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第2章『ガイ-過去編-』
第91障『バケモノの所以』
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【3月10日、夜、戸楽市、廃工場内、貯水池前にて…】
地面に仰向けで倒れるホールド。そんなホールドの上に乗り、彼の首を掴むガイ。
「トドメは刺さんのか…?」
「アンタと同じだよ。」
その時、なんとガイはあろう事か、ホールドの首から手を離し、上から退いた。
「殺す理由が無い。」
ガイはホールドの横に座った。ホールドは地面に倒れたまま、ガイと話をする。
「それはおかしい。さっきまで、あんなに殺気剥き出しだっただろ。」
「そのくらいの覇気がないとアンタの相手は務まらないだろ。殺意の加減が難しいんだ。」
なんと、ガイはホールドを殺すつもりはなかったのだ。それは何故か。
「アンタを殺さない理由は二つある。一つ目、俺ん所の使用人が二人、お前が攻めてきたあの日に行方不明になった。その手がかりを聞き出す為。二つ目、アンタが悪人じゃないから。」
「何を言う。俺は殺し屋だ。」
「人を殺せないのにか?」
「……」
ホールドは口を閉ざした。本当に、人を殺せないのか。
「アンタ、向いてないんじゃないの?なんで殺し屋なんか…」
その時、ホールドは体を起こし、あぐらをかいた。
「奪われたからだ。」
ガイは首を傾げる。ホールドは話を続けた。
「俺の家族は『Zoo』に殺された。標的にされた父は一瞬で頸椎を撥ねられ、母と姉はその殺し屋の暇潰しに強姦され、末に殺された。俺はそれを見ていた。クローゼットの隙間から。」
明かされたホールドの壮絶な過去。ガイは黙ってホールドの話を聞く。
「その日、俺は孤児になった。そして皮肉な事に、俺は家族の仇である『Zoo』に拾われ、育てられ、自らも『Zoo』の殺し屋になった。最初は嫌悪と怒りで吐きそうだった。だが、ある日から考えが変わった。今度は、俺が奪う側に回ればいいんだと。」
【ホールドの回想…】
俺の初仕事だ。とある金持ちの屋敷に忍び込み、そこの主人を暗殺する事。正直、楽勝だと思っていた。アレが来るまでは。
「だれ…?」
そこの主人の息子だ。運悪く、俺がターゲットを始末したタイミングで現れた。
「父さんの部屋で何してるの…?」
俺はその子供を殺す為、その頭を鷲掴みにした。少し力を入れるだけで、コイツの頭は弾け飛ぶ。文字通り、赤子の手を捻るぐらい簡単な事だ。
しかし、俺はできなかった。あの日の光景と重ねてしまったからだ。
〈この子は…俺だ。〉
俺が少し力を加えれば、人間は死ぬ。簡単だ。しかし、いとも簡単なその行為の重さに気づいた時、俺は目を開く事ができなくなっていた。
次、目を開けた時、少年は肉塊に代わっていた。俺が殺したんだ。罪の重さから目を逸らして。
【現在…】
「それ以降、人を殺す時、俺は目を閉じてきた。しかし、いつしかそれも出来なくなっていた。俺はもう、殺し屋なんかじゃない。罪から逃れようとしているだけの、ただの罪人だ。」
その時、ホールドはガイの名を呼んだ。
「障坂。お前、俺がバケモンだと言ったな。」
「あぁ。」
「それは違う。バケモンってものは、この行為を軽く捉えられる奴らの事だ。」
ホールドはガイの目を見てこう言った。
「罪人からのアドバイスだ。障坂ガイ。お前は、そんなバケモンなんかになるんじゃないぞ。」
ホールドの言葉はガイの心に響いた。それ程までに重く、念が深かったからだ。
そして、ガイはホールドに尋ねる。
「俺の使用人二人は今どこに居る。」
「おそらく、ココから北西方向にある平塚水棟病院だ。今は廃病院になっている。」
「廃病院…?なんでそんな所に…?」
「フリートという毒を操る奴が居て、奴はそこで日々、毒の研究を行なっている。アイツあの日、俺の後をつけてきていたからな。おこぼれの実験体が欲しかったんだろう。」
