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生理現象と呼ばれる大抵の事は恥ずかしいのでその呼び方にはなんのフォロー力も無い

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 俺が陛下と、兄妹のように親しくさせて頂いていたのは、全て父のはからいによるものだった。
 
 立場上、同年代の友人ができにくい王女殿下の事を、父はいつも心配していた。
 
 けれど利権問題に敏感な貴族の子供を、友達候補として斡旋するわけにはいかない。
 子供同士の友情を利用して、次期女王の権威をかさに着ようとする大人達を、ローラ王女に関わらせない為に。

 そういう意味で、実の息子である俺はうってつけの人材だったのだ。

 そして父の望み通り、陛下と俺は良い友情を築いた。

 楽しそうに遊ぶ俺達を、目を細めて見守っていた父の姿は、よく覚えている。
 俺が陛下を女性として愛していると伝えた時の、驚いた顔も。

 もしかしたら父は、陛下が男性だという事を知っていたのかもしれない。
 だから、あの時……叶わぬ恋に身を焦がす息子を、哀れむような目で見たのだろうか。

 そんな父は、きっと想像もしなかっただろう。

 後継ぎ息子が、事もあろうに湯あみ中の陛下を……後ろから抱きしめている姿なんて。


 「離して……離してレオ」

 「離しません。あなたは卑怯です。この状況で泣かれたら……ご挨拶だけ済ませて退散なんて、出来る筈無いじゃありませんか」

 俺の手を振りほどこうともがく陛下を、一層強く抱きしめる。
 いくら男でも、一回り以上体の大きな俺には叶う筈が無い。それを察した陛下の体からは、次第に力が抜けて行った。

 「もう私には構わないで。あなたには幸せになってほしいの。ノースリーフにはが……あなたが望んだ通り、私にうり二つの従妹が待っているから。新しい恋をして、私を忘れる為にあんな事を願い出たのでしょう? だったら――」

 「そうですね。あなたの従妹君ならば、きっと美しく、心優しく、素晴らしい方なのでしょう。従妹君が私を受け入れて下されば、お付き合いをして、結婚をして、良い家庭を築けるかもしれません」

 「そうよ。男の私とじゃ、そんな未来は来な――」

 「でも、それでも私はあなたを生涯想い続ける」

 お言葉を遮り、そう言い切った俺に、ピクリと反応する陛下。

 「忘れられる、なんて、始めから思っていません。俺はこれからも、あなたへの愛を抱えながら生きて行くんです。今までと同じように。新しい出会いは、叶わぬ恋の痛みを誤魔化す程度の作用しか持たない。全身傷だらけの人間に、薬草の葉をたった一枚渡すようなものです」

 「……それでは、新しい恋の相手に失礼でしょう」

 「無礼を承知で申し上げますが……陛下に私を失礼だと罵る権利はありません」

 『え?』と、振り返ろうとする陛下の耳が、俺の鼻先に近付く。
 例えようのないいい香り。花のような蜜のような。

 その瞬間、一気に冷静になった。

 なんだこの状況は。
 
 目の前には全裸の想い人。そこに密着する自分。

 湯に浸り、既に熱くなっている下半身に、全身の血液が集まってくるのを感じる。

 もう、腕の中にいるこの方が男だとか女だとか、そんな事を考えるゆとりは無い。

 俺は必死になって、父親が死んだ日の悲しみを思い起こした。
 頭と心とあそこを、クールダウンさせる為に。
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