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第2章『ガイ-過去編-』
第145障『長い嘘の始まり』
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【永久氷地、神殿付近にて…】
ヤブ助達はインフォイーターを倒した。しかし、皆、瀕死の状態で雪の上に倒れている。
「ヤブ…助……」
秀頼がヤブ助の名を呼んだ。
「私ハ…弟子に…恵マれタ……」
心臓と脳の一部を抉られた秀頼。もう長くない。ヤブ助はそれを悟り、秀頼の言葉を聞く。
「荷ガ重過ぎタんだ……私ナんかジャ…到底……」
秀頼は今にも泣き出しそうな声で話し続けた。
「……」
ヤブ助は自分とガイを裏切った彼女が憎かった。貶してやりたかった。しかし、今のヤブ助にそんな気は毛頭ない。
あるのはただ一つ。死する師へ、これまでの感謝。
「良イ先生ニ…成レなくテ……ごめん…な……」
猪頭秀頼。32歳。死亡。
「師よ…ゆっくりと、おやすみください…」
ヤブ助は目を閉じ、黙祷した。そして仰向けになり、ため息を吐く。
「(俺も、もうじき…)」
ヤブ助ももう長くはない。自らの死を覚悟した途端、痛みがなくなり、かえって頭が冴えた。
「(もょもと。お前がココにいるという事は、氷室はやられたんだな。回復の見込みは無し。これはもう助からんな。)」
少し離れた所で倒れるもょもとを横目に、ヤブ助はそんな事を思っていた。
「(だが、お前の一太刀のおかげで一矢報えた。素直に感謝するぞ。)」
ヤブ助の両瞼が自らの意思と関係なく閉じてゆく。冴えていた頭が眠りにつく。
「少し……眠る…か……」
「それはダメだ。」
その時、ヤブ助のすぐ側から聞き慣れた声が聞こえてきた。と同時に、ヤブ助の全身の傷が治されていく。
「どうして…⁈」
ヤブ助が目を開けると、そこにはタレントで治癒を行うガイが居た。
「目が覚めたからダッシュで来た。よくも置いてってくれたな。」
有り得ない。ガイが目覚めてからココへ来るまでの時間があまりにも短すぎる。
そして感じる、ガイの中にいるナニカの気配に。
「まさか…お前……‼︎」
ヤブ助は悟った。ガイは父親から雷世を継承したのだと。その力を使い、ここまで短時間でやってきたと。
「何故だ!せっかく奴を出し抜いたというのに!」
ヤブ助は事のあらすじを全て知っていた。ガイの転生も、雷世を出し抜く事も。それだけ、ガイはヤブ助を信頼していたのだ。そう。フリージアへ来てからの単独行動以外は。
「人は…生き返らない…」
「えっ…」
ガイはそう呟くと、秀頼の死体の方を向く。芝見川のタレントで『視る』事を封じられているにも関わらず、その素振りはまるで、秀頼の死体が視認できているようだ。
「例え、魔王の力でも…」
「そんな…」
ヤブ助も最悪の事態は考えていた。しかし、その事実を目の当たりにした時の絶望は、自らが想像していた以上に大きかった。
「人は生き返らない。」
ガイは再びそう呟くと、今度はもょもとの方へと向かい、生存を確認する。
「だから、今ある…助けられる命を助けに行こう。」
ガイはもょもとの首の傷を治癒し始めた。
「ガイ…」
助けられる命、それはつまり、魔物になった有野の事。
しかし、ヤブ助はわからなかった。ガイが雷世を受け入れた理由が。
そんな疑問に答えるかのようにガイは話し始めた。
「もう疲れたんだ。足掻けば足掻くほど、苦しむだけ。結果は変わらない。」
ガイは悲しげに笑みを浮かべ、ヤブ助に話し続ける。
「親父は最後まで抗った。強いよ、あの人は。愛する妻を奪われ、自信すらも失いながらも、懸命に抗った。息子である…いや、弟である俺を救う為。今なら尊敬できるよ。」
「弟…?何を……」
障坂巌はガイの腹違いの兄。その事実を知らないヤブ助は困惑した。
「俺はあの人みたいに強くない。ホント…もう疲れたんだ…心が折れた…だからもう、雷世に任せる事にしたんだ。一応、『理解』で保存したから、主導権は俺だけど…だけど、俺は有野を治したら、消えるつもりだ。」
それを聞き、ヤブ助は立ち上がってこう言った。
「プログラム終了の合言葉、それを聞く為に俺を助けたのか?」
「あぁ。」
プログラム。それは佐藤武夫にかけたタレント『支配プログラム挿入』の事。そして、合言葉とはそれの解除法。