ガイは地面から立ち上がった。そんなガイにホールドは言った。
「フリートは実験体の扱いが丁寧だ。三ヶ月経っているが、まだ生きている可能性は高い。」
「わかった。ありがとう、ホールド。」
ガイは工場の手口に向かって歩き始めた。その後ろ姿をホールドは見ている。
「(ありがとう、か…)」
数十年、言われてこなかった感謝の言葉。皮肉や社交辞令ではない。心からのありがとうを。ホールドはしみじみ感じていた。
「おい。」
その時、ガイがホールドの方を振り返り、話しかけた。
「お前、俺の仲間になる気はないか?」
「は…?」
ガイの突拍子もない発言に、ホールドは困惑した。
「お前、何言ってる…正気か…?」
「うん。だってお前、味方の情報吐いたし、タダじゃ済まないだろ。どうせ裏切り者になるんだったら俺側つけよ。腕も治してやるぞ。」
ホールドはガイの言っている事が信じられないでいた。
「何故、俺なんかを…?」
「強いから。今はとにかく戦力が欲しい。」
「それだけ…?本当に、それだけで…こんな俺みたいな殺人鬼を…?」
「大した問題じゃない。」
その時、ガイはホールドに手を差し伸べた。
「俺たちの仲間になれ。ホールド。」
「……」
ホールドはガイの手を掴んだ。
「まったく、イカれたガキだ。」
「どうも。筋肉おばけ。」
ホールドが仲間になった。
「じゃあ早速、その廃病院って所に…」
次の瞬間、ホールドの首元に何かが刺さった。
「ッ………」
ホールドは地面に倒れた。
「ホールドッ⁈」
ガイはホールドの体を担ぎ、建物内へと避難した。
【廃工場から約5km地点、とある鉄塔にて…】
『Zoo』の殺し屋、ロイが銃身がとても長いライフルを構えている。どうやら、ホールドを撃ったのは彼女のようだ。
「ホールド、裏切り。抹殺、対象。」
【廃工場屋内にて…】
ガイは物陰に隠れ、ホールドの体を揺さぶる。
「おい!ホールド!起きろ!おい!」
しかし、ホールドの体は硬直して指一本動かせていない。
「(毒か…)」
ガイはホールドの首に刺さった針型弾を抜き取った。そして、スマホを取り出し、ヤブ助に電話をかけた。
「ヤブ助!まずい!もう一人いた!」
〈あぁ。わかってる。全部見ていた。〉
【廃工場近くのビル、屋上にて…】
人間の姿のヤブ助がスマホ片手に遠くを眺めている。
「こっちは俺に任せろ。ガイ、お前はそこで待機だ。もうすぐ氷室と堺がそっちへ到着する。まずは怪我を治せ。」
すると、ヤブ助は電話を切った。
「すまないな、山尾。交次郎の仇、俺が打たせてもらう。」
ヤブ助は猫化した。
「(弾道からある程度、敵の位置は予測できた。あとは、どれだけ奴に近づけるかが鍵…)」
すると、ヤブ助は全身に漲るようなPSIを纏い、姿勢を丸くした。
「(対象までの距離、約5km。三分…いや、二分だ。)」
ヤブ助は全身にさらにPSIを纏い、前後の足に力を込める。
「(全てのエネルギーを、推進力に変えてッ!!!)」
次の瞬間、ヤブ助はとてつもない速さでビルの屋上から飛び出した。その速さは、なんと時速150km。ヤブ助はそのスピードを維持したまま、高層ビルを伝い、ロイの元まで一直線で走った。
【鉄塔にて…】
5km先の鉄塔では、ロイが肉眼でヤブ助の姿を捉えていた。
「なにか、来る。」
ロイは猛スピードでビルを飛び越え、こちらに向かってくる異質な猫の存在を危惧した。
「対象、変更、猫。」
ロイはヤブ助に向けて弾丸を放った。
【ビルの屋上にて…】
時速150kmを維持し、ビルを飛び続けるヤブ助の元へ、ロイの弾丸が飛んできた。
「遅いッ!!!」
ヤブ助は速度を保ったまま体を捻り、空中でその弾丸を回避した。
【鉄塔にて…】
ロイは肉眼で様子を伺う。
「命中、成らず。」
すると、ロイはライフル銃を肩に背負い、鉄塔を飛び降りた。
「現在地、撃墜、不可。」
ロイはまるでジャングルの猿のように、器用に鉄塔を降りていく。
