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第1話 大人の…
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浴衣の光希はいつものイケメン女子とは違い、何処か色っぽくて艶っぽくて…。
俺はそんな光希を…。
不意にコツッ、と頭をこづかれて
「あいたっ。」
我に返る。
「考えてること丸分かりだよぉ。」
海斗に言われ顔を真っ赤にしてしまう。
「今は後片付けに集中しようねぇ。」
「う、うん、ごめん。」
まぁ仕方ないよねぇ、いつもはイケメンな光希がエロいもん、お年頃の毅流には刺激が強いよねぇ。
「毅流ぅ。」
「だっ、大丈夫ちゃんと後片付け出来るっ。」
「そうじゃないよぉ、もしちゃんと後片付け出来たら、優しいお兄ちゃんがご褒美あげるぅ。」
「ご褒美?」
…て、何だろう?
「大丈夫か?」
そんな毅流から少し離れた場所で後片付けをしていた光希は、一緒に片付けている桔梗に声を掛けた。
「う、うん…。」
て割には、まだ呆けた顔してんなぁ。
まぁしゃあないよな、さっき桃也さんに呼び出されてたから告白されたんだろうし、少し時間を空けてリョウさんも行ったし、告白されたかつ宣戦布告までいったんだろし…。
そりゃ刺激極強だろうよ。
「桔梗。」
「だ、大丈夫、片付けられる。」
「そうじゃねぇよ、もし1人で抱え切れないようなら、潰れる前に絶対言えよ。」
「う、うん、ありがとう…。」
光希には隠し事出来そうもないし、駄目になる前にちゃんと打ち明けよう。
でも光希…。
余裕あるのかな?
思いながら毅流の方を見てびたっ、と動きを止める。
「ん?どうした桔梗?」
もう潰れそうなんか?
「光希大丈夫?余裕ある?」
「あたしなら特に問題ないって、毅流と上手くいってるしな、何でそんなこと聞くんだよ?」
「上手くいってるから大丈夫?と聞いているのさ。」
とまで言って、さっきまで呆けていた人間と同一人物とは思えないくらいムフッ、とニヤけて見せる。
「お前…。」
「今夜の光希、ナイス妖艶、毅流だってお年頃、我慢出来やせんぜ、姐さん。」
「お前なぁ…。」
まぁ…それはそうなんだけど、もっと問題なのは…。
「光希はもっと我慢出来ないっしょ、浴衣の毅流、胸元逞しセクシーですものな。」
と言って、またもやムフッ。
やっぱ桔梗にはバレてたか。
「そりゃまぁ…あたしだってお年頃だしな。」
少しだけ頬を染めて呟く。
「今夜は毅流お泊まりかなぁ。」
「もし泊まるって言われたら、あたしも覚悟決める。」
「わぉ。」
光希と毅流、大人の階段上るのかぁ。
「おい。」
「ん?」
「何でお前がそんなに嬉しそうな顔してんだよ?」
「そりゃ大好きな光希が幸せになるんだもん、嬉しいっしょ。」
まったく…。
自分も大変なときにあたしの幸せ喜んでるとか…。
しょうがねぇなぁ。
くっそ嬉しいじゃんか。
「あたしだってお前が幸せになるなら嬉しいよ。」
「あ~、うん、それはまた後日。」
「何だよそれ。」
ぷふうっ、と笑うと桔梗もつられて笑う。
毅流とどんなに幸せだって、お前が幸せじゃなきゃ悲しいんだよ。
コインパーキングまで来たところで、
「桔梗。」
リョウに手を握られ引き寄せられる。
「な、何っ?」
照れるっ!
「同じコインパーキングで好都合、帰りは俺たちと一緒にヒロの車に乗って帰ろうね。」
「へっ?ええっ!」
何故にっ?
