向かって鎌を振り下ろした次の瞬間、それを間一髪のところでヤブ助が亜美を抱え、その攻撃を回避した。

「大丈夫か?」
「う、うん…」

その時、バケモノはヤブ助に近づいてきた。

「十谷さん!何か武器になるものを!」

ヤブ助は十谷に武器の催促をした。

「あ、あぁ…!」

十谷は辺りを見渡し、武器になりそうなモノを探した。

「コレだッ!」

十谷は警官の腰についていた警棒に目がいった。

「そこちょっと失礼!」

十谷はその警棒を取ろうとした。その際に、十谷の手は警官のアラやだすっごい敏感なトコに触れてしまった。

「あッ♡やめてくだされ♡私には妻と娘が…♡」

                ~ LOVE ♡ ACCIDENT ~

十谷は警棒を手に入れた。

「ヤブ助!!!」

十谷はその警棒をヤブ助に投げ手渡した。
するとその時、バケモノがヤブ助に向けて鎌を振り下ろした。
ヤブ助はPSIを纏い、警棒を使って、それを受け止めた。

「オラァア!!!」

ヤブ助はバケモノを警棒で殴った。

「ギィィィィイ!!!」

警棒はバケモノの頭部を凹ませた。そして、ヤブ助はバケモノを何度も何度も警棒で滅多打ちにした。
数秒後、バケモノは死んだ。

「はぁ、はぁ…」

ヤブ助は必死にバケモノを殴り続けた為、息が荒い。

「(流石に、ガイみたいに一撃では無理か…)」

その後、ヤブ助達は村人達を村長の家まで避難させた。

【同時刻、森の中にて…】

ガイと氷室はとある小さな小屋へとやってきた。

「ココです。」
「小屋…?」

ガイは疑問を抱いた。研究所と聞いていたからには、もっと大きな施設を想像していたからだ。
そんなガイに向けて、氷室は言った。

「研究所は地下にあるんですよ。」

ガイ達は小屋の中へ入った。
氷室はしゃがみ込むと小屋の床をめくった。すると、地下への階段が出てきた。

「ここから出入りできるんです。」
「でも、あのバケモノ達はどうやって外へ?」

階段の出入り口はせいぜい人が降りれる大きさ。バケモノの体では出入りできない。ガイの疑問は当然だ。

「館林はここ以外にも他に出入り口を作っているんです。例えば、湖の底とか。」
「なるほど。」

ガイ達は階段を降りた。

【研究所内にて…】

階段を降りた先に広がっていたのは、白い天井、白い壁、白い床が続く通路だった。

「(広い…よくこんなもの作ったな。)」

床や壁は新しく、どうやらこの研究所は最近建てられたようだ。そして何より広い。

「(こんなもの、一般人は到底作れない。となると、絶対に後ろ盾がいる。氷室がさっき言っていたヤクザ…)」

ガイは氷室の言葉を思い出した。

〈館林の目的はよくわかりませんが、何処かのヤクザ屋さんとお友達のようですよ。なんだっけなぁ…はくちょう?だったっけ…〉

「(あんまり、この件に深く関わるべきじゃないな。バケモノを操っている高田って奴を倒したら、すぐ逃げよう。)」

ガイは一人思考を巡らせていたその時、2人は通路の分岐点へと差し当たった。

「こっちです。」

氷室は迷いなく、右の道を選んだ。

「高田はメイン制御室にいます。」
「なんでそんな事わかるんだ?」
「動けないんですよ。植物ですから。」

氷室のその発言に、ガイは首を傾げた。それを察し、氷室は説明を始めた。

「館林は多種の生物の遺伝子を組み変える能力がある。外にいたバケモノ達を見ましたよね?アイツらはみんな、虫や動物なんかをごちゃ混ぜにして作られてるんです。高田は植物と混ぜられて、その際に歩く機能を失いました。」

その時、ガイは氷室に質問した。

「ちょっと待て。ココのボスは館林と高田のツーマンセルじゃないのか?」
「違いますよ?」
「じゃあ何で高田は館林の言う事を聞いてるんだ?館林に対象を操作する能力はないんだろ?」

氷室の話では、高田は館林にバケモノに改造された。それはつまり、高田も氷室と同じ、館林の被害者だという事。何故、高田は自分をバケモノへと作り変えた相手に従うのか。ガイはその理由がわからなかった。

「植物だからですよ。高田自身にもう意志なんてものはありません。高田の体はコンピュータと接続されて、システム通りに命令をこなしているだけですから。」

ガイは氷室の話を何となくではあるが、理解できた。

「ところで、何でお前はそんな詳しくココの事情を知ってるんだ?」
「館林や先輩から聞いたんです。いろいろ教えてくれましたよ。僕が高田の操作を解除したとも知らずに。」
「先輩…」

ガイは口ずさんだ。『先輩』、それはつまり、氷室よりも前にバケモノへと改造された人間の事。おそらくは、あの大熊のハンディーキャッパー、竹本の事であろう。

「操作解除して、すぐにココから逃げ出そうとは思わなかったのか?」
「思いましたけど…」

そう言うと、氷室はキャップを外し、無数の眼球がついた顔右半分をガイに見せた。

「こんな姿で帰れませんし…」

氷室は唐突に悲しみに暮れた表情をした。
氷室はガイよりも一つ歳下。当然、親恋しいに決まっている。いますぐにでも会いに行きたい。しかし、家族に会ったところで、バケモノになった自分を受け入れてくれるのかはわからない。もし、自分を受け入れてもらえなかったら…そんな想いが頭を巡り、帰れずにいた。

「お前のタレントで何とかできないのか?」

ガイは提案した。氷室のタレントなら、肉を創造し、それを顔のパーツに変形できるからだ。

「無理でした。この目、何回抉っても生えてくるんです。顔半分を削ぎ落として、新しく肉をくっつけてもみたんですが、無駄みたいで…何度でも生えてくるんです。この目。」
「…」

気の毒。それ以外、言いようがない。ある日を境に怪物に姿を変えられてしまった12歳の少年。背骨を抉り抜き、顔半分を削ぎ落とす覚悟を決めてなお、帰路へと立てない氷室に、ガイは同情の念を抱いていた。
するとその時、氷室はガイに話しかけた。

「ところでガイさん。好きな芸人は誰ですか?」
「は…?」

ガイは氷室の何の前触れもない質問に困惑した。当然だ。さっきまであんな真面目な話をしていたのだから。

「え…あ、俺…は…チョコプラとか…?」

困惑しながらもガイは答えた。

「チョコプラ?聞いた事ないですねぇ。あ、ちなみに僕はエド・はるみです!グゥ~。」

【地下研究所、とある部屋にて…】

部屋の中には、胸から血を流して倒れている館林、そして、それを見下ろす何者かの姿があった。

「な、何故…こんな事を…!」

館林は瀕死の体でその何者かに問いかけた。

「答えろ…竹本ッ…!」

それは、ガイの体を真っ二つに切り裂いた大熊のハンディーキャッパー、竹本だった。

「ずっとこの時を待ってたんですよ。貴方が、助手である私を裏切ったその時から。」

その発言を聞いた館林はある事を悟った。

「竹本…いや、お前は…!」

その時、部屋の出入り口から大勢のバケモノ達が部屋に入ってきた。

「後は私が…いいえ。私達、高田たかたあきらが引き継ぎます。」
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