華と光と恋心

かじゅ

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第6話 モヤモヤでイライラな…

その辺どうなん?

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 毅流の部屋で数学の宿題をしながら、
「何でこうなった?」
と呟いたのは賢吾。
「甘いよ賢吾、俺が宿題丸写し何て許すと思った?てかさ、まだまだ夏休み余裕あるんだから自分でやりなよ、出来るでしょ。」
賢吾だって俺よりはじゃないけど、頭いい方だし。
「だって丸写しのが楽じゃん。」
「それは楽じゃなくてズル、そんなことしてると岩池さんに愛想尽かされるよ。」
「お前それは…。」
「言われたくないならちゃんとやる、分かった?」
「はいはい。」
何か狭霧さんと付き合うようになってから、こいつ強くなったよなぁ。

その頃桔梗の部屋では…。
「相変わらず桔梗の特製ジュースは美味しいですわ。」
「ありがと撫子。」
桔梗と撫子が優雅に特製ジュースを飲んでいる向かい側では…。
「違う、そこはこっちの文法をだな…。」
読解力にイマイチ自信のない伊織が
光希に、国語の宿題を教わりながらコツコツやっていた。
「撫子も早く終わらせるタイプ?」
光希、桔梗同様、既に宿題を終わらせた撫子に桔梗が聞いた。
「いいえ、普段は伊織と一緒に少しずつやっているのですが、今年の夏は色々と立て込みそうですので、早々に終わらせたんです。」
「それで伊織が…。」
「ええ、終わらせたいから助けてと言ってきましたので…。」
ここに来たと…。
「よし!とりあえず休憩すっか、思ったよりいいペースだしな。」
光希の言葉で伊織はだらぁ~ん、とソファの背もたれに寄りかかる。
「ふぉ~、疲れたぁ!光希も桔梗も撫子も、あたしに付き合ってくれてありがとね~。」
「へーき、今日は暇だったし、それよりもこちらを…。」
そろそろ休憩に入るだろうと、綺麗に切り分けたショートケーキを差し出した。
「紅茶もいいけど、ケーキに合う特製ジュースにいたしました。」
「疲れた脳には甘い物がいいからな、ナイスだ桔梗。」
「あざっす。」
「勿論お前の手作り?」
「もちあたぼーよ。」
最近もぉにぃたんも甘い物マメに欲しがるから、色々研究しとるんよね。
「あ、ちなみにこれ、甘いけど無糖だから、作り方はまだまだ研究段階なので教えられる物ではないけど。」
「うっそ、こんなに甘いのに無糖っ?桔梗ってホント凄いよねぇ、将来はこっち方面進むの?」
伊織に聞かれうぅむ、となる。
「今のところはもっと学びたいから、進学を考えてるが…。」
そうよなぁ、将来なぁ…。
将来…。
いずれはここを出て行くことになるんだよ、な…。
そしたらあたしともぉにぃたんの繋がりは…。
「そう言えばぁ~。」
何処かからかい口調の伊織の声で我に返る。
「光希と毅流君の仲ってどうなったの~?賢吾から聞いたけど光希の家にお泊まりしてるらしいじゃん!」
ムフフとニヤニヤしながら言う伊織の顔を見て撫子が言った。
「伊織、その顔は下品ですわよ、それに光希にそれを聞くのなら、貴女も自分のことを話すということになりますわよ。」
「嘘っ!」
「ギブアンドテイクですわよ。」
「泊まるっても毅流はイトコの京介の部屋で寝てるから何もねーよ、今んところはキスだけ。」
「ギブアンドテイク。」
桔梗の言葉に途端にバツが悪そうな顔をする伊織。
「伊織って付き合ってどれくらいなんだ?」
「1年ちょい。」
「じゃあキスは当然として、胸くらいは触らせたか?」
「んなっ!」
一気に顔を噴火させた伊織を見て、桔梗と光希はニヤリ。
「旦那、こりゃ触らせてますぜ。」
「いや、触らせるどころか揉ませてんじゃね?」
「ちょっと2人ともっ!」
「でもまぁ胸でこのリアクションてことは、それ以上はまだだな。」
「もうっ!あたしのことはいいでしょ!」
「貴女が最初に話題に上げたのですから、自業自得ですわよ。」
「そういう撫子はどうなん?」
光希が探るような眼差しで聞く。
「私は…キスはしましたわ、ですが彼がそれ以上は結婚してからと…結婚するまで君には清いままでいてほしいと言うので、私は彼の意志を尊重しています。」
「ほぉ~、年上なのに出来た彼氏だな。」
これだけ美人でナイスバディな撫子を婚約者に持つ身でありながら、結婚まではキス以上は望まないとか、その彼氏、聖人君子か?
「桔梗は?」
「へ?」
「桔梗はどうなんです?」
撫子にフラれ、自然とうつ向いてしまう。
「あたしは…何も…。」
本当に?
何もない?
ならもぉにぃたんに抱いてるこの感情は、何だと言うのだろう…。
「桔梗。」
光希に呼ばれ顔を上げる。
「撫子の質問に他意はねぇよ、お前はお前のペースでいいんだ、な?」
「う、うん…。」










