【完結】畑暮らしのΩ王子、20年越しに“番”が現れました

兎沢にこり

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想いがぶつかる甘い衝動※R-18

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「……リオっ!」

レオンハルトは長い足を踏み出して、エリオスのいるベッドへと近づくと、気にすることなく膝を床につけて両手を差し伸べた。
エリオスがずっと伸ばしていた手を捕まえて、固く繋ぐと引き上げるように胸へと抱え込む。

「っ、ん……はぁー、」

汚れのない綺麗な鎧が頬に当たって冷たい。薬で無理やりヒートにされた体は熱を持っているからその冷たさが心地いいのだが、気づいたレオンハルトは体勢を変えるべく、エリオスの膝裏に腕を差し込んで抱き上げる。
望んでいた距離感に求める声は素直に溢れていった。

「れお……れおっ」

くたくたの体でうまく力が入らず倒れ込むと、レオンハルトの首筋にエリオスの唇が触れた。
若く瑞々しい肌。そこから芳しいフェロモンを鼻腔いっぱいに感じてしまったエリオスは、意識が遠くなる。
無意識にその首筋に擦り寄って、ちうと口付ける。跡を付けられるほどではない、戯れのような愛撫。
理性が保てなくて、霧散して……本能がエリオスを支配した。
(いい匂い、レオの匂い。おれの、おれの運命……運命?……ちがうけど、甘くて、これが、ずっと欲しかった)
ぎゅっと逞しい首筋に腕を回すと、甘えるようにすり寄る。時折漏れるため息の中に、甘い喘ぎが見て取れる。

「……見ないでください」
「無理があるだろ」

ぎゅうっと更に強く抱きしめながら、こんなに嬉しいことはないとレオンハルトは破顔した。恋するΩに求められて、クールに決めていられるαはいない。
自国の王子であり、直属の上司でもある彼の人間臭い姿に当てられて、グレンは顔を覆った。
ここが誘拐犯の城で、足元にその親玉が伸びているのに、なんとも調子が狂う。しかし、ここにいつまでも二人を留めておくのは得策ではないと、副団長たる勘はしっかり働いている。

「早くフィル様のところへ連れて行ってやれ、後始末は俺がやるから」
「助かるよグレン」
「後でリオ……あー、エリオス様、恥ずかしくてどうにかならないか?」
「そうならないよう、私がしっかり見張るよ」

甘くて爽やかなミントの香り。エリオスの下肢はすでに立ち上がり、ズボンを押し上げてどうしようもないことになっていた。
内緒話をするように小さな耳に唇を寄せたレオンハルトは、小声で問いかける。

「気持ちいいんですか?」
「ちが……う、からっ」

吐息が耳に触れる。くすぐったくて、それでも気持ちがいいと体は反応してしまう。Ωの体はなんとも厄介だ。そしてその刺激に慣れていないから、振り回されているエリオスは困惑したまま首を振るしかない。
短く息を吐いて刺激を逃そうにも上手くいかなくて、思わず幼子のように膝裏を擦り合わせると催さないように下唇を噛み締めた。
だが、その努力も簡単に砕け散る。

「……リオ?」
「ぁ……ぁっ、」

レオンハルトの腕の中で体を震わせたエリオスは、じわりとスラックスが温かくなるのを感じた。
成人男性にしてはその量は少ない。
だが、抑制剤を乱用し続けた体が、初めて熱を吹き出した瞬間であった。成熟とも言える一歩。しかし一度吐き出して、理性が戻ってしまったエリオスにとってそれは一大事だ。
顔を真っ赤にすると腕を振り回してワーワー喚いて暴れた。

「お、俺っ……漏らした!?」
「大丈夫ですよ。これは違いますから」
「こ、こんな年下に抱かれて、漏らすなんて……や、やだ!……おろせ!」

羞恥はピークだ。薬のせいとはいえ“運命”でもないレオンハルトの匂いと声だけで達してしまうなんて。
ふしだらだ、下品だ!と思いつく限り自分を罵るが、レオンハルトはしっかりエリオスを抱えて背中をさするだけである。
恥ずかしくて穴があったら入りたいと身を捩っても、レオンハルトの鍛え抜かれた腕の中から逃げ出すことは困難だ

