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第2章『ガイ-過去編-』
第107障『軟体とトンツー』
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【4月1日、深夜3時、潜水艦外にて…】
潜水艦に巨体の男が張り付いている。男の名はブレス。ホールド,ロイ,フリート同様、白鳥組に雇われた六人の殺し屋の内一人。
ブレスはその身一つで水深200mを時速50kmで泳いできた。それを可能にするのはブレスの驚異的な肺活量にある。ブレスの全身の細胞は肺のような組織を結成しており、約30時間の無呼吸運動が可能。動かなければ10日は息を吸わなくても問題がない程。
「(くそお…硬えなあ…)」
ブレスは外側から潜水艦の窓を突き破ろうとしている。しかし、これは陣野自慢の潜水艦。そう簡単に破壊はできない。
「(まあいいやあ…あとはソフトに任せるう…)」
【潜水艦内、操縦室にて…】
桜田や他数名の整備士達はブレスの存在に気がついた。
「早くみんなに知らせないと…!」
桜田が操縦室を出ようとしたその時、コツコツと言う音が聞こえて来た。
「(艦壁を叩く音…外の奴が侵入しようとしているのか…)」
次の瞬間、壁の隙間から何かが飛び出して来た。
「ッ⁈」
その何かは鞭のようにしなり、桜田の背後にいた整備士の首を切断した。
「なにぃ⁈」
桜田は驚嘆した。その場にいた整備士達はパニックに陥っている。
「うわぁぁあ!!!」
「嫌だぁ!死にたくないぃい!!!」
すると次の瞬間、パニックに陥った整備士達の首、いや、頭部付近その何かによって切断された。それと同時に、桜田は口に手を押さえる。
「(音……か…)」
桜田はそれが音で攻撃してくるものだと推測した。その証拠に整備士達が攻撃を受けたのは首や頭部、つまり、発声器官の付近。
「(まずい…)」
桜田がそう思う理由。それは桜田のタレントにあった。この潜水艦という密室空間では音が反響してしまう。耳を塞ぐ事も効果が薄い。つまり、桜田の『誤謬通信』を発動した場合、自身や味方にも影響が及んでしまうのだ。
「(どうするか…)」
外ではブレスが潜水艦を殴っている。その音がコツンコツンと艦内に響く。
次の瞬間、天井からその何かが現れ、桜田の首を切り裂いた。
「かぐぁッ‼︎」
桜田はPSIを纏っていた為、首の切断は免れた。しかし、首からは大量の血が流れ出る。
「(何故…僕の居場所が…)」
桜田は音を立てていない。にも関わらず、それは正確に桜田を攻撃した。
「(もしかして…)」
しかし、桜田はすぐその答えに気づいた。そして、桜田は自身の持っていたスマホを部屋の隅へと投げ捨てた。そのすぐ後、投げ捨てたスマホから桜田の声が聞こえて来た。
〈何処にいる!〉
次の瞬間、再び壁の隙間から現れたそれは投げ捨てられた桜田のスマホを正確に攻撃する。その隙に桜田は扉を開け、ガイ達の居る部屋へと移動した。どうやら、スマホは部屋を移動する為の囮だったようだ。
【潜水艦内、ガイ達の居る部屋にて…】
首から大量の血を流した桜田がやってきた。
「秋!」
いち早く桜田に気づいた角野が彼に駆け寄る。
「何があったの⁈」
「…ぇ……ぁ…」
しかし、首を切り裂かれた為、声が出せない。
「(声が……早くみんなに知らせないと…)」
皆、桜田に気づき、彼の周りに集まる。
「ちょっと退いてください!」
氷室はタレントで桜田の治療を始めた。
「一体何が…」
その時、桜田は自身の口の前で、左右の人差し指でバツ印を作った。
「え…?」
治療を行う氷室を始め、皆は桜田のその行動の意味がよくわかっていない。しかし、一人だけその意味に気づいた。
「声を出すな!」
ガイだ。ガイは桜田の行動の意図を読み取り、皆に伝えた。その刹那、壁の隙間から再びそれが現れ、大声を上げたガイの首めがけて飛んできた。
「『靴操』!!!」
この体勢では回避できないと悟ったガイは『理解』で保存してあるチビマルのタレント『靴操』を使用し、自身の靴を操ってその何かを回避した。
「ッ……」
ガイは宙に逆さに浮いた状態で、人差し指を自身の口に当てた。
「「「ッ……」」」
ガイの仲間たちは皆、事態を把握したらしく、騒ぐものは一人もいない。しかし、整備士達は違う。ガイ達のように戦い慣れしていない彼らは、パニックに陥った。
