障王

泉出康一

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第2章『ガイ-過去編-』

第45障『模倣』

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【12月4日、13:00、戸楽市第一中学校、校舎裏にて…】

武夫ガイガイ本田がPSIを纏い、対峙している。

「「……」」

二人は見合ったまま動かない。機を伺っているのだ。

「ッ!!!」

最初に動いたのはガイだ。ガイは本田に向かって一直線に突撃した。

「(来るッ…!)」

【本田の回想…】

コレは本田が広瀬と戦った翌日の事。
本田はガイの中のソレから戦い方を教授されていた。

〈アンタさ、敵のタレントとか探ろうって思った事あんま無いでしょ?〉

ソレの言う通りだ。本田はガイの体に乗り移るまでは、本能のままに動いていた。お手並み拝見などという発想すらなかった。

〈確かに、奇襲こそ最善の手だ。しかし、それが叶わない場合、アンタは絶対に負ける。昨日みたいに呼び出された時とかね。〉

ぐうの音も出ない本田。

〈だから、ガイと戦う時は『相手の手を探る』って事に専念した方がいい。って、俺は思わない!〉
「は…?」

本田は困惑した。さっきと言っている事が違うと。しかし、ソレにはちゃんと考えがあった。

〈『敵の手を読む』という点において、ガイに勝てる人間はそう多くない。アンタには無理だ。だから、ズルしちゃう。〉
「お前、さっきっから何言ってんだ…?」

ソレの話の意図がイマイチ読み取れない本田。そんな本田に対して、ソレは言った。

〈ガイのタレント教えるって事。〉
「アイツ、タレント使えたのか?」
〈うん。あの夜、アンタに首絞められてる時に。でも自分で使う余裕なかったみたいだから、俺が代わりに使って、ガイを逃した感じ。〉

それを聞き、本田はガイのタレントの察しがついた。

〈そう。ガイのタレントは…〉

【現在…】

武夫ガイガイ本田の顔面に拳を放った。
しかし、ガイ本田は顔面を平面化させている。コレでは、武夫ガイの拳は当たらない。
そのはずだった。
しかし次の瞬間、武夫ガイの拳は、平面化したガイ本田の顔面に直撃した。

「ぐくッ…!!!」

本田は背後に飛んでガイから距離を取った。
本田は殴られた頬を押さえ、確信した。

「(間違いねぇ。アイツの言う通り。奴のタレントはコピーだ…!)」

説明しよう!
ガイのタレントは『模倣コピル』。他者のタレントを使用する事ができる能力である。しかし、自身の近くにいるハンディーキャッパーのタレントしか使用する事ができない為、汎用性に欠ける。
タイプ:保存型

その時、ガイ本田はポケットからハサミを取り出し、自身の首に突きつけた。

「動くな!動けばテメェの体を殺す!」

なんと、本田はガイの体を人質にした。もし、この体を破壊すれば、ガイは永久に本来の体に戻る事はできない。しかも、本田は絶命前に『魂移住計画ゴーンボーン』で他の体に乗り移ればいいだけ。

〈それは良くない。〉

本田の頭に声が響いた。

「(なに…?)」

次の瞬間、ガイ本田は持っていたハサミを投げ捨てた。

「なッ…⁈」

本田の意思ではない。何者かがガイの体を操ったのだ。

「やっと戻って来れた。」

ガイだ。ガイは『模倣コピル』で『魂移住計画ゴーンボーン』をコピーし、佐藤武夫の体から移動したのだ。

「このタレント、体の主導権は元の体の持ち主優先なんだろ?」

そう。『魂移住計画ゴーンボーン』で他者の体に乗り移っても、主導権は体の持ち主にある。元はガイの体。つまり、ガイの体の主導権はガイにあるのだ。
ソレの『良くない』とはこの事だった。

「さて、お前をどうしてやろうか…そうだ。虫かなんかにお前の魂を移して、それを殺そう。それがいい。」

このままでは、本田はガイに倒される。一刻も早く、この体から脱出しなければ。
次の瞬間、本田は『魂移住計画ゴーンボーン』を使用し、今度は武夫の体に乗り移った。
そして、本田はある事に気がついた。

「ほぉ~。この体、元の魂が消えかけてんじゃねぇか。お前が自由にこの体を制御できたのも、コレが原因か。」

本田は幾度となく転生を繰り返してきた。それ故、魂の感知に慣れていた。この体、佐藤武夫の魂は消えかけている。それはつまり、武夫はこの世界から消えたいと願っている。意識すら、もうないのであろう。体よりも先に心が死んでいるのだ。
実際、本田が他者から主導権を奪う際も、体の持ち主の心を破壊してから、体を奪っていた。しかし、今回、武夫の場合はその手間が無い。