「大丈夫、ヒロから許可は取ってあるし、そっちの車には桔梗の代わりに若葉が乗るから。」
「勝手に決めないでもらえます?」
桃也がすかさず止めに入る。
「帰宅したら家で一緒なんだからこれくらい譲ってくれない?それともそこまで余裕ないのかな?」
「別にそういうわけじゃないですけど…。」
「ならいいよね?桔梗も問題ないだろ?」
「う、うん、若葉さんが乗るなら…あたし遼平と乗る、桃也さん、家でね。」
「…分かった。」
もぉにぃたん、怒ってないかな…。
「気を付けてな。」
桃也はそこまで言うと、素早く桔梗に近付いて額にキス。
「ぬあっ!」
「じゃあ家でな。」
俺が引き寄せてるのにキスとか…。
大した挑発してくれる。
「行こう桔梗。」
「う、うぬぅ…。」
またもや呆けてしまう桔梗の肩を優しく抱き寄せ、車へ向かってしまった。
「ちっ!」
やってくれるなあの野郎…。
ま…家に帰るまでは我慢してやる。
「毅流ぅ。」
光希と一緒にいる毅流に、海斗はおいでおいでする。
「ちょっと待ってて。」
光希に言ってから海斗の側に寄る。
「ん?」
「後片付けちゃんとやったらご褒美あげるって言ったでしょ~。」
「あ、そう言えば…。」
そんなこと言ってたな。
「ちゃんと出来たからご褒美あげるぅ。」
そう言うと浴衣の袖からビニール袋に入った何かを取り出した。
「はいこれぇ。」
ニッコリ笑って毅流に手渡す。
「何これ?」
「こんなこともあろうかと、行きにコンビニ寄ったときに買っておいたんだよぉ。」
まで言ってから、毅流の耳元でコソコソッとある言葉を囁く。
「んなっ!」
毅流の顔は一気に真っ赤に。
「こういうことはちゃんとしないと駄目だよぉ、ほら、袖に入れて。」
「あ、あ、あ、あぁ…。」
動揺しつつも袖にしまう。
「頑張ってね。」
「かっ、海斗兄ぃっ!」
呼びながら袖を引っ張る。
「なぁにぃ?」
「お、俺…っ!」
何かを言おうとしている毅流の肩をポンッと叩く。
「力入り過ぎよぉ。」
「だ、だって…。」
「最初から上手に出来る子何ていないよ、大丈夫、光希と一緒にゆっくりね、何も今夜最後まで辿り着けなくてもいいんだから。」
「う、うん…。」
「まずは光希が喜ぶことをしてあげるといいよ。」
「分かった、ありがとう海斗兄。」
「どういたしまして。」
さて…。
毅流は問題ないとして、兄貴はどうなるのか。
「海斗君。」
「あ、若葉どうしたのぉ?」
「あ、いや、帰り送ってもらうことになっちゃってごめんね。」
「いいよいいよ気にしないでぇ、運転は兄貴だしぃ、だから帰りの車の中で、若葉のことたっぷり口説かせてもらうから…覚悟して。」
一気に顔を真っ赤にして、呆然とする若葉の手を取り歩き出す。
「じゃあ車乗ろっかぁ。」
1番奥のシートにリョウ、ユキヤに挟まれるように座り帰路に着く。
「桔梗ちゃん浴衣似合ってる。」
「ありがとうございます。」
「毎回桔梗ちゃんに会うとき、リョウがベッタリだからゆっくり話せないね。」
「ぬっ!」
ユキヤの言葉に赤くなっていると、
「そりゃしゃあない、だって桔梗は俺のだもん。」
そう言って引き寄せる。
「りょっ、遼平っ。」
「嫌ならふりほどいてくれていいよ。」
浴衣越し、肩にちゅっとキスをされビクッと反応してしまう。
「いっ、いっ、嫌なわけじゃないっ、慣れないし照れているっ。」
遼平に俺のだもんとか一生慣れないっ!
「桔梗が夏休みのうちに、もう少し逢っておきたいなぁ。」
急に甘えてくるリョウにドギマギしていると、
「少しで済むの?」
ユキヤが言ってクスクス笑う。
「う~ん、済まないな。」
す、済まないんだっ?
