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191.結婚はゴールじゃないしむしろ生きてる限り悩みは尽きなくてゴールなんて無いじゃんて思う
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「なぁ、美琴は本当に今のままでいいのか?」
一輝と凜が帰った後。
夕飯を食べ、シャワーを浴び……むくみが取れ、肌ツヤが良くなった? らしい美琴に、訊ねてみる。
「今のまま……って何?」
「俺みたいに結婚の意志が無い男と付き合い続けて、20代をつぶすこと」
脱ぎ散らかした服を集めながら、答える。
暖房の聞いた室内とはいえ、2月に半裸のままは、やはり寒い。
「は? 私の20代って、今つぶれてんの? 大好きな仕事を楽しんで、皆に自慢できる彼氏がいて、程よく自分時間も持ててるのに?」
そう言われて返す言葉を失っている俺を、美琴は笑う。
「仁てさ、やっぱり旧家のお坊ちゃんだよね。女はいずれ結婚して子供を産むもんだと思ってる。時代考えてよ? 皆が皆、そういうのに憧れてる筈だっていう決めつけ、迷惑なんだけど」
「そういうわけじゃねぇけど。好きな相手とずっと一緒にいる為の手段だろ? 一度も憧れっていうか……目指したいと思った事ねえの?」
「そもそも、離婚が法的に認められてる時点で、ずっと一緒にいる手段じゃないじゃん。自分がいい見本になってる自覚、無い?」
痛い所を突かれ、無意識に胸元に手を当ててしまう。
「てゆーか私、そこまで誰かを好きになった事ないんだよね。ずっと他人と一緒にいるとか、疲れるしムリ~」
おちょくるように言いながら、美琴は後ろから抱き付いてきた。
「ちょ……あたってる」
「なによ今更」
好反発素材で、ボリューミー。運動会の特訓で背中に受けていた、唯のとはまったく違う感触。
ああ……俺、本来はボリューミー派だったのに。
今は、理想のあれを堪能させて貰える、思春期男子からしたらこの上ない幸福な現状なのに。
それでも想い出すのは、唯の事ばかり。
「なんなら、も一回どぉ? 明日、大事な撮影があるのよね。てゆーか、いっそここで同棲しない? そしたら、わざわざ予定合わせて会う手間も無くなるし」
「手間って……」
モデルの仕事に誇りを持って全力で挑んでいる美琴は尊敬できる。
今まで俺の家柄や地位や財力を目当てに近付いてくる女は多かったけど……このタイプは初めてで。ある意味新鮮。そして、気楽。
「俺はもう、誰かと暮らすとか無理だから。絶対唯と比べちゃうし。それは流石に美琴もうっとおしいだろ?」
「……そんなにいい女だったの? 元嫁? でも見た目はイマイチだったんでしょ? 血統種派遣部門はアスカの主力だから、色んな情報が流れてくるんだけど……ルックスについては辛口な評判が多かったし」
ルックスで仕事を勝ち取って来たトップモデルらしい、シビアな意見。
「派手な顔じゃないけど、イマイチでは決して無い。俺は今でも、唯ほど可愛い女の子はこの世に居ないと思ってる」
「ちょっと。さすがに失礼じゃない? 普通、彼女にそーゆー事言う?」
「え、そこは気にするのか?」
恋人じゃ無く彼女、って、自称しておきながら?
ちょっと意外で、目を瞬かせてしまう。
「私の武器はルックスなのよ。モデルなんて100%見た目で勝負する職業なんだから。なのに、一番近くにいる男の一番になれないなんて、私のプライドが許さない」
「俺の一番は生涯唯だって言っただろ。全然いい~、気にしな~い! って言ってたじゃねえか」
「違うっ! 一番好きな女じゃなくても別にいいの! でも可愛い、綺麗、は私を首位にしてよ! 私がこのルックスを維持する為に、どれ程努力してるか!」
「そう言われてもな……」
美琴は、間違いなく美人だ。
なにせ、彼女はギリシャ神話の女神・アフロディーテの血統種。
愛と美の女神であり、オリュンポス十二神の一柱である、最高美神。
彫りの深い顔立ちと、ダークブロンドの長い髪。初対面の相手には必ず『ハーフ?』と聞かれるらしい。
顔は小さく、手足は長く、ウエストはくびれているのに、出る所は出ている。
ぽっちゃりよりもスレンダー。な、女性が同性に支持されるこの国で、雅のようなゴージャスボディのモデルは稀少じゃなかろうか。いや、稀少だからこそ、人気を集めているのかもしれないけれど。
「俺以外の……世の中の男の大半は、きっと唯より美琴を選ぶ。それでいいじゃねぇか。それが納得いかないなら別れたほうがいいんじゃねぇの。美琴なら、他にいくらでも良い相手がいるだろ。美琴が一番好き、綺麗っていう男が」
こういう時、嘘でも『美琴が一番可愛いよ』と言ってやり過ごさない俺も大概だけど。
でも、譲れない。そこを許容してくれるという条件で、付き合い始めたんだから。
「ムカつく……っ! 別れないわよ。トップモデルのプライドをかけて、私を仁に認めさせてやるから!」
そう言って美琴は俺の正面に回り込むと、腹のあたりにグーパンを入れた。
だがしかし。こちとら最高ランクのSSS。美貌以外には特筆する能力の無い血統種に殴られた所で、痛くもかゆくも無い。
