女王様に恋する騎士は身分違いに悩むが、問題はそこではなかった

杏 みん

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瓜の食べ方を知ってる人はそうそういない

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 うり二つ、という言葉がある。

 瓜を割ると、その断面は殆ど同じだということから、よく似ている様を表すとされているが……。

 「ごめんなさい。お仕事中に突然」

 これはもう、断面とかじゃなく。
 同じ瓜が二つある。としか思えないレベルのそっくりよう。

 「もうノースリーフにいらしているとお聞きしていたものですから、一度ご挨拶をと」

 天の川の様に光り輝く金髪も。華やかな目鼻立ちも。背格好も、声も、柔らかで落ち着いた物腰さえ。

 「レオナルド様? やはり……ご迷惑でしたか?」

 「いえいえいえいえいえいえいえいえいえ!! 全く!! 迷惑だなんて事は断じてございませんっ!!」

 ローラ女王と激似。
 それが、陛下の従妹君であらせられるソレリ王女の、強烈な第一印象だった。
 


 食堂にソレリ様がいらした時は心底驚いた。

 『陛下!! なぜこんな所に……!!』

 そう絶叫した俺に、ソレリ様は驚く様子もなく、丁寧に自己紹介をして下さったのだ。

 俺はすぐさま上官に掛け合い、しばしの間ソレリ様とお話しする時間を貰った。

 『女といちゃつく為の時間をくれなんて、新入りが何ふざけた事言ってるんだ!』と怒鳴っていた上官も、俺を訪ねてきたのが王女殿下である事を知ると、態度を一変させたのだ。そりゃあもう清々しい位に。

 そんなこんなで、俺はソレリ王女と来賓室でお茶を飲み交わす事になり、今に至る――。


 
 「迷惑どころか、本来私の方から伺うべき所を……申し訳ありません。それに初対面であのような失態を……」

 「私をお姉様と見間違えた事をおっしゃっているの? お気になさらないでください。畏れ多い事ですが、私とお姉様は、とてもよく似ているようですから」

 「お姉様……陛下の事でしょうか?」

 ご弟妹のいらっしゃらない陛下をそう呼ぶ人は初めてで、新鮮な違和感を覚える。

 「あ……お許しくださいませね。国を統べる君主に対し、無礼だと承知はしているのですが……幼い頃からあの方は私を妹のように可愛がって下さっているものですから。つい」

 少し困ったような笑みを浮かべるソレリ王女。眉尻を下げるその表情も、陛下にそっくりだ。

 俺が『このトマトを食べてさしあげる代わりに、今日の公務は取りやめて下さい。体調不良時はしっかりお休みになりませんと』と申し上げた時も、同じ顔をしていた。結局はご公務を断行なさったが……。

 「そうでしたか。私も恐れながら陛下とは幼少期よりお付き合いさせて頂いておりましたが……あなた様のようなご親戚がいらしたとは存じ上げず」

 「私は体が弱いので、公の場に出た事は殆ど無くて。今ここで暮らしているのも、静養の為なのです」

 『え!?』と、思わず立ち上がってしまう。

 「そのようなお方にご足労をお掛けするとは、誠に申し訳ない……! すぐにご自宅までお送り致します! この駐屯地では鉄砲の訓練も致します。あの煙はお体に障りますので!」

 「ああ、ごめんなさい気を遣わせて。ここ何年かは落ち着いているので、ご心配なさらないで。それに、お約束も取り付けず、突然参りましたのはこちらです。ごめんなさいね。お姉さまから常々あなたの事を聞いていたものですから……少しでも早くお会いしたくて」

 そうおっしゃり、澄んだ瞳で俺を見つめるソレリ王女。
 
 まずい。

 この方は出会って早々、俺に心を奪われてしまったようだ。

 俺とした事が、うかつだった。
 
 顔よし、スタイルよし、身分、家柄、申し分なし、の、独身貴族。
 自分が上の上に位置する、優良物件だという事をすっかり忘れていた。

 世間的には左遷された女たらし、というレッテルを貼られてはいるが。愛を貫いたが故に失脚した美男……ならば、女性によっては、魅力的に感じるものなのかもしれない。

 最初の目的を思えば、ソレリ様が俺に想いを寄せて下さるのは大歓迎なのだが……。
 陛下が男でも構わないと覚悟したあの時から、俺の心に他の女性が入り込む余地はない。ただの数ミリさえも。
 陛下が女性であり、俺を想って下さっていると知った今は、尚更――。

 俺はなんと愚かな男だろう。
 なぜソレリ様に会った瞬間に、全裸で鼻の穴にフォークを突込みながら踊り狂う……位の事をしなかったのか。
 
 それ程の奇行を見せつけなければ、女性は好きになってしまうに決まっているのに。このモテ要素の塊である俺を。

 しかし、いくら悔やもうとも時すでに遅し。
 今はとにかく、俺達の関係が発展する事を、穏便に阻止しなければ。

 「あ、あの、ソレリ王女。実は……」

 「レオナルド様、単刀直入にお聞きしてもよろしいですか?」

 こちらの言葉を最後まで聞かず、ずいと俺の顔を覗き込むソレリ様。

 「私と、子供を作る気はおありになって?」

 ダメだ。

 彼女の中では、既に色んなものが発展してしまっている。

 俺は初めて、自分をこうもハイスペックに産み、育てた両親を恨んだ。
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