「宿題は全部終わってるんでしょ?」
「う、うん、まぁ…。」
「じゃあ桔梗、たくさん逢おうね。」
甘えて言ってくるリョウに、桔梗は頷くしかないわけで…。
桃也が運転するワゴンが狭霧家の前で止まると、
「俺っ、今夜光希のトコに泊まるからっ。」
早口で捲し立てるように言うと、光希の後に付いて降りてしまう。
先に若葉を降ろしたとき、助手席に移動していた海斗が窓を開けると
「はいは~い、桔梗には僕から伝えておくからごゆっくりぃ。」
「あ、ありがとうっ。」
「じゃあ兄貴、出しちゃって~。」
海斗に言われ、ゆっくり車を発進させてすぐタバコをくわえると、海斗はすかさず火を点けてやり、自分のタバコにも火を点ける。
「あれはああいうことか?」
「そういうこと~。」
なるほどなぁ、あの毅流が…。
「毅流のが俺よりよっぽど大人だな。」
「あれぇ?もう挫けた?」
「馬鹿言うな、むしろ燃えている。」
不敵に笑う兄を見て
「エンジン全開だねぇ。」
「お前こそ、人に運転させておいて口説いてたんだろ?どうせ。」
チラッと見て煙を吐き出していると
「バレましたぁ?」
「あたりめぇだ。」
てかあからさまで隠すつもりなかったろうよ。
「若葉は今までドラムにしか興味が無かった分、恋愛に対する免疫がゼロだからねぇ、そういう意味ではなかなかたいへんだけど、兄貴みたいにライバルがいるわけじゃないしぃ。」
「嫌味かよ。」
「鼓舞してると言ってよぉ。」
「だとしたらタチ悪い。」
何処かふてた顔をする桃也を見て、思わず吹き出してしまう。
「まぁでもちょっとだけ嫌味ってよりも、嫌がらせかなぁ、だってボクの忠告聞いてればもっとすんなり桔梗を彼女に出来たわけだしぃ。」
「それは…反省してる。」
今度はバツが悪そうな顔をする桃也を見て、再び吹き出してしまう。
「んだよ、そんなに笑うな。」
「だって兄貴急に素直になり過ぎだよ~、いいことだけどさ。」
ホントに反省してるんだ。
「相当気張ってね兄貴、リョウは手強いよぉ、何せ桔梗の最推しなんだから。」
「向こうは推しかもしんねぇけど、こっちは初恋の相手なんだ、負けてたまるか。」
いつもは狭霧家にお泊まりと言えば、京介の部屋だった。
でも今夜は違う。
毅流はお風呂上がり、光希の部屋にいた。
いつもいつも初めてのときは、物凄く緊張した。
毎回、人生で1番緊張してるって思ってた。
けど…。
今までの緊張何て対したことないくらい、今物凄く緊張してる。
今なら言える、こんなに緊張すること、この先の人生にないだろう。
ドアが開き、毅流の緊張の度合いはMAXを振り切った。
ベッドに腰掛ける光希を見て、毅流もソファからベッドに移動。
「み、光希、あの…俺、上手く出来るかどうか分からないけど…でも、光希が欲しい…。」
熱視線で見つめると、
「うわっ。」
光希に押し倒される。
「わりぃな毅流、あたしのがお前を欲しがってる。」
まで言うと強引にキスしてしまう。
「ん…んん…っ!」
毅流の口唇を解放すると、上から見下ろし舌舐めずりまでする光希をみただけで、ゾクゾクッと震えてしまう。
「上手く出来るとかそんなんどうでもいい、あたしは毅流が欲しくて、毅流はあたしが欲しい、それだけで充分だ…一緒に気持ち良くなろうな?」
「うん、一緒に…。」
祐翔のワゴンで帰宅すると既に桃也と海斗は帰宅していたが、やはり毅流の姿はなかった。
ほほぅ毅流…覚悟決めましたな。
何て思ったのも束の間、玄関で待ち構えていた隆一、静音に
お祭り行けなかったから、せめて浴衣姿の桔梗ちゃんと写真撮らせてほしい!
と懇願され、凄い勢いで写真を撮られまくる撮影会が始まった。
で、終わる頃には…。
桔梗は力なくベッドに倒れ込んだ。
も、もう無理っす。
むしろここまで這わずに戻れたことを褒めてほしい…。
疲れた…このまま寝たい。
でも浴衣脱がなきゃいけんし、お風呂も入らないけんし…。
頑張れ、頑張るんだあたし。
この程度の疲れ…何とか…。
「大丈夫か?」
いきなり声を掛けられビクッとなっていると、
「お前、ノックの音聞こえなかったのかよ?」
「うぅ、もぉにぃたん…。」
頭上からもぉにぃたんの声がしているのに、そっちを向くのすら億劫とは…!
あたしの体力も落ちたものだな…!