「強敵、出現。スタイル、変更。」
そして、地上に置いてあったバイクに乗った。
「GOOD。」
地面に仰向けで倒れるホールド。そんなホールドの上に乗り、彼の首を掴むガイ。
「トドメは刺さんのか…?」
「アンタと同じだよ。」
その時、なんとガイはあろう事か、ホールドの首から手を離し、上から退いた。
「殺す理由が無い。」
ガイはホールドの横に座った。ホールドは地面に倒れたまま、ガイと話をする。
「それはおかしい。さっきまで、あんなに殺気剥き出しだっただろ。」
「そのくらいの覇気がないとアンタの相手は務まらないだろ。殺意の加減が難しいんだ。」
なんと、ガイはホールドを殺すつもりはなかったのだ。それは何故か。
「アンタを殺さない理由は二つある。一つ目、俺ん所の使用人が二人、お前が攻めてきたあの日に行方不明になった。その手がかりを聞き出す為。二つ目、アンタが悪人じゃないから。」
「何を言う。俺は殺し屋だ。」
「人を殺せないのにか?」
「……」
ホールドは口を閉ざした。本当に、人を殺せないのか。
「アンタ、向いてないんじゃないの?なんで殺し屋なんか…」
その時、ホールドは体を起こし、あぐらをかいた。
「奪われたからだ。」
ガイは首を傾げる。ホールドは話を続けた。
「俺の家族は『Zoo』に殺された。標的にされた父は一瞬で頸椎を撥ねられ、母と姉はその殺し屋の暇潰しに強姦され、末に殺された。俺はそれを見ていた。クローゼットの隙間から。」
明かされたホールドの壮絶な過去。ガイは黙ってホールドの話を聞く。
「その日、俺は孤児になった。そして皮肉な事に、俺は家族の仇である『Zoo』に拾われ、育てられ、自らも『Zoo』の殺し屋になった。最初は嫌悪と怒りで吐きそうだった。だが、ある日から考えが変わった。今度は、俺が奪う側に回ればいいんだと。」
【ホールドの回想…】
俺の初仕事だ。とある金持ちの屋敷に忍び込み、そこの主人を暗殺する事。正直、楽勝だと思っていた。アレが来るまでは。
「だれ…?」
そこの主人の息子だ。運悪く、俺がターゲットを始末したタイミングで現れた。
「父さんの部屋で何してるの…?」
俺はその子供を殺す為、その頭を鷲掴みにした。少し力を入れるだけで、コイツの頭は弾け飛ぶ。文字通り、赤子の手を捻るぐらい簡単な事だ。
しかし、俺はできなかった。あの日の光景と重ねてしまったからだ。
〈この子は…俺だ。〉
俺が少し力を加えれば、人間は死ぬ。簡単だ。しかし、いとも簡単なその行為の重さに気づいた時、俺は目を開く事ができなくなっていた。
次、目を開けた時、少年は肉塊に代わっていた。俺が殺したんだ。罪の重さから目を逸らして。
【現在…】
「それ以降、人を殺す時、俺は目を閉じてきた。しかし、いつしかそれも出来なくなっていた。俺はもう、殺し屋なんかじゃない。罪から逃れようとしているだけの、ただの罪人だ。」
その時、ホールドはガイの名を呼んだ。
「障坂。お前、俺がバケモンだと言ったな。」
「あぁ。」
「それは違う。バケモンってものは、この行為を軽く捉えられる奴らの事だ。」
ホールドはガイの目を見てこう言った。
「罪人からのアドバイスだ。障坂ガイ。お前は、そんなバケモンなんかになるんじゃないぞ。」
ホールドの言葉はガイの心に響いた。それ程までに重く、念が深かったからだ。
そして、ガイはホールドに尋ねる。
「俺の使用人二人は今どこに居る。」
「おそらく、ココから北西方向にある平塚水棟病院だ。今は廃病院になっている。」
「廃病院…?なんでそんな所に…?」
「フリートという毒を操る奴が居て、奴はそこで日々、毒の研究を行なっている。アイツあの日、俺の後をつけてきていたからな。おこぼれの実験体が欲しかったんだろう。」
ガイは地面から立ち上がった。そんなガイにホールドは言った。
「フリートは実験体の扱いが丁寧だ。三ヶ月経っているが、まだ生きている可能性は高い。」
「わかった。ありがとう、ホールド。」
