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第2章『ガイ-過去編-』
第117障『秘めたる悪魔』
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【4月1日、18:35、フリージア王国、城下町、広場にて…】
桜田達と別れた後、裏日戸は城下町をウロウロしていた。
「(桜田に言われた通り逃げてきたはいいが…)」
裏日戸は辺りを見渡す。しかし、何処にも仲間や敵らしき人物は見つからなかった。
「(土狛江とも逸れちまったし、私はこれからどうすればいいんだ?)」
裏日戸は頭を掻き、イライラしている。
「あー!くそ!戻る!」
港の方へ引き返そうとしたその時、裏日戸は背後からPSIを感じ、振り向いた。そこにはかつての仲間であり、今は敵同士となった水面の姿があった。
「何か用か…?」
「…」
「まさか、私を殺そうって言い出すんじゃないだろうな?」
「め、命令だから…そういう…」
その時、裏日戸はPSIを身に纏い、水面を睨みつけながら彼に歩み寄る。威嚇するかのように。すると、水面はその威嚇に臆したかのように数歩退く。そんな水面の姿を見た裏日戸は足を止め、鼻で笑った。
「やめとけ。お前に人は殺せねーよ。」
裏日戸は水面に背を向け、再び港の方へと向き直した。
「(こんな奴に構ってられるか。)」
裏日戸が走り出そうとしたその時、背後から女性の悲鳴が聞こえてきた。裏日戸は何が起こったのかと気になり、振り返った。
「お前…ッ⁈」
そこには、腹から血を流して倒れる子供。フリージアの市民だ。そして、血のついたナイフを手にした水面の姿。
「な、なめるなよッ…‼︎」
水面は尋常ではない冷や汗をかいていた。目は見開き、顔は強張りを誤魔化すかのように歪な笑顔を作っていた。
「殺したッ…‼︎殺せるぞッ…‼︎俺は殺ればできるんだッ‼︎裏日戸、お前だってな…‼︎」
気の弱い水面が起こしたこの暴挙。裏日戸は信じられなかった。まさか彼が無関係の子供を殺すなんて。しかもその理由が、殺害が可能な事を証明する為だけという。
「お前…自分が何したかわかってんのか…⁈」
裏日戸は怒る。そんなどうでもいい証明の為だけに、無関係な子供を殺害した事を。
「うッ……‼︎」
その時、水面に刺された子供は苦痛の声を上げる。死んではいなかったのだ。
「しまった。殺し損ねた。」
すると、水面はその少年にナイフを振り下ろした。しかし、裏日戸は水面がナイフを振り下ろすよりも早く、その少年を抱き上げ、水面から離れる。
「相変わらずガキには優しいね、見た目に反して。それともキャラ付けかなんか?自分を良い人に見せようとしてる、みたいな。あはは。きも。」
騒ぎを聞きつけた数名の兵士たちが広場にやってくる。兵士たちは状況を察したのか、水面に槍先を向け、取り囲む。しかし、水面は話を続けた。
「大学の時、散々キミに言われたっけ、きもいって…あー、なんか…思い出したら腹立ってきた…ねぇ。謝ってよ。僕に。先輩の僕にさぁ、きもいって言ってすみませんでした、って。」
裏日戸はそんな水面の話を無視して、怪我をした子供を兵士に預ける。それを見た水面は怒り、叫んだ。
「僕を無視するなッッッ!!!!!」
次の瞬間、水面は辺りの雪解け水を操作、凝縮して弾丸のように裏日戸に放った。しかし、裏日戸はPSIを纏い、それを拳で弾いた。
「お前、チキってんのか?」
「は…?」
裏日戸が水面にそう発言した。
「ホントはお前、私と戦うのが怖いんだろ?」
「な、何言って…」
「お前が手を出せるのは、せいぜい自分より弱い奴だけ。今お前の威勢がいいのは、自分より弱い奴痛めつけて優越感に浸ってるからだ。違うか?ホントは私と一対一で戦うのが死ぬほど怖いんだろ。」
図星。水面は裏日戸に心の内を言い当てられ、冷や汗を流す。そして、その真実を誤魔化すかのように強い言葉で言い返す。