「降ろしませんよ……グレン?」
「見てないです!とっとと行けって!」
「はい。では、あとは頼みました」

暴れるエリオスをしっかり抱え上げたレオンハルトは、エリオスを抱いたままリュミエールに跨った。本来なら馬車で帰ろうともしたが、一刻も早くフィルに見てもらわなければと、馬を走らせたのだ。

顔を覆って先程の出来事にショックを受けているエリオスだが、完全にヒートが落ち着いた訳ではない。嵐の前の静けさとも言える理性の帰還に、羞恥で呻いている。

騎士団長の腕の中、という特別席でなんとも居心地の悪い時を過ごしていた。
居心地は悪いのだが、鎧を脱いだレオンハルトの胸元へ、無意識に頭を寄せていることをエリオスは気づいていない。
それに心を踊らせている騎士団長は、頬の裏を噛み締めて浸る他ないのだ。
ザルミアンを抜けてセラトリアに続く橋を渡り、ヴァルデンハイトへの山道を進む。
リュミエールの息遣い、小気味いい蹄の音。そして、胸元から聞こえてくるレオンハルトの穏やかな心音。

ここまでの道中、エリオスの混乱もあるだろうと言葉は交わしていなかったが、レオンハルトの喜びも束の間、エリオスはひどく思い詰めたような顔で、ポロリとこぼす。

「なんで何も言わねぇんだよ」
「……何をです?」
「俺!ずっとお前に嘘をついてたんだぞ?……エリオス王子がこんな……臭いフェロモンのおっさんだったなんて、軽蔑してるだろ」

エリオスが、戻ってきた理性で苦しめられていたことはこれだ。
自分を偽っていたこと。それに対してレオンハルトを深く傷つけてしまったこと。そして、きっとひどいフェロモンで余計に負担になっているだろうということだった。
(レオは優しいから、言い出せないんだ。動くさえ億劫でうまくいかないけど、抱いているのだって嫌なはずだから、下ろしてもらおう。……レオに、これ以上嫌われるのも、幻滅されるのも、嫌だなぁ)
言葉に出さない悩みはエリオスの頭を回り、悪い方へと進んでいく。
これを正しいと理解しているエリオスだが、今まさに運命を胸に抱いて夢見心地でいたレオンハルトは、後頭部をぶん殴られたかのような衝撃だった。

「どういうことですか、話がよく、」
「もういい、ここで降ろせって……本当ごめんな、気持ち悪いよな……ほら、臭い匂い移るから、」
「ちょっと待ってください、気持ち悪いって?そもそも、おっさんって誰のことですか?」

レオンハルトは聞き捨てならないと目を見開くと、蹄の音にかき消えないよう声を張り上げる。

「歳を重ねているのは、私が待たせてしまったからです!そして、あなたの香りは最高です!」
「ちが、っだから!俺は臭いんだって言ってるだろーが!変な気遣いすんな!」

大々的な宣言の聴衆はエリオスしかいない。一点の憂いもないアイスブルーの瞳は、真っ直ぐ前を見て言い切った。
だがしかしここで引くわけにはいかない。すぐそばの胸ぐらを掴んだエリオスは、伸び上がって否定するも、分かりやすく眉根を寄せたレオンハルトは不機嫌だと言わなくてもそれは声音に乗った。

「あの男の戯言は記憶から消してください!」

ピシャリ。キッパリと言いきったレオンハルト。
胸元はエリオスがシャツを掴んでいるせいで変なシワができている。だが、そのことに関して咎めることは無いのだ。
息苦しいだろうに、すまして見せるのが余計にエリオスの癪に障っていた。
力の入らない腕でそこを揺さぶって、噛み付くように言ってやる。

