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第2章『ガイ-過去編-』
第80障『負い目』
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【12月14日、夕方、病院にて…】
病室のベッドに座るガイ。その側にヤブ助,十谷,村上、そして、石川の姿があった。
ヤブ助はガイに話を続ける。
「その後、桜田は園に戻ってきた。そして、桜田は降伏と協定を申し出た。」
【昨日、19:25、猪頭愛児園、庭にて…】
園内の庭で桜田は猪頭とヤブ助に事情を話した。
「散々ひどい事した挙句、それは虫が良すぎるんじゃないかな?桜田くん。」
猪頭がそう言った次の瞬間、ヤブ助は桜田を殴り倒した。
「ぐあッ…!!!」
ヤブ助は桜田に馬乗りになり、桜田の顔面を何度も何度も殴った。
「…」
猪頭は何も言わない。桜田がガイを拷問した事、その報いだ。猪頭はそう思っている。しかし、30発ほど殴った頃、猪頭は流石に止めた。
「ちょっとストップ。死んじゃうから。」
「殺すつもりだったからな。」
ヤブ助は桜田の上から退き、猪頭はタレントで桜田を治癒した。切断された左腕すらも。
その時、ヤブ助は桜田に言った。
「ガイを助ける為だ。協力はする。だが仲間になるつもりはない。」
「あぁ…それで…いい……」
【20:10、出口邸前にて…】
出口邸の前には、連絡役の堺と友田、戦いを終えて合流した山尾兄弟と広瀬が。しかし、彼らは神妙な面持ちで一人の少年の話を聞いている。それが石川だ。
「おい、誰だそいつ…?」
ヤブ助は石川に話しかけた。すると、石川はまるで、ちょうどこの時間にヤブ助と桜田が来る事を知っていたかのように振る舞う。
「話をしている時間はない、ヤブ助、桜田。ガイを殺されたくなかったら協力しろ。」
「は…?」
ヤブ助は現状が理解できない。しかし、石川はヤブ助にやや命令っぽく、話を続けた。
「俺的にも、ガイには…いや、雷世には、まだ死んでもらっては困る。」
【数分後、出口邸内、応接間にて…】
あの惨状に、石川がやってきた。部屋には白鳥組の面々。チビマルと白マロの死体。意識の無いガイ。尚も犯され続ける有野。しかし、それらを見ても全く動じない石川。
その時、ソファでふんぞり返る陽道が石川に話しかけた。
「よぉ、石川。どうした?」
「手遅れだったようです。ボス。」
「あ?手遅れ?何がだ?」
すると次の瞬間、人間化したヤブ助,堺,広瀬,友田,山尾兄弟,桜田,土狛江,裏日戸の計九人が勢いよく応接間へと入ってきた。土狛江と裏日戸は白鳥組に囚われていたのか、拷問の痕が見える。
「「「ッ…!!!」」」
そして、一同はこの惨状を見て、絶句する。
一方、驚嘆したのは白鳥組の面々も同じだ。
「おやおや、これはこれは…」
「え、ちょ⁈なんすか⁈今からバトルっすか⁈聞いてねーっすよ!」
「桜田…何故ここに…」
芝見川,前田,一善の順に、それぞれ驚きの声を発した。しかし、時和は有野を犯す事に夢中なのか、見向きもしない。
「京香ッ!!!」
それに気づいた友田は有野を助けるべく、時和に向かって走り出そうとした。しかし、それをヤブ助が止める。
「止めないでよ!京香が!」
「今はやめろ。下手に動けば、全員死ぬぞ。」
「でも…」
友田は有野の方を見た。しかし、友田はすぐさま、見るに堪えないその光景から目を逸らした。
そして再度、陽道が石川に話しかけた。
「手遅れって、コレの事かぁ?」
「えぇ。どうやらコイツら、結託して白鳥組と殺り合うみたいです。」
「おもしれぇ。いっそ、全面戦争と行くか?あ?」
陽道のその発言を聞き、白鳥組の面々はPSIを纏い、構えた。有野を犯す事に夢中だった時和も、行為を中断し、PSIを纏って桜田達の方を向いた。
「のっふぉ~!それゃいいぞい!戦利品はそのピチピチボデーといったところかのぉ!」
やる気満々の白鳥組。それを悟ったヤブ助や桜田達も、PSIを纏い、構えた。
しかし、そんな彼らに待ったをかけたのは、やはり石川だ。