「そ、そんな訳…!そんな訳ねーだろ!テメェいつまでも強がってんじゃねぇ!殺すぞ!」
弱い犬ほどよく吠える、とはまさに水面の為にあるような言葉。まるで上辺だけの水面の態度に裏日戸は怒りを覚え、叫んだ。
「じゃあ喋ってねぇで早くかかって来いやッ!!!」
「ひぐぅッ…」
水面は裏日戸の威圧に押され、情けない声が出た。一歩退く水面。その様子を見た裏日戸は呆れたようにため息をつき、水面に近づく。
「来ねぇならこっちから行くぞ。」
しかしその時、裏日戸はフリージア王国の兵士に進行を止められた。
「ダメだ近づいちゃ!奴は凶器を所持している!」
「そうだ!後は俺たちに任せなさい!」
そんな兵士達に事情を説明しようとした裏日戸。
「離せって!私は奴と…」
その時、水面は叫び声を上げた。
「ひやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああッ!!!!!」
水面は裏日戸から逃げるように広場から走り去った。
「こら!待て!」
兵士達は逃げる水面を追う。
「くそッ…!」
裏日戸も後から彼らを追った。
【18:43、フリージア王国、城下町、教会前にて…】
水面はどうやら教会へと逃げ込んだようだ。彼を追う兵士たちも既に教会内へと入っていった。裏日戸は教会前で立ち止まり、中へは入らなかった。それは何故か。
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああッ!!!!!」
教会内から無数の断末魔が響いていたからだ。そのおぞましい叫びが裏日戸の進行を止めていた。
「ッ……」
裏日戸は意を決して中へ入った。
【教会内にて…】
教会の中は血の匂いが充満しており、この世のものとは思えぬ光景が広がっていた。
「うッ…‼︎」
裏日戸はあまりの残酷に吐き気を催し、思わず手で口と鼻を押さえた。
「ハァ…ハァ…ハァ…」
血に塗れ、息を整える水面。彼の周りに転がるフリージア兵士達の死体。皆、内側から破裂したように血肉や臓物が辺りに飛散していた。裏日戸は確信した。この残酷は追い込まれた水面が起こしたのだと。
「……」
裏日戸は声が出なかった。『さっさとかかって来い』と豪語したのも束の間、裏日戸は恐怖していたのだ。今、目の前にいるのが自分の知っている水面では無い、そんな感覚を覚えていた。
数秒の沈黙。水面の息を整える音だけが響く静かな教会内。しかし、その静寂は水面の高笑いと共に吹き飛んだ。
「きぃひひひひひひひッ!!!?!?!」
変な笑い方。いや、人間の声じゃない。それを理解するまで、裏日戸は少し時間がかかった。
「ひへへへへひへハヒヒひひはははひはひへひへはひはヒハヒヘひひひヒハハははへへひへへヒヘヘヒへ!!!?!?!??!!!」
狂ったように笑い出す水面。いや、水面じゃない。笑っているのは水面ではなかったのだ。何故なら、彼の口はほんの少したりとも動いてはいなかったから。
「ヒヒヘヘハヒハヘヘハハヒハハヘヘヘハヒヘハハハヒハヒヒヒヘハヒヘハヒヒヒヘ縺阪b縺?″繧ゅ>縺ク縺ク縺阪b縺?″繧ゅ>縺ッ縺ク縺阪b」
やがて、それは声とも音とも呼べるような代物ではなくなる。そして次の瞬間、水面の顔面に亀裂が入り、裏日戸はその笑いの正体に気づいた。
「なッ…⁈」
額から顎にかけてできたその亀裂は、パックリと水面の顔面を縦に開く。そして、割れた顔の中からは人間とは程遠い化け物の顔が現れた。醜く、おぞましい顔。まるで悪魔と呼ぶに相応しい顔。その顔は笑っている。
「縺ゅ>縺?∴縺昴◆縺。縺、縺」
その時、水面は無惨に弾け散った兵士たちの死骸に貪りついた。長い舌で血を吸い取る、まるでストローでジュースを飲むかのように。大口で死体の脚にかぶりつく、まるでフライドチキンを食べるかのように。内臓を食べると、たまに歯と歯の間に皮が挟まるのか、不機嫌そうな顔でそれを爪でほじくり出す。
「ゔッ…ぐッ…‼︎」
