236 / 273
236.辞めないでって言われても困るけど言われないのも切ない
しおりを挟む
「あの……何言われても、俺、辞めますんで」
「そっか! うん、わかった! 一旦落ち着こう?」
違和感を覚える位の明るい表情と口調で応じる、課長。
「いや、大丈夫です。俺は十分落ち着いて」
「大丈夫! 何も強引に慰留しようとは思ってないからね? まずは落ち着こう? 落ち着いて話をしよう?」
課長と同じく、不自然すぎる笑顔で俺をガン見する岡崎さん。
だから、落ち着いてるって言ってんのに。
まぁ、予測はしてたけど。
今朝、課長に退職願を出して。その30分後にミーティングルームに呼び出されて。
そうしたら、そこはさながら就職の面接会場。
部屋の中央に就活生(俺)用の椅子が一脚。そしてその正面に長テーブルと面接官(課長と岡崎さん)用椅子が二脚。
どうやら、課長と岡崎さん……二人がかりで、俺の退職を阻止するつもりらしい。
「突然の事で、驚かせてしまったのは申し訳ないと思っています。でも俺なりに、真剣に考えた結果で」
「真剣に考えた結果おかしな結論に達した時は、自分の思考回路が正常に機能していない事を疑いなさい?」
「おかしな結論て。俺にとっては、最良の道だと思ってるんですけど」
きっぱりと断言する俺に、テーブルを叩いて立ち上がる岡崎さん。
「アスカを辞めて蓮さんのトコで働く道のどこが最良なのよ! 仁君は飛鳥のトップに立ちたいんじゃなかったの!? だからスカウト課で必死になってキャリアを積んで来たんでしょう!? アスクレピオスの件だって、色々悔しい想いはあったと思うけど、それでも歯を食いしばって耐えて来たのは、出世の為じゃない! なのにどうして今更……!?」
落ち着くべきはそっちだろうよ……と、思いはしたが。
岡崎さんはチーフとして新人スカウトマンだった俺を育ててくれた恩人だ。俺が選んだ道に意見する権利は十分にある。
「俺も岡崎と同じ意見だよ。将来有望な部下が、輝かしい将来投げうとうとしているんだ。止めたくもなる。理由を聞きたくもなる。蓮さんに高額のギャラで誘われたか? それとも一族の中で、そうせざるを得ない事情が出て来たのか?」
「いえ。プライベートな理由です。申し訳ないんですけど」
「申し訳なくなんかないわ? プライベートあっての仕事だもの。でも……何があったのか、もしよければ、話してくれる?」
「……俺、今でも死ぬ程、元嫁さんの事が好きなんですよ」
「「は?」」
やさし~く、俺の心の内を聞き出そうとしていた態度から一転。
『何言ってんだこいつ』みたいな表情で、互いの顔を見合う課長と岡崎さん。
「ええと? 元嫁さんていうと、唯子さんよね?」
「はい」
「仁が唯子さんに未練がある事と、今回の退職転職と、どういう関係があるんだ?」
「実は唯、俺の知らない所で死にかけてたらしくて」
「「ええぇ!?」」
シンクロ、アゲイン。二人共、かなり驚いた様子。一度は席についていた岡崎さんも、再び課長と共に立ち上がった。
「あ、大丈夫だったんですけど。無事に回復して、先日退院できまして」
「そ、そうなの……よかった……」
「はい。ホントによかったんですよ。もしも彼女が死んでたら、俺もそっこーで後を追ってたと思うんで」
「仁……」
重めの方向に話が進み、何て言葉を掛けたら良いか、わかりかねている課長。
「俺、彼女の事を忘れようとしてたんです。人生やり直さなきゃなって思って。で、実際にいい感じにいってたんです。でも……仕事で評価されても、友達や彼女と楽しく過ごしてても、心が動いてる感じが全く無くて。それでも、自分は幸せだ、第二の人生充実してるって、自分に言い聞かせてた……んですけど」
唯がいなくなるかもと思った瞬間、今の暮らし全てが空洞だったと気付いた。
「結局、唯がいないと俺、何にもないんですよ。悲しい事も悔しい事も傷つく事も無い。その代わりに嬉しい事も楽しい事も、心から幸せだって感じる事もない」
唯は俺の全て。わかってた。抗うだけ無駄だったんだ。
「だから、蓮さんの所に行くの? 唯子さんと同じ職場で……少しでも唯子さんと一緒にいられるように?」
「はい」
「いやいや、やっぱりおかしいだろ! だって唯子さんは今、蓮さんの嫁さんなんだぞ? それだけ愛してる女が、夫とやってる会社で働くなんて……同じシャンプーの香り漂わせて、一緒に出社して一緒に退社して行く所を、お前はただ指をくわえて見てるしかないんだぞ!? 地獄じゃないか!」
「俺にとっての地獄は、唯が存在しない世界なんですよ」
懸命に説得してくれようとする課長も、俺の返答に押し黙る。
「これから先、また俺の知らない所で唯に危険が及ぶんじゃって……想像しただけで震えます。だから可能な限り傍にいて、守って行きたいんです。恋人や夫じゃなきゃ傍にいちゃいけないなんて決まり、ないでしょう?」
