女王様に恋する騎士は身分違いに悩むが、問題はそこではなかった

杏 みん

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若さは尊いが年相応の美しさだってある

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 王都より西に、馬車を一時間ほど走らせた所に、俺の実家はある。
 4年前、騎士団訓練学校に入るまで住んでいた、場所。

 王城の3分の1程度の敷地に、祖父の代で立て替えた広い屋敷。そこには現在、母と十数名の使用人達が暮らしていて。

 父の追悼記念集会は、毎回そこで行ってきた。没後1年、3年、そして5年になる今回も。

 会はまず、礼拝から始まる。牧師を招き、庭に設置した祭壇に向けて、集まった人々と祈りを捧げるのだ。
 それが終わった後の庭は、茶話会の会場となる。軽い飲食をしながら、皆で故人を偲ぶ。

 偲ぶ、と言っても、父の死からはもう5年。
 メソメソと悼むというよりは、在りし日の想い出を参加者同士が楽しく語らう、という和やかな雰囲気で。

 
 「きゃー! ローラちゃん! 久しぶり! 相変わらずキュートねえ!」

 「そ、そうご無沙汰しておりませんわ。2か月前にレオが退任する時、事情を説明する為にお会いしましたもの」

 「そうだっけ? あはは! ほら、可愛いプリンセスの顔は毎日でも見たいからねえ! ちょっと日があくと久々な気がしちゃって!」


 「ねぇレオ、あの女王様にハグしてるレディーは誰? めちゃめちゃ美人だけど……なんていうか、はっちゃけた感じの人ね」
 
 特製料理の数々を、庭に設置された長テーブルに並べながら、小声でそう尋ねて来たのはジェニー。

 彼女の視線の先にいたのは、安定感ある美しさを放つローラ様と……そんな陛下と親し気に話す、貴婦人。

 光沢あるワインレッドのサマードレス。それと同色の小さな帽子。
 フルアップにまとめられている薄茶色の髪は、スパイラルと称する程に強いカールがかかっている。
 
 化粧など不要であろう濃い顔立ちにも関わらず、ばっちりとフルメイクをしているものだから……その派手さは会場に集まったご婦人方の追随を許さない程で。

 「あの人は……レノックス伯爵夫人……俺の、母だ」

 「え!! 若っ!! 継母!?」

 ジェニーは驚きのあまり、手に持った皿を落としそうになる。

 「いや、実母だ。ああ見えて、もう40を超えている」

 「嘘でしょ……どう見たって、あたしらと同年代にしか……」

 「どうやら母の細胞は、老いに鈍感らしくて。父が生前心配して、医者にみせた事もあるんだが、病気ではないらしい。親しい人達からは敬意を込めて、バケモノと呼ばれている」
 
 「それただの悪口だよね」

 「女王陛下相手にあんな態度をとれる怖いもの知らずな性格も、そう呼ばれるゆえんなんだ。俺達家族は、陛下がお小さい頃からお付き合いをさせて頂いているから、少々遠慮が無くて……」 

 「無礼だろ、レノックス伯爵夫人」

 見た目にそぐわない母の実年齢と、陛下への砕けた態度について説明をしていると、聞き覚えのある声が耳に届いた。

 「いくら家族ぐるみのお付き合いがあったとはいえ、一介の貴族の妻風情が、陛下をローラちゃんなんて」
 
 陛下との再会を喜ぶ母を窘めたのは、ノースリーフの墓地であった、あの美男護衛騎士。

 「ん? 誰、あなた」

 「ご、ごめんなさい、伯爵夫人。彼は私の新しい護衛騎士で……クリス、ご挨拶なさい」

 「ああ、じゃああなたが、クリス・ハドソン侯爵ね! 5年前、15歳でパパさんの爵位を継いだ!」

 「はじめまして、伯爵夫人。恥知らずな不祥事で護衛騎士を辞めたあんたの息子の、後任の者です」

 「あらら! レオとは全然タイプが違うわね! 可愛い顔して性格悪っ! しかも細っ! 弱そ~!」

 「性格に関しては否定しないけど。騎士としての力量を侮られるのは不本意だね。試してみようか? 5秒程度貰えれば、あんたをバラバラにする事もできますよ?」

 「やめなさいクリス!」

 「母上!」

 腰に下げた剣にクリスが手を掛け、陛下が声を荒げる。それを見て、俺は慌てて駆け寄った。
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