女王様に恋する騎士は身分違いに悩むが、問題はそこではなかった

杏 みん

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女が思わせぶりな態度をとる時、それは自分の愛を伝えたい時かその気は無いけど愛させたい時

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 先代の騎士団長であり俺の父でもある、リナルド・レノックス伯爵は素晴らしい人だった。

 勤勉と誠実を愛し、怠慢と不義を嫌う。
 けれど、決して真面目過ぎる堅物では無く、ユーモアのある愛情深い男で――。

 俺の家族も、騎士団の仲間達も、先代の女王陛下も、ローラ様も……皆が父を愛し、信頼していた。

 あの人は俺にとって、尊敬する騎士であり、理想の男であり、かけがえのない父親だった。

 だから……5年前、父が亡くなった時は、途方もない喪失感に襲われて……。




 よし。

 絶望にも似た当時の悲しみを思い出したら、心も体も、いい感じに萎えてきた。


 「レオ?」

 「あ、いえ、その、陛下に私を罵る権利が無いというのはつまり……あなたも私に対し、失礼を働いているじゃありませんか。と、いう意味で」

 「……あなたに私が男だと、隠してた事を言ってるの?」

 「違います。男だから、私の気持ちを受け入れられないと言っておきながら……優しく頬を撫でたり、急に泣き出したり。そういう思わせぶりな態度をとられると、もしかしたら陛下も私を想って下さっているのではと……あり得ない期待をしてしまうのです。
 そうやって気持ちを振り回す事は、真摯にあなたを愛している相手に対し、失礼だとは思いませんか?」

 思い切って、ありのままの気持ちを吐き出させて頂いた。

 一介の騎士如きが女王陛下に抗議をするなど、非常識極まりないとわかってはいるが。
 こんな事を言えるチャンスは今が最後だろうから。

 沈黙する陛下。

 さすがに、不快な思いをさせてしまっただろうか。

 陛下は、常に何事にも一生懸命励まれているお方だから……自分の至らぬ点を指摘されると、言った側が思う以上にダメージを受けてる事が多々ある。

 エレナ嬢に暗殺されかけた時も、そうであったように。

 どうする。
 最後の最後に、悪印象を残して去りたくはない。謝るか?
 けれど、自分が間違った事を言ってると思っていないのに、口先だけで謝罪するのはいかがなものだろう。

 そうやって俺が一人、心の中で葛藤してる最中――陛下がぼそりと言った。

 「あり得ないなんて……どうして思うの」

 「は……?」

 「い、いいえ、なんでもないわ。元気でいてね。むこうに着いたら、ソレリによろしく――」

 再び、俺の手をほどこうとする陛下。

 が、させない。絶対に逃がせない。
 
 誤魔化すのが下手すぎる愛しい君主が、俺の胸が期待に膨らみ過ぎて破裂するのではないかという位……思わせぶりな発言をしたから。

 「あなたも……私を好きだという事ですか?」
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