「それは……そうだけど」
「だ、だめですよ課長、押し切られちゃ! 百歩譲って、仁君はそれでいいとして、蓮さんは? まだ正式に内定貰ってないのよね? 奥さんの元夫を自分の会社に入れるなんて、常人の神経じゃ考えられないわ。ここを辞めて、でも採用してもらえなくて露頭に迷う、なんて事になったらそれこそ悲劇よ?」
「SSSの仁が露頭に迷うなら、この国の血統種は皆プータローになってんだろ……」
「蓮さんには、少し考えさせてくれって言われてます」
「ほぉら! その言い方、ノーの前置きとして使うやつじゃない!」
なぜか鬼の首を取ったようなドヤ顔で腕を組む岡崎さん。
「でも、断れないと思います。社長に直談判済みなんで」
「「社長に!?」」
またしても、ナイスハモり。もう、デュエット組めるんじゃねえかこの二人。
「紫苑さんの件でごたついた時、異動でも出世でも何でも力になる~風な事言われてたんで。それを蒸し返して、だったら蓮さんの会社に入れてくれって頼みました」
「出世でも異動でもないじゃない! よく社長もOKしてくれたわね?」
「断るならストーカーになるって言ったんです。SSSがストーカーとか、怖いっすよって」
「SSSの無駄遣い……っ」
「お願いっていうか、脅迫じゃない……」
課長も岡崎さんも、額に手を当ててうなだれる。
「お世話になったお二人にご心配をおかけして申し訳ありません。でも……不出来な部下が幸せに向かって猛進する姿、温かい目で見送って頂ければと思います。引継ぎは、しっかりしていきますんで」
「はぁ……何言っても無駄って事か……」
「残念だわ……ホント寂しくなる。清香ちゃんにはもう話してあるのよね? あの子も不安でしょうね。パートナーが仁だからうまく行ってたってトコ、あると思うし」
「あ、すいません、斎藤も連れて行きます。俺の監視役させるらしいです。それが社長が出した条件なんで」
アシスタントの今後についての報告。二人はもう、大声を上げて驚く事はなかった。
ただ消え入りそうな声で『も~やだ』とか『なんでもありじゃん』とか呟いていて。
驚き疲れて疲労困憊な様が、見て取れた。
「そっか! うん、わかった! 一旦落ち着こう?」
違和感を覚える位の明るい表情と口調で応じる、課長。
「いや、大丈夫です。俺は十分落ち着いて」
「大丈夫! 何も強引に慰留しようとは思ってないからね? まずは落ち着こう? 落ち着いて話をしよう?」
課長と同じく、不自然すぎる笑顔で俺をガン見する岡崎さん。
だから、落ち着いてるって言ってんのに。
まぁ、予測はしてたけど。
今朝、課長に退職願を出して。その30分後にミーティングルームに呼び出されて。
そうしたら、そこはさながら就職の面接会場。
部屋の中央に就活生(俺)用の椅子が一脚。そしてその正面に長テーブルと面接官(課長と岡崎さん)用椅子が二脚。
どうやら、課長と岡崎さん……二人がかりで、俺の退職を阻止するつもりらしい。
「突然の事で、驚かせてしまったのは申し訳ないと思っています。でも俺なりに、真剣に考えた結果で」
「真剣に考えた結果おかしな結論に達した時は、自分の思考回路が正常に機能していない事を疑いなさい?」
「おかしな結論て。俺にとっては、最良の道だと思ってるんですけど」
きっぱりと断言する俺に、テーブルを叩いて立ち上がる岡崎さん。
「アスカを辞めて蓮さんのトコで働く道のどこが最良なのよ! 仁君は飛鳥のトップに立ちたいんじゃなかったの!? だからスカウト課で必死になってキャリアを積んで来たんでしょう!? アスクレピオスの件だって、色々悔しい想いはあったと思うけど、それでも歯を食いしばって耐えて来たのは、出世の為じゃない! なのにどうして今更……!?」
落ち着くべきはそっちだろうよ……と、思いはしたが。
岡崎さんはチーフとして新人スカウトマンだった俺を育ててくれた恩人だ。俺が選んだ道に意見する権利は十分にある。
「俺も岡崎と同じ意見だよ。将来有望な部下が、輝かしい将来投げうとうとしているんだ。止めたくもなる。理由を聞きたくもなる。蓮さんに高額のギャラで誘われたか? それとも一族の中で、そうせざるを得ない事情が出て来たのか?」
「いえ。プライベートな理由です。申し訳ないんですけど」
「申し訳なくなんかないわ? プライベートあっての仕事だもの。でも……何があったのか、もしよければ、話してくれる?」
「……俺、今でも死ぬ程、元嫁さんの事が好きなんですよ」
「「は?」」
やさし~く、俺の心の内を聞き出そうとしていた態度から一転。
『何言ってんだこいつ』みたいな表情で、互いの顔を見合う課長と岡崎さん。
「ええと? 元嫁さんていうと、唯子さんよね?」
「はい」
