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第2章『ガイ-過去編-』
第47障『置いてきたもの』
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【???にて…】
子供の泣き声が聞こえる。それをあやしつける女性の声も。
「僕、お父さんなんか嫌いだ…!大っ嫌いだ…!」
「ダメだよ。お父さんの事そんな風に言っちゃ。お父さんだってね、⬛︎⬛︎の為を思って毎日頑張ってるんだから。」
「でも…」
「いつかきっと、お父さんの気持ちがわかるようになるさ。」
俺、やっとわかったよ。父さん。こんなに辛かったんだね。でも、世界の為だから、仕方ないよね。弱音なんて吐けない。それに、アイツだってきっと許さないと思うし。
アイツは言った。オレは記憶だと。じゃあ、記憶に全てを支配される俺達は、一体なに?この世界の存続の為に、子供を作って子孫を残し、奴に器を与えるだけなの?それが障坂なの?わからない。理解できないよ。父さん。
【12月4日、20:30、障坂邸、父親の書斎にて…】
突発的な頭痛により意識を失ったガイが目を覚ました。
「(夢…)」
ガイは先程見ていたものを思い出しながら、体を起こした。
「(最近多いな…こういうの…)」
ガイは夏休み以降から、突如見知らぬ声が頭に響いたり、鮮明な夢を見る事が多々現れるようになっていた。
「記憶…」
夢の中で言っていた言葉。『記憶』。その言葉に、ガイは何かを感じ取った。しかし、この時のガイにはまだわからない。
何故ならガイには、ソレの存在にまだ気づいていないから。
「…風呂入って寝るか。」
ガイは書斎を出た。
【翌日(12月5日)、文化祭2日目、朝、学校にて…】
「嘘だろ…⁈」
ガイは自分のクラスの出し物が人間展示店という事を知り、さらに自分が女装をする事を知った。
椅子に座り驚嘆するガイ。そんなガイに、女子生徒達は昨日同様、メイクを施そうとしていた。
すると次の瞬間、ガイは椅子から立ち上がり、それを拒んだ。
「ちょっと障坂くん!動いちゃダメだよ!」
「いやいやいや!やらない!俺やらない!」
ガイの唐突な拒否に、女子生徒達は困惑した。
「急にどうしたの?障坂くん。」
「そうよ。今まで自分から喜んでやってくれたじゃない。」
実は、ガイは自身の容姿が女性のようだと思われる事を嫌悪していた。過去、使用人達に『女の子みたいで可愛い』と言われ続け、鬱陶しく思ったガイは自身の長いまつ毛を切断しようとした。直前で使用人達がそれに気づき阻止したが、以来、ガイの事を『女の子みたい』と発言するのは屋敷内ではNGとなった程だ。
「嫌だぁ!絶対にやりたくない!!!」
今までになく感情的に拒むガイ。そんなガイを見て、皆は驚いた。
しかし、ガイには昨日に続き、性癖製造機をやってもらわねば困る。
「お願いよ障坂くん!」
「もう開店の時間になっちゃうから!」
ガイは首を横に降り続ける。
その時、有野が立ち上がった。
「私がやる…」
それを見たクラスメイト達は少し驚嘆し、有野に尋ねた。
「でも有野さん、嫌だって…」
すると、有野は答えた。
「元は私のワガママでガイを巻き込んだから…だから…」
「有野…」
有野は人前に立つのが嫌いだ。しかも見せ物にされるなどもっての外。ガイはそれをわかっていた。
「だから…私がやる…」
わかっていた。
「…」
この先、自分がとるであろう行動も。
そう。ガイの出した結論とは。
【数分後…】
「「「かぁぁんわいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃい!!!」」」
女子生徒達は量産型ファッションに身を包んだガイを取り囲んでいた。
「…」
ガイは死んだ魚のような目をしている。一方、クラスの女子達はキャーキャー言っている。まるで、目の前に猫の赤ちゃんが居るかのように。
「今日の衣装も最高!」
「何度見ても尊いわぁ~!」
「2日連続同じ衣装だと味気ないから、今日は別のを持ってきました!」
