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第2章『ガイ-過去編-』
第55障『桜田秋』
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【12月12日、20:30、柴宮市、ホテル・シバミヤ28階、パーティ会場前の通路にて…】
ガイは父親の巌に会場の外へ呼び出されていた。
「雷世には、もう会ったか?」
「らいせ…?」
ガイには、それが誰の事かわからなかった。その様子を察した巌はガイにこう言った。
「捨てるなら今のうちだ。」
一体、何を捨てるのか。ガイはそれを尋ねる。
「何を…?」
すると、巌はガイの目を見て、落ち着いた雰囲気で言った。
「お前ももう、気づいてるんじゃないか。」
「…」
巌の言う通り、ガイには心当たりがあった。それは、ここ最近、ガイが感傷的になっていた事に起因する。
それは大切なもの。巌が捨てろと言ったのは、家族や友達など、ガイにとってかけがえのないものの事だ。
「選択を間違えれば、お前は地獄を見る事になる。」
巌はガイに背を向けた。
「かつての、俺のように…」
そう言うと、巌はガイの元を去っていった。
「…」
ガイはそんな父親の背中を見た。その背中はいつになく小さく見えた。
するとその時、ガイの元へ桜田,出口,角野がやってきた。
「君、障坂さんの息子さんなんだってね。」
桜田はガイに話しかけた。
「僕は桜田秋。大間大学の三年生さ。キミは?」
ガイは桜田の妙な雰囲気を不気味に感じた。まるで、これから彼の手の上で踊らされるかのような、影の支配者のオーラを。
ガイは躊躇しながらも名乗った。
「障坂ガイです。」
すると、桜田はガイに手を差し伸べた。
「よろしくね。ガイ君。」
「…こちらこそ。」
ガイは嫌々ながらも桜田と握手を交わした。
「キミとは色々と話がしたいんだけど、今日はもう遅い。また今度、会えるかな?」
「予定が合えば。」
「よかった!じゃあ、連絡先教えてくれないかな?」
ガイは連絡先を教える事を躊躇った。しかし、国公認のハンディーキャッパーと関係を持つ事自体、ガイにとっては有益な事。
「わかりました。」
ガイはスマホを取り出し、桜田と連絡先を交換した。その際に、桜田はニヤリと笑った。
「…」
それをガイは見逃さなかった。
その時、猪頭が会場から出てきて、ガイを呼んだ。
「おーい、障坂くーん。終わったからそろそろ帰るよー。」
「あ、はい。」
ガイは猪頭の元へと歩き、二人はその場から去っていった。その様子を不気味な笑みを浮かべながら桜田は見ている。
その時、桜田の背後にいた角野が、桜田に話しかけた。
「秋…本当にやるの…?」
「うん。彼には悪いけど、もうそれしかない。」
そう発言する桜田の顔には、焦りの感情しか浮かんでいなかった。
「コレが…最後のチャンスなんだ…!」
【23:00、障坂邸、ガイの部屋にて…】
ガイはどうやら風呂上がりのようで、ドライヤーで髪を乾かしている。
一方、ベッドの上には猫の姿のヤブ助が寝ている。
「どうだった?今日の会合とやらは。」
「んー、なんか…めっちゃ滑舌悪い魔物が居た。」
「は…?」
【翌日(12月13日月曜日)、朝、学校、1-4の教室にて…】
山口はチャイムが鳴るギリギリに教室へと入ってきた。
「っしゃあッ!ギリギリセーフ!今日はギリギリ安全日だぜ!」
山口は遅刻しなかった日の事を安全日と呼んでいる。その本当の意味も知らずに。
その時、堺が山口に挨拶をした。
「おはよう、山口くん。」
「おう!グッモーニング!」
山口は教室を見渡した。しかし、ガイの姿はどこにもなかった。
「なぁ、堺。ガイ今日居ねーのか?」
「うん。まだ来てないね。遅刻かな…?」
この日、ガイが学校へ来る事はなかった。
【昼休み、中庭にて…】
山口,堺,広瀬,有野,友田は会話しながら昼食をとっている。
「今日ガイ君来てないんだ。」
「うん。理由はわからないけど。」
広瀬の問いかけに堺が答えた。それを聞いた広瀬は呟いた。
「会合の事、聞きたかったんだけどなぁ…」
そんな広瀬の呟きを聞いた友田は首を傾げた。
「会合…?」
その時、山口達は背後から何者かに呼ばれた。
