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98.ピンチの時ほど痛感する親友のありがたみ
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「か~ず~きぃぃぃぃいいいいい!」
真っ白なセダンが走り去った後――。
幼馴染兼親友……に戻った男を、地獄のような顔で、睨みつける。
「お前~! お前が! 唯は自分が送って行くって言えば! こんな事にはならなかったのにぃぃい!!」
「いやいやいや! 言おうとしたよ俺だって! でもその前に、お願いします~って言っちゃったの仁じゃん!」
「テンパって、考えが及ばなかったんだよ! 久々の蓮さんオーラに、やられた……!」
飛鳥蓮……。つくづく恐ろしい男だ。
才色兼備、文武両道、質実剛健、清廉潔白、威風堂々、温厚篤実 etc……誉め言葉として使われるあらゆる四字熟語を駆使しても、表現しきれない完璧人間。
万人の羨望の的となる、特別な存在。であるにも関わらず、それを自覚していない本人は飾らず、気さくで。いつでも、誰からも愛される、人格者。
「も~、情けない事を堂々と言わないでよね。確かに……相変わらず、ミラーボールの化身かって位、まぶしかったけど……てゆ~か唯ちゃんも久々だったろうに、よく平気だったよね」
「……久々じゃねえんだよ……。唯、あいつと繋がってたらしいんだ……」
俺の告白に、目を丸くする一輝。
「つなが……ええ!? それって、やっちゃってたって意味の、繋がってた、って事!?」
「バ……! 斎藤みたいな事言ってんじゃねえよ!」
とはいえ。
そうじゃない、とは言えない。分からない。
だって、蓮さんは唯の……初恋の、相手だから。
「てか一輝、お前こそ蓮さんと繋がってたんだろ!? 屋上でそう言ってたよな!? だったら知ってんじゃねえか? 唯と蓮さんはいつから」
「いやごめん! あれは仁をこらしめるための嘘! 俺、蓮さんの電話番号すら知らない! ケルベロス貸してたのは仁に頼まれたから! それだけ! 改めて感謝して!?」
「なんだよもぉ~! ああああ……やばいっ。やっぱ二人きりになんてさせるんじゃなかった! そもそもそれを阻止する為に、出場辞退だとか言い出して、唯とも揉めたのに……っ」
「ちょい! しっかりしてよ仁! とりあえずうちの車で、会場向かお!? 事情は道中で聞かせてよ!」
一輝はうなだれる俺の体を支え、車に押し入れようとしてくれた。が。その時、競技場の方から声が聞こえて。
「あ~! いた~! 仁君! ダメですよ、片付けさぼっちゃ~!」
凛だ。
俺の血圧を上げる天才。ああ、めんどくせぇ。今、あいつのうざさを受け流す気力なんて、残っていないのに。
いやでも、委員の仕事をさぼるわけにはいかないよな。
「くそっ……!」
そう思って、半分ケツをのせた後部座席から、立ち上がろうとしたのだが。一輝によって押し戻された。
「凛! 仁は片付けには参加できない!」
声高らかに、因縁の相手の名を叫ぶ一輝。
「え……!?」
凛は、らしくもなく目を丸くしている。
あの頭蓋骨陥没以来、まともに口もきいてくれなかった一輝が、まさか自分に話しかけて来るとは思わなかったんだろう。
「その事を実行委員長に伝えといてよ! 仁がひんしゅく買わずに済むよう、いい感じに! そしたら頭蓋骨陥没の件、水に流してあげる!」
それだけ言った一輝は、凛の返事を待たずに俺の隣に乗り込み、ドアを閉めた。
その直後、車は走り出して――。
「ああもう……運動会の片付けと、頭蓋骨陥没……見合わないなぁ~」
一輝はそう言って、ため息を吐いたけれど。
「……かっこよ……。一輝、俺……お前が親友でよかったわ……」
「……気付くのおっそ」
フロントミラー越しに目があった向井さんは、今までと変わらない笑顔で会釈をしてくれた。
ああ……今年の一輝と向井さんの誕生日には、車を贈ろう……。