「やめておきましょう。お互い。これで十分。ココで殺り合うのはどちらにとっても得策じゃない。」
その発言をよく思わなかったのか、陽道は殺気を放ちながら石川に話しかける。
「石川、テメェ…買われたんじゃねぇだろうな?」
「まさか。裏切りなんて親不孝な事はしません。それに、そんな事すれば、この先この国で生きていけない。俺がこんなバカな事するとお思いですか?」
会話を聞くに、石川は白鳥組の人間だ。そして、ヤブ助達を助けようとする石川に疑問を持った陽道は、石川の裏切りを疑ったのだ。
石川は説得を続ける。
「合理性の問題です。ココで殺り合えば、勝つのは当然白鳥組。しかし、敵には桜田がいる。白鳥組も無傷じゃ済まない。何人かは死ぬ事になるでしょう。外へ向かう為に有能な人員が必要だというのに、今この場で失うのは良くないと思いませんか?組長。」
陽道は無言だ。話を続けろ、といった感じであろう。それを察し、石川は話を続ける。
「わかってます。ボスの方針『出る杭は打つ』ですよね。その点は任せてください。」
すると、それを聞いた陽道は興味ありげに石川に尋ねた。
「ほぅ?具体的には?」
「少しツテがありまして。もう依頼しました。今頃は本部で待機してるでしょう。」
「ツテぇ?」
「『Zoo』です。」
それを聞いた白鳥組の面々の顔つきが変わった。
「まさか、『Zoo』を出してくるとは…」
「ヤバいっすね!石川くん!」
しかし、芝見川はそれをわかっていないようで、師である時和に尋ねた。
「お師匠。『ずぅー』とは一体?」
「伝説の暗殺組織。任務達成率はほぼ100%で、証拠も残さん。というか、居るかどうかもわからん都市伝説レベルの話じゃて。しかし、彼奴…若いのにやりよる。『Zoo』と連絡を取れるとはのぉ~。」
石川は陽道に話を続けた。
「プロに任せましょう。きっと、その方がスマートに、かつ、合理的に事は済むはずです。」
【現在…】
ガイはヤブ助から話を聞いている。
「その後、奴ら白鳥組はその場から引いた。いや、手を引いてくれたと言うのが妥当か。石川の助けでな。」
それを聞いた石川が話に介入する。
「あまり褒めるな。さっきも言った通り、コレは一時凌ぎに過ぎないんだ。後はガイ、お前がなんとかしろ。」
その時、執事長の十谷は石川に尋ねた。
「その『Zoo』の殺し屋とやらは、いつ、ガイ様を狙いに来るんですか?」
「さぁな。俺にもわからん。だが、そう遠くない。数日後…俺の見立てだと、1週間以内だろう。」
すると、石川は病室のドアに手をかけた。
「おそらく、以降はお前と連絡は取れない。怪しまれるからな。」
部屋から去ろうとする石川。そんな石川をガイは呼び止める。
「石川、お前…何がしたいんだ…?」
ガイは石川の行動が奇怪に思えて仕方なかった。話を聞くに、石川は白鳥組の人間。そんな石川が何故、仲間を裏切るような真似をしてまで自分を助けるのか。
「俺は白鳥組参謀、兼、障坂ガイの監視役。9年前からずっとな。」
そう。石川はガイが幼稚園年少の時からずっと、白鳥組として任務を全うしていたのだ。石川とガイは幼稚園からの幼馴染。しかし、特に親しかった訳ではない。それら全て、白鳥組に仕組まれていた事なのだ。
「お前を助けたのは、情が移ったからじゃない。もっと合理的な理由だ。」
「合理的…?」
すると、石川は自身の頭に人差し指を突き立てた。
「理解しろ。そう親父に教わったんじゃないのか?」
そう言い残すと、石川は病室を出た。
「理解……」
ガイは父親に言われた言葉を思い出した。
〈人は考える事をやめれば『成長』はしなくなる。悩め。考えろ。そして『理解』しろ。その為なら、俺はお前へのどんな奉仕でも惜しまない。〉
そう。あの石川の発言、それはまるでガイの父親と瓜二つ。つまり、石川はガイの父親の影響を強く受けているという事。
そして、ガイはある結論に至った。
「石川は…親父の……」
その時、ガイの頭に一瞬、電気が走ったかのような痛みが生じた。
「ッ……」
それと同時に、身に覚えの無い記憶がフラッシュバックする。見知らぬ仲間達と神殿のような場所で何か行っている。