「お前ら!」
それは猫の姿のヤブ助だ。何やら、ヤブ助は切羽詰まった顔つきだ。
山口はヤブ助に何を焦っているのかを尋ねた。
「おう、ヤブ助。どうしたんだよ?そんなに焦って。」
「ガイが行方不明なんだ…!」
【その頃、とある地下室にて…】
床・壁・天井がコンクリート剥き出しの無機質な部屋。そんな部屋の中央にガイが居た。ガイは鎖で椅子に縛り付けられている。
「(ココは…)」
ガイは意識を取り戻した。
「(俺は一体…)」
【ガイの回想、朝、登校中にて…】
ガイは通学路を歩いている。
するとその時、ガイのスマホに電話がかかってきた。
「(桜田…?)」
電話の相手は桜田だった。
「(こんな朝早くに何の用だ…)」
ガイはその電話を不審がった。昨日の桜田の不気味な笑顔が、ガイに躊躇いを与えたのだ。
しかし、ガイはそれに出た。たかが電話。話をするだけなら、別に問題はないだろうとガイは思ったのだ。
「もしもし。」
しかし、その考えは甘かった。
その時、スマホのスピーカーから桜田の声が聞こえてきた。
〈俺の元へ来い。〉
すると次の瞬間、ガイは意識を失った。
【現在…】
ガイはこの部屋に来るまでの経緯を思い出した。
「(そうだ…桜田だ…!奴の声を聞いたら意識が…催眠系のタレントか。)」
その時、部屋に桜田が入ってきた。
「目が覚めたみたいだね。」
桜田の手には工具入れが持たれていた。
「何が目的だ…」
ガイは桜田に尋ねた。すると桜田は無表情で話し始めた。
「僕は絶対に、外の世界へ行かなくちゃならないんだ。魔王の封印を解く為に。」
「アンタも、魔王からの報酬が目当てか。」
桜田は頷いた。そんな桜田に、ガイは言った。
「あのオザトリスって奴の言葉を信用したのか?」
「いや、彼は嘘をついている。少なくとも、魔王が人類に無害だとは思えない。改心したとも考えていない。」
「じゃあ、何で…」
嘘だとわかっていながら、何故、桜田は魔王の封印を解こうとするのか。
「報酬の件は本当だからだよ。だって、魔王はこの世界の神。この世界を作ったんだから。」
それを聞き、ガイは驚嘆した。
「魔王が…世界を…⁈」
ガイはとんでもない事実を耳にしたが、頭の片隅には納得の二文字が浮かんでいた。この世界の矛盾に。
「この世界の全ては魔王が作り出した。つまり、僕らはみんな、魔王によって作り出された存在でしかないんだ。全てだ。そう。全て無意味なんだ。」
その時、桜田は怒りに近い決意でガイに言い放った。
「でも…それでもいい…!また春(はる)に会えるのなら!僕は!この無意味な世界で悪魔になってやる!」
次の瞬間、桜田は手に持っていた工具入れからドライバーを取り出し、ガイの左目に突き刺した。
「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!!!!!」
ガイはかつて無い痛みに悶絶した。
桜田はガイの左目をドライバーでかき混ぜながら、話を続けた。
「PSIは心的影響に大きく関係する!とてつもない恐怖や強い意志、死を実感するような苦痛を受ければ、PSIは強化される!それ故、タレントが発現する可能性も高まる!」
桜田はガイの左目からドライバーを抜いた。その際に、抉られたガイの眼球が左目からこぼれ落ちた。それはまるで、グチャグチャに潰された豆腐のようだ。
桜田は話を続ける。
「もしかしたら、魔王の封印を解くタレントがキミの中で目覚めるかもしれない。タレントは遺伝が大きいからね。解封のタレントを持つ障坂さんの息子であるキミなら、その可能性は大いにある。」
桜田は工具入れの中から、ペンチを取り出した。
「そんなキミを連れて行けば、障坂さんも考え直してくれるはずだ。」
桜田はガイの爪をペンチで剥がし始めた。
「ぐッ…ぁあ"あ"あ"ッ!!!」
この拷問はおそらく、ガイが魔王の封印を解くタレントを発現するまで繰り返されるのだろう。それまで、ガイは耐え、ただ叫ぶしかなかった。
「本当に…ごめん…」
桜田は謝罪の言葉を繰り返しながら、ガイの爪を剥がした。剥がす爪が無くなると、今度はガイの指の骨を順番に折り、それすらも終えると、今度はガイの指を順に切断し始めた。
「(もう…やめて……)」
