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汚れを消し去る洗うという行為は潤いも一緒に落としているので身も心も洗い過ぎは良くない

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 ノースリーフへと旅立つ日の朝。
 陛下にお別れの挨拶をしようと、お部屋を訪ねてみたが、あいにくの留守だった。

 いや、留守というか、正確に言うと……

 「俺としたことが……」

 うっかりしていた。今日は『恵みの日』だ。
 巫女である女王が神から啓示を賜る、月の最終日。

 この日ばかりは、陛下は公務から離れ、一日中『恵みの間』で神に祈りを捧げ続ける。
 一度その部屋に入ってしまえば、夜の十二時を過ぎるまで、何者も立ち入る事を許されない。
 誰であっても、そしてどんな事情があっても。

 「まだ間に合うかもしれない……!」

 一縷の望みを胸に、長い廊下を走り抜ける。

 陛下は『恵みの間』に入る前に、身を清める為に湯あみをされる。
 現在時刻は午前七時。いつも陛下が湯あみを終えられる頃。

 ノースリーフへ行ったら、もう護衛騎士のような距離でお言葉を交わす事は出来ないだろう。
 だから一言でもいい。きちんとご挨拶させて頂きたい。

 可能であれば、あらわな陛下のお姿を拝謁して『きゃー! えっち!』とか言われて、お湯でもかけられたい……

 でも待て……?
 もし真っ平らな胸と、股の間にぶら下がるモノを見てしまったら……俺は卒倒せずにいられるだろうか?

 陛下の真実を理解したつもりでいて、まだその男子としてのお姿を想像する事を、意識的に避けている俺が。

 いやむしろ、直視してしまえば『もしかしたら』というわずかな希望から解放されて、真の意味で全てを受け入れる事ができるのか……?

 わからない。

 その時の事は、その時考えよう。

 今はただ、お会いしたい。

 あの方に、どうしてもお伝えしたい事がある。

 「失礼します! 陛下!!」

 俺は『恵みの間』の前室……神殿のように荘厳な造りの浴場『禊ぎの間』の扉を勢いよく開けた。
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