「さすが吉田さん!」
「わかってるぅ~!」
その時、1人の女子生徒がガイに鏡を向けた。
「ほら見て!障坂くん!こんなに可愛いのよ!」
「そうよ!嫌がる事ないわ!自信を持って!」
ガイは無気力に鏡の中の自分に視線を向けた。
「………なッ⁈」
次の瞬間、ガイは鏡の縁を掴み、顔を近づけた。
「なんだぁあこの美少女はぁぁあ!!!」
ガイの中の何かが弾けた。
その後、文化祭は無事に終了した。
【夕方、教室にて…】
「え?打ち上げ来ないの?」
「あぁ。ちょっと寄る所があってな。」
どうやら、文化祭の打ち上げがあるようだ。ガイ以外のクラスメイトは全員参加するらしい。
ガイは堺からの誘いを断った。寄る所、それは、おそらく彼処。
【夜、舞開町、佐藤家にて…】
ガイは佐藤家のリビングで、椅子に座って武夫の母親と話をしている。
「話は十谷さんから聞いたわ。」
「すみません。大丈夫だって言ったのに…」
ガイは頭を下げた。そんなガイに、武夫の母は言う。
「謝らないで。あなたは何も悪くないんだから。」
「でも…」
「息子の入院費も学校への申告も全てやってくれて…感謝こそすれ、恨んだりしないわ。」
そう発言した母親の笑顔には、悲しみの感情が見てとれた。
障坂家専属の病院では、部外者の立ち入りは禁止されている。それ故、武夫の母親は入る事ができない。つまり、息子の見舞いに行く事ができないのだ。
例え眠ったままの息子でも、顔を見たいのが母親の心情。それが叶わぬ嘆きこそ、この笑顔の意味なのだ。
【とある和風の屋敷にて…】
客間には4人居た。その4人は四角い机を囲って、椅子に座っていた。
手前に座っていたのは長身の若い女。170cmはあるだろう。髪を後ろで束ねており、鋭い目付きをしている。名前は猪頭秀頼。ゴルデン四大財閥の一つ、猪頭家次期当主だ。
右手に座るは黒髪の青年。20歳前後か。左眼に眼帯をつけている。若いのに大した貫禄の持ち主だ。名前は出口哲也。同じく、ゴルデン四大財閥の一つで、出口家現当主だ。
左手に座るは30代前半の男。見覚えがある。そう、彼は陣野智高。かつて山尾兄弟を軟禁し、ガイに倒された男だ。タレントは『青面石化談話』。陣野も2人同様、ゴルデン四大財閥の一つだ。
そして、奥に座る銀髪の男。髭を生やし、サングラスをかけた見るからにヤバそうな中年男性。名前は陽道要。ゴルデン最大規模の指定暴力団、白鳥組の現組長だ。
その時、陽道が話し始めた。
「ここいらで1つ…同盟なんてどうだ?」
「同盟…?」
出口は尋ねた。他の2人も、陽道の発言の真意が気になるようだ。
陽道はそれに応える。
「今度の会合の話は聞いてるだろ。おそらくだが、障坂はそこでアレの提出を秤にかける。外へ行く為にな。」
それを聞き、出口,猪頭,陣野の順に発言した。
「何故、うちのリーダーに話をつけないんだ。同盟なら俺じゃなく秋だろ。」
「その通りだ。そもそも私はハンディーキャッパーではない。そういう類の話は姉に言うんだな。」
「お、おおお俺は協力しない!もうヤバい橋を渡る気はないぞ!」
そんな彼らに、陽道は言う。
「全員乗り気じゃねぇって感じだな。じゃあ何で今日ココに集まったんだ?あ?」
それに出口が答えた。
「後でどんな目に遭うかわからんからな。」
猪頭も賛同する。
「右に同じ。それに、アンタならどんな手を使ってでも私達を呼び出しただろ。」
猪頭はやれやれといった感じで腕を組み、話を続ける。
「まったくアンタと障坂はよく似ている。まぁ、障坂の方が幾分マシだがな。」
一瞬、その場が凍りつく。
数秒後、猪頭が再び口を開いた。
「話は何だ。」
【数十分後、電車内にて…】
ガイは武夫の母親と話した後、戸楽市の自分の家へと向かっていた。
「…」
ガイは窓から夜空を見上げている。
「(色んなものを置いてきた…)」
夜空には無数の星が散らばっていた。
「(俺はそれら全部…取り戻す事ができるのか…)」
取り戻す。一体何を取り戻すのか。おそらくは記憶。ガイはタレントを手に入れ、仲間を手に入れ、そして、強さを手に入れた。カードは揃った。全ては始まりのあの日の為。
