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77.そんなドラマみたいな事起こるかよって言い出したらもうフラグ
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「調べた所ね、腹筋に力を入れる事がポイントらしいんだよ」
辛い……。
「背筋がまっすぐに伸びた良い姿勢だと、見栄えもいいし、抱える側の仁ちゃんの負担も減るみたい」
病み上がりの体で、借り物の特訓をするのがキツイんじゃない。
「首にまわした腕に力を込めるのも重要なんだけど、後頚部をひっぱるような力み方はダメで」
大好きな唯を……しかもモコモコパジャマを着た超絶可愛い冬バージョン唯を、お姫様抱っこしている。
万一転倒した時の保険として、唯の部屋の、ベッドの横で。
ふわ~、いい匂い~、女子の香り~、つーか唯の香り~。
これ、転倒したら逆にラッキーじゃねえか? ドラマとかでよくあるよな? つまづいてこけて、どっちかがどっちかに覆いかぶさるような体勢になっちゃって、次回の予告に入る……みたいな。いやいや、どうかばえばそんな体制で転げるんだよ。そもそも何も無い室内でどうしてこけんだよ。いや、いいけど。同じ事が俺と唯に起きるなら、あのフィクションなハッピーハプニングも自然と受け入れられるけど。
なんて……心を躍らせる余裕が、今は、無い。
「怖いのは、妨害された衝撃で、腕がほどけちゃうことなんだけど」
俺はとにかく、唯が好きで。
もし結婚して貰えないまま、唯が実家を出ていたら……
俺は毎日唯に電話して、メッセージ送って、出社時は自宅前、退社時は会社前で待ち伏せして、天気予報が外れて雨が降ったら家族なのでという最強の言い訳を駆使して管理人さんに部屋の中に入れて貰いベランダに干してある洗濯物を取り込んで――で、ストーカー規制法により、逮捕されていただろう。
って位に、唯が大好きで。
「だからこう、首の後ろで手首を交差して、縛ったりしたら、いけないのかな?」
だから、社長になる為に、なんて理由をつけてまで、俺の隣に縛り付けたのに。もう大丈夫だって思ってたのに。
今更……あいつに盗られるなんて。
「……仁ちゃん?」
「……え、ん?」
「ダメかな? 手首縛るの。ルール的に?」
だめだ。
お姫様抱っこ中に上の空状態になってしまったら、また『私なんかと運動会に出るが嫌なんだ』という、ネガティブな勘違いをさせてしまう。
「ええと、確か、縛るのは禁止されてた。万一の時、抱えてる側の首、折っちゃうかもって理由で」
「わっ、それはダメだね! ごめん私、そこまで頭が回らなくて! じゃあやっぱりしっかりつかまるしかないか、う~ん、手をどう組むのが安定するのか……」
ブツブツ言いながら、俺の後頭部に回した腕に力を込める唯。
心臓の鼓動を感じる程、密着する体。
吐息がかかる程、近付く顔。
「ゆ、唯、ごめん、おりて……っ」
「え!?」
だめだ。
こんなに近いのに、俺のものじゃない。
触れられるのに、俺のものにできない。
そう思ったら、もう、たまらなくて……。唯をおろそうと、身をかがめた。
でも、唯がちょうど腕の力を抜いたタイミングで、体勢を変えてしまったようで。
「きゃ……っ」
首の後ろに回されてた腕はほどけ、唯の背中は大きく反り、俺の元から離れて行って――。
「うわ、ごめ……!」
慌てて、唯の体を支えたものの――倒れてしまった。
唯フレグランスが充満する、ベッドの上に。
「「あ……」」
唯、仰向け。俺、うつ伏せ。
重なる声、足、腹。
「ご……ごめん、仁ちゃん……大丈ぶっ……!」
ついでに、唇。
限界だった。
色々なものが、もう――。
辛い……。
「背筋がまっすぐに伸びた良い姿勢だと、見栄えもいいし、抱える側の仁ちゃんの負担も減るみたい」
病み上がりの体で、借り物の特訓をするのがキツイんじゃない。
「首にまわした腕に力を込めるのも重要なんだけど、後頚部をひっぱるような力み方はダメで」
大好きな唯を……しかもモコモコパジャマを着た超絶可愛い冬バージョン唯を、お姫様抱っこしている。
万一転倒した時の保険として、唯の部屋の、ベッドの横で。
ふわ~、いい匂い~、女子の香り~、つーか唯の香り~。
これ、転倒したら逆にラッキーじゃねえか? ドラマとかでよくあるよな? つまづいてこけて、どっちかがどっちかに覆いかぶさるような体勢になっちゃって、次回の予告に入る……みたいな。いやいや、どうかばえばそんな体制で転げるんだよ。そもそも何も無い室内でどうしてこけんだよ。いや、いいけど。同じ事が俺と唯に起きるなら、あのフィクションなハッピーハプニングも自然と受け入れられるけど。
なんて……心を躍らせる余裕が、今は、無い。
「怖いのは、妨害された衝撃で、腕がほどけちゃうことなんだけど」
俺はとにかく、唯が好きで。
もし結婚して貰えないまま、唯が実家を出ていたら……
俺は毎日唯に電話して、メッセージ送って、出社時は自宅前、退社時は会社前で待ち伏せして、天気予報が外れて雨が降ったら家族なのでという最強の言い訳を駆使して管理人さんに部屋の中に入れて貰いベランダに干してある洗濯物を取り込んで――で、ストーカー規制法により、逮捕されていただろう。
って位に、唯が大好きで。
「だからこう、首の後ろで手首を交差して、縛ったりしたら、いけないのかな?」
だから、社長になる為に、なんて理由をつけてまで、俺の隣に縛り付けたのに。もう大丈夫だって思ってたのに。
今更……あいつに盗られるなんて。
「……仁ちゃん?」
「……え、ん?」
「ダメかな? 手首縛るの。ルール的に?」
だめだ。
お姫様抱っこ中に上の空状態になってしまったら、また『私なんかと運動会に出るが嫌なんだ』という、ネガティブな勘違いをさせてしまう。
「ええと、確か、縛るのは禁止されてた。万一の時、抱えてる側の首、折っちゃうかもって理由で」
「わっ、それはダメだね! ごめん私、そこまで頭が回らなくて! じゃあやっぱりしっかりつかまるしかないか、う~ん、手をどう組むのが安定するのか……」
ブツブツ言いながら、俺の後頭部に回した腕に力を込める唯。
心臓の鼓動を感じる程、密着する体。
吐息がかかる程、近付く顔。
「ゆ、唯、ごめん、おりて……っ」
「え!?」
だめだ。
こんなに近いのに、俺のものじゃない。
触れられるのに、俺のものにできない。
そう思ったら、もう、たまらなくて……。唯をおろそうと、身をかがめた。
でも、唯がちょうど腕の力を抜いたタイミングで、体勢を変えてしまったようで。
「きゃ……っ」
首の後ろに回されてた腕はほどけ、唯の背中は大きく反り、俺の元から離れて行って――。
「うわ、ごめ……!」
慌てて、唯の体を支えたものの――倒れてしまった。
唯フレグランスが充満する、ベッドの上に。
「「あ……」」
唯、仰向け。俺、うつ伏せ。
重なる声、足、腹。
「ご……ごめん、仁ちゃん……大丈ぶっ……!」
ついでに、唇。
限界だった。
色々なものが、もう――。
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