「な、何が起こっているんだ⁈」
「敵だ!敵の攻撃だ!」
当然、壁から出てくるそれは騒ぐ整備士達を殺す。それをまずいと思うヤブ助。
「(彼らが全滅すれば、大陸へは辿り着けない…!なんとしても守らねば…)」
すると、ヤブ助は生き残った二人の整備士を殴り、気絶させた。
「(ナイス、ヤブ助。)」
ガイはヤブ助にグッチョブした。そして、ガイは土狛江にアイコンタクトを送る。
「…」
土狛江は懐から袋を取り出した。その袋に入っているものは土。土狛江の土を操るタレントで艦内の隙間に潜むそれを探るつもりだ。
その時、ガイは窓の外を見た。外ではブレスが窓を殴り続けている。
「(アイツ、ずっと殴り続けてるな…)」
次の瞬間、治療中の桜田が起き上がり、宙を浮くガイに飛びかかった。
「ッ⁈」
そのすぐ後、先程までガイが浮いていた場所に向けて壁からそれが攻撃してきた。つまり、桜田がガイを攻撃から守ったのだ。
「(俺は音を立ててない…なのに敵は俺のいた位置に向かって攻撃してきた…それを、桜田も理解していた…)」
戸惑うガイに桜田は耳打ちした。
「トンツーだ…」
それを聞いたガイは理解した。先ず、ガイ達を襲ってきたそれは人間。『Zoo』の殺し屋のソフトだ。ソフトの超軟体なら潜水艦であろうと侵入する事ができる。そして、艦内の隙間に潜み、音を聞き分けて攻撃を仕掛けてきた。ここまでは誰もが予想の範囲内。しかし何故、音を発しなかったガイを正確に狙う事ができたのか。それは外にいるブレスの仕業。ブレスは窓から中の様子を見て、敵のいる位置をトンツー、つまり、モールス信号でソフトに伝えていたのだ。その為に窓を殴り続けていたという訳だ。
その時、ガイは桜田からタブレット端末を受け取った。
「…」
ガイは理解した。そして次の瞬間、ガイはそのタブレット端末を窓の外にいるブレスに見せつけた。タブレット端末にはこう表示されていた。
〈眠れ〉
コレは桜田の『誤謬通信』だ。この画面の文字を見れば、ブレスは眠る。
「(どうだ…)」
ガイはタブレット端末の電源を切り、窓の外を見た。しかし、そこにブレスは居ない。
「(奴らも白鳥組から俺たちのタレントを聞いてる…下手なミスはしないか…)」
再び、ブレスのトンツーが聞こえる。何処からかガイ達を見ているようだ。
「(さて。どうするか…)」
潜水艦に巨体の男が張り付いている。男の名はブレス。ホールド,ロイ,フリート同様、白鳥組に雇われた六人の殺し屋の内一人。
ブレスはその身一つで水深200mを時速50kmで泳いできた。それを可能にするのはブレスの驚異的な肺活量にある。ブレスの全身の細胞は肺のような組織を結成しており、約30時間の無呼吸運動が可能。動かなければ10日は息を吸わなくても問題がない程。
「(くそお…硬えなあ…)」
ブレスは外側から潜水艦の窓を突き破ろうとしている。しかし、これは陣野自慢の潜水艦。そう簡単に破壊はできない。
「(まあいいやあ…あとはソフトに任せるう…)」
【潜水艦内、操縦室にて…】
桜田や他数名の整備士達はブレスの存在に気がついた。
「早くみんなに知らせないと…!」
桜田が操縦室を出ようとしたその時、コツコツと言う音が聞こえて来た。
「(艦壁を叩く音…外の奴が侵入しようとしているのか…)」
次の瞬間、壁の隙間から何かが飛び出して来た。
「ッ⁈」
その何かは鞭のようにしなり、桜田の背後にいた整備士の首を切断した。
「なにぃ⁈」
桜田は驚嘆した。その場にいた整備士達はパニックに陥っている。
「うわぁぁあ!!!」
「嫌だぁ!死にたくないぃい!!!」
すると次の瞬間、パニックに陥った整備士達の首、いや、頭部付近その何かによって切断された。それと同時に、桜田は口に手を押さえる。
「(音……か…)」
桜田はそれが音で攻撃してくるものだと推測した。その証拠に整備士達が攻撃を受けたのは首や頭部、つまり、発声器官の付近。
「(まずい…)」
桜田がそう思う理由。それは桜田のタレントにあった。この潜水艦という密室空間では音が反響してしまう。耳を塞ぐ事も効果が薄い。つまり、桜田の『誤謬通信』を発動した場合、自身や味方にも影響が及んでしまうのだ。
「(どうするか…)」
外ではブレスが潜水艦を殴っている。その音がコツンコツンと艦内に響く。
次の瞬間、天井からその何かが現れ、桜田の首を切り裂いた。