ガイは予め決めていたのだ。佐藤武夫への肉体の返上方法を。そして、それを知っているのは死んでしまった本来のガイと、そのガイから教えられたヤブ助のみ。ヤブ助がその言葉を言えば、佐藤武夫の中にいるガイ、ならびに雷世は消滅する。
「頼むヤブ助。その言葉を、教えてくれないか?」
「……」
ヤブ助の答えは決まっていた。答えはNO。ガイがこの世から消えてしまう事に耐えられる訳がない。ヤブ助は首を横に振った。
「俺はまだお前と居たい…お前が消えてしまうなんて考えられない…」
「お願いだヤブ助。もう辛いんだ。消えてしまいたいんだ。」
ガイは涙を流した。胸が締め付けられる思いだった。それを見たヤブ助も。
「…わかった…」
そう発言してしまった。ガイに泣きつかれては断りきれない。
「だが、俺が言う。ガイ。事が終われば、俺がお前を終わらせてやる。」
「ありがとう…」
事が終われば。それはつまり、陽道を倒し、魔王を復活させ、有野を元に戻すまで。それまでのつもりだった。この時までは。
「すまない…」
とても劣悪で、長い嘘の始まりだった。
【神殿前にて…】
ガイとヤブ助、もょもとの三人は神殿前までやってきた。そこには、首を切断された氷室の遺体が転がっていた。
「氷室くんは良い子だった。ほんの数時間、一緒に旅しただけだけど…俺よりも年下なのに、強くて…明るくて…俺を助ける為に…犠牲に…なっ……て…ッ…‼︎」
もょもとは泣き出してしまった。そんなもょもとにつられ、泣き出しそうになるのをぐっと堪えるガイとヤブ助。
「知ってるよ…」
ガイはそう呟いた。氷室と居た時間はもょもとよりも長い。それだけ、彼の事を知っていたし、失った悲しみも大きかった。
「氷室……」
ガイは氷室と出会った時の事を思い出しながら、彼の首を繋ぎ、肉体の治癒を始めた。生き返らせる為ではない。敬意だ。本来の姿のまま、彼を弔う為に。
ガイは氷室を火葬した。
「ゆっくり休んでくれ…」
氷室亮太。12歳。死亡。
「二人はココに残ってくれ。あとは俺がやる。」
ガイはヤブ助ともょもとに背を向けながら、そう言った。
反論などできるわけない。ヤブ助ともょもとは静かにガイを見送る。
「陽道は必ず…俺が殺すッ…‼︎」
ガイは一人で神殿内へと入っていった。
ヤブ助達はインフォイーターを倒した。しかし、皆、瀕死の状態で雪の上に倒れている。
「ヤブ…助……」
秀頼がヤブ助の名を呼んだ。
「私ハ…弟子に…恵マれタ……」
心臓と脳の一部を抉られた秀頼。もう長くない。ヤブ助はそれを悟り、秀頼の言葉を聞く。
「荷ガ重過ぎタんだ……私ナんかジャ…到底……」
秀頼は今にも泣き出しそうな声で話し続けた。
「……」
ヤブ助は自分とガイを裏切った彼女が憎かった。貶してやりたかった。しかし、今のヤブ助にそんな気は毛頭ない。
あるのはただ一つ。死する師へ、これまでの感謝。
「良イ先生ニ…成レなくテ……ごめん…な……」
猪頭秀頼。32歳。死亡。
「師よ…ゆっくりと、おやすみください…」
ヤブ助は目を閉じ、黙祷した。そして仰向けになり、ため息を吐く。
「(俺も、もうじき…)」
ヤブ助ももう長くはない。自らの死を覚悟した途端、痛みがなくなり、かえって頭が冴えた。
「(もょもと。お前がココにいるという事は、氷室はやられたんだな。回復の見込みは無し。これはもう助からんな。)」
少し離れた所で倒れるもょもとを横目に、ヤブ助はそんな事を思っていた。
「(だが、お前の一太刀のおかげで一矢報えた。素直に感謝するぞ。)」
ヤブ助の両瞼が自らの意思と関係なく閉じてゆく。冴えていた頭が眠りにつく。
「少し……眠る…か……」
「それはダメだ。」
その時、ヤブ助のすぐ側から聞き慣れた声が聞こえてきた。と同時に、ヤブ助の全身の傷が治されていく。
「どうして…⁈」
ヤブ助が目を開けると、そこにはタレントで治癒を行うガイが居た。
「目が覚めたからダッシュで来た。よくも置いてってくれたな。」
有り得ない。ガイが目覚めてからココへ来るまでの時間があまりにも短すぎる。
そして感じる、ガイの中にいるナニカの気配に。
「まさか…お前……‼︎」
ヤブ助は悟った。ガイは父親から雷世を継承したのだと。その力を使い、ここまで短時間でやってきたと。
「何故だ!せっかく奴を出し抜いたというのに!」