「(なんだ…今の…)」
【3日後(12月17日)、山口の通夜にて…】
通夜には、山口の祖父母、クラスメートや学校の先生などが参列していた。
「…」
ガイは山口の遺体の顔を見て、本当に死んでしまったのだと実感する。
「(どうして…俺なんかの為に…)」
1周目世界、山口は自身の好奇心故に、仲間を危険に巻き込み、見殺しにした。ガイを助けたいという気持ちはあっただろうが、おそらくその負い目こそが、山口に自己犠牲を走らせた所以だ。しかし、その事実はこの世界の誰にも分からない。
「……」
ガイは山口の祖父母の姿を見た。彼らは絶えず涙を流しながら、山口の遺体に優しく触れている。
ガイは目を逸らした。
【その夜、山口家、庭にて…】
ガイは通夜の後、ヤブ助,堺,広瀬,友田と共に、既にヤブ助達によって庭に埋葬された白マロとチビマルの墓に手を合わせていた。
「(白マロ、チビマル…ごめん…)」
ガイは心の中で二匹に謝った。そして、謝意を込める祈りを送るのは、ガイだけではない。
「(すまない……)」
ヤブ助だ。ヤブ助はガイを助けるべく、二匹を巻き込んだ。その負い目はガイ以上だろう。
その時、ガイは友田に尋ねた。
「有野は…?」
「分からない。」
「そうか…」
有野は通夜には来なかった。おそらく、明日の葬式も参列はできないだろう。あの惨状を見たガイ達にとって、それは容易に察せられた。
【その日の帰り道、住宅街にて…】
ガイとヤブ助は家に向かって歩いていた。
「なぁ、ヤブ助。」
「何だ。」
「俺たち、元の生活に戻れるかな…」
「…」
数秒の間が空く。山口が死に、有野は深く心が傷ついた。おそらく、前のような関係に戻る事は難しいだろう。
「大丈夫だ。時間はかかるだろうが、きっとまた、笑って暮らせるようになる。」
「そう…だな…」
「その前に、『Zoo』とやらを返り討ちにしてやろうぜ。」
「だな。」
そう返答したガイの表情は笑顔だった。しかし、それは明らかに作り笑いだ。不安を誤魔化す為、自らを騙す為の演技。余裕だと思い込まなければ、負い目でどうにかなってしまいそうだったのだ。
「なんか、疲れたな…」
ヤブ助は聞こえないフリをした。
病室のベッドに座るガイ。その側にヤブ助,十谷,村上、そして、石川の姿があった。
ヤブ助はガイに話を続ける。
「その後、桜田は園に戻ってきた。そして、桜田は降伏と協定を申し出た。」
【昨日、19:25、猪頭愛児園、庭にて…】
園内の庭で桜田は猪頭とヤブ助に事情を話した。
「散々ひどい事した挙句、それは虫が良すぎるんじゃないかな?桜田くん。」
猪頭がそう言った次の瞬間、ヤブ助は桜田を殴り倒した。
「ぐあッ…!!!」
ヤブ助は桜田に馬乗りになり、桜田の顔面を何度も何度も殴った。
「…」
猪頭は何も言わない。桜田がガイを拷問した事、その報いだ。猪頭はそう思っている。しかし、30発ほど殴った頃、猪頭は流石に止めた。
「ちょっとストップ。死んじゃうから。」
「殺すつもりだったからな。」
ヤブ助は桜田の上から退き、猪頭はタレントで桜田を治癒した。切断された左腕すらも。
その時、ヤブ助は桜田に言った。
「ガイを助ける為だ。協力はする。だが仲間になるつもりはない。」
「あぁ…それで…いい……」
【20:10、出口邸前にて…】
出口邸の前には、連絡役の堺と友田、戦いを終えて合流した山尾兄弟と広瀬が。しかし、彼らは神妙な面持ちで一人の少年の話を聞いている。それが石川だ。
「おい、誰だそいつ…?」
ヤブ助は石川に話しかけた。すると、石川はまるで、ちょうどこの時間にヤブ助と桜田が来る事を知っていたかのように振る舞う。
「話をしている時間はない、ヤブ助、桜田。ガイを殺されたくなかったら協力しろ。」
「は…?」
ヤブ助は現状が理解できない。しかし、石川はヤブ助にやや命令っぽく、話を続けた。
「俺的にも、ガイには…いや、雷世には、まだ死んでもらっては困る。」
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その時、ソファでふんぞり返る陽道が石川に話しかけた。
