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第65話 「同郷」
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ナナたちが出発してから一日が経った。王城でなに不自由ない暮らしをしていたはずの俺の心は、ひどく空虚だった。
「なぁ、シャル」
「む、カイリ。どうしたんだ、一体」
シャルは本を読んでいた。俺を守るって言っても、俺がなにもしなければ特にやることもないのだろう。
今は「厄災」も消えて平和そのものだし。邪神の被害さえなければ治安のいい国だ。
「良ければ、なんだけどさ。俺に――剣を教えてほしい」
「剣……?」
「神の力に頼らなくたって、俺は俺の力で戦えるようになりたいんだ。ナナたちを疑ってる訳じゃないけど、俺が剣を振るえるようになって損はないだろ」
力を失ったなら新しく得ればいい。ちょうど先生になれる人もいるわけだしな。
「分かった。そういうことなら喜んで手伝わせてもらおう」
◇
剣の修行を始めて数時間。木剣を吹き飛ばされ、地面に倒れたのはもう何度目か分からない。
「そろそろ、休憩にしないか?」
「まだやれるよ。やらなきゃ……駄目なんだ」
今すぐにでもナナたちを追ってカルード帝国に向かいたい。
その為の修行なんだから、早く上達して、普通の冒険者以上の腕にならないと……
「カイリ……無理をするのは良くない。剣を握れなくなっているじゃないか」
木剣を握ったのに、すぐに取り落としてしまう。
「休もう。剣の道は一朝一夕でどうにかなるものではない。焦らずゆっくり進んでいこう」
「……情けないよな、今の俺。正直、失望されるんじゃないかって思ってた」
「失望なんてしない。カイリは私や仲間を救ってくれた。力を失ったとて、その事実は揺るがない。今も私の中では、カイリは誰より優しくて、誰より頼りになる人間で……誰より、愛してる人間だ」
倒れた俺に、シャルが手を差し出してくれる。
シャルは俺の焦りを分かっている。そんなシャルが休むと提案してくれたなら、それが正解なんだ。
俺は自分に言い聞かせて、木剣をシャルに返す。
自室にもどってベッドに倒れこむと、緊張の糸が途切れたのか、全身に痛みが走る。
普段運動しない奴が、神の力なしで戦ったらそりゃそうなるよな。
「俺って……こんなに弱かったんだな」
俺が今までに使っていたのは、自ら手に入れた力じゃない。
全部、借り物だ。借り物の立場、借り物の使命。借り物の――力。
俺が一人で手に入れたものも、為し遂げたことも……なにも、ない。
シオンは、俺のことを生まれ変わりだとか言ってたけど、俺には英雄になんてなれる気がしない。
非力で、頼りない、ただの偽物。借り物ばかりの、紛い物。
「ホントに、情けねえ……」
シャルは俺を信じてくれるって言った。だけど、俺が俺自身を認めてやることができなかった。
静かに、時間だけが過ぎていく。そんな中、俺の部屋の扉が、外側から叩かれる。
ノックだ。誰か来たんだろうか。扉の方に視線を向けると、一人も女の子が部屋に入ってきた。
「あのぅ……ちょっと今、いいかな……」
「ソニアか。どうしたんだ?」
自罰的な思考に浸っていたなんてバレたくなかったから、俺はなにげない顔してソニアを迎え入れる。
「あたし、魔道具作ってるんだけど……一緒にどうかなって。シャルちゃんに剣を習ったって聞いたから、知識が必要なのかなーと思って……」
「魔道具か。作り方知らないし、やってみてえかも。お願いできるか?」
「オッケー、じゃああたしの部屋に来て」
そう言い残すとソニアは去っていく。
ソニアと話すのも久しぶりだな。一緒のパーティーになってから、ソニアの方から話しかけてくることはなかったし。