裏日戸は催していた嫌悪感が限界に達し、その場に嘔吐した。その吐瀉物が床に落ちる音で、水面は裏日戸の存在に気づいた。
「ひぃッ‼︎」
裏日戸は水面と目が合った。いや、それはもはや水面ではない。魔物がした水面、そう、悪魔だ。
「縺輔@縺吶○縺ッ‼︎‼︎‼︎‼︎」
次の瞬間、悪魔は声にならない声で雄叫びを上げ、裏日戸に向かって四足歩行で向かってきた。
「ッ…‼︎」
裏日戸は急いで教会の出口へ向かい走り出した。
「(ココはダメだ…日の当たる外へ…‼︎)」
『日光・攻撃』は日の光が当たっている状態でしか発動できない。裏日戸は屋内へ入ってしまった事をこの上なく後悔した。しかし、どれだけ後悔してももう遅い。悪魔はものすごい勢いで裏日戸に迫り、彼女の脱出よりも早く、彼女の右足を掴んだ。
「離しやがれッ‼︎」
裏日戸はPSIを込めて、左足で悪魔の顔面めがけて蹴りを入れた。しかし、悪魔は大口を開け、蹴りを入れてきた裏日戸の左足にかぶりついた。
「あ"あ"ッ‼︎」
刃物よりも鋭い牙が裏日戸の左足首に刺さり、床に尻餅をついた。
「離せッ…‼︎」
裏日戸は左足首に噛みついた悪魔を引き剥がす為と、両手で悪魔の口をこじ開けようとする。しかし、悪魔の噛む力はどんどん強くなり、こじ開けるどころか牙は裏日戸の左足首の奥深くまで届いていく。
「離せ…‼︎離せよッ‼︎」
このままでは、左足首が切断されてしまう。恐怖と焦りで裏日戸の目から涙が溢れた。
「嫌ッ…‼︎嫌ァァッ‼︎」
そして次の瞬間、裏日戸の左足首は、悪魔の口をこじ開けようとしていた両手の指ごと、噛みちぎられた。
「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!!!!!」
左足を失った激痛と喪失感が裏日戸を襲う。それはもはや、裏日戸に戦闘の意を失わせるには十分過ぎた。
「ぁ……あぁ………」
魔物がした水面に単純な殴り合いで勝つ事は、PSIの最大容量的にも不可能。それに屋内ではタレントも使えない。逃げられない。完全に戦意喪失した裏日戸。
光の届かぬ教会の中、彼女の目から光が消えた。
桜田達と別れた後、裏日戸は城下町をウロウロしていた。
「(桜田に言われた通り逃げてきたはいいが…)」
裏日戸は辺りを見渡す。しかし、何処にも仲間や敵らしき人物は見つからなかった。
「(土狛江とも逸れちまったし、私はこれからどうすればいいんだ?)」
裏日戸は頭を掻き、イライラしている。
「あー!くそ!戻る!」
港の方へ引き返そうとしたその時、裏日戸は背後からPSIを感じ、振り向いた。そこにはかつての仲間であり、今は敵同士となった水面の姿があった。
「何か用か…?」
「…」
「まさか、私を殺そうって言い出すんじゃないだろうな?」
「め、命令だから…そういう…」
その時、裏日戸はPSIを身に纏い、水面を睨みつけながら彼に歩み寄る。威嚇するかのように。すると、水面はその威嚇に臆したかのように数歩退く。そんな水面の姿を見た裏日戸は足を止め、鼻で笑った。
「やめとけ。お前に人は殺せねーよ。」
裏日戸は水面に背を向け、再び港の方へと向き直した。
「(こんな奴に構ってられるか。)」
裏日戸が走り出そうとしたその時、背後から女性の悲鳴が聞こえてきた。裏日戸は何が起こったのかと気になり、振り返った。
「お前…ッ⁈」
そこには、腹から血を流して倒れる子供。フリージアの市民だ。そして、血のついたナイフを手にした水面の姿。
「な、なめるなよッ…‼︎」
水面は尋常ではない冷や汗をかいていた。目は見開き、顔は強張りを誤魔化すかのように歪な笑顔を作っていた。
「殺したッ…‼︎殺せるぞッ…‼︎俺は殺ればできるんだッ‼︎裏日戸、お前だってな…‼︎」
気の弱い水面が起こしたこの暴挙。裏日戸は信じられなかった。まさか彼が無関係の子供を殺すなんて。しかもその理由が、殺害が可能な事を証明する為だけという。
「お前…自分が何したかわかってんのか…⁈」