「よぉ、石川。どうした?」
「手遅れだったようです。ボス。」
「あ?手遅れ?何がだ?」
すると次の瞬間、人間化したヤブ助,堺,広瀬,友田,山尾兄弟,桜田,土狛江,裏日戸の計九人が勢いよく応接間へと入ってきた。土狛江と裏日戸は白鳥組に囚われていたのか、拷問の痕が見える。
「「「ッ…!!!」」」
そして、一同はこの惨状を見て、絶句する。
一方、驚嘆したのは白鳥組の面々も同じだ。
「おやおや、これはこれは…」
「え、ちょ⁈なんすか⁈今からバトルっすか⁈聞いてねーっすよ!」
「桜田…何故ここに…」
芝見川,前田,一善の順に、それぞれ驚きの声を発した。しかし、時和は有野を犯す事に夢中なのか、見向きもしない。
「京香ッ!!!」
それに気づいた友田は有野を助けるべく、時和に向かって走り出そうとした。しかし、それをヤブ助が止める。
「止めないでよ!京香が!」
「今はやめろ。下手に動けば、全員死ぬぞ。」
「でも…」
友田は有野の方を見た。しかし、友田はすぐさま、見るに堪えないその光景から目を逸らした。
そして再度、陽道が石川に話しかけた。
「手遅れって、コレの事かぁ?」
「えぇ。どうやらコイツら、結託して白鳥組と殺り合うみたいです。」
「おもしれぇ。いっそ、全面戦争と行くか?あ?」
陽道のその発言を聞き、白鳥組の面々はPSIを纏い、構えた。有野を犯す事に夢中だった時和も、行為を中断し、PSIを纏って桜田達の方を向いた。
「のっふぉ~!それゃいいぞい!戦利品はそのピチピチボデーといったところかのぉ!」
やる気満々の白鳥組。それを悟ったヤブ助や桜田達も、PSIを纏い、構えた。
しかし、そんな彼らに待ったをかけたのは、やはり石川だ。
「やめておきましょう。お互い。これで十分。ココで殺り合うのはどちらにとっても得策じゃない。」
その発言をよく思わなかったのか、陽道は殺気を放ちながら石川に話しかける。
「石川、テメェ…買われたんじゃねぇだろうな?」
「まさか。裏切りなんて親不孝な事はしません。それに、そんな事すれば、この先この国で生きていけない。俺がこんなバカな事するとお思いですか?」
会話を聞くに、石川は白鳥組の人間だ。そして、ヤブ助達を助けようとする石川に疑問を持った陽道は、石川の裏切りを疑ったのだ。
石川は説得を続ける。
「合理性の問題です。ココで殺り合えば、勝つのは当然白鳥組。しかし、敵には桜田がいる。白鳥組も無傷じゃ済まない。何人かは死ぬ事になるでしょう。外へ向かう為に有能な人員が必要だというのに、今この場で失うのは良くないと思いませんか?組長。」
陽道は無言だ。話を続けろ、といった感じであろう。それを察し、石川は話を続ける。
「わかってます。ボスの方針『出る杭は打つ』ですよね。その点は任せてください。」
すると、それを聞いた陽道は興味ありげに石川に尋ねた。
「ほぅ?具体的には?」
「少しツテがありまして。もう依頼しました。今頃は本部で待機してるでしょう。」
「ツテぇ?」
「『Zoo』です。」
それを聞いた白鳥組の面々の顔つきが変わった。
「まさか、『Zoo』を出してくるとは…」
「ヤバいっすね!石川くん!」
しかし、芝見川はそれをわかっていないようで、師である時和に尋ねた。
「お師匠。『ずぅー』とは一体?」
「伝説の暗殺組織。任務達成率はほぼ100%で、証拠も残さん。というか、居るかどうかもわからん都市伝説レベルの話じゃて。しかし、彼奴…若いのにやりよる。『Zoo』と連絡を取れるとはのぉ~。」
石川は陽道に話を続けた。
「プロに任せましょう。きっと、その方がスマートに、かつ、合理的に事は済むはずです。」
【現在…】
ガイはヤブ助から話を聞いている。
「その後、奴ら白鳥組はその場から引いた。いや、手を引いてくれたと言うのが妥当か。石川の助けでな。」
それを聞いた石川が話に介入する。
「あまり褒めるな。さっきも言った通り、コレは一時凌ぎに過ぎないんだ。後はガイ、お前がなんとかしろ。」
その時、執事長の十谷は石川に尋ねた。