ヤブ助は事のあらすじを全て知っていた。ガイの転生も、雷世を出し抜く事も。それだけ、ガイはヤブ助を信頼していたのだ。そう。フリージアへ来てからの単独行動以外は。
「人は…生き返らない…」
「えっ…」
ガイはそう呟くと、秀頼の死体の方を向く。芝見川のタレントで『視る』事を封じられているにも関わらず、その素振りはまるで、秀頼の死体が視認できているようだ。
「例え、魔王の力でも…」
「そんな…」
ヤブ助も最悪の事態は考えていた。しかし、その事実を目の当たりにした時の絶望は、自らが想像していた以上に大きかった。
「人は生き返らない。」
ガイは再びそう呟くと、今度はもょもとの方へと向かい、生存を確認する。
「だから、今ある…助けられる命を助けに行こう。」
ガイはもょもとの首の傷を治癒し始めた。
「ガイ…」
助けられる命、それはつまり、魔物になった有野の事。
しかし、ヤブ助はわからなかった。ガイが雷世を受け入れた理由が。
そんな疑問に答えるかのようにガイは話し始めた。
「もう疲れたんだ。足掻けば足掻くほど、苦しむだけ。結果は変わらない。」
ガイは悲しげに笑みを浮かべ、ヤブ助に話し続ける。
「親父は最後まで抗った。強いよ、あの人は。愛する妻を奪われ、自信すらも失いながらも、懸命に抗った。息子である…いや、弟である俺を救う為。今なら尊敬できるよ。」
「弟…?何を……」
障坂巌はガイの腹違いの兄。その事実を知らないヤブ助は困惑した。
「俺はあの人みたいに強くない。ホント…もう疲れたんだ…心が折れた…だからもう、雷世に任せる事にしたんだ。一応、『理解』で保存したから、主導権は俺だけど…だけど、俺は有野を治したら、消えるつもりだ。」
それを聞き、ヤブ助は立ち上がってこう言った。
「プログラム終了の合言葉、それを聞く為に俺を助けたのか?」
「あぁ。」
プログラム。それは佐藤武夫にかけたタレント『支配プログラム挿入』の事。そして、合言葉とはそれの解除法。
ガイは予め決めていたのだ。佐藤武夫への肉体の返上方法を。そして、それを知っているのは死んでしまった本来のガイと、そのガイから教えられたヤブ助のみ。ヤブ助がその言葉を言えば、佐藤武夫の中にいるガイ、ならびに雷世は消滅する。
「頼むヤブ助。その言葉を、教えてくれないか?」
「……」
ヤブ助の答えは決まっていた。答えはNO。ガイがこの世から消えてしまう事に耐えられる訳がない。ヤブ助は首を横に振った。
「俺はまだお前と居たい…お前が消えてしまうなんて考えられない…」
「お願いだヤブ助。もう辛いんだ。消えてしまいたいんだ。」
ガイは涙を流した。胸が締め付けられる思いだった。それを見たヤブ助も。
「…わかった…」
そう発言してしまった。ガイに泣きつかれては断りきれない。
「だが、俺が言う。ガイ。事が終われば、俺がお前を終わらせてやる。」
「ありがとう…」
事が終われば。それはつまり、陽道を倒し、魔王を復活させ、有野を元に戻すまで。それまでのつもりだった。この時までは。
「すまない…」
とても劣悪で、長い嘘の始まりだった。
【神殿前にて…】
ガイとヤブ助、もょもとの三人は神殿前までやってきた。そこには、首を切断された氷室の遺体が転がっていた。
「氷室くんは良い子だった。ほんの数時間、一緒に旅しただけだけど…俺よりも年下なのに、強くて…明るくて…俺を助ける為に…犠牲に…なっ……て…ッ…‼︎」
もょもとは泣き出してしまった。そんなもょもとにつられ、泣き出しそうになるのをぐっと堪えるガイとヤブ助。
「知ってるよ…」
ガイはそう呟いた。氷室と居た時間はもょもとよりも長い。それだけ、彼の事を知っていたし、失った悲しみも大きかった。
「氷室……」
ガイは氷室と出会った時の事を思い出しながら、彼の首を繋ぎ、肉体の治癒を始めた。生き返らせる為ではない。敬意だ。本来の姿のまま、彼を弔う為に。
ガイは氷室を火葬した。
「ゆっくり休んでくれ…」
氷室亮太。12歳。死亡。
「二人はココに残ってくれ。あとは俺がやる。」
ガイはヤブ助ともょもとに背を向けながら、そう言った。
反論などできるわけない。ヤブ助ともょもとは静かにガイを見送る。
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