指を全て切り落とした後、桜田は一体、ガイの何を痛めつけるのか。恐怖と苦痛の最中、ガイはあの日の事を思い出していた。
〈仲間になれ。障坂。〉
ガイは父親の巌に会場の外へ呼び出されていた。
「雷世には、もう会ったか?」
「らいせ…?」
ガイには、それが誰の事かわからなかった。その様子を察した巌はガイにこう言った。
「捨てるなら今のうちだ。」
一体、何を捨てるのか。ガイはそれを尋ねる。
「何を…?」
すると、巌はガイの目を見て、落ち着いた雰囲気で言った。
「お前ももう、気づいてるんじゃないか。」
「…」
巌の言う通り、ガイには心当たりがあった。それは、ここ最近、ガイが感傷的になっていた事に起因する。
それは大切なもの。巌が捨てろと言ったのは、家族や友達など、ガイにとってかけがえのないものの事だ。
「選択を間違えれば、お前は地獄を見る事になる。」
巌はガイに背を向けた。
「かつての、俺のように…」
そう言うと、巌はガイの元を去っていった。
「…」
ガイはそんな父親の背中を見た。その背中はいつになく小さく見えた。
するとその時、ガイの元へ桜田,出口,角野がやってきた。
「君、障坂さんの息子さんなんだってね。」
桜田はガイに話しかけた。
「僕は桜田秋。大間大学の三年生さ。キミは?」
ガイは桜田の妙な雰囲気を不気味に感じた。まるで、これから彼の手の上で踊らされるかのような、影の支配者のオーラを。
ガイは躊躇しながらも名乗った。
「障坂ガイです。」
すると、桜田はガイに手を差し伸べた。
「よろしくね。ガイ君。」
「…こちらこそ。」
ガイは嫌々ながらも桜田と握手を交わした。
「キミとは色々と話がしたいんだけど、今日はもう遅い。また今度、会えるかな?」
「予定が合えば。」
「よかった!じゃあ、連絡先教えてくれないかな?」
ガイは連絡先を教える事を躊躇った。しかし、国公認のハンディーキャッパーと関係を持つ事自体、ガイにとっては有益な事。
「わかりました。」
ガイはスマホを取り出し、桜田と連絡先を交換した。その際に、桜田はニヤリと笑った。
「…」
それをガイは見逃さなかった。
その時、猪頭が会場から出てきて、ガイを呼んだ。
「おーい、障坂くーん。終わったからそろそろ帰るよー。」
「あ、はい。」
ガイは猪頭の元へと歩き、二人はその場から去っていった。その様子を不気味な笑みを浮かべながら桜田は見ている。
その時、桜田の背後にいた角野が、桜田に話しかけた。
「秋…本当にやるの…?」
「うん。彼には悪いけど、もうそれしかない。」
そう発言する桜田の顔には、焦りの感情しか浮かんでいなかった。
「コレが…最後のチャンスなんだ…!」
【23:00、障坂邸、ガイの部屋にて…】
ガイはどうやら風呂上がりのようで、ドライヤーで髪を乾かしている。
一方、ベッドの上には猫の姿のヤブ助が寝ている。
「どうだった?今日の会合とやらは。」
「んー、なんか…めっちゃ滑舌悪い魔物が居た。」
「は…?」
【翌日(12月13日月曜日)、朝、学校、1-4の教室にて…】
山口はチャイムが鳴るギリギリに教室へと入ってきた。
「っしゃあッ!ギリギリセーフ!今日はギリギリ安全日だぜ!」
山口は遅刻しなかった日の事を安全日と呼んでいる。その本当の意味も知らずに。
その時、堺が山口に挨拶をした。
「おはよう、山口くん。」
「おう!グッモーニング!」
山口は教室を見渡した。しかし、ガイの姿はどこにもなかった。
「なぁ、堺。ガイ今日居ねーのか?」
「うん。まだ来てないね。遅刻かな…?」
この日、ガイが学校へ来る事はなかった。
【昼休み、中庭にて…】
山口,堺,広瀬,有野,友田は会話しながら昼食をとっている。
「今日ガイ君来てないんだ。」
「うん。理由はわからないけど。」
広瀬の問いかけに堺が答えた。それを聞いた広瀬は呟いた。
「会合の事、聞きたかったんだけどなぁ…」
そんな広瀬の呟きを聞いた友田は首を傾げた。
「会合…?」
その時、山口達は背後から何者かに呼ばれた。
「お前ら!」
それは猫の姿のヤブ助だ。何やら、ヤブ助は切羽詰まった顔つきだ。
山口はヤブ助に何を焦っているのかを尋ねた。
「おう、ヤブ助。どうしたんだよ?そんなに焦って。」
「ガイが行方不明なんだ…!」