「事実だろうがっ!」
「なら!私だけがリオの香りを最高だというのなら!……それは運命でしょう!?」

また始まった。おかしなこと言い出した、と、レオンハルトの声をかき消すようにエリオスは「だ・か・ら!」と叫ぶ。
リュミエールは煩くて敵わんと、ピンと立てていた立派な耳を下へと下げて、ぶるると邪魔はしないように抗議の声だけはあげるのだ。

「言っただろ!俺の運命はお前の父親だって!」
「あーもう!本当にリオはっ頑固者ですね!どこの誰です!?私の声で達した人は!」

名前を呼ばれただけで、絶頂した体。羞恥がさざ波のように肌を伝って、全身が真っ赤になってしまった。
口を開閉してそれ以上紡げなくなってしまったのも、エリオスは悔しくてたまらない。
隠れようにもここは馬上。何とか顔を下げると逃げるようにレオンハルトの胸へ顔を押し付けた。
ここまで無意識に動いているのだから、ヒートの本能は着実にエリオスの行動に関わっている。"一番安全だ"と思える場所は既にレオンハルトの胸の中なのだ。
レオンハルトは手綱を片手に持ち直すと、リュミエールに常歩で歩くよう指示を出す。
景観は切り取った風のように変わるのではなく、綺麗な紅葉の中を二人は進んでいた。
前に抱いているエリオスをさらに抱き寄せれば、分かりやすくその肩は跳ねるのだ。
歓喜に震えてしまう体は、ついていくのがやっとな心とあべこべで、エリオスは瞳を泳がせる他ない。

「そ、それ、は……」
「ねぇ、リオ。私のフェロモン……リオにはどう感じましたか?」

レオンハルトの声はエリオスの耳に直接吹きかけられている。
くすぐったいのに、そのくすぐったさが気持ちがいい。
思わず肩を上げて耳を塞ぎながら逃げようとするが、レオンハルトは赤くなった小さな耳殻を、並びのいい歯で齧る。

「ひっ、ば、ばか!」
「逃げようとするからです。ちゃんと聞いて……ね?」

とんとんとリズムよくエリオスの背を叩く。その手のひらは大きく慈悲深い。
不安でささくれだった心が徐々に落ち着きを取り戻す。

「私は、リオのフェロモンが甘くて、とても心地よくて、離れたくない……貴方を守りたいと、手放したくないと思うんです」
「……それは勘違いだ。きっと、Ωの香りに体が反応してるだけだよ」
「私は騎士団の遠征でヒート中のΩには何度か遭遇したことがあります。でも、他のΩにこんなことは思ったことがない」
「たまたま、だろ。だってそんな……こんなおっさんに反応するなんておかしい」
「たまたま、リオのフェロモンにだけ反応した?……私がおかしいと言うのなら……私はおかしくてかまいません」

思わずエリオスはレオンハルトの方へ顔を向けた。
真剣な顔のレオンハルトがジッとエリオスを穴が開く勢いで見つめている。
そらすことなんてできない。
口内に溜まった生唾をごくりと飲み干した。

「リオ。私はフェロモンでエリオス王子が運命だと思いました。それはもう本能です。でも、恋をしたのはあなたなんですよ、リオ。香りなんて感じないのに、貴方の生き様や優しさ、慈悲深さ……どれもこれも惹かれてしまいました……ソルグランに向かって……エリオス王子がリオだと知った時、本当に生きた心地がしませんでした」

曲がることはない。ただまっすぐに、エリオスを想った真剣な愛。

どうしてか、エリオスは唇が震えていた。
歯がカチカチと鳴ってしまって、力を入れないと声まで震えてしまいそうだった。
鼻の頭が熱くなって下を向く。どうしようもなく、泣いてしまいそうでぐっと耐える。
絶対に自分は、そんなこと誰かに言って貰えるとは思っていなかった。……貰う資格さえなかった。

今、たった一人のαに「貴方だけだ」と、手を差し伸べられているなんて、運命を無くしてすぐの自分は想像できなかっただろう。
しかし、それを手にしようとは……エリオスは今でも思わない。
どんなに手を伸ばしたくても、理性で頭が少し飛んでいても、若いαの……いや、レオンハルトの気のせいで彼の人生を棒に振りたくなかった。
何かの手違いでフェロモンが反応しているとしても、自分の運命はただ一人。
レオンハルトの運命も、ただ一人だ。
首を振ってその答えごと返そうとした時、レオンハルトの提示する一手の方が早かった。