「いい体だぜぇ!も居ねぇしよぉ!」

次の瞬間、本田はガイの元から走り去ろうとした。

「(悔しいが、タイマンじゃガイアイツに勝てねぇ。雷世から言われたあの『捨て身戦法』なら勝てるかもしんねぇが、もう約束なんて守る必要もねぇだろ!)」

武夫本田は学校の塀の方へ走っている。どうやら、塀をよじ登ってこの場から逃げ出すようだ。一方、ガイは逃走を試みる本田の様子を冷静に眺めていた。

「(アイツ、何で追って来ねぇんだ…?)」

本田は疑問に思いつつも、この場からの逃走を優先した。
すると次の瞬間、本田は足がもつれ、地面に転倒した。

「ふぁがあッ!!!」

本田は立ち上がろうとした。しかし、体の自由が効かない。

「なん…で…⁈」

その時、ガイはゆっくりと倒れた武夫本田の元へと歩いてきた。

「その体に入った時点でお前の負けは確定している。」
「なに…⁈」
「ダメ元でも、お前は肉弾戦を続けるべきだった。」

その時、ガイは枝を拾って平面化し、近くにあったレンガブロックに投影した。
そして次の瞬間、ガイはPSIを纏い、そのレンガブロックを拳で破壊した。
すると、投影された枝にもダメージが与えられ、枝は粉々に砕けた。

「これこそ、『簡易の次元低下論2Dメイカー』の弱点だ。平面化した物体が立体物に投影された時、被投影物へ与えられたダメージは投影物にも影響する。」

この場合、投影物は枝で、被投影物はレンガブロックである。

「この弱点を突けば、平面化した相手でも攻撃を与える事ができる。玉砕覚悟で平面化と立体化を繰り返して攻撃を続ければ、お前にも勝機はあったはずだ。」

これこそ、本田がガイの中のソレに言われた『捨て身戦法』である。しかし、本田は我が身可愛さに、それを使わなかったのだ。

「けど、お前はそれをしなかった。」

ガイは本田を指差した。

「その体の中、よく調べてみろ。もう1人、隠れてるはずだ。」
「…?」

本田は佐藤武夫の肉体内の魂を感知した。
するとその時、本田は自分と武夫、そしてもう一人の魂が存在する事に気がついた。そして、その魂が自分のよく知っている者である事に。

「涼子…⁈」

その魂は本田の妹、本田涼子のものだった。
そう。ガイは本田と会う前、広瀬と会っていたのだ。そこで、ガイは武夫の体に涼子を移した。また、ガイの『模倣コピル』についても、広瀬からの情報である。もし、ガイが本田と出会う前に広瀬と出会わなかったら、おそらくガイはこの戦いに負けていただろう。
ガイは倒れた武夫本田の目の前に立ち止まった。

「その体は武夫のもの。つまり、お前ら兄妹に与えられた体の主導権は半々。どちらか一方の意思のみで体を動かす事はできない。」

本田が立ち上がれない理由はこれが原因。涼子が本田の邪魔をしているのだ。
そしてもう一つ、本田はある事に気がついた。

「(タレントが使えない…⁈)」

そう。大抵の場合、体の持ち主と本田、主導権が優先の者とそうでない者という関係性だ。つまり、体内での自由は独立している為、本田単体でも『魂移住計画ゴーンボーン』は使えた。
しかし、今は本田も涼子も、どちらも自由で、制御が効かないという状況。タレントを使わまいとする涼子の意志が、タレントを使おうとする本田の自由を制御している。よって、『魂移住計画ゴーンボーン』ですら、この状況では使用不可なのだ。

「『魂移住計画ゴーンボーン』!!!」

その時、ガイは武夫の体内にある本田の魂を取り出した。

「『簡易の次元低下論2Dメイカー』!!!」

そして、ガイは本田の魂を先程のレンガブロックに投影した。

「じゃあな、殺人鬼。」

ガイはそのレンガを手に持って、学校の塀に向かって大きく振りかぶった。

「(ま、待て…!)」

本田は命乞いをした。しかし、魂の状態の本田に声は出せない。
次の瞬間、ガイは本田の魂が投影されたレンガブロックを塀に投げつけた。
平面化した物体が立体物に投影された時、被投影物へ与えられたダメージは投影物にも影響する。今、レンガブロックは粉々に砕かれた。つまり、本田の魂も粉々に砕け散ったのだ。

「(そんな…この俺が…)」

消えゆく意識の中、本田はガイであった頃の記憶を思い出していた。

〈文化祭、一緒にまわろーぜ!〉

山口のあの言葉。

「(なんで…俺は…こんな………)」

ガイは本田を倒した。
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