障王

泉出康一

文字の大きさ
101 / 211
第2章『ガイ-過去編-』

第37障『体育教師の生き様』

しおりを挟む
【翌日(11月30日)、朝、戸楽市第一中学校、1-4教室にて…】

朝礼の時間、広瀬先生の代わりに体育教師がやってきた。

「あ、体育教師だ。」
「体育教師が来た。」
「なんで体育教師?」
「広瀬先生はー?」
「ウンコ中なんだろ、広瀬先生は。」

ウンコ発言は石川である。

「広瀬先生は今日もお休みだ。しばらくは、俺こと、体育教師が来る事となるだろう。」

名は決して名乗らない。それが、しがない体育教師の生き方である。

「なんで先生休みなのー?」
「理由教えろよ体育教師ー!」
「痔が悪化して入院したって聞いたぞー!」

痔発言は石川である。
その時、体育教師は声を荒げた。

「あーん!もう!うるさいうるさいうるさい!体育教師が何でも知ってると思うなよお前ら!体育教師だってな、知らない事もあるんだよ!泣きたい時もあるんだよ!何もかも投げ出して逃げたい時だってあるんだよ!」

体育教師。39歳。バツ7。先月、校長の頭にビンタかまして減給された。

「(相当溜まってんだな。教師ってやつは。)」

ガイの肉体に魂を転移させた本田大地は、その様子を傍観していた。
その時、本田の頭の中に声が響いてきた。

〈広瀬陸もそうだったの?〉
「(あぁ。だからこそ、付け入る隙があった。)」
〈肉体の主導権は、あくまで元あった魂だからな。〉
「(そこまで知ってんのか、お前。)」

本田はその声と頭の中で会話している。

〈ところで、ガイこの肉体にはもう慣れた?〉
「(あぁ。身体能力や頭の回転は過去1だ。これで人殺して良いなら文句はねぇんだがな。)」
〈まぁまぁ。あと4~5日すれば本当のガイがやってくる。この肉体を求めて。〉

その時、本田は真剣な表情で心の中のナニカに尋ねた。

「(本当に、障坂ガイは体を取り戻しに来るんだろうな?それも4~5日後に。」
〈間違いないね!〉
「(それを返り討ちにすれば…本当に、この体は俺の物にして良いんだよな…?)」
〈うん。勿論。〉

この発言は嘘か真実か。いや、違う。コレは挑発だ。ガイを倒せるものなら倒してみろ。このナニカはそう言っている。
それを理解した本田はニヤリと微笑んだ。

「(そんじゃま、それまで大人しく学生生活してやっか。)」
〈その意気だよ!ガンバ!〉
「(テメェなめてんのか…?)」

【放課後、教室にて…】

1年4組は文化祭の出し物や用意をしている。通り魔殺人事件の犯人が捕まり、放課後の居残りが可能になったからだ。

「それでは!うちのクラスの出し物を決めていきたいと思います!」

堺はクラス委員長として、教卓の前で話を進めている。

「何か案ある人ー!」

すると、生徒達は口々に案を言い始めた。

「俺、劇やりてー!」
「私、カフェが良い!」
「全員でバンドやろーぜ!」
「えー!やっぱ飲食店だろ!」
「お化け屋敷!」
「やーい!お前んち、お化け屋敷ー!」
「カァァンタァァァア!!!」

皆、ふざけ始めてきた。

「ウンコ食べ放題!ス○トロバイキングにするべ!」

ウンコ発言は石川である。

「足の裏の皮ケバブだろ!炙ったら美味いらしいぞ!」

足の裏の皮発言は山口である。

「ちょ、ちょっと!みんなマジメにやってよ!」

堺は皆の好き勝手な発言に困惑している。

【数分後…】

「えーっと、じゃあ…1-4の出し物は『人間展示店』に決まりました。」

説明しよう!
『人間展示店』とはその名の通り、人間を展示する店舗である。しかし、ただ人間を展示するだけでは面白くない。オシャレさ、奇抜さ、滑稽さ、美しさなど、その人間にあったファッションをし、その上で装飾を施した人間を教室内に展示する。要するに、歩かないパリコレである。この場合、展示される人間は1-4の生徒だ。

「展示は前半組と後半組、それぞれ10人ぐらいで。残りは受付とか裏方やってもらいます。」

堺は意外な統率力を見せ、また、クラスの皆も積極的に堺に協力し、次々と役割が決まっていく。しかし、その中で一人、全く協力的でない者がいた。

「(はぁ…人殺してぇぇ…)」

本田だ。本田はこのクラス、と言うより、若者のノリについて行けずにいた。

「(こんなのがあと4日もあんのか…)」

その時、本田の頭に声が響いてきた。

〈楽しめよ。何事も楽しんだもん勝ちだぞ?〉

本田は目の前に広がる光景を見た。クラスの皆は楽しそうに役割やら仕事やらを話し合っている。その光景を見た本田に、とある記憶が蘇った。

「(楽しめ、か…)」

それは本田がまだ中学生の頃の記憶。本田は年齢を偽り、バイトをしていた。施設を出る為、そして、妹を養うには、何としてでも金が必要だったのだ。それ故、友達と遊ぶという事はしてこなかった。本当は遊びたかった。部活もやってみたかった。しかし、それをする事なく、本田は快楽殺人者として人生を終えた。
しかし、今、目の前に広がるのは、かつて手にできなかった、思い描いた光景。

