華と光と恋心

かじゅ

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第6話 モヤモヤでイライラな…

俺のなんで…

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 輝は由梨亜と波のプールに向かい、-bule-のメンバーは流れるプールに来ていた。
「ずっと気になっていたんだけどさぁ、若葉は泳げないの?」
「う、うん、カナヅチ。」
「だよねぇ。」
海斗の言葉で3人の目は、若葉がしっかり持っている浮き輪に注がれる。
「ホント若葉ってドラム以外に興味なかったんだな。」
「まぁ、嫌いじゃないけど。」
「それにしても大きい浮き輪だねぇ。」
「これくらいないと落ち着かないんだっ。」
恥ずかしがって可愛いなぁ。
「とりあえず流れるプールなら平気だよぉ、浮き輪に乗ってプカプカ浮いてれば平気だし、もし落ちても足が付くくらいの深さしかないしねぇ。」
「もし落ちても慌てない、ね?」
「わ、分かった。」
「ボクたちも近くでプカプカしてるし大丈夫だよ。」







 2個目のスライダーに向かう途中、桔梗はトイレに行きたくなり、桃也に待ってもらってトイレに行ったのだが…。
「あれ…?」
もぉにぃたんいない。
「この辺で待ってる。」
と言っていた場所に桃也の姿がない。
参ったなぁ。
今日は全力で遊ぶつもりだったため、全員鍵付きロッカーにスマホと貴重品を置いてきてしまっており、連絡手段がない。
お昼にお弁当の場所に集合、としか決めていないため、あの場所に戻っても仕方ないと判断し、
ここで待つのが賢明か…。
桔梗は桃也が待っていると言った場所に立ち、桃也が来るのを待つことに…。
でもどうしたんだろう、もぉにぃたんらしくない気がする。
何かあった?トラブル?変なファンに見付かって逃げた?
段々桃也の身が心配になり、ソワソワしつつ周りをキョロキョロしていると、
「どうしたの?」
急に声を掛けられ振り返る。
え、誰?
知らん人よの?
あ!
もしかしてあまりにキョロキョロしてたから、不審者に見えたかっ?
「あ、怪しい者ではございません。」
「あはは何それ、違う違う、俺たち君が困ってると思って声掛けただけだから。」
「あ、あぁ、それはお手数お掛けします、でも大丈夫なんで、気にせず楽しんで下さい。」
知らない人なので丁寧に対応すると、再び2人の男は笑い出す。
「ぬ?」
何かおかしかったか?
「そうは言うけどさぁ、誰か探してるんじゃないの?」
「もしそうなら俺たちも一緒に探してあげるよ。」
と、不意に腕を握ってこようとしたので
「いや…。」
桔梗は反射的にその手をかわす。
「ここで待っていれば来るハズなんで…。」
「ホントにぃ?すっぽかされたんじゃないの?」
「は?」
もぉにぃたんはそんな薄情な男じゃねぇし…!
「あの、あたしはマジで平気なんで、行ってもらっていいっすか?」
「あれあれ?図星突かれて怒っちゃった?でも怒った顔も可愛いね。」
何だこいつら、ふざけてる?
もぉにぃたん侮辱されたみたいでムカつくし…!
少し痛い目見せた方が…。
桔梗が物騒なことを考えていると、
「お?」
急に後ろから抱き寄せられる。
「おいお前ら、こいつに何か用か?」
やっぱりもぉにぃたんだ…。
「あ、いやそのっ。」
「こいつは俺のなんだ、気安く声掛けねぇでもらえるか…!」
「す、すいませんでしたぁ!」
2人は早口で捲し立てると、脱兎の如く去って行った。
「たく…。」
油断も隙もありゃしねぇ。
「もぉにぃたん何処へ?」
「わりぃ、お前待ってる間に迷子に泣き付かれてな、センターまで連れてってた。」
「そっかぁ、もぉにぃたんはやっぱり優しいね。」
優しいは別として、泣いてる子供ほっとく何て人として駄目だ。
でもそのおかげで…。
「ちょっと目ぇ離した隙にナンパされるとか…。」
「あれナンパだったのか…。」
「お前…。」
「何かやけに絡んで来て、相手にすっぽかされたんじゃないのと言われて、もぉにぃたんのこと悪く言われたみたいで、凄くムカついた。」
「何だそりゃ、俺のこと何ていいんだから、今度同じことあったら逃げろ。」
「ん~、でも。」
「お前がその辺の女より強いのは知ってっけど、それでも心配なんだよ。」
「分かった。」
そこまで言われたら従うしかないっす。
「ここからはずっと一緒にいるから。」
と、桔梗と手を繋ぐ。
「あたしはもぉにぃたんのだから?」
「なっ!」
「いや、さっき言ったから…。」
もぉにぃたん、顔真っ赤だ。
多分あたしも、真っ赤だ…。
胸が何だか…。
この胸の高鳴りは、何と名付ければいいのだろうか…。
「俺が一緒に選んだから何だが…。」
「ん?」
「水着、もっと地味にしとくべきだったか。」
「似合わない?」
「いや、滅茶苦茶似合ってて可愛い、お前に問題はない。」
可愛いとかサラリと言いよった。
言い慣れてる?
そう思うと何だか…。
「とりあえず離れるなよ。」
「分かった。」
もぉにぃたんは、今どんな気持ちで言ってるんだろうか…。









