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コウノトリの人選は謎
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「こ……子供……?」
「ええ子供。子孫。私との間に……お望みになりますか?」
あまりの急展開に、軽く眩暈がする。
俺は何と罪深い男。
初めて会ったばかりの女性に、そこまで先の未来を妄想させるとは。
「え、ええと……それは……」
どう答えればいいんだ。
これは『自分と結婚する意志があるのか?』という確認?
それとも『自分と子供が出来る原因行為に及びばないか?』というお誘い?
どちらであっても、陛下一筋の身としては、答えは『ノー』に決まっているのが……。
自分から紹介して欲しいと頼んでおいて断るというのもーー。
「品の無いお尋ねで申し訳ありません、レオナルド様。ですが……」
豪勢なソファに、向かい合わせに座っていた筈なのに。
気が付けば、愛する人とうり二つのそのお方は、俺の隣にいて――
「お互いの時間を無駄にしない為にも……お答えください」
騎士服の袖を、キュっと小さな手で掴み、上目遣いで俺を見るソレリ様。
間近で見ると、ますます陛下によく似ておいでだ。
唯一の相違点であろう十二分に膨らんだお胸が、俺の腕に当たりそうで……ドキドキムラムラの波が押し寄せる。
……俺がこの方を選べば、全て丸く収まるのだろうか。
俺と結ばれる事は無いと、陛下はおっしゃった。
その真意はわからないけれど……あんなめちゃくちゃな嘘をついてまで俺を遠ざけようとしたのだ。きっと深刻な事情があるのだろう。
一介の騎士である俺などには、背負い切れない程、重い……。
ならば立場をわきまえ、身を引くのも忠義の形では無いか。
幸い、ソレリ様は俺を見初めて下さったようだし。
この方と結ばれれば、皆が幸せになれるのやも……
皆が……皆が……? 本当に?
細い肩を震わせて泣いていたあの方は……本当にそれで幸せになれるのか?
これから先もずっと、お一人で何かを背負い続けて行かれるのではないか?
「申し訳ありません!!」
王女の両腕を掴み、いささか強引に引き離す。
突然の事に驚き、目を見開くソレリ様。
「私はきっと……あなたと、原因行為は出来ると思うのです! 体もばっちり反応するとは思うのです!」
「げんいんこうい? なんですか、そ」
「でもそれは、あなたが陛下とうり二つでいらっしゃるからで! 唯一違うのは、陛下よりもお胸が豊であらせられる所ですが……元々私は手の平から少々溢れる程度を理想としておりますので全く問題なくて! むしろ大歓迎の筈なのですが……」
俺の言わんとしている事を解せぬ様子の殿下は、ぱちくりと目を瞬かせる。
「ですが……私はきっと、あなた自身を愛する事はない。私は生涯、あなたを中に陛下を見るでしょう。あなたと笑い合っている瞬間も、あの方がお一人で苦しんでいないかと、不安で胸を痛めるでしょう。
申し訳ありませんが、こればかりは自分でもどうにもならないのです。楽になりたくて……忘れたいと何度も願いましたが……無理だった」
独白に近い形で喋り続けているうちに、声が震えてきた。
「愛しているのです。どうしようもなく。今も……お会いしたくて、たまらない……っ」
「レオナルド様……?」
愛とは、本当に厄介なものだ。
同じ顔なのに。同じ声なのに。それどころか、バストは理想のサイズなのに。それでも……
「申し訳ありません。あなたと子供は作れません。私は……これからもローラ様だけを想って、自家放電して行く所存です」
涙を浮かべながらそう言った俺を、黙って見つめるソレリ様。
お怒りになっただろうか。
無理もない。婦女子からの誘いにこんな返答をしては……恥をかかされたと思われても、致し方の無い事。
でも、これだけは譲れない。偽りたくはない。
来賓室に、重苦しく横たわる沈黙。
が――それを破ったのは……存外に大きな、ソレリ様の笑い声だった。
「ええ子供。子孫。私との間に……お望みになりますか?」
あまりの急展開に、軽く眩暈がする。
俺は何と罪深い男。
初めて会ったばかりの女性に、そこまで先の未来を妄想させるとは。
「え、ええと……それは……」
どう答えればいいんだ。
これは『自分と結婚する意志があるのか?』という確認?