「おいガイ!お前も前半やろうぜ!」

山口は椅子に座っていた本田の手を引っ張り、教卓の方へと強引に連れていった。

「(まぁ、たった4~5日の辛抱。こういうのも、偶には悪くねぇ…な。)」

本田は笑みを浮かべている。その表情に、一切の悪意は感じられなかった。
約1時間の話し合い。クラス全員の役割が決まった。ガイ本田は前半の受付組に選ばれた。

【一方その頃、舞開町、病院、武夫の病室にて…】

ガイは夕食を摂っている。

「うっす…」

あまりの薄味に、ガイは思わず口ずさんだ。

「…」

ガイは窓の外、病院の中庭を見ている。

「(暇だ…)」

するとその時、病室の扉が開いた。
ガイは母親か看護師が来たのだと思ったが、実際にやって来たのは、ガイよりも一回り年下の少年だった。

「えっ…」

少年は驚いた表情をしている。ガイも同じだ。
そして、少年はガイに尋ねた。

「お兄ちゃん誰?どうして俺の部屋にいるの?」

どうやら、少年は部屋を間違えたようだ。

勇輝ゆうきくん!」

その時、一人の看護師が少年の元へやってきた。

「ダメよ。勝手に他の人の部屋入っちゃ。」
「違うよ!あのお兄ちゃんが僕の部屋にいたんだよ!」

すると、その看護師はガイに頭を下げた。

「ごめんなさい。この子、部屋間違えちゃったみたいで…」

看護師のその発言を聞いた少年はまたもや声を荒げた。

「違うって!あのお兄ちゃんが勝手に…」

どうやら、自分が部屋を間違えたと認めたくないようだ。そんな少年を看護師は優しくなだめる。
そして、二人はその場から去っていった。

「(なんだったんだ…)」

【19:00、障坂邸、食堂にて…】

本田は豪勢な夕食を摂っている。そんな彼の周りには、ヤブ助,村上,十谷,他数名の使用人たちが立っていた。しかし、何やら険悪な雰囲気である。
その時、十谷が本田に話しかけた。

「おい、貴様。ガイ様には会ったのか。」
「あぁ。殺しちまった。」

本田は笑みを浮かべ、対して十谷は本田を睨んでいる。

「冗談通じねぇ奴だな~。」

本田はステーキを口に運んだ。

「会ってねぇよ。」

十谷達はガイの体に本田がいる事を知っていた。何故なら、障坂家当主であるガイの父親、障坂巌に全ての事情を聞いていたからだ。また、巌は全ての事情を知りながら、本田を家に置いたのだ。

「(まったく、旦那様は一体何を考えておられるのか。こんな殺人鬼を家に…それもガイ様の体で…)」

【夜、ガイの部屋にて…】

本田はガイのベッドの上でゲームをしている。そして、机の上には猫の姿のヤブ助がいる。どうやら、監視役のようだ。

「おい。殺人鬼。」

ヤブ助は本田に話しかけた。

「お前、何で大人しくガイとして生活してんだ?」

しかし、本田は答える事なくゲームを続けている。

「メリットでもあるのか?それとも、ガイの親父に弱みでも握られたか?」

すると、本田は面倒臭そうな口調でヤブ助に言った。

「詮索は無用。そう言われたんじゃなかったか?テメェらのご主人様によぉ。」
「…」

ヤブ助たち使用人は、この件には一切干渉するな、いつも通りに振る舞え、それが障坂家当主である障坂巌からの命令だ。

「安心しろ。障坂ガイを殺したらこんな所出てってやる。」

その言葉を聞き、ヤブ助は本田を睨みつけた。殺意の篭った眼差しで。

「その時は、俺がお前を殺しに行く。どんな手を使っても。どこに居ようとも。お前が、自分から死にたくなるぐらい、しつこくな。」

それを聞いた本田はキシキシと笑い始めた。

「悪くねぇなぁ、それも。」

【一方その頃、舞開町、病院、武夫の病室にて…】

就寝時間となり、ガイは病室のベッドの上で横になっている。

「…」

しかし、どうやら眠くないようだ。

「(シムシティやりたい…)」

その時、ガイの病室の扉が開いた。

「やだッ⁈なにッ⁈」

真っ暗の部屋の中、急に開く扉。当然、怖い。ガイは唐突な恐怖により、思わずオネエ口調で驚いてしまった。

「(おばけ…⁈)」

タレントという非現実的な力を知っているガイにとっては、妖怪や幽霊といった類もまた、現実に存在しうるもの。そういう思考回路になっていた。しかし、実際に扉を開けたのは幽霊ではない。

「こんばんは!」

それは昼間にガイの部屋へやってきた少年だった。

「(あ、コイツ、昼間の…)」

何故、こんな時間に少年がやってきたのか。そして、ガイは思った。

「(この病院、夜間カギとかかけてないのか?不用心すぎる…)」

その時、少年はガイに頭を下げた。

「昼間はごめんなさい…」

そして、少年はすぐさま顔を上げた。

「…って言えって言われた。」
「(どう考えても今じゃないだろ。)」

というツッコミをグッと胸の奥に押し込み、ガイは少年に言う。

「大丈夫。全然気にしてないから。」

ガイは作り笑顔で少年に微笑みかけている。
すると、それを見た少年も笑顔になり、ガイに近寄ってきた。

「ねぇ!お兄ちゃん!UNOしよう!」
「は…?」

何故、こんな夜中に。ガイはこの少年の無垢な非常識に困惑している。

「なんで…?」
「暇だから!!!」

少年は迷いなくそう答えた。

「(なんか、山口の相手してるみたいだ…)」

ガイはため息を吐きつつも、自身も暇を持て余していた為、少年の案に乗った。

【数分後…】

「はい!今UNOって言ってなーい!!!」

ガイは少年を指差し、そう言った。大人げない。

「お兄ちゃん、性格悪いね。友達少ないでしょ。」
「うッ…」

二人は深夜までUNOに没頭した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗
ファンタジー
俺と相棒二人だけの冴えない冒険者パーティー。普段はスライム退治が専門だ。その冴えない日常を語る。

処理中です...