と、桔梗は思っているようだが、確かに普段着ていない浴衣に、これまた普段履いてない下駄を履いて祭り会場を歩いたりしたわけだから、いつもよりは体力が削られたところに写真撮影が待っていた。
その上今日は桃也に告白されたり、リョウに俺のとか言われたり…。
要は体力的に疲れたところに、精神的疲労が重なったため、ここまでやられてしまったのだ。
「浴衣どうすんだ?」
「う、うぅぅ。」
何とか体を起こそうとしている桔梗を見て、
しゃあねぇなぁ。
と思い、まずは帯を解いてゆく。
「意外と硬いんだな…。」
どう結んであんだよこれ…。
戸惑いながらも帯を解き、今度は仰向けに寝かせたのだが…。
「…っ!」
やっべ…!
すっげエっロ…っ。
帯を解いたかつ仰向けにしたせいで、胸元ははだけ、裾も際どいところまで捲り上がってしまった。
桃也はゴクッと思わず生唾を飲み込む。
「桔梗…っ。」
「ううぅ…。」
帯が取れて多少楽になったけど、何かもぅ睡魔が猛攻撃を仕掛けてきよった…。
桔梗がうつらうつら…としているのをいいことに、桃也が襟元に手を掛けた瞬間、
バチコン!!!!!!
「いってぇ!」
「何してやがるこの色情狂…!」
いきなり思いっきり殴られた頭をさすりながら振り返ると、そこには鬼の形相の静音の姿が…!
「お、お袋…!」
滅茶苦茶ブチ切れてんじゃねぇか!
「あんた今朦朧な桔梗ちゃんに何しようとしてやがったんだ…?!」
「いやだって浴衣姿のまま寝るのはどうかな、と…。」
「お前は出て行け…!」
言いながら指をパチンと鳴らすと
「はいは~い!」
海斗が笑顔で現れる。
「ここは海斗とあたしでやるからテメェは出て行け…!」
「何で俺は駄目で海斗はいいんだよっ。」
「ボクは好きな女性以外の肌には興味ないんだよね~。」
「何だよそれっ!」
「おい桃也…!まだ殴られ足りねぇか!」
「分かった出て行く!」
まだまだ言い足りない部分はあったが、命の危機を感じた桃也は慌てて出て行った。
「まったく…。」
感情爆発させた上に、どんだけ暴走するつもりなわけぇ?
「海斗、桔梗ちゃん持ち上げて。」
「あぁはいはいただいまぁ。」
俺はそんな光希を…。
不意にコツッ、と頭をこづかれて
「あいたっ。」
我に返る。
「考えてること丸分かりだよぉ。」
海斗に言われ顔を真っ赤にしてしまう。
「今は後片付けに集中しようねぇ。」
「う、うん、ごめん。」
まぁ仕方ないよねぇ、いつもはイケメンな光希がエロいもん、お年頃の毅流には刺激が強いよねぇ。
「毅流ぅ。」
「だっ、大丈夫ちゃんと後片付け出来るっ。」
「そうじゃないよぉ、もしちゃんと後片付け出来たら、優しいお兄ちゃんがご褒美あげるぅ。」
「ご褒美?」
…て、何だろう?
「大丈夫か?」
そんな毅流から少し離れた場所で後片付けをしていた光希は、一緒に片付けている桔梗に声を掛けた。
「う、うん…。」
て割には、まだ呆けた顔してんなぁ。
まぁしゃあないよな、さっき桃也さんに呼び出されてたから告白されたんだろうし、少し時間を空けてリョウさんも行ったし、告白されたかつ宣戦布告までいったんだろし…。
そりゃ刺激極強だろうよ。
「桔梗。」
「だ、大丈夫、片付けられる。」
「そうじゃねぇよ、もし1人で抱え切れないようなら、潰れる前に絶対言えよ。」
「う、うん、ありがとう…。」
光希には隠し事出来そうもないし、駄目になる前にちゃんと打ち明けよう。
でも光希…。
余裕あるのかな?
思いながら毅流の方を見てびたっ、と動きを止める。
「ん?どうした桔梗?」
もう潰れそうなんか?
