障王

泉出康一

文字の大きさ
91 / 211
第2章『ガイ-過去編-』

第27障『夢のジャパネット計画』

しおりを挟む
【8月26日、地下研究所、メイン制御室にて…】

ガイと氷室はバケモノ達を操る植物、高田を破壊した。

「コレで本当にいいのか?」
「えぇ。高田を倒せば、もうバケモノ達は動かないはずです。なんか呆気なかったですね。」

氷室は破壊された高田を見た。

「おかしい…」

氷室はそう呟くと、辺りを見渡し始めた。

「高田はバケモノだけじゃなく、この研究所そのもののシステムを管理する役割があるんです。高田を破壊した今、この研究所に明かりがついているのはおかしい…」

ガイは破壊された高田のツタに触れた。

「まだ生きてるのか?」
「いや、それは無いと思います。これだけ粉々に破壊したんですから。」
「じゃあどうして…?」

氷室は考え込んだ。

「…もしかして、高田以外の他にも、この研究所の制御を任された人がいるのかも…」

そこへ、1匹のバケモノが部屋に入ってきた。

「お帰り氷室くん。」

ガイと氷室は振り返った。そこには、体長50cm程の二足歩行の人面キノコが立っていた。

「誰…?」

氷室はそのキノコのバケモノに心当たりが無いようだ。

「今、自由に動けるということは、どうやら私のタレントを解除したみたいだね。」

その発言を聞き、氷室はそれが何者かを悟った。

「高田…⁈」
「『さん』ぐらいはつけて欲しいな。一応、年上なんだから。」

氷室は困惑している。同様に、ガイも現状が理解できていないようだ。

「一体どういう事だ…?」

その時、高田を名乗るキノコのバケモノは歩き始め、ガイ達に破壊された植物の高田に触れた。

「私、高田晶は館林の助手だった。私達はハンディーキャッパーについて研究をしていたんだ。何故、ハンディーキャッパーなんてものが存在するのか。PSIとは一体何なのか。この研究課題はハンディーキャッパーである我々に課せられた使命だと思った。」

その時、高田は植物のツタを強く握った。

「けどね、研究にも色々とお金がかかるんだよ。面倒だよね。世の中、金が無ければ夢さえ叶えられないんだから。」

高田はツタを離し、ガイ達の方を向いた。

「ちょうどそんな時、私達はあの有名な指定暴力団、白鳥しらとり組に出会った。館林の知り合いが白鳥組幹部って事もあってね、事は上手く運んだよ。研究費用も、こんな立派な研究所も建ててもらった。」

高田は床に座り込んだ。

「けどね、私はあまり乗り気じゃなかったんだ。いくら金銭的に余裕が出るからって、あの白鳥組と手を組むなんてさ。」

その時、高田はガイ達に破壊された植物コンピュータを手の平で差した。

「それで、館林に反論したらこのザマさ。私はバケモノへと改造された。動けないように、植物の姿にね。」

すると、高田は手の平を上に向け、やれやれといった感じのポーズをとった。

「ジ・エンドさ。この先、私は一生館林の道具として使われ続ける人生しか送れない。本当にどうする事も出来なかったんだ。植物だからね。」

すると、高田はニヤリと微笑んだ。

「だから託したんだよ。後世の私達に。」

その時、メイン制御室の出入り口から大勢のバケモノ達が入ってきた。

「「ッ⁈」」

ガイと氷室はそれらに気づき、警戒した。
一方、高田は床から立ち上がり、話を続けた。

「私のタレントは『支配プログラム挿入モンスターマスター』。他者の脊髄に私のPSIを直接送り込む事で、私の意のままに対象を操る能力。そして、私が実験体共に送り込んだ命令は『私になれ』だ。今日この時、館林がバケモノを一斉解放する時期を見計らって、我々は高田晶に生まれ変わったのだ!」

その時、キノコ姿の高田を含め、背後にいたバケモノ達をPSIを纏い始めた。

「コイツら、全員ハンディーキャッパーか⁈」
「そ、そんなはずは…!館林のお気に入りの僕と竹本以外にハンディーキャッパーなんて…⁈」

困惑するガイと氷室。それに対して、キノコ姿の高田は余裕そうに話した。

「言っただろう。オリジナルの私から送られた命令は『私になれ』だ。脊髄から送り込まれた私自身のPSIを利用すれば、我々は全員、ハンディーキャッパーになれる。まぁ、実験体による個体差はあるから、タレントはまだ発現している私は少ないだろうな。」