それとも『自分と子供が出来る原因行為に及びばないか?』というお誘い?
どちらであっても、陛下一筋の身としては、答えは『ノー』に決まっているのが……。
自分から紹介して欲しいと頼んでおいて断るというのもーー。
「品の無いお尋ねで申し訳ありません、レオナルド様。ですが……」
豪勢なソファに、向かい合わせに座っていた筈なのに。
気が付けば、愛する人とうり二つのそのお方は、俺の隣にいて――
「お互いの時間を無駄にしない為にも……お答えください」
騎士服の袖を、キュっと小さな手で掴み、上目遣いで俺を見るソレリ様。
間近で見ると、ますます陛下によく似ておいでだ。
唯一の相違点であろう十二分に膨らんだお胸が、俺の腕に当たりそうで……ドキドキムラムラの波が押し寄せる。
……俺がこの方を選べば、全て丸く収まるのだろうか。
俺と結ばれる事は無いと、陛下はおっしゃった。
その真意はわからないけれど……あんなめちゃくちゃな嘘をついてまで俺を遠ざけようとしたのだ。きっと深刻な事情があるのだろう。
一介の騎士である俺などには、背負い切れない程、重い……。
ならば立場をわきまえ、身を引くのも忠義の形では無いか。
幸い、ソレリ様は俺を見初めて下さったようだし。
この方と結ばれれば、皆が幸せになれるのやも……
皆が……皆が……? 本当に?
細い肩を震わせて泣いていたあの方は……本当にそれで幸せになれるのか?
これから先もずっと、お一人で何かを背負い続けて行かれるのではないか?
「申し訳ありません!!」
王女の両腕を掴み、いささか強引に引き離す。
突然の事に驚き、目を見開くソレリ様。
「私はきっと……あなたと、原因行為は出来ると思うのです! 体もばっちり反応するとは思うのです!」
「げんいんこうい? なんですか、そ」
「でもそれは、あなたが陛下とうり二つでいらっしゃるからで! 唯一違うのは、陛下よりもお胸が豊であらせられる所ですが……元々私は手の平から少々溢れる程度を理想としておりますので全く問題なくて! むしろ大歓迎の筈なのですが……」
俺の言わんとしている事を解せぬ様子の殿下は、ぱちくりと目を瞬かせる。
「ですが……私はきっと、あなた自身を愛する事はない。私は生涯、あなたを中に陛下を見るでしょう。あなたと笑い合っている瞬間も、あの方がお一人で苦しんでいないかと、不安で胸を痛めるでしょう。
申し訳ありませんが、こればかりは自分でもどうにもならないのです。楽になりたくて……忘れたいと何度も願いましたが……無理だった」
独白に近い形で喋り続けているうちに、声が震えてきた。
「愛しているのです。どうしようもなく。今も……お会いしたくて、たまらない……っ」
「レオナルド様……?」
愛とは、本当に厄介なものだ。
同じ顔なのに。同じ声なのに。それどころか、バストは理想のサイズなのに。それでも……
「申し訳ありません。あなたと子供は作れません。私は……これからもローラ様だけを想って、自家放電して行く所存です」
涙を浮かべながらそう言った俺を、黙って見つめるソレリ様。
お怒りになっただろうか。
無理もない。婦女子からの誘いにこんな返答をしては……恥をかかされたと思われても、致し方の無い事。
でも、これだけは譲れない。偽りたくはない。
来賓室に、重苦しく横たわる沈黙。
が――それを破ったのは……存外に大きな、ソレリ様の笑い声だった。
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