そんな決意をしながら、俺は薄暗くなり始めた競技場を、後にしたのだった。
真っ白なセダンが走り去った後――。
幼馴染兼親友……に戻った男を、地獄のような顔で、睨みつける。
「お前~! お前が! 唯は自分が送って行くって言えば! こんな事にはならなかったのにぃぃい!!」
「いやいやいや! 言おうとしたよ俺だって! でもその前に、お願いします~って言っちゃったの仁じゃん!」
「テンパって、考えが及ばなかったんだよ! 久々の蓮さんオーラに、やられた……!」
飛鳥蓮……。つくづく恐ろしい男だ。
才色兼備、文武両道、質実剛健、清廉潔白、威風堂々、温厚篤実 etc……誉め言葉として使われるあらゆる四字熟語を駆使しても、表現しきれない完璧人間。
万人の羨望の的となる、特別な存在。であるにも関わらず、それを自覚していない本人は飾らず、気さくで。いつでも、誰からも愛される、人格者。
「も~、情けない事を堂々と言わないでよね。確かに……相変わらず、ミラーボールの化身かって位、まぶしかったけど……てゆ~か唯ちゃんも久々だったろうに、よく平気だったよね」
「……久々じゃねえんだよ……。唯、あいつと繋がってたらしいんだ……」
俺の告白に、目を丸くする一輝。
「つなが……ええ!? それって、やっちゃってたって意味の、繋がってた、って事!?」
「バ……! 斎藤みたいな事言ってんじゃねえよ!」
とはいえ。
そうじゃない、とは言えない。分からない。
だって、蓮さんは唯の……初恋の、相手だから。
「てか一輝、お前こそ蓮さんと繋がってたんだろ!? 屋上でそう言ってたよな!? だったら知ってんじゃねえか? 唯と蓮さんはいつから」
「いやごめん! あれは仁をこらしめるための嘘! 俺、蓮さんの電話番号すら知らない! ケルベロス貸してたのは仁に頼まれたから! それだけ! 改めて感謝して!?」
「なんだよもぉ~! ああああ……やばいっ。やっぱ二人きりになんてさせるんじゃなかった! そもそもそれを阻止する為に、出場辞退だとか言い出して、唯とも揉めたのに……っ」
「ちょい! しっかりしてよ仁! とりあえずうちの車で、会場向かお!? 事情は道中で聞かせてよ!」
一輝はうなだれる俺の体を支え、車に押し入れようとしてくれた。が。その時、競技場の方から声が聞こえて。
「あ~! いた~! 仁君! ダメですよ、片付けさぼっちゃ~!」
凛だ。
俺の血圧を上げる天才。ああ、めんどくせぇ。今、あいつのうざさを受け流す気力なんて、残っていないのに。
いやでも、委員の仕事をさぼるわけにはいかないよな。
「くそっ……!」
そう思って、半分ケツをのせた後部座席から、立ち上がろうとしたのだが。一輝によって押し戻された。
「凛! 仁は片付けには参加できない!」
声高らかに、因縁の相手の名を叫ぶ一輝。
「え……!?」
凛は、らしくもなく目を丸くしている。
あの頭蓋骨陥没以来、まともに口もきいてくれなかった一輝が、まさか自分に話しかけて来るとは思わなかったんだろう。
「その事を実行委員長に伝えといてよ! 仁がひんしゅく買わずに済むよう、いい感じに! そしたら頭蓋骨陥没の件、水に流してあげる!」
それだけ言った一輝は、凛の返事を待たずに俺の隣に乗り込み、ドアを閉めた。
その直後、車は走り出して――。
「ああもう……運動会の片付けと、頭蓋骨陥没……見合わないなぁ~」
一輝はそう言って、ため息を吐いたけれど。
「……かっこよ……。一輝、俺……お前が親友でよかったわ……」
「……気付くのおっそ」
フロントミラー越しに目があった向井さんは、今までと変わらない笑顔で会釈をしてくれた。
ああ……今年の一輝と向井さんの誕生日には、車を贈ろう……。
そんな決意をしながら、俺は薄暗くなり始めた競技場を、後にしたのだった。
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