女王様に恋する騎士は身分違いに悩むが、問題はそこではなかった

杏 みん

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秘密を話す覚悟の成分はこいつならバラさないという信頼かもうバレてもいいやというヤケクソ

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 「ジェニー!? どうして……!」

 思いもよらぬ人物の登場に、動揺を隠せない俺とローラ様。

 「ご、ごめんね、あんたがコソコソ出掛けて行く所を見ちゃって……」
 
 「後を、付けて来たのか?」

 父の追悼集会で料理を振舞う為に、遠く離れたノースリーフからレノックスの家まで足を運んでくれたジェニー。彼女は明日まで我が家に滞在する事になっていた。
 ゲストとしてたっぷりおもてなしをする事でお礼がしたいという、俺と母の希望によって。勿論、報酬は別途支払い済ではあったが。 

 「なんか心配になってさ。ほら、あんたって猪突猛進的な、危なっかしい所あるから……立ち聞きなんてするつもりなかったの。でも、帰るタイミングも、出て行くタイミングも完全に失っちゃって……本当に、ごめんなさい!」

 気まずそうな困り顔で、頭を深々と下げるジェニーに、俺と陛下は顔を見合わせる。

 「でも女王様、あたし絶対に誰にも言いません! それはお約束します!だから、もしよければあたしをそのメンバーに入れてもらえませんか!?」

 「……ちょうどよかった。俺も君に、協力をお願いしようと思っていたんだ」

 「え!?」

 「レオ!?」

 そう――。“クイーンズ・ソルジャー”の一員として、俺が思い浮かべた人物の一人が、ジェニーだった。
 
 突然の俺の言葉に、目を瞬かせる女性陣。

 「ローラ様、ジェニーは優れた料理人です。つまり野菜や穀物等の……食材のプロだ。それに、彼女の母君は農耕で紅薔薇の勲章を受ける程の研究者で……ソレリ様に農産のノウハウを指導した師匠でもあります。ジェニーの食に関する知識と、ソレリ様の農耕・畜産に関する知識があれば……その分野の危機に関しては、予測可能な筈です」

 「で、でも……」

 「女王様! あたしの母も、自然災害で死んだんです! 大雨で氾濫した川に飲み込まれて……。母みたいな犠牲者を一人でも減らせるなら……! それに、あたしも農作物に関わる人間として、天気とか気候とかを予測する事の難しさは知ってるつもりです! だから、それを独学で勉強して、皆を守って来た女王様は本当にすごいと思うし、あたしで役に立てる事があるなら、是非協力させて下さい!」

 「陛下……彼女が信頼に足る人物だという事は、今日お話しされて、陛下ご自身もおわかりになったのでは?」

 迷いと戸惑いが混在する複雑な表情のまま、黙りこくる陛下。

 無理も無い。
 ついさっきまで、幼馴染である俺にすら隠してきた秘密。
 それを、今日会ったばかりの人間とあっさり共有するなんて、易々たるものでは無いのだろう。

 陛下は暫く考え込んだ後、肩を上下させて息を吐き……笑った。

 「トマト嫌いを克服させてくれた恩人を信じないなんて……失礼よね。ジェニー、頼りない君主で申し訳ないけれど、力を貸してくれますか?」

 微笑みが添えられた陛下のお言葉に、パッと陽が差したような笑顔を浮かべるジェニー。
 
 「も、勿論です! ありがとうございます! よろしくお願いします!!」

 固い握手を交わす2人を見て、ホッと胸をなでおろす。

 「陛下、私はノースリーフに戻り次第、ジェニーと共にソレリ様をお訪ねします。“クイーンズ・ソルジャー”にご参加頂くよう、お願い申し上げる為に」

 「代作委員に、ね。よろしくお願いします。私からも手紙を書いておくわ」

 「これからは我々も定期的に、連絡を取り合う必要がありますね。……陛下がこの恵みの間に堂々と籠る事が出来る恵みの日に、ソルジャー全員もここに集合するというのはいかがでしょうか? その場で、各担当分野の近況や、今後の見通しについて、話し合うのです」

 「でも……あなたもジェニーも、毎月、月の最終日に休みを取るなんて、難しいのではない?」

 「女王様! こうしたらいかがでしょう?」

 凛々しい顔つきで、素早く挙手をするジェニー。

 「トマトの配達日を、恵みの日にするんです! 私、ノースリーフの基地司令官様に、レオに配達中の警護をお願いしたいって頼んでみます! レオは王都での暮らしが長いから、道や治安事情について詳しいって事を理由に!」

 「それはいい考えだ! 女王陛下へお届けする大切なものですから、不備があってはいけないと快諾してくれるに違いない!」

 「で、あたしらはトマトを届けた後に、この通路を使ってここに来ますので!」

 「そう……そうね。それじゃあ、そういう事でお願いしようかしら」

 順調に今後の活動計画が整って来た事に、少なからず興奮する俺とジェニー。

 そしてそんな俺達を……美しい女王陛下は、未だ不安の滲む笑顔で見守っていた。
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