裏日戸は怒る。そんなどうでもいい証明の為だけに、無関係な子供を殺害した事を。
「うッ……‼︎」
その時、水面に刺された子供は苦痛の声を上げる。死んではいなかったのだ。
「しまった。殺し損ねた。」
すると、水面はその少年にナイフを振り下ろした。しかし、裏日戸は水面がナイフを振り下ろすよりも早く、その少年を抱き上げ、水面から離れる。
「相変わらずガキには優しいね、見た目に反して。それともキャラ付けかなんか?自分を良い人に見せようとしてる、みたいな。あはは。きも。」
騒ぎを聞きつけた数名の兵士たちが広場にやってくる。兵士たちは状況を察したのか、水面に槍先を向け、取り囲む。しかし、水面は話を続けた。
「大学の時、散々キミに言われたっけ、きもいって…あー、なんか…思い出したら腹立ってきた…ねぇ。謝ってよ。僕に。先輩の僕にさぁ、きもいって言ってすみませんでした、って。」
裏日戸はそんな水面の話を無視して、怪我をした子供を兵士に預ける。それを見た水面は怒り、叫んだ。
「僕を無視するなッッッ!!!!!」
次の瞬間、水面は辺りの雪解け水を操作、凝縮して弾丸のように裏日戸に放った。しかし、裏日戸はPSIを纏い、それを拳で弾いた。
「お前、チキってんのか?」
「は…?」
裏日戸が水面にそう発言した。
「ホントはお前、私と戦うのが怖いんだろ?」
「な、何言って…」
「お前が手を出せるのは、せいぜい自分より弱い奴だけ。今お前の威勢がいいのは、自分より弱い奴痛めつけて優越感に浸ってるからだ。違うか?ホントは私と一対一で戦うのが死ぬほど怖いんだろ。」
図星。水面は裏日戸に心の内を言い当てられ、冷や汗を流す。そして、その真実を誤魔化すかのように強い言葉で言い返す。
「そ、そんな訳…!そんな訳ねーだろ!テメェいつまでも強がってんじゃねぇ!殺すぞ!」
弱い犬ほどよく吠える、とはまさに水面の為にあるような言葉。まるで上辺だけの水面の態度に裏日戸は怒りを覚え、叫んだ。
「じゃあ喋ってねぇで早くかかって来いやッ!!!」
「ひぐぅッ…」
水面は裏日戸の威圧に押され、情けない声が出た。一歩退く水面。その様子を見た裏日戸は呆れたようにため息をつき、水面に近づく。
「来ねぇならこっちから行くぞ。」
しかしその時、裏日戸はフリージア王国の兵士に進行を止められた。
「ダメだ近づいちゃ!奴は凶器を所持している!」
「そうだ!後は俺たちに任せなさい!」
そんな兵士達に事情を説明しようとした裏日戸。
「離せって!私は奴と…」
その時、水面は叫び声を上げた。
「ひやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああッ!!!!!」
水面は裏日戸から逃げるように広場から走り去った。
「こら!待て!」
兵士達は逃げる水面を追う。
「くそッ…!」
裏日戸も後から彼らを追った。
【18:43、フリージア王国、城下町、教会前にて…】
水面はどうやら教会へと逃げ込んだようだ。彼を追う兵士たちも既に教会内へと入っていった。裏日戸は教会前で立ち止まり、中へは入らなかった。それは何故か。
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああッ!!!!!」
教会内から無数の断末魔が響いていたからだ。そのおぞましい叫びが裏日戸の進行を止めていた。
「ッ……」
裏日戸は意を決して中へ入った。
【教会内にて…】
教会の中は血の匂いが充満しており、この世のものとは思えぬ光景が広がっていた。
「うッ…‼︎」
裏日戸はあまりの残酷に吐き気を催し、思わず手で口と鼻を押さえた。
「ハァ…ハァ…ハァ…」
血に塗れ、息を整える水面。彼の周りに転がるフリージア兵士達の死体。皆、内側から破裂したように血肉や臓物が辺りに飛散していた。裏日戸は確信した。この残酷は追い込まれた水面が起こしたのだと。
「……」