「光希大丈夫?余裕ある?」
「あたしなら特に問題ないって、毅流と上手くいってるしな、何でそんなこと聞くんだよ?」
「上手くいってるから大丈夫?と聞いているのさ。」
とまで言って、さっきまで呆けていた人間と同一人物とは思えないくらいムフッ、とニヤけて見せる。
「お前…。」
「今夜の光希、ナイス妖艶、毅流だってお年頃、我慢出来やせんぜ、姐さん。」
「お前なぁ…。」
まぁ…それはそうなんだけど、もっと問題なのは…。
「光希はもっと我慢出来ないっしょ、浴衣の毅流、胸元逞しセクシーですものな。」
と言って、またもやムフッ。
やっぱ桔梗にはバレてたか。
「そりゃまぁ…あたしだってお年頃だしな。」
少しだけ頬を染めて呟く。
「今夜は毅流お泊まりかなぁ。」
「もし泊まるって言われたら、あたしも覚悟決める。」
「わぉ。」
光希と毅流、大人の階段上るのかぁ。
「おい。」
「ん?」
「何でお前がそんなに嬉しそうな顔してんだよ?」
「そりゃ大好きな光希が幸せになるんだもん、嬉しいっしょ。」
まったく…。
自分も大変なときにあたしの幸せ喜んでるとか…。
しょうがねぇなぁ。
くっそ嬉しいじゃんか。
「あたしだってお前が幸せになるなら嬉しいよ。」
「あ~、うん、それはまた後日。」
「何だよそれ。」
ぷふうっ、と笑うと桔梗もつられて笑う。
毅流とどんなに幸せだって、お前が幸せじゃなきゃ悲しいんだよ。
コインパーキングまで来たところで、
「桔梗。」
リョウに手を握られ引き寄せられる。
「な、何っ?」
照れるっ!
「同じコインパーキングで好都合、帰りは俺たちと一緒にヒロの車に乗って帰ろうね。」
「へっ?ええっ!」
何故にっ?
「大丈夫、ヒロから許可は取ってあるし、そっちの車には桔梗の代わりに若葉が乗るから。」
「勝手に決めないでもらえます?」
桃也がすかさず止めに入る。
「帰宅したら家で一緒なんだからこれくらい譲ってくれない?それともそこまで余裕ないのかな?」
「別にそういうわけじゃないですけど…。」
「ならいいよね?桔梗も問題ないだろ?」
「う、うん、若葉さんが乗るなら…あたし遼平と乗る、桃也さん、家でね。」
「…分かった。」
もぉにぃたん、怒ってないかな…。
「気を付けてな。」
桃也はそこまで言うと、素早く桔梗に近付いて額にキス。
「ぬあっ!」
「じゃあ家でな。」
俺が引き寄せてるのにキスとか…。
大した挑発してくれる。
「行こう桔梗。」
「う、うぬぅ…。」
またもや呆けてしまう桔梗の肩を優しく抱き寄せ、車へ向かってしまった。
「ちっ!」
やってくれるなあの野郎…。
ま…家に帰るまでは我慢してやる。
「毅流ぅ。」
光希と一緒にいる毅流に、海斗はおいでおいでする。
「ちょっと待ってて。」
光希に言ってから海斗の側に寄る。
「ん?」
「後片付けちゃんとやったらご褒美あげるって言ったでしょ~。」
「あ、そう言えば…。」
そんなこと言ってたな。
「ちゃんと出来たからご褒美あげるぅ。」
そう言うと浴衣の袖からビニール袋に入った何かを取り出した。
「はいこれぇ。」
ニッコリ笑って毅流に手渡す。
「何これ?」
「こんなこともあろうかと、行きにコンビニ寄ったときに買っておいたんだよぉ。」
まで言ってから、毅流の耳元でコソコソッとある言葉を囁く。
「んなっ!」
毅流の顔は一気に真っ赤に。
「こういうことはちゃんとしないと駄目だよぉ、ほら、袖に入れて。」
「あ、あ、あ、あぁ…。」
動揺しつつも袖にしまう。
「頑張ってね。」
「かっ、海斗兄ぃっ!」
呼びながら袖を引っ張る。
「なぁにぃ?」
「お、俺…っ!」
何かを言おうとしている毅流の肩をポンッと叩く。
「力入り過ぎよぉ。」
「だ、だって…。」
「最初から上手に出来る子何ていないよ、大丈夫、光希と一緒にゆっくりね、何も今夜最後まで辿り着けなくてもいいんだから。」
「う、うん…。」
「まずは光希が喜ぶことをしてあげるといいよ。」
「分かった、ありがとう海斗兄。」
「どういたしまして。」
さて…。
毅流は問題ないとして、兄貴はどうなるのか。
「海斗君。」
「あ、若葉どうしたのぉ?」
「あ、いや、帰り送ってもらうことになっちゃってごめんね。」
「いいよいいよ気にしないでぇ、運転は兄貴だしぃ、だから帰りの車の中で、若葉のことたっぷり口説かせてもらうから…覚悟して。」
一気に顔を真っ赤にして、呆然とする若葉の手を取り歩き出す。
「じゃあ車乗ろっかぁ。」
1番奥のシートにリョウ、ユキヤに挟まれるように座り帰路に着く。
「桔梗ちゃん浴衣似合ってる。」
「ありがとうございます。」
「毎回桔梗ちゃんに会うとき、リョウがベッタリだからゆっくり話せないね。」
「ぬっ!」
ユキヤの言葉に赤くなっていると、
「そりゃしゃあない、だって桔梗は俺のだもん。」
そう言って引き寄せる。
「りょっ、遼平っ。」
「嫌ならふりほどいてくれていいよ。」
浴衣越し、肩にちゅっとキスをされビクッと反応してしまう。
「いっ、いっ、嫌なわけじゃないっ、慣れないし照れているっ。」
遼平に俺のだもんとか一生慣れないっ!
