障王

泉出康一

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第2章『ガイ-過去編-』

第63障『その笑みの真実』

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【12月13日、18:00、大学内、オカルト研究部、部室にて…】

部屋の中には土狛江と、椅子に拘束された広瀬,有野,友田,勉がいる。

「さぁ。次は誰が相手する?」

その時、有野が手を上げた。

「私がやる…」
「オーケー。」

土狛江はトランプを持って、有野の正面の席へと移動した。

「勝負方法は?」
「ガイの居場所を教えて…」

勝負法を聞いた土狛江。しかし、有野は土狛江に勝った時の報酬、質問の一つを先に伝えた。コレは、有野からの勝利宣言とも見て取れる。
それが気に入ったのか、土狛江は笑顔で頷いた。

「うん。いいよ。てかいいね、キミ。トランプゲームとか得意なの?」
「ポーカー…」

有野は土狛江の質問を無視して、勝負方法を伝えた。ポーカーで勝負をするようだ。
土狛江は少し眉を顰めた後、表情を戻して承諾した。

「オーケー。どんな感じでやる?」
「チップは一人20。0になった方が負け。パスは一回。以上…」

その時、有野は土狛江が机の上に置いたトランプの束を取り、それを友田に渡した。

「彼女がディーラー。文句ある…?」

友田は覚悟を決めた表情でトランプ札を握りしめている。緊張しているようだ。
そんな様子を見た土狛江はある事を察した。

「(何か仕掛けてくるな…)」

広瀬と土狛江が勝負をしていた時、有野は他のメンバーと話し合っていたのだ。土狛江に勝つ為に。
土狛江はそれを承知した上で、ディーラー役に承諾した。

「ないよ。その子、ハンディーキャッパーじゃないだろ。だったら安心だ。」

土狛江が承諾すると、友田はトランプにイカサマが無いかを調べ始めた。
それと同時に、土狛江はチップを20枚、自身と有野の前にそれぞれ置いた。

「さぁ。始めようか。」

土狛江の開始の合図と共に、友田はトランプをきって、有野と土狛江の手元にトランプを五枚配った。
土狛江は手札を見ながら思考する。

「(どんなイカサマを使ってくるか楽しみだ。まずは様子見といこうかな。念の為。)」

土狛江はトランプを三枚捨て、友田から三枚新たにカードをもらった。

「(スリーカード…まぁまぁだな。)」

その時、土狛江は有野に尋ねた。

「キミは交換しないの?」
「生ぬるい…」
「え…?」

土狛江の質問を、有野はまたもや無視した。しかし、今回は謎の発言を残した。

「生ぬるい?何が?部屋の温度?」

茶化すように尋ねる土狛江。そんな土狛江に、有野は殺意のこもった眼差しを向けた。

「やっぱ質問しない…」

その時、有野は土狛江を指差して、今まで見た事もないようなとてつもない威圧感で言い放った。

「死んで…」
「…」

謎の死んで発言。土狛江がその理由を尋ねた。

「それはどういう事かな?」
「この勝負、命賭けよう…」

その発言に、土狛江だけでなく、広瀬や友田も驚嘆した。

「ちょ、ちょっと京香!何言ってんのよ!」

慌てて問いただす友田。どうやら、コレは伝えていなかったようだ。
しかし、有野は続ける。

「もうガイとか質問とかどうでもいい…私、お前嫌い…だから殺す…」

土狛江は眉を顰め、有野を見ている。この発言がブラフかどうかを見定める為だ。しかし、有野の無表情さは皆知っての通り、真実など読み取れない。土狛江も同様だ。
土狛江は少しでも有野の意図を読み取ろうと質問を始めた。

「どうでもいい?それってつまり、友達を見捨てるって…」

土狛江が話している最中に、有野は空気も読まずに机にチップを叩きつけ、言った。

「20枚、全部賭ける…」
「「「ッ⁈」」」

それを聞いた全員が驚きを露わにした。

「20枚…全部…⁈」
「(何考えてるんだ、有野さん…)」

勉と広瀬は有野の意図が分からず困惑している。

「きょ、京香!!!」

その時、友田が焦った表情で有野に話しかけた。

「交換は⁈トランプ交換しないの⁈」
「このままでいい。」

そして、有野は土狛江の方を向いて言った。

「コイツを殺せる手札だから…」
「…」

土狛江の額から冷や汗が流れた。

「(この子はやばい…)」

土狛江は直感的にそれを悟った。有野の完璧なポーカーフェイス。場の空気を読まない姿勢。そして、自らの命をも顧みない狂ったギャンブル精神。彼女こそ、真のギャンブラーだ。
広瀬の時とは打って変わって焦りを見せ始める土狛江。そんな土狛江に、有野は間髪置かずに、やや命令っぽく言った。