 遠くから桃也と桔梗を眺めながら、
まぁ今日はこんなもんかなぁ。
何て思っていると、
「覗きは悪趣味っすよ。」
不意に声を掛けられ振り返ると、そこには光希と毅流が立っていた。
「あ、バレた?」
何て言ってあははははは~、と笑い飛ばしたのは由貴仁。
「桃也から桔梗ちゃんの話聞いててさ、2人のことが気になっちゃって、ほら、俺桃也の前の恋愛見てるからさ。」
「あ、そっか由貴仁さんは知ってるんですよね。」
「うん、あの当時は平気だぁ何て強がってたけど、やっぱ傷付いてたから、次の恋愛では桃也に幸せになってほしいと思ってたから、まぁこれは俺のエゴなんだけど…。」
「そんな、それは由貴仁さんの優しさです。」
「ありがとう毅流君、それより桃也によろしく言っておいてくれる?」
「え?」
「実は俺仕事入っちゃってさ、桔梗ちゃんのお弁当食べたかったんだけど、そろそろ行かないと。」
「荷物は…。」
「大丈夫大丈夫、全部コインロッカーにぶち込んであるから、じゃあまた、今度はゆっくりね。」
由貴仁はそこまで言うと、手を振りながら足早に去って行った。
「由貴仁さん、実力派とか言われてるけど今の演技は下手だったな。」
そう言った光希の隣で、毅流は苦笑する。
「うん、あれは間違いなく仕事入ってたのに、モモ兄と桔梗のことが気になって、何とか見に来たって感じ丸分かりだった。」
由貴仁さん、モモ兄のこと心配だったんだろうな。
「桃也さんの…。」
「何?」
「あ~、いや、何でもない、それよりそろそろスライダー行かないか?」
「うん、行こうっ、はいっ。」
照れながらも光希に手を差し伸べ、そんな毅流を見て微笑みながらその手を取る。
桃也さんの過去の恋愛…。
桔梗が知る前に、あたしが知るのはあんまりな…。









 ずっとドラムに夢中だった。
それ以外のことは、生活に支障ない程度にやれればいいと思ってた。
まぁ…。
内容によっては多少支障が出てなくもないけど。
だけど-bule-に加入して、メンバーのみんなと一緒にいるようになって、少しずつだけど考えが変わった。
「ドラムの練習も大事だけどさぁ、それ以外の経験だってドラマーにプラスになることあるかもよぉ、だから何事も経験だよ。」
海斗君に言われた言葉は大きかった。
確かに…と素直に聞き入れられた。
どういうわけか、あたしは海斗君に言われると、素直に聞き入れてしまうような気がする。
何でだろ?
それにしてもプールに遊びに来る何て、子供のときに家族で来て以来だな…。
大きな浮き輪でプカプカ流されながら、若葉は1人でそんなことを思っていた。
近くにいる、とか言ってたけど、みんなの姿が見えないな。
まぁ確かに大して深くないし、浮き輪があれば無敵だし。
と思っていたのだが、急に流れに乗っていた浮き輪が止まる。
「え?」
何だ?と思っていると、
「君1人?さっきからずっと流されてるだけだよね?」
後ろから声を掛けられ振り返ると、そこには金髪で浅黒く焼けた男が、若葉の浮き輪を掴んで立っていた。
「あの、どちら様?」
多分知らない人だよね?
あ!もしかして-bule-のファン?
そう思い有無を確かめようとするより早く、
「1人なら俺と遊ばない?」
「は?」
これ、ファンではなさそう。
「仲間と来てるんで遊べません。」
「何処にいんの?さっきから1人じゃん。」
とりあえず浮き輪離してくれないかな。
と困っていると、男の肩越しに海斗が見えた。
「あ、来ました。」
「へ?」
「ごめんね若葉。」
あれ、海斗君…いつもと口調が違うような。
海斗は男の横に立つと、自分より小さいその男を見下すように言った。
「その手、離してくんない?この子は俺のだから、いいよね?」
「な、何だぁ彼氏いたんだぁ、ごめんねぇ。」
男はヘラヘラしながらさっさと流れに乗って行ってしまった。
「何だったんだ?」
「何だったんだって、ナンパ以外の何物でもないだろ。」
「ええ!」
あれがナンパ!
「話に聞いたことはあるが…。」
驚いている若葉を見て呆れてしまう。
まったく…。
ちょっと目を離した途端これだ…。
まぁ、ちょっとでも目を離した俺が悪いんだけど…。
「傍にいなくてごめん。」
「あ、いや…。」
「ここからは一緒にいようねぇ。」
あれ、いつも通りの口調に戻っちゃった。
「そろそろ別のプール行こうかぁ。」
「あ、うん。」
さっきの海斗君、ドキドキしてしまった。
ああいうギャップ、ある意味困る。
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