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指輪は時にメリケンサック並の打撃強化アイテム

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 「あんっったは黙ってなさい! 私はローラちゃんに聞いてんの!! しかもド貧乳だぁ!? 女の子に言っていい事と悪い事の区別もつかないの!? あんた昔っからそういうトコあるわよ!」

 「っつぅう……」

 「レ、レオ! 大丈夫!?」

 大きな宝石の付いた指輪をいくつもはめている母の拳を、眉間に受けた衝撃に、たまらずうずくまる。

 そんな俺を気遣い、傍に寄り添って下さるお優しい陛下と……腕組みして見下ろす、鬼の形相の母。

 「まったく! 元護衛騎士が、か弱い未亡人の突きすら避けられないなんて情けない! あんたはローラちゃんの事となると、すぐに熱くなって注意散漫になる! 」

 「お、おば様、落ち着いて下さい! お言葉ですが、おば様はレオが15歳になるまで腕相撲で圧勝されてらしたじゃありませんか! 育ち盛りの男子に勝てる腕力と瞬発力の持ち主に、突然眉間を突かれたら誰だって……」

 「ローラちゃんは黙ってて! レオ! そんな情けない事でローラちゃんを守れるの!? そんなんでパパの爵位を継げると思ってんの!?」

 「は、は、母上のおっしゃる通りです。至らぬ愚息で申し訳ありません。しかし……俺が未熟である事と、この家の爵位と、どういう関係が……?」

 二発目の正拳突きが飛んでくる可能性に少なからず怯えながら、尋ねてみた。

 母は呆れたようにため息を吐いてから、どかっとソファに腰かける。

 「あなたが紅薔薇の秘密に辿り着く事。それがあなたが一人前の男になる最低条件であり、レノックス伯爵領を継ぐに相応しい人間に成長した証。それ以前の未熟なレオナルドに、爵位は継がせない。……これはパパの遺志よ。パパが死んだ後、書斎で手紙が見つかったの。騎士団長なんていうリスキーな仕事をしていたから……いつ自分の身に何か起きてもいいように、遺言書を残しておいたんでしょうね」

 存在すら知らなかった遺言書と、その内容に、目を瞬かせてしまう。

 「母上、先程もおっしゃってらした、紅薔薇の秘密とは一体……?」

 「知らないわよ。手紙に書いてあったのは……掟があるから詳細は伝えられない。レオには自力で真実に辿り着いて欲しい。紅薔薇のルビーは真実を知った証として、手に入るよう手配しておく……って、それだけだもの」

 掟――。
 ソレリ様もおっしゃっていた言葉だ。
 兄妹疑惑が浮上して、すっかり忘れてしまっていた。

 「レオ。万一あなた達が両想いだとしても、爵位無しの今のあなたじゃ、ローラちゃん……女王陛下の婿候補っつー土俵にすら上がれないからね? 王配として陛下を支えたいなら……そして夫として堂々といかがわしい事をしたいのなら、パパの遺言に従い、立派にレノックス伯爵の名を継いでみせなさい!」

 腹の底から出しているような野太い声。
 叱咤しているようでいて、激励をしてくれている、母の愛を感じる。

 「はい! ご安心下さい母上! レオナルドは必ずや真実をこの手に掴み、代々続くレノックス伯爵家の名に恥じぬ当主になってみせます!」

 拳を握りしめ、力強く決意表明をした。
 息子を信じ、背中を押してくれる母に応える為。 
 そして、隣にいらっしゃる陛下に、将来の誓いを立てるつもりで。
 
 しかし……

 『うんうん』と満足げに頷く母に反して、陛下は表情を曇らせたまま、うつむいていらっしゃるのだった。
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