会合。それはガイにとっての始まり。ガイが地獄に堕ちるまでの、始まりの一部。物語は最終局面へと移行する。
子供の泣き声が聞こえる。それをあやしつける女性の声も。
「僕、お父さんなんか嫌いだ…!大っ嫌いだ…!」
「ダメだよ。お父さんの事そんな風に言っちゃ。お父さんだってね、⬛︎⬛︎の為を思って毎日頑張ってるんだから。」
「でも…」
「いつかきっと、お父さんの気持ちがわかるようになるさ。」
俺、やっとわかったよ。父さん。こんなに辛かったんだね。でも、世界の為だから、仕方ないよね。弱音なんて吐けない。それに、アイツだってきっと許さないと思うし。
アイツは言った。オレは記憶だと。じゃあ、記憶に全てを支配される俺達は、一体なに?この世界の存続の為に、子供を作って子孫を残し、奴に器を与えるだけなの?それが障坂なの?わからない。理解できないよ。父さん。
【12月4日、20:30、障坂邸、父親の書斎にて…】
突発的な頭痛により意識を失ったガイが目を覚ました。
「(夢…)」
ガイは先程見ていたものを思い出しながら、体を起こした。
「(最近多いな…こういうの…)」
ガイは夏休み以降から、突如見知らぬ声が頭に響いたり、鮮明な夢を見る事が多々現れるようになっていた。
「記憶…」
夢の中で言っていた言葉。『記憶』。その言葉に、ガイは何かを感じ取った。しかし、この時のガイにはまだわからない。
何故ならガイには、ソレの存在にまだ気づいていないから。
「…風呂入って寝るか。」
ガイは書斎を出た。
【翌日(12月5日)、文化祭2日目、朝、学校にて…】
「嘘だろ…⁈」
ガイは自分のクラスの出し物が人間展示店という事を知り、さらに自分が女装をする事を知った。
椅子に座り驚嘆するガイ。そんなガイに、女子生徒達は昨日同様、メイクを施そうとしていた。
すると次の瞬間、ガイは椅子から立ち上がり、それを拒んだ。
「ちょっと障坂くん!動いちゃダメだよ!」
「いやいやいや!やらない!俺やらない!」
ガイの唐突な拒否に、女子生徒達は困惑した。
「急にどうしたの?障坂くん。」
「そうよ。今まで自分から喜んでやってくれたじゃない。」
実は、ガイは自身の容姿が女性のようだと思われる事を嫌悪していた。過去、使用人達に『女の子みたいで可愛い』と言われ続け、鬱陶しく思ったガイは自身の長いまつ毛を切断しようとした。直前で使用人達がそれに気づき阻止したが、以来、ガイの事を『女の子みたい』と発言するのは屋敷内ではNGとなった程だ。
「嫌だぁ!絶対にやりたくない!!!」
今までになく感情的に拒むガイ。そんなガイを見て、皆は驚いた。
しかし、ガイには昨日に続き、性癖製造機をやってもらわねば困る。
「お願いよ障坂くん!」
「もう開店の時間になっちゃうから!」
ガイは首を横に降り続ける。
その時、有野が立ち上がった。
「私がやる…」
それを見たクラスメイト達は少し驚嘆し、有野に尋ねた。
「でも有野さん、嫌だって…」
すると、有野は答えた。
「元は私のワガママでガイを巻き込んだから…だから…」
「有野…」
有野は人前に立つのが嫌いだ。しかも見せ物にされるなどもっての外。ガイはそれをわかっていた。
「だから…私がやる…」
わかっていた。
「…」
この先、自分がとるであろう行動も。
そう。ガイの出した結論とは。
【数分後…】
「「「かぁぁんわいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃい!!!」」」
女子生徒達は量産型ファッションに身を包んだガイを取り囲んでいた。
「…」
ガイは死んだ魚のような目をしている。一方、クラスの女子達はキャーキャー言っている。まるで、目の前に猫の赤ちゃんが居るかのように。
「今日の衣装も最高!」
「何度見ても尊いわぁ~!」
「2日連続同じ衣装だと味気ないから、今日は別のを持ってきました!」
「さすが吉田さん!」
「わかってるぅ~!」
その時、1人の女子生徒がガイに鏡を向けた。
「ほら見て!障坂くん!こんなに可愛いのよ!」
「そうよ!嫌がる事ないわ!自信を持って!」
ガイは無気力に鏡の中の自分に視線を向けた。