【その頃、とある地下室にて…】
床・壁・天井がコンクリート剥き出しの無機質な部屋。そんな部屋の中央にガイが居た。ガイは鎖で椅子に縛り付けられている。
「(ココは…)」
ガイは意識を取り戻した。
「(俺は一体…)」
【ガイの回想、朝、登校中にて…】
ガイは通学路を歩いている。
するとその時、ガイのスマホに電話がかかってきた。
「(桜田…?)」
電話の相手は桜田だった。
「(こんな朝早くに何の用だ…)」
ガイはその電話を不審がった。昨日の桜田の不気味な笑顔が、ガイに躊躇いを与えたのだ。
しかし、ガイはそれに出た。たかが電話。話をするだけなら、別に問題はないだろうとガイは思ったのだ。
「もしもし。」
しかし、その考えは甘かった。
その時、スマホのスピーカーから桜田の声が聞こえてきた。
〈俺の元へ来い。〉
すると次の瞬間、ガイは意識を失った。
【現在…】
ガイはこの部屋に来るまでの経緯を思い出した。
「(そうだ…桜田だ…!奴の声を聞いたら意識が…催眠系のタレントか。)」
その時、部屋に桜田が入ってきた。
「目が覚めたみたいだね。」
桜田の手には工具入れが持たれていた。
「何が目的だ…」
ガイは桜田に尋ねた。すると桜田は無表情で話し始めた。
「僕は絶対に、外の世界へ行かなくちゃならないんだ。魔王の封印を解く為に。」
「アンタも、魔王からの報酬が目当てか。」
桜田は頷いた。そんな桜田に、ガイは言った。
「あのオザトリスって奴の言葉を信用したのか?」
「いや、彼は嘘をついている。少なくとも、魔王が人類に無害だとは思えない。改心したとも考えていない。」
「じゃあ、何で…」
嘘だとわかっていながら、何故、桜田は魔王の封印を解こうとするのか。
「報酬の件は本当だからだよ。だって、魔王はこの世界の神。この世界を作ったんだから。」
それを聞き、ガイは驚嘆した。
「魔王が…世界を…⁈」
ガイはとんでもない事実を耳にしたが、頭の片隅には納得の二文字が浮かんでいた。この世界の矛盾に。
「この世界の全ては魔王が作り出した。つまり、僕らはみんな、魔王によって作り出された存在でしかないんだ。全てだ。そう。全て無意味なんだ。」
その時、桜田は怒りに近い決意でガイに言い放った。
「でも…それでもいい…!また春(はる)に会えるのなら!僕は!この無意味な世界で悪魔になってやる!」
次の瞬間、桜田は手に持っていた工具入れからドライバーを取り出し、ガイの左目に突き刺した。
「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!!!!!」
ガイはかつて無い痛みに悶絶した。
桜田はガイの左目をドライバーでかき混ぜながら、話を続けた。
「PSIは心的影響に大きく関係する!とてつもない恐怖や強い意志、死を実感するような苦痛を受ければ、PSIは強化される!それ故、タレントが発現する可能性も高まる!」
桜田はガイの左目からドライバーを抜いた。その際に、抉られたガイの眼球が左目からこぼれ落ちた。それはまるで、グチャグチャに潰された豆腐のようだ。
桜田は話を続ける。
「もしかしたら、魔王の封印を解くタレントがキミの中で目覚めるかもしれない。タレントは遺伝が大きいからね。解封のタレントを持つ障坂さんの息子であるキミなら、その可能性は大いにある。」
桜田は工具入れの中から、ペンチを取り出した。
「そんなキミを連れて行けば、障坂さんも考え直してくれるはずだ。」
桜田はガイの爪をペンチで剥がし始めた。
「ぐッ…ぁあ"あ"あ"ッ!!!」
この拷問はおそらく、ガイが魔王の封印を解くタレントを発現するまで繰り返されるのだろう。それまで、ガイは耐え、ただ叫ぶしかなかった。
「本当に…ごめん…」
桜田は謝罪の言葉を繰り返しながら、ガイの爪を剥がした。剥がす爪が無くなると、今度はガイの指の骨を順番に折り、それすらも終えると、今度はガイの指を順に切断し始めた。
「(もう…やめて……)」
指を全て切り落とした後、桜田は一体、ガイの何を痛めつけるのか。恐怖と苦痛の最中、ガイはあの日の事を思い出していた。
〈仲間になれ。障坂。〉
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