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番外編

それぞれのその後 その一

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※その後の話は時系列が一緒ではないので、ご注意ください。





 ルティウスたちエルフィンの側近であり、“ゲーム”の攻略対象者だったみんなのその後を話したいと思う。


 ある晴れた昼下がりのこと。王城の一角、騎士たちの訓練場に多くの人間が集まっていた。

「では、本日付でシグルド・フレイ・アーティケウスに近衛騎士団長職を引き継ぎます。シグルド、これまで以上に精進なさい」
「はっ!我が全身全霊をかけて与えられた職務を全うする所存です!!」

 エドガー様から指名され、騎士としての礼をとりながら、シグルドが声高らかに宣誓した。

 私とエルフィンの結婚から数年の月日が流れた。
 シグルドとルヴィカの間には、すでに三人の子供が生まれている。
 長男のルルティ、長女のシェスカ、次男のヴィート。三人とも強弱はあれど、始祖竜エンシェントドラゴンの血が発現しているそうだ。子供ができて父親となったからか、シグルドは前ほど脳筋ではなくなりつつある。まあ………たまに考えなしに行動し、副官の方が胃を痛めているけれど。

 ちなみにルルティはフィールより二つほど年上で、シェスカはルルティより一つ下、ヴィートは去年生まれたばかりの赤ん坊だ。ルルティはフィールの学友兼側近候補としてすでに共に学び始めている。いつだかのエルフィンとシグルドと関係は似ているけれど、ルルティが脳筋ではなかったのが幸いだった。(それはもう切実に)ルルティは両親を反面教師にしている模様。尊敬はしているものの、二人の熱すぎる忠誠心を眺めながら時折引いているので、彼は常識人に育つだろう。

 私とエルフィンの間には今のところ二人生まれた。言わずもがな、第一王子のフィール、その二年後に生まれた第二王子のルーヴェンス。公務の合間を縫って出来るだけ交流を図るようにはしているので、会うたびに泣かれることはないのが幸いかも。エルフィンが「女の子も欲しいな」とか呟いていたので、頑張ろうと思う。私も女の子、欲しいし。

 ルヴィカは三児の母となった今も、私の侍女として仕えてくれている。子供たちも真っ直ぐに育ってくれているので、憂いなく生活できるのが何より嬉しくて、幸せだ。以前も言ったけれど、彼らの忠誠心はいかほども揺らがない。


◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈

 ルティウスは留学から帰ってきた時に宣言していた通り、私とエルフィンの結婚後、リュミエルと婚約を発表した。結婚はクルシェット殿下の後にすることになったようだ。彼女にとって彼は今でも主だからでしょうしね。

 ルティウス狙いの令嬢たちは当たり前のごとく納得できなかったようで、リュミエルさんを追い落とそうと婚約パーティーの場で貶してきたのよね。あれは今思い出しても身の毛がよだつわ………。いえ、リュミエルが貶された言葉に対してではなくて、令嬢たちがぶつけてきた言葉を聞いた後のルティウスの様子が。
 笑顔が黒かったわ、うん。途中からその笑顔すら消えたけど。令嬢たち、その場で人生という名の舞台から姿を消すんじゃないか、と思ったわ。お祝いにきたみんなも同じ思いだったでしょう。
 クルシェット殿下なんて顔を引き攣らせながら止めようとしたクーシェを制して言ったわ。「ああなったルティウスはもう止まらない、傍観しているに限る」と。なんだか達観した様子なのが気になった。
 ルティウス、留学中にリュミエルを見初めたのよね?あちらでも反対する人はいたのでしょう。……………パルヴァンで何をやったのかしら、あの子。
 当のリュミエルはというと。「あの程度のことなんて、主の護衛騎士になった時に散々言われてますから今さらです。どうやったってやっかむ方はいますからね。むしろ、こちらの方はボキャブラリーが少ないですね?」と言っていて。精神メンタル強いなぁ、リュミエル。

 そんな彼女を抱き枕よろしくぎゅう、と抱き締めたルティウスが、「貴女はそうかもしれませんが、僕が嫌なんです………!」と叫んだのには驚かされた。シスコンだったこの子も、人並み──執着はエルフィンとタメを張れるわ──に誰かを愛することができたんだと、胸が暖かくなった。

 ただ、リュミエルが直後に言った「貴方がそう言って側にいてくれるから、平気でもあるんですよ………?」という言葉を聞いて、危うく暴走しかかったわ、ルティウス。というか一歩手前まではいったわね。自身の頬に添えられていたリュミエルの手を掴んだかと思ったら、かなり際どい口付けをしていたから。それを見て、凄まじく既視感を覚えたけど。

 みんなの視線がこちらに釘付けになりそうになった瞬間、会場が闇に包まれた。どうやらある意味でを察したシャウドが闇の結界術を行使した模様。それと平行するように、イルミネーションっぽい演出をし始めた。突然暗闇になったことに違和感を感じさせないためでしょう。会場のみんなは、上手く誘導されてくれて、その光景に意識が逸れてくれた。ありがとう、ナイスファインプレーだわ、シャウド。

 後日、令嬢たちは修道院に送られ、家は取り潰しとなった。よくよく考えれば、王族の婚姻にケチつけたのだものね。処刑でなかっただけマシでしょう。それだけではルティウスは不服そうだったけど。リュミエルが上手く宥めてくれたみたい。
 なんだかんだ言って、あの二人も相思相愛なのでしょう。
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