裏日戸は声が出なかった。『さっさとかかって来い』と豪語したのも束の間、裏日戸は恐怖していたのだ。今、目の前にいるのが自分の知っている水面では無い、そんな感覚を覚えていた。
数秒の沈黙。水面の息を整える音だけが響く静かな教会内。しかし、その静寂は水面の高笑いと共に吹き飛んだ。
「きぃひひひひひひひッ!!!?!?!」
変な笑い方。いや、人間の声じゃない。それを理解するまで、裏日戸は少し時間がかかった。
「ひへへへへひへハヒヒひひはははひはひへひへはひはヒハヒヘひひひヒハハははへへひへへヒヘヘヒへ!!!?!?!??!!!」
狂ったように笑い出す水面。いや、水面じゃない。笑っているのは水面ではなかったのだ。何故なら、彼の口はほんの少したりとも動いてはいなかったから。
「ヒヒヘヘハヒハヘヘハハヒハハヘヘヘハヒヘハハハヒハヒヒヒヘハヒヘハヒヒヒヘ縺阪b縺?″繧ゅ>縺ク縺ク縺阪b縺?″繧ゅ>縺ッ縺ク縺阪b」
やがて、それは声とも音とも呼べるような代物ではなくなる。そして次の瞬間、水面の顔面に亀裂が入り、裏日戸はその笑いの正体に気づいた。
「なッ…⁈」
額から顎にかけてできたその亀裂は、パックリと水面の顔面を縦に開く。そして、割れた顔の中からは人間とは程遠い化け物の顔が現れた。醜く、おぞましい顔。まるで悪魔と呼ぶに相応しい顔。その顔は笑っている。
「縺ゅ>縺?∴縺昴◆縺。縺、縺」
その時、水面は無惨に弾け散った兵士たちの死骸に貪りついた。長い舌で血を吸い取る、まるでストローでジュースを飲むかのように。大口で死体の脚にかぶりつく、まるでフライドチキンを食べるかのように。内臓を食べると、たまに歯と歯の間に皮が挟まるのか、不機嫌そうな顔でそれを爪でほじくり出す。
「ゔッ…ぐッ…‼︎」
裏日戸は催していた嫌悪感が限界に達し、その場に嘔吐した。その吐瀉物が床に落ちる音で、水面は裏日戸の存在に気づいた。
「ひぃッ‼︎」
裏日戸は水面と目が合った。いや、それはもはや水面ではない。魔物がした水面、そう、悪魔だ。
「縺輔@縺吶○縺ッ‼︎‼︎‼︎‼︎」
次の瞬間、悪魔は声にならない声で雄叫びを上げ、裏日戸に向かって四足歩行で向かってきた。
「ッ…‼︎」
裏日戸は急いで教会の出口へ向かい走り出した。
「(ココはダメだ…日の当たる外へ…‼︎)」
『日光・攻撃』は日の光が当たっている状態でしか発動できない。裏日戸は屋内へ入ってしまった事をこの上なく後悔した。しかし、どれだけ後悔してももう遅い。悪魔はものすごい勢いで裏日戸に迫り、彼女の脱出よりも早く、彼女の右足を掴んだ。
「離しやがれッ‼︎」
裏日戸はPSIを込めて、左足で悪魔の顔面めがけて蹴りを入れた。しかし、悪魔は大口を開け、蹴りを入れてきた裏日戸の左足にかぶりついた。
「あ"あ"ッ‼︎」
刃物よりも鋭い牙が裏日戸の左足首に刺さり、床に尻餅をついた。
「離せッ…‼︎」
裏日戸は左足首に噛みついた悪魔を引き剥がす為と、両手で悪魔の口をこじ開けようとする。しかし、悪魔の噛む力はどんどん強くなり、こじ開けるどころか牙は裏日戸の左足首の奥深くまで届いていく。
「離せ…‼︎離せよッ‼︎」
このままでは、左足首が切断されてしまう。恐怖と焦りで裏日戸の目から涙が溢れた。
「嫌ッ…‼︎嫌ァァッ‼︎」
そして次の瞬間、裏日戸の左足首は、悪魔の口をこじ開けようとしていた両手の指ごと、噛みちぎられた。
「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!!!!!」
左足を失った激痛と喪失感が裏日戸を襲う。それはもはや、裏日戸に戦闘の意を失わせるには十分過ぎた。
「ぁ……あぁ………」
魔物がした水面に単純な殴り合いで勝つ事は、PSIの最大容量的にも不可能。それに屋内ではタレントも使えない。逃げられない。完全に戦意喪失した裏日戸。
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