障王

泉出康一

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第2章『ガイ-過去編-』

第60障『お前も男の娘かい。』

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【12月13日、密林の労働部屋、拠点にて…】

全身に火傷を負ったガイが、布団の上に寝かされていた。この布団はおそらく、角野が転送機で購入したものだろう。
ガイは一応の治療が終わっており、全身には包帯が巻かれていた。

「ッ…ん……」

その時、ガイは目を覚ました。

「ガイ君!!!」

それに気づいた角野は喜びの表情で話しかけた。

「よかった…生きててくれて…」

角野は安堵し、涙を拭っている。
ガイが体を起こそうとした時、角野はそれを慌てて止めた。

「動いちゃダメだよ!めちゃくちゃ酷い怪我なんだから!」

すると、角野は視線を横に移動させた。

「この馬鹿のせいで。」

角野の視線の先には、不知火が座って水を飲んでいた。

「…」

ガイが不知火の顔を見ると、不知火は気まずそうに視線を逸らした。
その時、ガイは口を僅かに開き、不知火に尋ねた。

「もう…俺たちを…襲わないのか…?」

すると、不知火は再び、バツが悪そうに答えた。

「まぁ…うん…」
「…」

その時、ガイは不知火に質問した。

「お前…何で…桜田の仲間…に…?」

それを聞いた不知火は、少し怒ったような口調で答えた。

「決まってんでしょ!好きだからよ!」
「男として…?」
「そうよ!」
「でもお前…男だろ…」
「そうよ!その通りよ!」

それを聞いた角野は驚嘆した。

「え…男…⁈どゆこと⁈」

ガイは不知火が男である事の根拠について話し始めた。

「一人称…時々俺だし…声も違和感…あるし…骨格が…」

すると、不知火は恥ずかしそうに叫んだ。

「あー!もう!言わないでよ!このガキ!」

そして、不知火はガイに背を向け、ブツブツと独り言を言い始めた。

「好きで男に生まれた訳じゃねーんだよ…ったく…」

不機嫌になる不知火。

「どうせお前らもキモいって思ってんだろ!」
「うん。」

角野は即答した。しかし、その一方で、ガイは不知火の姿を見て、こう言った。

「キモくなんかない…」

それを聞いた不知火は驚いた表情でガイの方を向いた。
ガイは続けて言う。

「良いと…思う…」

当然、ガイはそう言うはずだ。いや、言わなければならない。何故なら、ガイの好きな女性のタイプは、女装した自分なのだから。女装男子を否定するという事は、自分の嗜好そのものを否定している事になる。ガイはそんな事はできない。

「(ま、俺の方が100億倍は可愛いけど。)」

謎の対抗心。いや、ガイ的には事実を述べたまでだと思っている。
一方の不知火は、ガイのその言葉を受けて、心から嬉しがっていた。

「(そんな事言われたの…秋様以外は初めて…)」

不知火は今まで、世間から白い目で見られてきた。あの子は変だ、ちょっとおかしな奴だ、と。しかし、唯一桜田だけはありのままの不知火を受け入れた。不知火が自身の性別について話した際も、桜田だけは引かなかった。それが、不知火の桜田に依存する理由である。
不知火はガイに尋ねた。

「どうして、私がキモくないの…?」

すると、ガイは目を閉じ、答えた。

「世界には…色んな奴がいる…それだけだ…」

世界には。まるで、世界を見てきたかのような口振りで話すガイ。まだ、ゴルデンからも出た事がないガイがこう言える理由、それは何か。

【16:30、猪頭愛児園、客間にて…】

堺,山口,広瀬,有野,友田が畳の上に座っている。そんな彼らの前には、猪頭が座っていた。
堺らは今、ガイの行方について心当たりが無いかを、猪頭に尋ねていたのだ。
そして、猪頭は会合での出来事や、桜田が怪しいという事を堺らに話した。

「その桜田って人は何処にいるんですか?」

堺は猪頭に桜田の居場所について尋ねた。

「わからない。でも大学の場所なら知ってる。今から向かうなら、案内するよ。」
「良いんですか?」
「あぁ。頼まれたとはいえ私も、あの子を危険な世界に介入させてしまった。大人として止めるべきだったと、今になって反省してる。私も手伝うよ。」

こうして、猪頭を含めた計六人は桜田の通う大学へと向かった。

【17:30、桜田が通う大学前にて…】

大学前には、堺らと猪頭、そして何故か、猪頭愛児園の悪ガキ三人衆の友那,勉,将利がいる。
猪頭は三人を叱っていた。

「ついてきちゃダメって言っただろ!」

しかし、友那はそれに反論した。

「でも!オンナ兄ちゃん助けたかったんだもん!」

それに続けて、将利も反論した。

「友那ちゃんは悪くない!誘拐されるあの変態兄ちゃんが悪いんだ!」

そこに、勉が言葉を挟む。

「僕は止めたんですよ。」

猪頭は折れる事なく三人に言う。

「いいかい、今回ばかりは本当に危険なんだ。だから絶対に連れて行く事はできない。」

しかし、悪ガキ三人はワンギャワンギャ騒いでいる。

【数分後…】

結局、猪頭のみが大学内へ調査する事となり、堺らと悪ガキ三人は大学前で待機となった。

「何で俺らまで…」
「完全に、この子達の見張り任された感じだよな。」

山口と広瀬はぼやいていた。

【一方その頃、大学内では…】

猪頭はその幼すぎる容姿故、警備員に保護されかけていた。

「君一人?お父さんやお母さんは?」
「私は大人です。ちゃんと免許証も…」

その時、猪頭は免許証や保険証を園に忘れた事を思い出した。

「あ…いや…い、今はその…無いけど…」
「…」

猪頭は警備員に迷子センター的な所へ連れて行かれた。

【数分後…】

山口は痺れを切らし、大学内へ入ろうとしている。

「ええい!待ってられるかぁ!おい!行くぞガキ共!」
「「「おーーーーー!!!」」」

山口は友那らを連れて大学内へ入った。

「ちょ、ちょっと山口くん⁈」

止めようとする堺。その一方で、有野と広瀬は山口達についていった。

「広瀬くん⁈それに有野さんまで!」

すると、それに気づいた友田が有野の後を追いかけた。

「ちょっと待ってよ京香!」

一人残された堺。

「まったくもぉ~…」

堺は渋々皆の後についていった。

【大学内、通路にて…】

山口達は大学の通路を歩いていた。

「桜田はデカい!デカい奴だ!身長180cm以上の奴を片っ端からぶん殴るぞ!」
「「「おーーーーー!!!」」」

山口の提案に友那達三人は楽しそうに同調した。気が合うようだ。
それに対して、堺は提案改善を求める。

「もっと穏便な方法にしようよぉ!」

中学生五人に小学生三人。コレは、大学の中では明らかに異質な集団だ。それ故、山口達は注目を集めていた。通りがかる人は皆、彼らを凝視している。
すると、その様子を物陰からじっと見つめる人物が二人。カチューシャをつけた茶髪の女子大生と、紺のハットを被った男子大生だ。

「どうする?放っておいても問題は無さそうだけど。」
「…」

男は山口達を見ながら、ニヤリと笑った。

「いや、ギャンブルは好きだけど、危険の種を積んでおこう。念の為にね。」
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