「早く…勝負しよう…」
「…」

土狛江の発汗量は先ほどよりも多くなっている。焦っているのだ。
しかし、土狛江も強者。焦りを鎮め、冷静に頭を回転させ、思考した。

「(いや、ハッタリだ。命を賭けるなんて、桜田の奴はともかく、そんな軽々しく言えるはずない…もしかして、軽々しく言える程、強い手札なのか…?いやでも、トランプを配ってる仲間すら驚いていたんだ。イカサマはできる…できる…のか…もしかして、こうなる事を予想して、この子一人での策だった…)」

ダメだ。土狛江は明らかに自身のペースを乱されている。

「(タレントを使って絵柄を変えるか…でも、相手がどんな役を出してくるかわからなければ、こっちは最強のロイヤルストレートフラッシュを出すしかない…そうなれば、俺が明らかにイカサマをした事がバレる…)」

土狛江は狡猾だ。どんな状況下においても、冷静に事を進める事ができる。いや、できたはずだった。しかし、ペースを乱された今、土狛江は冷静さと焦りの中、頭の中ではどっちつかずな解答ばかりが浮かんできて、正しい判断ができずにいた。
それに加え、有野は結論を急かす。

「早くして…ほら…」

急ぐ必要などない。わかっているはずなのに。土狛江の焦りは自身の判断を急かしている。その結果、土狛江の出した結論は。

「…パスだ…」

逃げ。土狛江は勝負から降りたのだ。一回しかないパスを使ってしまった。いや、使わせられたのだ。有野に。一回りも年下の少女に。
その時、有野はため息を吐きながら、自身の手札を机の上に置いた。

「「「ッ!!!」」」

一同はそれを見て驚愕した。
なんと、有野の手札はハイカード。つまり、何も揃ってはいなかったのだ。
この事実は土狛江だけでなく、見ていた全員の肝を冷やした。

「(信じられない…こんな手札で、しかもコレを知った上で、あんなに冷静に命を賭けるなんて言ったのか…⁈)」

広瀬は有野の覚悟と技量、そして狂人的な精神力に感服した。いや、恐怖を感じたのだ。きっと彼女なら、躊躇いなく、罪悪感なく人を殺せると。
そして、この事は強者であればあるほど実感せざるを得ない事実である。土狛江のような強者には。

「ハァ…!ハァ…!ハァ…!」

息が荒い。土狛江は理解してしまったのだ。コイツには勝てないと。
土狛江の心が折れかけたその時、土狛江は自身の顔面をグーで思い切り殴った。

「「「…⁈」」」

それを見た一同は困惑した。一体何をしているのかと。
土狛江は自分を罰したのだ。相手を格下だと決めつけた驕り高ぶる自分を。
その時、土狛江は有野に頭を下げた。

「傲慢な俺を許してほしい…」

そして、土狛江は冷静さを取り戻した。
土狛江は自身の傲慢さを蔑んだ。しかし、絶望の淵で彼を勝負に留まらせたのもプライドだ。
土狛江は有野にゲームの続行を告げる。

「さぁ。次のターンで…」

しかし、土狛江が顔を上げて見たものは地獄だった。
笑っていたのだ。有野が。

〈勝者って、確信と同時に笑うらしいよ。〉

自身の言葉が頭部全体で蘇る。あの記憶。そう。彼は以前にも負けていた。勝利を確信し、笑みを浮かべたあの桜田に。

「(やめてくれ…そんな顔するな…)」

【土狛江の回想…】

土狛江が高校生の時、彼は闇カジノで荒稼ぎしていた。生まれ持ってのギャンブルの才。それを余す事なく振るう事ができたのはココだけ。ココだけが、彼の居場所だった。
ギャンブルが全ての世界で彼は最強だった。誰も彼に手は出せない。そんな中、一人の男が彼の元へやってきた。それが桜田だ。

「キミ、ポーカー得意だね。どんなイカサマしてるの?僕にも教えて欲しいな。」

桜田は笑っていた。土狛江が初めて出会った時から。

〈勝者って、確信と同時に笑うらしいよ。〉

そう。桜田は常に勝者だった。それは変わる事のない事実。その固定概念が土狛江の中に植え付けられるまで、そう時間はかからなかった。
しばらくして、桜田は言った。

「土狛江。お前は僕に無いものを持っている。僕はそれが羨ましい。」

土狛江が唯一得意なギャンブルでも、桜田には勝てなかった。しかし、そんな桜田が自身を羨ましいと言った。嘘では無い。彼は、そんな嘘はつかない。

「土狛江。一緒に来てくれるか?」

【現在…】

「(そうだ…俺は桜田を恐れていたんじゃない…畏れていたんだ…!)」

土狛江は顔を上げた。目の前には、微笑む有野の姿が。

「(自信を持て俺!俺が尊敬した人!その人が羨ましいって言った人!それが俺だ!俺なんだ!!!)」

その時、土狛江は有野に負けじと笑顔を作った。その歪んだ笑顔には、強くあろうとする心が体現されていた。
その歪んだ笑顔を見て、一同はその気味の悪さに恐怖した。しかし、有野は全く変化を見せない。
笑い合う二人に、トランプが配られる。
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