「かぐぁッ‼︎」
桜田はPSIを纏っていた為、首の切断は免れた。しかし、首からは大量の血が流れ出る。
「(何故…僕の居場所が…)」
桜田は音を立てていない。にも関わらず、それは正確に桜田を攻撃した。
「(もしかして…)」
しかし、桜田はすぐその答えに気づいた。そして、桜田は自身の持っていたスマホを部屋の隅へと投げ捨てた。そのすぐ後、投げ捨てたスマホから桜田の声が聞こえて来た。
〈何処にいる!〉
次の瞬間、再び壁の隙間から現れたそれは投げ捨てられた桜田のスマホを正確に攻撃する。その隙に桜田は扉を開け、ガイ達の居る部屋へと移動した。どうやら、スマホは部屋を移動する為の囮だったようだ。
【潜水艦内、ガイ達の居る部屋にて…】
首から大量の血を流した桜田がやってきた。
「秋!」
いち早く桜田に気づいた角野が彼に駆け寄る。
「何があったの⁈」
「…ぇ……ぁ…」
しかし、首を切り裂かれた為、声が出せない。
「(声が……早くみんなに知らせないと…)」
皆、桜田に気づき、彼の周りに集まる。
「ちょっと退いてください!」
氷室はタレントで桜田の治療を始めた。
「一体何が…」
その時、桜田は自身の口の前で、左右の人差し指でバツ印を作った。
「え…?」
治療を行う氷室を始め、皆は桜田のその行動の意味がよくわかっていない。しかし、一人だけその意味に気づいた。
「声を出すな!」
ガイだ。ガイは桜田の行動の意図を読み取り、皆に伝えた。その刹那、壁の隙間から再びそれが現れ、大声を上げたガイの首めがけて飛んできた。
「『靴操』!!!」
この体勢では回避できないと悟ったガイは『理解』で保存してあるチビマルのタレント『靴操』を使用し、自身の靴を操ってその何かを回避した。
「ッ……」
ガイは宙に逆さに浮いた状態で、人差し指を自身の口に当てた。
「「「ッ……」」」
ガイの仲間たちは皆、事態を把握したらしく、騒ぐものは一人もいない。しかし、整備士達は違う。ガイ達のように戦い慣れしていない彼らは、パニックに陥った。
「な、何が起こっているんだ⁈」
「敵だ!敵の攻撃だ!」
当然、壁から出てくるそれは騒ぐ整備士達を殺す。それをまずいと思うヤブ助。
「(彼らが全滅すれば、大陸へは辿り着けない…!なんとしても守らねば…)」
すると、ヤブ助は生き残った二人の整備士を殴り、気絶させた。
「(ナイス、ヤブ助。)」
ガイはヤブ助にグッチョブした。そして、ガイは土狛江にアイコンタクトを送る。
「…」
土狛江は懐から袋を取り出した。その袋に入っているものは土。土狛江の土を操るタレントで艦内の隙間に潜むそれを探るつもりだ。
その時、ガイは窓の外を見た。外ではブレスが窓を殴り続けている。
「(アイツ、ずっと殴り続けてるな…)」
次の瞬間、治療中の桜田が起き上がり、宙を浮くガイに飛びかかった。
「ッ⁈」
そのすぐ後、先程までガイが浮いていた場所に向けて壁からそれが攻撃してきた。つまり、桜田がガイを攻撃から守ったのだ。
「(俺は音を立ててない…なのに敵は俺のいた位置に向かって攻撃してきた…それを、桜田も理解していた…)」
戸惑うガイに桜田は耳打ちした。
「トンツーだ…」
それを聞いたガイは理解した。先ず、ガイ達を襲ってきたそれは人間。『Zoo』の殺し屋のソフトだ。ソフトの超軟体なら潜水艦であろうと侵入する事ができる。そして、艦内の隙間に潜み、音を聞き分けて攻撃を仕掛けてきた。ここまでは誰もが予想の範囲内。しかし何故、音を発しなかったガイを正確に狙う事ができたのか。それは外にいるブレスの仕業。ブレスは窓から中の様子を見て、敵のいる位置をトンツー、つまり、モールス信号でソフトに伝えていたのだ。その為に窓を殴り続けていたという訳だ。
その時、ガイは桜田からタブレット端末を受け取った。
「…」
ガイは理解した。そして次の瞬間、ガイはそのタブレット端末を窓の外にいるブレスに見せつけた。タブレット端末にはこう表示されていた。
〈眠れ〉
コレは桜田の『誤謬通信』だ。この画面の文字を見れば、ブレスは眠る。
「(どうだ…)」
ガイはタブレット端末の電源を切り、窓の外を見た。しかし、そこにブレスは居ない。
「(奴らも白鳥組から俺たちのタレントを聞いてる…下手なミスはしないか…)」
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