「仁が唯子さんに未練がある事と、今回の退職転職と、どういう関係があるんだ?」
「実は唯、俺の知らない所で死にかけてたらしくて」
「「ええぇ!?」」
シンクロ、アゲイン。二人共、かなり驚いた様子。一度は席についていた岡崎さんも、再び課長と共に立ち上がった。
「あ、大丈夫だったんですけど。無事に回復して、先日退院できまして」
「そ、そうなの……よかった……」
「はい。ホントによかったんですよ。もしも彼女が死んでたら、俺もそっこーで後を追ってたと思うんで」
「仁……」
重めの方向に話が進み、何て言葉を掛けたら良いか、わかりかねている課長。
「俺、彼女の事を忘れようとしてたんです。人生やり直さなきゃなって思って。で、実際にいい感じにいってたんです。でも……仕事で評価されても、友達や彼女と楽しく過ごしてても、心が動いてる感じが全く無くて。それでも、自分は幸せだ、第二の人生充実してるって、自分に言い聞かせてた……んですけど」
唯がいなくなるかもと思った瞬間、今の暮らし全てが空洞だったと気付いた。
「結局、唯がいないと俺、何にもないんですよ。悲しい事も悔しい事も傷つく事も無い。その代わりに嬉しい事も楽しい事も、心から幸せだって感じる事もない」
唯は俺の全て。わかってた。抗うだけ無駄だったんだ。
「だから、蓮さんの所に行くの? 唯子さんと同じ職場で……少しでも唯子さんと一緒にいられるように?」
「はい」
「いやいや、やっぱりおかしいだろ! だって唯子さんは今、蓮さんの嫁さんなんだぞ? それだけ愛してる女が、夫とやってる会社で働くなんて……同じシャンプーの香り漂わせて、一緒に出社して一緒に退社して行く所を、お前はただ指をくわえて見てるしかないんだぞ!? 地獄じゃないか!」
「俺にとっての地獄は、唯が存在しない世界なんですよ」
懸命に説得してくれようとする課長も、俺の返答に押し黙る。
「これから先、また俺の知らない所で唯に危険が及ぶんじゃって……想像しただけで震えます。だから可能な限り傍にいて、守って行きたいんです。恋人や夫じゃなきゃ傍にいちゃいけないなんて決まり、ないでしょう?」
「それは……そうだけど」
「だ、だめですよ課長、押し切られちゃ! 百歩譲って、仁君はそれでいいとして、蓮さんは? まだ正式に内定貰ってないのよね? 奥さんの元夫を自分の会社に入れるなんて、常人の神経じゃ考えられないわ。ここを辞めて、でも採用してもらえなくて露頭に迷う、なんて事になったらそれこそ悲劇よ?」
「SSSの仁が露頭に迷うなら、この国の血統種は皆プータローになってんだろ……」
「蓮さんには、少し考えさせてくれって言われてます」
「ほぉら! その言い方、ノーの前置きとして使うやつじゃない!」
なぜか鬼の首を取ったようなドヤ顔で腕を組む岡崎さん。
「でも、断れないと思います。社長に直談判済みなんで」
「「社長に!?」」
またしても、ナイスハモり。もう、デュエット組めるんじゃねえかこの二人。
「紫苑さんの件でごたついた時、異動でも出世でも何でも力になる~風な事言われてたんで。それを蒸し返して、だったら蓮さんの会社に入れてくれって頼みました」
「出世でも異動でもないじゃない! よく社長もOKしてくれたわね?」
「断るならストーカーになるって言ったんです。SSSがストーカーとか、怖いっすよって」
「SSSの無駄遣い……っ」
「お願いっていうか、脅迫じゃない……」
課長も岡崎さんも、額に手を当ててうなだれる。
「お世話になったお二人にご心配をおかけして申し訳ありません。でも……不出来な部下が幸せに向かって猛進する姿、温かい目で見送って頂ければと思います。引継ぎは、しっかりしていきますんで」
「はぁ……何言っても無駄って事か……」
「残念だわ……ホント寂しくなる。清香ちゃんにはもう話してあるのよね? あの子も不安でしょうね。パートナーが仁だからうまく行ってたってトコ、あると思うし」
「あ、すいません、斎藤も連れて行きます。俺の監視役させるらしいです。それが社長が出した条件なんで」
アシスタントの今後についての報告。二人はもう、大声を上げて驚く事はなかった。
ただ消え入りそうな声で『も~やだ』とか『なんでもありじゃん』とか呟いていて。
驚き疲れて疲労困憊な様が、見て取れた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
鬼隊長は元お隣女子には敵わない~猪はひよこを愛でる~
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「ひなちゃん。
俺と結婚、しよ?」
兄の結婚式で昔、お隣に住んでいた憧れのお兄ちゃん・猪狩に再会した雛乃。
昔話をしているうちに結婚を迫られ、冗談だと思ったものの。
それから猪狩の猛追撃が!?
