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160.年中5月病のあなた、休憩しましょう
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なんだか最近……唯が、おかしい。
「ええと……唯? これは……」
「あれ? 仁ちゃん、食べないの? あんまりお腹空いてなか……あっ!」
夕飯の時。空の皿や椀を俺の前に並べて、そんな事を言ったり。
「唯、俺のワイシャツって……」
「ああ! ごめん! クリーニング屋さんに取りに行くの忘れてた!」
うっかりミスを連発したり。
「で、新入社員用の研修会に、唯も出たらどうかって課長が言ってくれてるんだけど、どう?」
「……へ? あ、ごめん考え事してたっ。ええと? 食パンは8枚切りじゃなく6枚切りがいいっていう話だっけ?」
なんだかいつも、上の空で。
「……大丈夫か? 仕事、きつい?」
出社時。本社の1階でエレベーターを待っている間に、思い切って訊ねてみたのだが。唯は驚いたような顔をして。
「え!? どうして!?」
「どうしても何も……なんか最近、唯が変だからさ」
「そ、そうだよね、ごめんね。私最近、お家の事も満足に出来て無くて……」
「そんなんはいいんだよ。でも、来週から8月で大分暑くなって来たし……体力的にもしんどいのかなって」
「ぜ、全然全然! 夜ヨガと電車通勤に仁ちゃんが付き合ってくれてるお陰で……仕事を始める前より、ずっと体力が付いた気がしてるんだっ」
う~ん……じゃあなんで?
あ、遅れて来た5月病みたいなもんなのか? なんかだるい、やる気がでない、集中出来ない、的な?
それなら……あの提案をしてみよう。
「唯、夏休み、一緒に取らないか?」
チーン。
エレベーターのドアが開いたタイミングで、唯の顔を覗き込んでみる。
「夏休み?」
「俺は七日間……唯は4月採用だから四日間かな、夏休みが取れるんだよ。勿論、仕事の調整は必要だけど。うちの課じゃ、皆で協力し合ってなるべく全員が全日消化するようにしてる。もしよければ、蓮さんに訊いてみてくれねぇ?」
「蓮ちゃんに……」
俺の提案に、唯の表情が少し強張る。
「あ……なんか今、厄介な仕事抱えてたりする?」
「う、ううん! わかった! 聞いてみるね!」
と、思いきや。すぐに笑顔で応じてくれて。一安心。
「よろしく。どこか行きたいとこあったら、教えて。いくつか候補は考えてあるんだけど」
「私は……仁ちゃんの行きたい所に行きたいなぁ」
「え、ずるくねぇかそれ」
「ふふ、だって……仁ちゃんのプラン、いつも完璧だから。ほら、去年の誕生日の時だって」
「そりゃあ、全力を投じてるからな。一緒に何かする相手が、唯の時は」
「……いつも……ありがとうね、仁ちゃん」
礼を言って微笑んでくれる唯に……癒される。
どれほど規格外の猛暑でも、エアコンか唯かを選べと言われたら、俺は唯を選ぶだろう。
暑い夏には爽やかなそよ風に。身も凍る冬は、適温のこたつに。
唯は一年を通して、俺の心をコンディショニングしてくれている、必要不可欠な存在だから。
なのに……。
相変わらず家族以上恋人未満の、思わせぶり発言でしか気持ちを示せない自分が……情けなくて、歯がゆくて……。
俺は、少しぎこちない笑顔を返す事しか、出来ないでいた。
「ええと……唯? これは……」
「あれ? 仁ちゃん、食べないの? あんまりお腹空いてなか……あっ!」
夕飯の時。空の皿や椀を俺の前に並べて、そんな事を言ったり。
「唯、俺のワイシャツって……」
「ああ! ごめん! クリーニング屋さんに取りに行くの忘れてた!」
うっかりミスを連発したり。
「で、新入社員用の研修会に、唯も出たらどうかって課長が言ってくれてるんだけど、どう?」
「……へ? あ、ごめん考え事してたっ。ええと? 食パンは8枚切りじゃなく6枚切りがいいっていう話だっけ?」
なんだかいつも、上の空で。
「……大丈夫か? 仕事、きつい?」
出社時。本社の1階でエレベーターを待っている間に、思い切って訊ねてみたのだが。唯は驚いたような顔をして。
「え!? どうして!?」
「どうしても何も……なんか最近、唯が変だからさ」
「そ、そうだよね、ごめんね。私最近、お家の事も満足に出来て無くて……」
「そんなんはいいんだよ。でも、来週から8月で大分暑くなって来たし……体力的にもしんどいのかなって」
「ぜ、全然全然! 夜ヨガと電車通勤に仁ちゃんが付き合ってくれてるお陰で……仕事を始める前より、ずっと体力が付いた気がしてるんだっ」
う~ん……じゃあなんで?
あ、遅れて来た5月病みたいなもんなのか? なんかだるい、やる気がでない、集中出来ない、的な?
それなら……あの提案をしてみよう。
「唯、夏休み、一緒に取らないか?」
チーン。
エレベーターのドアが開いたタイミングで、唯の顔を覗き込んでみる。
「夏休み?」
「俺は七日間……唯は4月採用だから四日間かな、夏休みが取れるんだよ。勿論、仕事の調整は必要だけど。うちの課じゃ、皆で協力し合ってなるべく全員が全日消化するようにしてる。もしよければ、蓮さんに訊いてみてくれねぇ?」
「蓮ちゃんに……」
俺の提案に、唯の表情が少し強張る。
「あ……なんか今、厄介な仕事抱えてたりする?」
「う、ううん! わかった! 聞いてみるね!」
と、思いきや。すぐに笑顔で応じてくれて。一安心。
「よろしく。どこか行きたいとこあったら、教えて。いくつか候補は考えてあるんだけど」
「私は……仁ちゃんの行きたい所に行きたいなぁ」
「え、ずるくねぇかそれ」
「ふふ、だって……仁ちゃんのプラン、いつも完璧だから。ほら、去年の誕生日の時だって」
「そりゃあ、全力を投じてるからな。一緒に何かする相手が、唯の時は」
「……いつも……ありがとうね、仁ちゃん」
礼を言って微笑んでくれる唯に……癒される。
どれほど規格外の猛暑でも、エアコンか唯かを選べと言われたら、俺は唯を選ぶだろう。
暑い夏には爽やかなそよ風に。身も凍る冬は、適温のこたつに。
唯は一年を通して、俺の心をコンディショニングしてくれている、必要不可欠な存在だから。
なのに……。
相変わらず家族以上恋人未満の、思わせぶり発言でしか気持ちを示せない自分が……情けなくて、歯がゆくて……。
俺は、少しぎこちない笑顔を返す事しか、出来ないでいた。
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