 賢吾の宿題がひと段落したところで、こちらも桔梗手作りのケーキと特製ジュースで休憩中。
「で、狭霧さんとどうなんだよ?付き合ったと思ったらお泊まりデートとかよ。」
「別にデートじゃないよ、稽古してご飯ご馳走になって、夜は光希のイトコの京介さんの部屋でゲームして、そのまま京介さんの部屋で寝るだけだし、勿論光希は自分の部屋に戻るし。」
「ふぅ~ん。」
「何だよ?」
流し目で見てくる賢吾。
「キス以上に進みたいとか思わんの?」
「あのね、男の全員が全員、お前と一緒だと思わないでよ。」
「だって俺たち健全な男子高校生だぞ!そういう妄想だってするだろうが!それは罪かっ?」
力説する賢吾を前に呆れてしまう。
相当溜まってるなぁ、色々と。
「妄想だけなら罪じゃないと思うけど、それを相手に押し付けるのは罪じゃない?」
毅流の言葉が的を射てるだけに、賢吾はがくーんと肩を落とす。
「分かってる、分かってるよ俺だって…、だから伊織が嫌がるようなことはぜってぇしない、でも我慢するのも辛いんだよぅ。」
情けない姿して…。
こんな姿岩池さんには見せられないだろうに。
「確かに、誰かを好きになって、その人も自分も好きになってくれて恋人になって、そしたら手を繋ぎたいと思う、繋いだら抱きしめたいと思うし、抱きしめたらキスしたいって思う、キスしたらそれ以上もって思っちゃうのは、相手のことを好きになれば好きになる程当然だと思う、でもさ…。」
「分かってる、相手もそう思わなきゃ駄目なことくらい…。」
「そうじゃないよ。」
毅流は苦笑してから言葉を繋げた。
「ゆっくりでもいいんじゃない?」
「ゆっくり?」
「うん、だって俺もだけど賢吾も初めての彼女でしょ?だから2人で体験していくことって初めてじゃん?それってこれから先今の相手としか経験出来ないことだろ?」
「まぁ、もし違う相手と付き合うことになったら、その相手とは初めてだけど人生初ではないな。」
「だろ?だから大切に、ゆっくりでいいんじゃない?」
ニコッと笑う毅流を前に、賢吾撃沈。
「そんないいこと言われたら、もう何も言えないっす。」
「じゃあゆっくり行こう。」
「分かった…。」
「まぁ賢吾は心配ないでしょ、岩池さんにべた惚れなんだから、岩池さんのペースに合わせるつもりなんだろうから。」
「そりゃお前もだろ。」
「うん、まぁ…。」
俺の場合はどっちかと言うと、光希が俺のペースに合わせてくれてるような気がする。









 由貴仁とのドラマ共演をきっかけに、桃也の仕事は徐々に俳優へとシフトチェンジしていた。
本日も収録が無事終わり、桃也はテレビ局の楽屋で衣装から私服に着替えていた。
そこにノックの音がして、マネージャーが対応。
「お客さんだぞ。」
「ん?」
マネージャーの後ろから現れた人物を見てうんざり。
「何だよその顔は~。」
入って来たのは由貴仁。
「お前暇なのか?それとも俺のストーカーか何かか?」
「隣でのスタジオで仕事してたの気付かなかった?」
「誰もがお前に興味があると思うな。」
と言いながら着替える桃也に
「ひどいなぁ!」
口を膨らませながらソファに座る。
「たく、お前は何なんだ?この前は強引にプールに来たと思ったらさっさと帰っちまうし。」
せっかく桔梗がこいつの分まで昼飯用意したっつぅのに。
てか、こいつが勝手に帰ったせいで桔梗が残念そうにしてたし…。
つぅか…。
こいつが帰ったくれぇで残念がってた桔梗思い出したら…またイライラしてきた。
「それは悪かったと思ってるし、今度穴埋めするよ。」
「別にいい。」
着替えを済ませ、鞄からスマホを取り出すと、手早く桔梗にメッセを送る。
「てか何であんな強引に来たんだよ?」
「だってお前が桔梗ちゃんと一緒にいるトコ見てみたかったんだもん。」
「何だそれ?」
俺が桔梗といてどうだと言うんだ。
「安心したかったんかも。」
「は?」
「お前、桔梗ちゃんと一緒にいるときいい顔してた、距離感も良かったしさ。」
「何だよそれ。」
そのやり取りで何かを察知したのか、マネージャーは、少し外します、と言って静かに出て行った。
「俺は失恋したときのお前も知ってるから。」
「あ…。」
「あれから恋愛してないだろ?勿論お前が前に、もうフッ切れた、いい思い出だって言ったの信じてるし、今はそういう相手がいないってだけなのも分かってる、でも桔梗ちゃんといるときのお前、凄く充たされたいい顔してたよ。」
「そりゃ、桔梗といると落ち着くし、あいつが見てるのは芸能人の俺じゃないから楽なんだ。」
そう思えるのは相手が桔梗ちゃんだからじゃないか?
とは今は聞かないでおくかな。
あんまり煽らないように言われてるし。
「そっか、そういう存在、大切にしないとな。」
と言って立ち上がる。
「じゃあ俺行くわ、まだ仕事残ってるから。」
出て行こうとしている由貴仁に
「由貴仁。」
声を掛ける。
「ん?」
「ありがとな。」
「どういたしまして~。」
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