「考えすぎたときはとりあえず身体と頭を動かすのが一番だよな」
俺はソニアの部屋に向かった。
◇
ソニアの部屋はピンク色が目立つ、可愛らしい内装だった。
「おしゃれな部屋だな。すごくソニアに合ってて可愛いな」
俺は素直に思ったことを口に出した。するとソニアは目を大きく開いて驚いていた。
「……そういうところなんだろうね、カイリって」
「どういう意味だよ」
「なんでもないよ。……女たらしだ~って思っただけだよ」
「ホントにどういう意味!?」
そんな悪そうに見えたのか、俺。失礼なことはしてないはずなんだけどな。
「そんなことより魔道具作り始めちゃおっか。魔道具のことはどれくらい知ってる?」
「通信機があることくらいかな。使ったことないし買ったこともないからマジで分かんねえ」
……と、話してたら俺の中で少し気になることができた。
「ソニア、話しやすい奴なんだな。今まであんまり会話に入ってこなかったから、ちょっと意外だったかも」
「なんかすっごく失礼。でも、言いたいことは分かるけどね」
確かに、今のは馬鹿にしてると取られてもおかしくない発言だった。
「あたし、陰キャだからさ。しかも顔も雰囲気も地味だし。そんなだから大人数だと、話すタイミングうかがっちゃって結局喋れないっってことが割とあるんだ」
「今は普通に会話できてないか?」
「一対一なら余裕なんだよね、なんか。あと、初対面の人と話すももいけるよ。何人かで一緒にいると黙っちゃうけど」
「そういうもんなのか」
俺もコミュ力はない方だけど、多分ソニアとは陰キャの方向性が違うんだろうな。
陰キャの方向性ってなんだよ。
「って、ちょっと待て」
「どしたん、話し聞こか」
「それだよ、それ!」
聞き馴染みのある言葉が聞こえてついテンションが上がってしまう。
この世界で「陰キャ」なんて単語を聞いたことはない。使ってる人もみたことがない。
だって、それは日本で聞いた言葉だし。
「もしかして、ソニアって……日本人なのか?」
「――あれ、言ってなかったっけ」
「聞いたことねえよ!」
「なぁ、シャル」
「む、カイリ。どうしたんだ、一体」
シャルは本を読んでいた。俺を守るって言っても、俺がなにもしなければ特にやることもないのだろう。
今は「厄災」も消えて平和そのものだし。邪神の被害さえなければ治安のいい国だ。
「良ければ、なんだけどさ。俺に――剣を教えてほしい」
「剣……?」
「神の力に頼らなくたって、俺は俺の力で戦えるようになりたいんだ。ナナたちを疑ってる訳じゃないけど、俺が剣を振るえるようになって損はないだろ」
力を失ったなら新しく得ればいい。ちょうど先生になれる人もいるわけだしな。
「分かった。そういうことなら喜んで手伝わせてもらおう」
◇
剣の修行を始めて数時間。木剣を吹き飛ばされ、地面に倒れたのはもう何度目か分からない。
「そろそろ、休憩にしないか?」
「まだやれるよ。やらなきゃ……駄目なんだ」
今すぐにでもナナたちを追ってカルード帝国に向かいたい。
その為の修行なんだから、早く上達して、普通の冒険者以上の腕にならないと……
「カイリ……無理をするのは良くない。剣を握れなくなっているじゃないか」
木剣を握ったのに、すぐに取り落としてしまう。
「休もう。剣の道は一朝一夕でどうにかなるものではない。焦らずゆっくり進んでいこう」
「……情けないよな、今の俺。正直、失望されるんじゃないかって思ってた」
「失望なんてしない。カイリは私や仲間を救ってくれた。力を失ったとて、その事実は揺るがない。今も私の中では、カイリは誰より優しくて、誰より頼りになる人間で……誰より、愛してる人間だ」
倒れた俺に、シャルが手を差し出してくれる。
シャルは俺の焦りを分かっている。そんなシャルが休むと提案してくれたなら、それが正解なんだ。
俺は自分に言い聞かせて、木剣をシャルに返す。