「それでもまだ。……運命じゃないと思うなら、私の精一杯のフェロモンを浴びてから、こっぴどく振ってください」
「精一杯?」

キョトンと本気で素のまま目を見開いたエリオスに、レオンハルトは至極真面目に頷いた。
レオンハルトは恥ずかしそうに少し目を泳がせると、エリオスに対して深く頭を下げる。

「それに……リオもエリオス王子もだなんて、浮気野郎と罵ってくださっても構いません。切り捨てたいと言うのであれば、私の首もやぶさかではありません」

断罪を望む騎士のような面構えは流石に引き留めたくもなる。
離れろ嫌だと少し前は言っていたのに、レオンハルトの様子が流石に心配になりその腕をさすった。
そして「……ん?」と思わず気になったところを、シンプルに突く。

「浮気も何も、リオもエリオスも俺じゃん」
「いえ!覚悟の問題です!私は王子という身分もありますし……いやそれも言い訳ですね。本当に格好がつかないな」

面目ないと顔まで覆ってしまえば、とろけるような告白をした人間とは全く別人にも見える。
そして、エリオスは落ち込んでいる年下の者に滅法弱い。そもそも年下にはやたらに判定が甘い節がある。
兄らに溺愛された末弟は、自分より年若い者には兄に倣って構い倒さなければと無意識に思うのだ。
レオンハルトのそんな姿を見せられて、嫌だ!駄目だ!なんて言えなくなってしまう。
黙り込んだレオンハルトを待つと逡巡したのち、覚悟が決まったと一呼吸置いて、レオンハルトはリオの手を握る。
抵抗する気もない。
なんてったって、レオンハルトの手はよくなじむのだ。

「嵐の日、本当に貴方を連れ去って、隠してしまえばいいとも思ったんです。でも、それをする勇気も貴方に恋を告げる勇気もなかった」
「王子様なら当然だろ。農夫だぞ、しかも他国の」

他国の農夫と同じ国の民ならどっちが良いか?という話ではないが、身分あるものはいつだって自身の決断が家族も国をも左右する。
誠実な人間だからこそ、それを決断できなかったのだ。
レオンハルトは遠く晴れ渡る空を見つめながら、思い描く。
風に揺れて落ちたイチョウの葉は、レオンハルトの髪色に似て、綺麗だった。

「私がただのαであったら、こんなにも悩まなかったのでしょうか。ただの民、ただの騎士……なんでもいい」
「それは……俺も考えたこと、あるよ」

ただの民とはどのような暮らしなんだろう。どのように考えて、どのように先を選ぶのだろう。
Ωじゃなくて、βだったら。兄と同じαだったら……キリがない夢物語はレオンハルトの声に力が戻ったことで、自身もと続く。

「でも、この国の王子であったから、あなたのフェロモンに気づけたのも事実です……だから、今、私はとても幸せなんです」
「レオ……」

握っていた手が一度離れて、今度は指先同士を絡めて強く繋ぐ。
大きくてきめ細やかなレオンハルトの手のひらは、度重なる畑仕事で厚くなったエリオスの手をしっかり覆った。
頼もしくて、温かくて、エリオスはこの温もりが好きだった。
エリオスの中にもある、レオンハルトに対する恋。
それを流れに身を任せたまま、今ここで零すことはできない。
エリオスはレオンハルトの言う通り、どこまでも頑固で、そして傷つくことに関しては特に恐怖を覚える。
傷ついてきた分、自分も相手も傷つけることが怖い。

この恋を完全に終わらせるのも、番ではないと分かってもらうのも、今この時しかないんだろう。
繋いでいた手をエリオスからも、しっかり力を入れて返す。
にぎにぎと交互に力を与え合うこの時が嬉しいと、素直に思ってしまう自分はとことんレオンハルトのことが好きなのだ。