「桔梗が夏休みのうちに、もう少し逢っておきたいなぁ。」
急に甘えてくるリョウにドギマギしていると、
「少しで済むの?」
ユキヤが言ってクスクス笑う。
「う~ん、済まないな。」
す、済まないんだっ?
「宿題は全部終わってるんでしょ?」
「う、うん、まぁ…。」
「じゃあ桔梗、たくさん逢おうね。」
甘えて言ってくるリョウに、桔梗は頷くしかないわけで…。
桃也が運転するワゴンが狭霧家の前で止まると、
「俺っ、今夜光希のトコに泊まるからっ。」
早口で捲し立てるように言うと、光希の後に付いて降りてしまう。
先に若葉を降ろしたとき、助手席に移動していた海斗が窓を開けると
「はいは~い、桔梗には僕から伝えておくからごゆっくりぃ。」
「あ、ありがとうっ。」
「じゃあ兄貴、出しちゃって~。」
海斗に言われ、ゆっくり車を発進させてすぐタバコをくわえると、海斗はすかさず火を点けてやり、自分のタバコにも火を点ける。
「あれはああいうことか?」
「そういうこと~。」
なるほどなぁ、あの毅流が…。
「毅流のが俺よりよっぽど大人だな。」
「あれぇ?もう挫けた?」
「馬鹿言うな、むしろ燃えている。」
不敵に笑う兄を見て
「エンジン全開だねぇ。」
「お前こそ、人に運転させておいて口説いてたんだろ?どうせ。」
チラッと見て煙を吐き出していると
「バレましたぁ?」
「あたりめぇだ。」
てかあからさまで隠すつもりなかったろうよ。
「若葉は今までドラムにしか興味が無かった分、恋愛に対する免疫がゼロだからねぇ、そういう意味ではなかなかたいへんだけど、兄貴みたいにライバルがいるわけじゃないしぃ。」
「嫌味かよ。」
「鼓舞してると言ってよぉ。」
「だとしたらタチ悪い。」
何処かふてた顔をする桃也を見て、思わず吹き出してしまう。
「まぁでもちょっとだけ嫌味ってよりも、嫌がらせかなぁ、だってボクの忠告聞いてればもっとすんなり桔梗を彼女に出来たわけだしぃ。」
「それは…反省してる。」
今度はバツが悪そうな顔をする桃也を見て、再び吹き出してしまう。
「んだよ、そんなに笑うな。」
「だって兄貴急に素直になり過ぎだよ~、いいことだけどさ。」
ホントに反省してるんだ。
「相当気張ってね兄貴、リョウは手強いよぉ、何せ桔梗の最推しなんだから。」
「向こうは推しかもしんねぇけど、こっちは初恋の相手なんだ、負けてたまるか。」
いつもは狭霧家にお泊まりと言えば、京介の部屋だった。
でも今夜は違う。
毅流はお風呂上がり、光希の部屋にいた。
いつもいつも初めてのときは、物凄く緊張した。
毎回、人生で1番緊張してるって思ってた。
けど…。
今までの緊張何て対したことないくらい、今物凄く緊張してる。
今なら言える、こんなに緊張すること、この先の人生にないだろう。
ドアが開き、毅流の緊張の度合いはMAXを振り切った。
ベッドに腰掛ける光希を見て、毅流もソファからベッドに移動。
「み、光希、あの…俺、上手く出来るかどうか分からないけど…でも、光希が欲しい…。」
熱視線で見つめると、
「うわっ。」
光希に押し倒される。
「わりぃな毅流、あたしのがお前を欲しがってる。」
まで言うと強引にキスしてしまう。
「ん…んん…っ!」
毅流の口唇を解放すると、上から見下ろし舌舐めずりまでする光希をみただけで、ゾクゾクッと震えてしまう。
「上手く出来るとかそんなんどうでもいい、あたしは毅流が欲しくて、毅流はあたしが欲しい、それだけで充分だ…一緒に気持ち良くなろうな?」
「うん、一緒に…。」
祐翔のワゴンで帰宅すると既に桃也と海斗は帰宅していたが、やはり毅流の姿はなかった。
ほほぅ毅流…覚悟決めましたな。
何て思ったのも束の間、玄関で待ち構えていた隆一、静音に
お祭り行けなかったから、せめて浴衣姿の桔梗ちゃんと写真撮らせてほしい!