「その『Zoo』の殺し屋とやらは、いつ、ガイ様を狙いに来るんですか?」
「さぁな。俺にもわからん。だが、そう遠くない。数日後…俺の見立てだと、1週間以内だろう。」
すると、石川は病室のドアに手をかけた。
「おそらく、以降はお前と連絡は取れない。怪しまれるからな。」
部屋から去ろうとする石川。そんな石川をガイは呼び止める。
「石川、お前…何がしたいんだ…?」
ガイは石川の行動が奇怪に思えて仕方なかった。話を聞くに、石川は白鳥組の人間。そんな石川が何故、仲間を裏切るような真似をしてまで自分を助けるのか。
「俺は白鳥組参謀、兼、障坂ガイの監視役。9年前からずっとな。」
そう。石川はガイが幼稚園年少の時からずっと、白鳥組として任務を全うしていたのだ。石川とガイは幼稚園からの幼馴染。しかし、特に親しかった訳ではない。それら全て、白鳥組に仕組まれていた事なのだ。
「お前を助けたのは、情が移ったからじゃない。もっと合理的な理由だ。」
「合理的…?」
すると、石川は自身の頭に人差し指を突き立てた。
「理解しろ。そう親父に教わったんじゃないのか?」
そう言い残すと、石川は病室を出た。
「理解……」
ガイは父親に言われた言葉を思い出した。
〈人は考える事をやめれば『成長』はしなくなる。悩め。考えろ。そして『理解』しろ。その為なら、俺はお前へのどんな奉仕でも惜しまない。〉
そう。あの石川の発言、それはまるでガイの父親と瓜二つ。つまり、石川はガイの父親の影響を強く受けているという事。
そして、ガイはある結論に至った。
「石川は…親父の……」
その時、ガイの頭に一瞬、電気が走ったかのような痛みが生じた。
「ッ……」
それと同時に、身に覚えの無い記憶がフラッシュバックする。見知らぬ仲間達と神殿のような場所で何か行っている。
「(なんだ…今の…)」
【3日後(12月17日)、山口の通夜にて…】
通夜には、山口の祖父母、クラスメートや学校の先生などが参列していた。
「…」
ガイは山口の遺体の顔を見て、本当に死んでしまったのだと実感する。
「(どうして…俺なんかの為に…)」
1周目世界、山口は自身の好奇心故に、仲間を危険に巻き込み、見殺しにした。ガイを助けたいという気持ちはあっただろうが、おそらくその負い目こそが、山口に自己犠牲を走らせた所以だ。しかし、その事実はこの世界の誰にも分からない。
「……」
ガイは山口の祖父母の姿を見た。彼らは絶えず涙を流しながら、山口の遺体に優しく触れている。
ガイは目を逸らした。
【その夜、山口家、庭にて…】
ガイは通夜の後、ヤブ助,堺,広瀬,友田と共に、既にヤブ助達によって庭に埋葬された白マロとチビマルの墓に手を合わせていた。
「(白マロ、チビマル…ごめん…)」
ガイは心の中で二匹に謝った。そして、謝意を込める祈りを送るのは、ガイだけではない。
「(すまない……)」
ヤブ助だ。ヤブ助はガイを助けるべく、二匹を巻き込んだ。その負い目はガイ以上だろう。
その時、ガイは友田に尋ねた。
「有野は…?」
「分からない。」
「そうか…」
有野は通夜には来なかった。おそらく、明日の葬式も参列はできないだろう。あの惨状を見たガイ達にとって、それは容易に察せられた。
【その日の帰り道、住宅街にて…】
ガイとヤブ助は家に向かって歩いていた。
「なぁ、ヤブ助。」
「何だ。」
「俺たち、元の生活に戻れるかな…」
「…」
数秒の間が空く。山口が死に、有野は深く心が傷ついた。おそらく、前のような関係に戻る事は難しいだろう。
「大丈夫だ。時間はかかるだろうが、きっとまた、笑って暮らせるようになる。」
「そう…だな…」
「その前に、『Zoo』とやらを返り討ちにしてやろうぜ。」
「だな。」
そう返答したガイの表情は笑顔だった。しかし、それは明らかに作り笑いだ。不安を誤魔化す為、自らを騙す為の演技。余裕だと思い込まなければ、負い目でどうにかなってしまいそうだったのだ。
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