アイスブルーの瞳はとても綺麗で、凪いでいる。
どんな事も、全部受け入れようとエリオスはなるべく、明るく聞こえるように声を出した。

「よし……ぶつけてみろよ、そのフェロモン!」
「あぁ、リオ」
「今、薬でおかしくなってることを差し引いても、運命だったら何かしらあんだろ」
「……リオはカッコイイですね」

花が咲いたかのように、レオンハルトの頬に色がのる。
嬉しそうにくすくす笑って、エリオスの髪に鼻先を埋めた。
それをくすぐったいとエリオスは身を捩るが、それはフリだけだ。

「恨みっこなしだかんな!これで俺が運命でもなんでもないって分かったら、スッパリ諦めて綺麗なΩと一緒になれよ!」
「他のΩなんて……今はそんな話しないで」

レオンハルトはリュミエールの歩みを止めると、エリオスを上からしっかり見つめる。
抱き寄せられたまま、エリオスも首だけ上げてレオンハルトと瞳を合わせた。
長いまつ毛は綺麗な金色で、少し先がカールしている。
瞬くだけで、こちらにも風が飛んできそうだ。

「……集中してください」
「悪かったって」
「いきますよ」

片手は繋いだまま、レオンハルトはふっと微笑んだ。

そしてぶわりと沸き立つ、甘い香り。

「ぁ、っあ……あっ!」

毛穴から直接フェロモンが差し込まれているような、暴力的なαの証。
勝手に口からこぼれるのは、驚きと抑えきれない喘ぎだ。
ガタガタと震えて、呼吸も犬のように短く紡ぐしかできない。

「んぅ!」

レオンハルトが背中をさすれば、ビクッと反応して思わず仰け反った。
(き、もち……いい……これ……やっぱあの……匂いに……似て……)
目眩にも似た症状が現れて、体がくらりと後ろに傾くが、レオンハルトの腕の中にぎゅっと抱き寄せられる。
自身の香りを纏わせようと、頬をエリオスのうなじに擦り付けた。
敏感になっている肌が喜んで、下肢がとろりと濡れていく。
また出てしまったのかと一度思うだけで、それを恥じる余裕もない。

「どうです?……リオ、何か感じますか?」
「ぁ、……あまい、におい、」
「はい」

たどたどしいエリオスの言葉に、どうしようもなく嬉しいと、レオンハルトはより一層香りを強めた。
とろりと口端からよだれが零れるも、それすら愛しいと瞳を細める。

「すごく、これ、……すき……ジークハルトさまの、かおりと、そっくり、……あっ!」
「こらリオ。他のαの名前はだしちゃだめですよ」
「だっ、て、おなじ、……あのとき、した、運命の、におい、するぅ……」

ヤダヤダと首を降って香りから逃げたがる。
流石にこれ以上浴びたら、どうなるか怖いと理性と本能の隙間で綱渡り状態だ。
しかし、それをレオンハルトが許す訳もない。

「ごめんなさい。まだ全力じゃないんです」
「へ?……うそ……も、だめだ、だめだめ」

繋いだ手を解いたレオンハルトは、エリオスの顎先を捕らえる。
鼻先がくっつきそうなほど近づいた端正な顔に、エリオスの瞳は思わず涙を零す。
優しくて、綺麗で……俺を好きだと言ってくれる最高のα。

「はっ……レオ……」

短く息が漏れた。
愛しいと表情に宿したレオンハルトは、口を開く。

「受け止めてリオ……貴方が大好きです」

アイスブルーの瞳をゆっくり閉じたレオンハルト。
呼吸を紡ぐために、薄く開いていたエリオスの唇に、レオンハルトは口付けた。

「んっ!?……んぅ、ん、」

目を見開いて驚くエリオスに、隠しきれない笑みで答えると、ちゅっと可愛らしい音を立てて一度離れる。
そして零れてきたエリオスの涙を、うやうやしく親指で拭った。

「愛していますよ」

そして、今度はもっと、深く。
フェロモンをまとわせた、甘い口付けだった。

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