そんな俺に美貌のアフロディーテは再び『ムカつく~!』と声を上げ、更に眉間に皺を寄せるのだった。
一輝と凜が帰った後。
夕飯を食べ、シャワーを浴び……むくみが取れ、肌ツヤが良くなった? らしい美琴に、訊ねてみる。
「今のまま……って何?」
「俺みたいに結婚の意志が無い男と付き合い続けて、20代をつぶすこと」
脱ぎ散らかした服を集めながら、答える。
暖房の聞いた室内とはいえ、2月に半裸のままは、やはり寒い。
「は? 私の20代って、今つぶれてんの? 大好きな仕事を楽しんで、皆に自慢できる彼氏がいて、程よく自分時間も持ててるのに?」
そう言われて返す言葉を失っている俺を、美琴は笑う。
「仁てさ、やっぱり旧家のお坊ちゃんだよね。女はいずれ結婚して子供を産むもんだと思ってる。時代考えてよ? 皆が皆、そういうのに憧れてる筈だっていう決めつけ、迷惑なんだけど」
「そういうわけじゃねぇけど。好きな相手とずっと一緒にいる為の手段だろ? 一度も憧れっていうか……目指したいと思った事ねえの?」
「そもそも、離婚が法的に認められてる時点で、ずっと一緒にいる手段じゃないじゃん。自分がいい見本になってる自覚、無い?」
痛い所を突かれ、無意識に胸元に手を当ててしまう。
「てゆーか私、そこまで誰かを好きになった事ないんだよね。ずっと他人と一緒にいるとか、疲れるしムリ~」
おちょくるように言いながら、美琴は後ろから抱き付いてきた。
「ちょ……あたってる」
「なによ今更」
好反発素材で、ボリューミー。運動会の特訓で背中に受けていた、唯のとはまったく違う感触。
ああ……俺、本来はボリューミー派だったのに。
今は、理想のあれを堪能させて貰える、思春期男子からしたらこの上ない幸福な現状なのに。
それでも想い出すのは、唯の事ばかり。
「なんなら、も一回どぉ? 明日、大事な撮影があるのよね。てゆーか、いっそここで同棲しない? そしたら、わざわざ予定合わせて会う手間も無くなるし」
「手間って……」
モデルの仕事に誇りを持って全力で挑んでいる美琴は尊敬できる。
今まで俺の家柄や地位や財力を目当てに近付いてくる女は多かったけど……このタイプは初めてで。ある意味新鮮。そして、気楽。
「俺はもう、誰かと暮らすとか無理だから。絶対唯と比べちゃうし。それは流石に美琴もうっとおしいだろ?」
「……そんなにいい女だったの? 元嫁? でも見た目はイマイチだったんでしょ? 血統種派遣部門はアスカの主力だから、色んな情報が流れてくるんだけど……ルックスについては辛口な評判が多かったし」
ルックスで仕事を勝ち取って来たトップモデルらしい、シビアな意見。
「派手な顔じゃないけど、イマイチでは決して無い。俺は今でも、唯ほど可愛い女の子はこの世に居ないと思ってる」
「ちょっと。さすがに失礼じゃない? 普通、彼女にそーゆー事言う?」
「え、そこは気にするのか?」
恋人じゃ無く彼女、って、自称しておきながら?
ちょっと意外で、目を瞬かせてしまう。
「私の武器はルックスなのよ。モデルなんて100%見た目で勝負する職業なんだから。なのに、一番近くにいる男の一番になれないなんて、私のプライドが許さない」
「俺の一番は生涯唯だって言っただろ。全然いい~、気にしな~い! って言ってたじゃねえか」
「違うっ! 一番好きな女じゃなくても別にいいの! でも可愛い、綺麗、は私を首位にしてよ! 私がこのルックスを維持する為に、どれ程努力してるか!」
「そう言われてもな……」
美琴は、間違いなく美人だ。
なにせ、彼女はギリシャ神話の女神・アフロディーテの血統種。
愛と美の女神であり、オリュンポス十二神の一柱である、最高美神。
彫りの深い顔立ちと、ダークブロンドの長い髪。初対面の相手には必ず『ハーフ?』と聞かれるらしい。
顔は小さく、手足は長く、ウエストはくびれているのに、出る所は出ている。
ぽっちゃりよりもスレンダー。な、女性が同性に支持されるこの国で、雅のようなゴージャスボディのモデルは稀少じゃなかろうか。いや、稀少だからこそ、人気を集めているのかもしれないけれど。
「俺以外の……世の中の男の大半は、きっと唯より美琴を選ぶ。それでいいじゃねぇか。それが納得いかないなら別れたほうがいいんじゃねぇの。美琴なら、他にいくらでも良い相手がいるだろ。美琴が一番好き、綺麗っていう男が」
こういう時、嘘でも『美琴が一番可愛いよ』と言ってやり過ごさない俺も大概だけど。
でも、譲れない。そこを許容してくれるという条件で、付き合い始めたんだから。
「ムカつく……っ! 別れないわよ。トップモデルのプライドをかけて、私を仁に認めさせてやるから!」
そう言って美琴は俺の正面に回り込むと、腹のあたりにグーパンを入れた。
だがしかし。こちとら最高ランクのSSS。美貌以外には特筆する能力の無い血統種に殴られた所で、痛くもかゆくも無い。
そんな俺に美貌のアフロディーテは再び『ムカつく~!』と声を上げ、更に眉間に皺を寄せるのだった。
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