ガイは工場の手口に向かって歩き始めた。その後ろ姿をホールドは見ている。
「(ありがとう、か…)」
数十年、言われてこなかった感謝の言葉。皮肉や社交辞令ではない。心からのありがとうを。ホールドはしみじみ感じていた。
「おい。」
その時、ガイがホールドの方を振り返り、話しかけた。
「お前、俺の仲間になる気はないか?」
「は…?」
ガイの突拍子もない発言に、ホールドは困惑した。
「お前、何言ってる…正気か…?」
「うん。だってお前、味方の情報吐いたし、タダじゃ済まないだろ。どうせ裏切り者になるんだったら俺側つけよ。腕も治してやるぞ。」
ホールドはガイの言っている事が信じられないでいた。
「何故、俺なんかを…?」
「強いから。今はとにかく戦力が欲しい。」
「それだけ…?本当に、それだけで…こんな俺みたいな殺人鬼を…?」
「大した問題じゃない。」
その時、ガイはホールドに手を差し伸べた。
「俺たちの仲間になれ。ホールド。」
「……」
ホールドはガイの手を掴んだ。
「まったく、イカれたガキだ。」
「どうも。筋肉おばけ。」
ホールドが仲間になった。
「じゃあ早速、その廃病院って所に…」
次の瞬間、ホールドの首元に何かが刺さった。
「ッ………」
ホールドは地面に倒れた。
「ホールドッ⁈」
ガイはホールドの体を担ぎ、建物内へと避難した。
【廃工場から約5km地点、とある鉄塔にて…】
『Zoo』の殺し屋、ロイが銃身がとても長いライフルを構えている。どうやら、ホールドを撃ったのは彼女のようだ。
「ホールド、裏切り。抹殺、対象。」
【廃工場屋内にて…】
ガイは物陰に隠れ、ホールドの体を揺さぶる。
「おい!ホールド!起きろ!おい!」
しかし、ホールドの体は硬直して指一本動かせていない。
「(毒か…)」
ガイはホールドの首に刺さった針型弾を抜き取った。そして、スマホを取り出し、ヤブ助に電話をかけた。
「ヤブ助!まずい!もう一人いた!」
〈あぁ。わかってる。全部見ていた。〉
【廃工場近くのビル、屋上にて…】
人間の姿のヤブ助がスマホ片手に遠くを眺めている。
「こっちは俺に任せろ。ガイ、お前はそこで待機だ。もうすぐ氷室と堺がそっちへ到着する。まずは怪我を治せ。」
すると、ヤブ助は電話を切った。
「すまないな、山尾。交次郎の仇、俺が打たせてもらう。」
ヤブ助は猫化した。
「(弾道からある程度、敵の位置は予測できた。あとは、どれだけ奴に近づけるかが鍵…)」
すると、ヤブ助は全身に漲るようなPSIを纏い、姿勢を丸くした。
「(対象までの距離、約5km。三分…いや、二分だ。)」
ヤブ助は全身にさらにPSIを纏い、前後の足に力を込める。
「(全てのエネルギーを、推進力に変えてッ!!!)」
次の瞬間、ヤブ助はとてつもない速さでビルの屋上から飛び出した。その速さは、なんと時速150km。ヤブ助はそのスピードを維持したまま、高層ビルを伝い、ロイの元まで一直線で走った。
【鉄塔にて…】
5km先の鉄塔では、ロイが肉眼でヤブ助の姿を捉えていた。
「なにか、来る。」
ロイは猛スピードでビルを飛び越え、こちらに向かってくる異質な猫の存在を危惧した。
「対象、変更、猫。」
ロイはヤブ助に向けて弾丸を放った。
【ビルの屋上にて…】
時速150kmを維持し、ビルを飛び続けるヤブ助の元へ、ロイの弾丸が飛んできた。
「遅いッ!!!」
ヤブ助は速度を保ったまま体を捻り、空中でその弾丸を回避した。
【鉄塔にて…】
ロイは肉眼で様子を伺う。
「命中、成らず。」
すると、ロイはライフル銃を肩に背負い、鉄塔を飛び降りた。
「現在地、撃墜、不可。」
ロイはまるでジャングルの猿のように、器用に鉄塔を降りていく。
「強敵、出現。スタイル、変更。」
そして、地上に置いてあったバイクに乗った。
「GOOD。」
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