キノコ姿の高田はPSIを纏ったまま、ガイ達に近づいてきた。

「私達の目的はただ一つ。この世界を私の世界にする。そして、私だけになった世界で、私はこの世界の謎を究明する。」

その時、高田達は体から針のようなものを突起させた。

「さぁ。キミ達も大人しく…」

次の瞬間、高田達は一斉に声を上げた。

「「「私になれ。」」」

すると、高田達はガイと氷室に襲いかかってきた。おそらく、体から突起した針で脊髄にPSIを送り込むつもりであろう。

「『現代のオーパーツバイオクラフト』!!!」

氷室はPSIを肉に、そして、それを骨に変化させ、刀のように整形し、ガイに手渡した。
ガイは自身の肉体と骨刀にPSIを纏い、バケモノ達を斬り殺していく。同様に、氷室も骨刀をもう1本生成し、バケモノ達を斬り殺していった。

「(コイツら、弱い…)」

ガイはふとそう思った。
このバケモノ達は本来、ハンディーキャッパーではなかった。それ故、高田として目覚めてまだ間も無いため、PSIも成長しておらず、攻撃力や防御力はほとんど強化されていなかったのだ。PSIを纏っているだけ。要するに、見掛け倒しだ。
さらに氷室からもらった骨刀は耐久性・切れ味が凄まじく、昆虫や甲殻類の殻ですら、PSIを纏って仕舞えば一太刀で両断できる。
数分後、ガイと氷室はキノコ姿の高田以外を葬った。

「な、なんて奴ら…」

キノコの高田がガイ達の強さに驚愕していた次の瞬間、ガイは容赦なくそのキノコ高田を斬り殺した。

「これからどうします⁈ガイさん!」

氷室は慌てた様子でガイに話しかけた。

「村に向かったバケモノ共も、きっと高田に変わってるはずだ。おそらく、奴らは村人にタレントを使い、次々と自分達を増やそうとするだろう。」

それを聞いた氷室は尚焦った。

「ヤバいじゃないですか⁈」
「あぁ。このままじゃ、本当の意味でのバイオハザードになりかねない。奴らのPSIが未熟な今がチャンスだ。この村で感染を止める。」

ガイは奥の通路を指差した。

「氷室は村に行け。俺はココに残ったバケモノ共を…」

その時、ガイは氷室の心臓に骨刀を突き刺した。

「「えっ…」」

氷室は大量の血を流し、床に倒れた。

「なん、で……」

ガイは自身の手に握られた骨刀を凝視し、困惑している。
氷室は床に倒れたまま動かない。床には氷室の血が広がっていく。
すると、ガイの頭上から高田の声が聞こえてきた。

「言ったよね?個体差あるからタレント発現している私は少ないって。」
「ッ⁈」

その時、ガイは近くにあったモニターのガラスに写った自分の頭部を見た。

「少ないだけで、タレントを発現している私は確実にいるんだよ。確実に。ココに1人。」

なんと、先程殺したはずのキノコ姿の高田がガイの頭から生えていたのだ。

「んなぁッ⁈」

ガイは驚きの余り、声が出た。対して、高田は余裕そうにニヤニヤと話を続けた。

「頭に生えるからキミの脊髄に針は刺せない。けど…」

次の瞬間、ガイの意思とは無関係にガイの体は歩き始めた。

「これなら、キミの体を自由に操る事ができる。」

ガイは研究所の奥へと歩いている。

「私のタレント…いや、この場合ダブルタレントだな。『キノコの国のお姫様プリンセス』。私の胞子を吸った生物に寄生し、宿主の体を自在に操る能力だ。」

ガイは体を止めようとするが、全く言う事を聞かない。

「無駄だよ。この体の主導権は私が握っているんだ。」

ガイは抵抗は無駄である事を察し、高田への質問に切り替えた。

「どこへ向かってるんだ…?」
「海洋生物の実験体が保管されているプールさ。このすぐ近くにあってね。そこにはサメの私がいる。そいつらに私ごとキミを食わせようと思う。」
「なッ⁈」

それを聞いたガイは驚嘆した。

「ハンディーキャッパーの実験体を失うのは惜しいが、キミは危険だ。殺すに越した事はない。あぁ。私への心配は無用だ。キミを食った奴らに寄生すればいいからね。」

ガイは危機感故、冷や汗をかいていた。

「(まずい…どうすれば…)」

ガイはどこか体の自由が効く部分を探した。

「(思考はできる…視覚、嗅覚、聴覚どれも問題はない。PSIも纏える。息は…)」

ガイは息を止めようとした。しかし、何故かガイの意思とは無関係に呼吸をおこなっていた。

「(呼吸が操作されている…って事は、宿主の呼吸は寄生側にとっても重要。もしかしたら、コイツ、宿主からの酸素供給でしか酸素を取り入れられないのか…?)」

ガイの予想はおおよそ当たっていた。キノコ高田は寄生時に限って、自らで酸素や栄養素を取り入れる事ができない。それ故、寄生時に宿主が死ねば、キノコ高田も死ぬ。
その時、ガイの中で作戦が決まった。

「(一か八か…やるしかない…)」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗
ファンタジー
俺と相棒二人だけの冴えない冒険者パーティー。普段はスライム退治が専門だ。その冴えない日常を語る。

処理中です...