「………なッ⁈」
次の瞬間、ガイは鏡の縁を掴み、顔を近づけた。
「なんだぁあこの美少女はぁぁあ!!!」
ガイの中の何かが弾けた。
その後、文化祭は無事に終了した。
【夕方、教室にて…】
「え?打ち上げ来ないの?」
「あぁ。ちょっと寄る所があってな。」
どうやら、文化祭の打ち上げがあるようだ。ガイ以外のクラスメイトは全員参加するらしい。
ガイは堺からの誘いを断った。寄る所、それは、おそらく彼処。
【夜、舞開町、佐藤家にて…】
ガイは佐藤家のリビングで、椅子に座って武夫の母親と話をしている。
「話は十谷さんから聞いたわ。」
「すみません。大丈夫だって言ったのに…」
ガイは頭を下げた。そんなガイに、武夫の母は言う。
「謝らないで。あなたは何も悪くないんだから。」
「でも…」
「息子の入院費も学校への申告も全てやってくれて…感謝こそすれ、恨んだりしないわ。」
そう発言した母親の笑顔には、悲しみの感情が見てとれた。
障坂家専属の病院では、部外者の立ち入りは禁止されている。それ故、武夫の母親は入る事ができない。つまり、息子の見舞いに行く事ができないのだ。
例え眠ったままの息子でも、顔を見たいのが母親の心情。それが叶わぬ嘆きこそ、この笑顔の意味なのだ。
【とある和風の屋敷にて…】
客間には4人居た。その4人は四角い机を囲って、椅子に座っていた。
手前に座っていたのは長身の若い女。170cmはあるだろう。髪を後ろで束ねており、鋭い目付きをしている。名前は猪頭秀頼。ゴルデン四大財閥の一つ、猪頭家次期当主だ。
右手に座るは黒髪の青年。20歳前後か。左眼に眼帯をつけている。若いのに大した貫禄の持ち主だ。名前は出口哲也。同じく、ゴルデン四大財閥の一つで、出口家現当主だ。
左手に座るは30代前半の男。見覚えがある。そう、彼は陣野智高。かつて山尾兄弟を軟禁し、ガイに倒された男だ。タレントは『青面石化談話』。陣野も2人同様、ゴルデン四大財閥の一つだ。
そして、奥に座る銀髪の男。髭を生やし、サングラスをかけた見るからにヤバそうな中年男性。名前は陽道要。ゴルデン最大規模の指定暴力団、白鳥組の現組長だ。
その時、陽道が話し始めた。
「ここいらで1つ…同盟なんてどうだ?」
「同盟…?」
出口は尋ねた。他の2人も、陽道の発言の真意が気になるようだ。
陽道はそれに応える。
「今度の会合の話は聞いてるだろ。おそらくだが、障坂はそこでアレの提出を秤にかける。外へ行く為にな。」
それを聞き、出口,猪頭,陣野の順に発言した。
「何故、うちのリーダーに話をつけないんだ。同盟なら俺じゃなく秋だろ。」
「その通りだ。そもそも私はハンディーキャッパーではない。そういう類の話は姉に言うんだな。」
「お、おおお俺は協力しない!もうヤバい橋を渡る気はないぞ!」
そんな彼らに、陽道は言う。
「全員乗り気じゃねぇって感じだな。じゃあ何で今日ココに集まったんだ?あ?」
それに出口が答えた。
「後でどんな目に遭うかわからんからな。」
猪頭も賛同する。
「右に同じ。それに、アンタならどんな手を使ってでも私達を呼び出しただろ。」
猪頭はやれやれといった感じで腕を組み、話を続ける。
「まったくアンタと障坂はよく似ている。まぁ、障坂の方が幾分マシだがな。」
一瞬、その場が凍りつく。
数秒後、猪頭が再び口を開いた。
「話は何だ。」
【数十分後、電車内にて…】
ガイは武夫の母親と話した後、戸楽市の自分の家へと向かっていた。
「…」
ガイは窓から夜空を見上げている。
「(色んなものを置いてきた…)」
夜空には無数の星が散らばっていた。
「(俺はそれら全部…取り戻す事ができるのか…)」
取り戻す。一体何を取り戻すのか。おそらくは記憶。ガイはタレントを手に入れ、仲間を手に入れ、そして、強さを手に入れた。カードは揃った。全ては始まりのあの日の為。
会合。それはガイにとっての始まり。ガイが地獄に堕ちるまでの、始まりの一部。物語は最終局面へと移行する。
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