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本当に強いのは空気を読まずに壊す人より読めるけど壊せる人
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「まあ……! では私の母が、あなたのお母様にトマト克服法の相談を……?」
「はい! 女王様……あ、当時のローラ姫様が、トマトのドロっとした部分が苦手と聞いて……それで母はずっと、ゼリー部分の少ないトマトを作る研究をしていたんです! 母が亡くなった後は、それをソレリ様が引き継いでくれて、町の皆で何度も品種改良を繰り返しました! で、やっと完成したのがこのトマトなんです!」
「美味しい……! 驚いたわ! こんなトマトは初めて!」
「ですよね! これ、そのトマトに砂糖をかけて冷やしただけの料理なんですけど、ノースリーフじゃ夏の定番オヤツで……あ、レオ!」
陛下と歓談中だったジェニーは、近付いてきた俺に気付き、ひらひらと手を振った。
「ジェニー、君の料理はとても好評だ。本当にありがとう」
「喜んでもらえて嬉しいよ。正直、不安だったんだよね。普段いいもんばっか食べてるお貴族様達に、自分の料理が通用するのかって……。あたしはノースリーフから出た事が無いから、ここいらの味付けとかも、よくわからなかったしさ」
「本当に美味しいものは、どこの誰が食べても美味しいという事ね。あなたのお料理は間違い無く一流だわ。だって私にトマトを食べさせたんですもの。ねえ?」
聖母のような笑みでジェニーに賛辞を贈ってから、俺に賛同を求める陛下。
「ええ。それは私も、父も……先代の女王陛下でさえ成し得なかった、偉業ですからね」
一瞬……ほんのわずかな時間だけ、見つめ合ってしまった。
ああ、いいな。この感じ。愛する人に愛されている、この満たされた感じ。両想いっていいな。
「あ、あの、もしよければ……なんですけど。これから定期的に、このトマトをお城に届けましょうか!?」
「それはいい考えだ! 是非そうなさって下さい陛下」
「嬉しいお申し出だけれど……ノースリーフから王都までは距離があるし……何だか申し訳ないわ」
「そんなの全然です! 女王様が取り寄せる程のトマト、となれば宣伝効果ばっりちで……ノースリーフの農産業はますます盛り上がりますし!……あっ、あたしは別に、それを狙って提案したわけじゃないですよ!?」
慌てた様子で、手をブンブンと左右に振るジェニー。
彼女の正直さ、誠実さがよくわかるその姿に、陛下は柔らかな笑顔を浮かべた。
「つまり、お互いにとってメリットのある良案、という事ね。そういう事だったら、是非お願いしたいわ。トマトと一緒に、あなたの手料理もオマケで配達して下れば、尚嬉しいです」
「あ……ありがとうございます! 任せてください! 腕によりをかけて作らせて貰いますから!」
ジェニーは勢いよく頭を下げてから、俺にむかって笑顔でとガーツポーズをした。
「よかったな、ジェニー! 俺からもよろしく頼む! 手伝える事があったら、何でも言ってくれ」
「うん! ありがとう、レオ!」
あたりを包み込む、穏やかかつ平和な空気……。
しかし、それを無遠慮に壊す人間が、陛下の背後から現れた。
「陛下、そろそろ城に戻りませんと。今日中に片付けなくてはならない書類が山の様に残っていると……大臣から言われています」
またか。
と言いたくなるお邪魔なタイミングで現れたのは、つい数分前、俺に『恨んでるぞ』宣言をした、脅威的美男騎士、クリス・ハドソンだった。
「はい! 女王様……あ、当時のローラ姫様が、トマトのドロっとした部分が苦手と聞いて……それで母はずっと、ゼリー部分の少ないトマトを作る研究をしていたんです! 母が亡くなった後は、それをソレリ様が引き継いでくれて、町の皆で何度も品種改良を繰り返しました! で、やっと完成したのがこのトマトなんです!」
「美味しい……! 驚いたわ! こんなトマトは初めて!」
「ですよね! これ、そのトマトに砂糖をかけて冷やしただけの料理なんですけど、ノースリーフじゃ夏の定番オヤツで……あ、レオ!」
陛下と歓談中だったジェニーは、近付いてきた俺に気付き、ひらひらと手を振った。
「ジェニー、君の料理はとても好評だ。本当にありがとう」
「喜んでもらえて嬉しいよ。正直、不安だったんだよね。普段いいもんばっか食べてるお貴族様達に、自分の料理が通用するのかって……。あたしはノースリーフから出た事が無いから、ここいらの味付けとかも、よくわからなかったしさ」
「本当に美味しいものは、どこの誰が食べても美味しいという事ね。あなたのお料理は間違い無く一流だわ。だって私にトマトを食べさせたんですもの。ねえ?」
聖母のような笑みでジェニーに賛辞を贈ってから、俺に賛同を求める陛下。
「ええ。それは私も、父も……先代の女王陛下でさえ成し得なかった、偉業ですからね」
一瞬……ほんのわずかな時間だけ、見つめ合ってしまった。
ああ、いいな。この感じ。愛する人に愛されている、この満たされた感じ。両想いっていいな。
「あ、あの、もしよければ……なんですけど。これから定期的に、このトマトをお城に届けましょうか!?」
「それはいい考えだ! 是非そうなさって下さい陛下」
「嬉しいお申し出だけれど……ノースリーフから王都までは距離があるし……何だか申し訳ないわ」
「そんなの全然です! 女王様が取り寄せる程のトマト、となれば宣伝効果ばっりちで……ノースリーフの農産業はますます盛り上がりますし!……あっ、あたしは別に、それを狙って提案したわけじゃないですよ!?」
慌てた様子で、手をブンブンと左右に振るジェニー。
彼女の正直さ、誠実さがよくわかるその姿に、陛下は柔らかな笑顔を浮かべた。
「つまり、お互いにとってメリットのある良案、という事ね。そういう事だったら、是非お願いしたいわ。トマトと一緒に、あなたの手料理もオマケで配達して下れば、尚嬉しいです」
「あ……ありがとうございます! 任せてください! 腕によりをかけて作らせて貰いますから!」
ジェニーは勢いよく頭を下げてから、俺にむかって笑顔でとガーツポーズをした。
「よかったな、ジェニー! 俺からもよろしく頼む! 手伝える事があったら、何でも言ってくれ」
「うん! ありがとう、レオ!」
あたりを包み込む、穏やかかつ平和な空気……。
しかし、それを無遠慮に壊す人間が、陛下の背後から現れた。
「陛下、そろそろ城に戻りませんと。今日中に片付けなくてはならない書類が山の様に残っていると……大臣から言われています」
またか。
と言いたくなるお邪魔なタイミングで現れたのは、つい数分前、俺に『恨んでるぞ』宣言をした、脅威的美男騎士、クリス・ハドソンだった。
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