と懇願され、凄い勢いで写真を撮られまくる撮影会が始まった。
で、終わる頃には…。
桔梗は力なくベッドに倒れ込んだ。
も、もう無理っす。
むしろここまで這わずに戻れたことを褒めてほしい…。
疲れた…このまま寝たい。
でも浴衣脱がなきゃいけんし、お風呂も入らないけんし…。
頑張れ、頑張るんだあたし。
この程度の疲れ…何とか…。
「大丈夫か?」
いきなり声を掛けられビクッとなっていると、
「お前、ノックの音聞こえなかったのかよ?」
「うぅ、もぉにぃたん…。」
頭上からもぉにぃたんの声がしているのに、そっちを向くのすら億劫とは…!
あたしの体力も落ちたものだな…!
と、桔梗は思っているようだが、確かに普段着ていない浴衣に、これまた普段履いてない下駄を履いて祭り会場を歩いたりしたわけだから、いつもよりは体力が削られたところに写真撮影が待っていた。
その上今日は桃也に告白されたり、リョウに俺のとか言われたり…。
要は体力的に疲れたところに、精神的疲労が重なったため、ここまでやられてしまったのだ。
「浴衣どうすんだ?」
「う、うぅぅ。」
何とか体を起こそうとしている桔梗を見て、
しゃあねぇなぁ。
と思い、まずは帯を解いてゆく。
「意外と硬いんだな…。」
どう結んであんだよこれ…。
戸惑いながらも帯を解き、今度は仰向けに寝かせたのだが…。
「…っ!」
やっべ…!
すっげエっロ…っ。
帯を解いたかつ仰向けにしたせいで、胸元ははだけ、裾も際どいところまで捲り上がってしまった。
桃也はゴクッと思わず生唾を飲み込む。
「桔梗…っ。」
「ううぅ…。」
帯が取れて多少楽になったけど、何かもぅ睡魔が猛攻撃を仕掛けてきよった…。
桔梗がうつらうつら…としているのをいいことに、桃也が襟元に手を掛けた瞬間、
バチコン!!!!!!
「いってぇ!」
「何してやがるこの色情狂…!」
いきなり思いっきり殴られた頭をさすりながら振り返ると、そこには鬼の形相の静音の姿が…!
「お、お袋…!」
滅茶苦茶ブチ切れてんじゃねぇか!
「あんた今朦朧な桔梗ちゃんに何しようとしてやがったんだ…?!」
「いやだって浴衣姿のまま寝るのはどうかな、と…。」
「お前は出て行け…!」
言いながら指をパチンと鳴らすと
「はいは~い!」
海斗が笑顔で現れる。
「ここは海斗とあたしでやるからテメェは出て行け…!」
「何で俺は駄目で海斗はいいんだよっ。」
「ボクは好きな女性以外の肌には興味ないんだよね~。」
「何だよそれっ!」
「おい桃也…!まだ殴られ足りねぇか!」
「分かった出て行く!」
まだまだ言い足りない部分はあったが、命の危機を感じた桃也は慌てて出て行った。
「まったく…。」
感情爆発させた上に、どんだけ暴走するつもりなわけぇ?
「海斗、桔梗ちゃん持ち上げて。」
「あぁはいはいただいまぁ。」
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王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
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