自室にもどってベッドに倒れこむと、緊張の糸が途切れたのか、全身に痛みが走る。
普段運動しない奴が、神の力なしで戦ったらそりゃそうなるよな。
「俺って……こんなに弱かったんだな」
俺が今までに使っていたのは、自ら手に入れた力じゃない。
全部、借り物だ。借り物の立場、借り物の使命。借り物の――力。
俺が一人で手に入れたものも、為し遂げたことも……なにも、ない。
シオンは、俺のことを生まれ変わりだとか言ってたけど、俺には英雄になんてなれる気がしない。
非力で、頼りない、ただの偽物。借り物ばかりの、紛い物。
「ホントに、情けねえ……」
シャルは俺を信じてくれるって言った。だけど、俺が俺自身を認めてやることができなかった。
静かに、時間だけが過ぎていく。そんな中、俺の部屋の扉が、外側から叩かれる。
ノックだ。誰か来たんだろうか。扉の方に視線を向けると、一人も女の子が部屋に入ってきた。
「あのぅ……ちょっと今、いいかな……」
「ソニアか。どうしたんだ?」
自罰的な思考に浸っていたなんてバレたくなかったから、俺はなにげない顔してソニアを迎え入れる。
「あたし、魔道具作ってるんだけど……一緒にどうかなって。シャルちゃんに剣を習ったって聞いたから、知識が必要なのかなーと思って……」
「魔道具か。作り方知らないし、やってみてえかも。お願いできるか?」
「オッケー、じゃああたしの部屋に来て」
そう言い残すとソニアは去っていく。
ソニアと話すのも久しぶりだな。一緒のパーティーになってから、ソニアの方から話しかけてくることはなかったし。
「考えすぎたときはとりあえず身体と頭を動かすのが一番だよな」
俺はソニアの部屋に向かった。
◇
ソニアの部屋はピンク色が目立つ、可愛らしい内装だった。
「おしゃれな部屋だな。すごくソニアに合ってて可愛いな」
俺は素直に思ったことを口に出した。するとソニアは目を大きく開いて驚いていた。
「……そういうところなんだろうね、カイリって」
「どういう意味だよ」
「なんでもないよ。……女たらしだ~って思っただけだよ」
「ホントにどういう意味!?」
そんな悪そうに見えたのか、俺。失礼なことはしてないはずなんだけどな。
「そんなことより魔道具作り始めちゃおっか。魔道具のことはどれくらい知ってる?」
「通信機があることくらいかな。使ったことないし買ったこともないからマジで分かんねえ」
……と、話してたら俺の中で少し気になることができた。
「ソニア、話しやすい奴なんだな。今まであんまり会話に入ってこなかったから、ちょっと意外だったかも」
「なんかすっごく失礼。でも、言いたいことは分かるけどね」
確かに、今のは馬鹿にしてると取られてもおかしくない発言だった。
「あたし、陰キャだからさ。しかも顔も雰囲気も地味だし。そんなだから大人数だと、話すタイミングうかがっちゃって結局喋れないっってことが割とあるんだ」
「今は普通に会話できてないか?」
「一対一なら余裕なんだよね、なんか。あと、初対面の人と話すももいけるよ。何人かで一緒にいると黙っちゃうけど」
「そういうもんなのか」
俺もコミュ力はない方だけど、多分ソニアとは陰キャの方向性が違うんだろうな。
陰キャの方向性ってなんだよ。
「って、ちょっと待て」
「どしたん、話し聞こか」
「それだよ、それ!」
聞き馴染みのある言葉が聞こえてついテンションが上がってしまう。
この世界で「陰キャ」なんて単語を聞いたことはない。使ってる人もみたことがない。
だって、それは日本で聞いた言葉だし。
「もしかして、ソニアって……日本人なのか?」
「――あれ、言ってなかったっけ」
「聞いたことねえよ!」
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