相変わらず格好いい猪狩に次第に惹かれていく雛乃。
でも、彼のとある事情で結婚には踏み切れない。
そんな折り、雛乃の勤めている銀行で事件が……。
愛川雛乃 あいかわひなの 26
ごく普通の地方銀行員
某着せ替え人形のような見た目で可愛い
おかげで女性からは恨みを買いがちなのが悩み
真面目で努力家なのに、
なぜかよくない噂を立てられる苦労人
×
岡藤猪狩 おかふじいかり 36
警察官でSIT所属のエリート
泣く子も黙る突入部隊の鬼隊長
でも、雛乃には……?
→📚️賛否分かれる面白いショートストーリー(1分以内で読了限定)
ノアキ光
大衆娯楽
(▶アプリ無しでも読めます。 目次の下から読めます)
見ていただきありがとうございます。
1分前後で読めるショートストーリーを投稿しています。
不思議なことに賛否分かれる作品で、意外なオチのラストです。
ジャンルはほとんど現代で、ほのぼの、感動、恋愛、日常、サスペンス、意外なオチ、皮肉、オカルト、ヒネリのある展開などです。
日ごとに違うジャンルを書いていきますので、そのときごとに、何が出るか楽しみにしていただければ嬉しいです。
(作品のもくじの並びは、上から順番に下っています。最新話は下になります。読んだところでしおりを挟めば、一番下までスクロールする手間が省けます)
また、好みのジャンルだけ読みたい方は、各タイトル横にジャンル名を入れますので、参考にしていただければ、と思います。
短いながら、よくできた作品のみ投稿していきますので、よろしくお願いします。
【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!
satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。
働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。
早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。
そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。
大丈夫なのかなぁ?
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
俺様御曹司は十二歳年上妻に生涯の愛を誓う
ラヴ KAZU
恋愛
藤城美希 三十八歳独身
大学卒業後入社した鏑木建設会社で16年間経理部にて勤めている。
会社では若い女性社員に囲まれて、お局様状態。
彼氏も、結婚を予定している相手もいない。
そんな美希の前に現れたのが、俺様御曹司鏑木蓮
「明日から俺の秘書な、よろしく」
経理部の美希は蓮の秘書を命じられた。
鏑木 蓮 二十六歳独身
鏑木建設会社社長 バイク事故を起こし美希に命を救われる。
親の脛をかじって生きてきた蓮はこの出来事で人生が大きく動き出す。
社長と秘書の関係のはずが、蓮は事あるごとに愛を囁き溺愛が始まる。
蓮の言うことが信じられなかった美希の気持ちに変化が......
望月 楓 二十六歳独身
蓮とは大学の時からの付き合いで、かれこれ八年になる。
密かに美希に惚れていた。
蓮と違い、奨学金で大学へ行き、実家は農家をしており苦労して育った。
蓮を忘れさせる為に麗子に近づいた。
「麗子、俺を好きになれ」
美希への気持ちが冷めぬまま麗子と結婚したが、徐々に麗子への気持ちに変化が現れる。
面倒見の良い頼れる存在である。
藤城美希は三十八歳独身。大学卒業後、入社した会社で十六年間経理部で働いている。
彼氏も、結婚を予定している相手もいない。
そんな時、俺様御曹司鏑木蓮二十六歳が現れた。
社長就任挨拶の日、美希に「明日から俺の秘書なよろしく」と告げた。
社長と秘書の関係のはずが、蓮は美希に愛を囁く
実は蓮と美希は初対面ではない、その事実に美希は気づかなかった。
そして蓮は美希に驚きの事を言う、それは......
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる