【完結】畑暮らしのΩ王子、20年越しに“番”が現れました

兎沢にこり

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王家の秘密と解けた糸

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「さぁ、ここに座って。すぐ冷やすものを持ってくるわ」
「お、お構いなく……」

通された部屋はレオンハルトの部屋の倍以上する広さであった。
セシリアはこの部屋にメイドを入れず、エリオスとレオンハルトを残して扉で分かれた部屋の奥へと向かう。
静かで広い部屋に棒立ちは居心地が悪い。レオンハルトに繋がれた手を引かれて、向かい合わせになった大きなソファに並んで腰かけた。
ピッタリくっついて隣合うのも、廊下でのやりとりを思えば正直気まずい。
座り直すイメージで腰をあげて少し離れたが、エリオスを引き留めようと握った手は繋がれたままだった。

「リオ、気分は悪くないですか?」
「ん……なんで?」
「母上とお話しするのは……辛いでしょう?」
「いや、全然。っていうか驚いたよ……なんか、お前そっくりで」

エリオスは口の端をあげて笑う。だがレオンハルトは、変わらず不安たっぷりと言った顔で、事細かにエリオスの様子を伺った。
それはそうだ。本来ならこの位置に自分がいたかもしれない。その愛の巣とも言われる場所に招かれている状態は何とも奇妙なことだ。
レオンハルトは、エリオスの心身負担を考えてしまって落ち着かないようだ。
気にしなくていいのに、もうすんだことだと割り切った程でいるのに、レオンハルトはその強がりをよくわかっている。
ジークハルトのことがなければ、エリオスはころりとレオンハルトを運命だと疑わなかっただろう。だが、ことがあったから頷けない。

「初めて言われましたよ。母に似ているなんて」
「すげぇ似てるぞ。造形はジークハルト様って感じだけど笑い方とか、あの慌てっぷりとかな」

もし、自分がジークハルトと繋がっていた未来があった場合。
綺麗で優しくて、"こんなおっさんが一番だ"と抱きしめて甘やかしてくれるレオンハルトは、この世に生まれてこなかった。
それは嫌な未来だな、と。エリオスは繋いでいた手を無意識に絡ませてぎゅっと握る。今そこにいるのに、消えないでくれと願ってしまう。
そして不思議と、この部屋は“あの香り“がしない。すんと鼻を鳴らしても惹かれてしまう香りは、隣でしょげている男からしか感じないのだ。

あまりにもレオンハルトが落ち込んでいるから、エリオスの気持ちの方がマシな気がしてくる。
大丈夫だと励ますように、握った手の上からもう片方の手で撫でる。彼の手は冷たい。熱が移れとまじないのように撫でていた。

「私はあんな感じなんですか」
「ははっ、俺はあんなお前ばっか見てるぞ」

レオンハルトと視線が絡む。
この歳までバースに絡む事は散々逃げてきた。けれど、今回だけは逃げなくて良かった。
逃げたら知らなかった世界や文化もあった。なにより、レオンハルトに会えたことが、どんなことにも変え難い。

「ジークハルト様は俺じゃなくて、セシリア様を選んで正解だよ」
「そんなっ、自分を傷つけるようなこと言わないで」

自嘲気味ではない。心底そう思った。
だからそんな顔する必要はないのだ。

「でもよ、」
「父上は貴方の運命だったんですよ」

レオンハルトは叫ぶように“運命”だと言ってくれるから、それも何だかおかしくて。
俺を“運命“だと言うくせに、父の“運命“であったことも飲み込んでいる。
(俺、レオに会えて本当、嬉しんだなぁ)
言ってしまうのが何だか勿体無くて、大事にそれを噛み締めている時、その声は響いた。

「その話は本当かな」

部屋の奥。先ほどセシリアが消えた扉の前に、レオンハルトそっくりの顔が立っていた。
整えられた少しの髭と金髪の髪。膝まであるジャケットは分厚くて重そうだ。
自室ということもあり、以前よりもずっと質素なシャツのジークハルトは、落ち着き払った様子でただ聞こえたその言葉を飲み込んでいるようだった。

「……父上」
「ジークハルト、さま」

部屋に現れたジークハルトは、後ろにセシリアを伴い立ち尽くしている。
セシリアも特段驚いていると言った表情ではなく、ジークハルトの背中にそっと手を当てていた。
まさか聞かれているとはつゆ知らず、エリオスはこの場を収める良い転換を探したが、付け焼き刃な言葉は見つからない。
ジークハルトとセシリアは、ゆっくりと二人が腰掛けるソファに歩み寄り「ここに座っても?」と向かい合わせのソファを指した。
エリオスは思わず立ち上がって、悪癖になっている逃亡を披露しようとするも、同じように座ったセシリアによく冷やされた布を渡されて、大人しく座り直すほかなかった。

「エリオス王子」
「はい……」
「君の運命が私だというのは、事実かい?」

穏やかな波のような声は、エリオスに向けられた。
繋いでいることを忘れていたレオンハルトの手が強張ったが、エリオスは不思議と落ち着いている。
運命だった、ジークハルト。それを問われることに嫌悪などない。
願わくば悟られずに終えられたら綺麗だったのだが、城の中で暮らしていたのだ。遅かれ早かれこうなっていた。隠すことも嘘をつく必要なんかない。エリオスはただ真実のみを告げた。

「本当です」
「そうか……だが、私はこのセシリアと運命を感じて番ったんだ」
「っ、父上!」
「レオ、俺は大丈夫だから」

運命は絶対だ。間違えることはない。
レオンハルトが配慮がないと堪らず声を荒げたが、エリオスはすぐに制する。
こうして隣にレオンハルトがいるだけで、随分と心強いのだ。

「……エリオス王子が、どこで私を運命だと思ったのか……教えてもらってもいいかな?」
「私が初めてあなたをお見かけした、お二人の婚約を知らせるパーティーです」
「そうか……」
「あなたはその時、おいくつだったのかしら」

セシリアが身を乗り出してエリオスに問う。
視線を一度上に上げて、脳裏にその日のことを浮かべた。
初めての国外、初めての食事。そして初めてのあの香り。

「十五歳です。デビューの日でした」
「そんなに、若い時にっ」
「セレノスから君の話は聞いていたんだ……だが、まさか相手が私とは知らず、本当に申し訳、」

エリオスは被せるように声を上げる。

「ジークハルト様は何にも悪くないです!俺がその、きっと、鼻がおかしかったんですよ!」
「君はそれから一度も国から出られなくなったと聞いた……友人の弟なんだ。早く君に幸があるようにと、遠くから願っておきながら、私が言えないばっかりに……ずっと、孤独を味合わせて」
「駄目ですっ、頭を上げて、っください……」

膝の上に置いていた拳を強く握ったジークハルトは、頭を下げる。
それを必死にエリオスは止めた。だが、首を振ってそう言うジークハルトに、エリオスは貰った布を目に押し付ける。

「っ、く、……ぅ、」

運命の人直々に頭を下げられたら、何だか胸に来てしまって止まっていた涙腺がまた緩みそうだったのだ。
距離を空けていたレオンハルトがすぐに気づいて、ピッタリとエリオスと体を合わせる。
すんとその香りを嗅げば、心はスッと穏やかになった。布が滲み出た涙を吸う。息が整ってから布から目を離した。
覗き込むようにレオンハルトのアイスブルーの瞳は見つめてくれる。大丈夫と唇で伝えてからしっかりと前を向く。

「家族がたくさんいますから、孤独とは無縁でしたよ」

それは本心だ。薬を大量に飲んで、医者の言うことも聞かない弟によく兄たちは愛想を尽かさないでいてくれた。
みんなエリオスを大事に思って、守ってくれた。そばに居てくれた。
しかしセシリアの方が目を潤ませて、首を振る。

「そんなことっ、ないはずだわ!だってΩは……孤独にとても弱いと聞くわっ」
「セシリア様」

口を覆って悲鳴を噛み殺すような仕草。セシリアにも辛い話を聞かせてしまったと、エリオスは頭を垂れた。
……だがしかし、謝罪の言葉をエリオスが告げる前に、レオンハルトの声が先行する。

「待ってください……Ωは孤独に弱いと聞く……とおっしゃいましたか?」
「レオ?」
「母上はΩですよね?……まるでそうじゃないみたいに言うじゃないですか」

ジークハルト様とセシリア様は運命だと言っていた。
幼い頃から出会っていたとしても、αを求めるΩの特徴は大なり小なり変わらない。
Ωは寂しがりな人間が多い。それをΩ本人が、他人事のように言うのはどうにもおかしかった。

「レオ、そんなこと言うもんじゃないぞ。俺見たんだお披露目の時……セシリア様のうなじに……その、」
「歯型ですか」
「そうだけどっ、直接言うなよ!恥ずかしいだろっ」

番の証はΩのうなじにαが刻む歯型だ。
綺麗なドレスはうなじがしっかり見えるデザインで、エリオスはその光景だって脳裏に焼き付いている。
レオンハルトは依然と疑うような眼差しを実の両親を見つめた。

「ですから、もう気にしないで大丈夫です!もう、ほんと俺も全然大丈夫なんでっ」
「父上。あなたのフェロモンはどのような香りですか」
「もういいって、レオ怒るぞ!」

エリオスはレオンハルトの口を塞いでやろうと手を伸ばすが、ぎゅっと腕ごと包むように抱きしめられて抵抗できない。
こんなにも密着している姿を、ジークハルトとセシリアに見られているのも恥ずかしい。
もがいても、レオンハルトの力は緩まなかった。

「リオは、私と父上から同じフェロモンを感じると言うんです。そして彼は私の香りを強く浴びるとヒートになる」
「おいってば!」
「私はリオから運命の香りを感じるんです。でもリオは貴方が運命だったから、こんなに頭がおかしくなるほどフェロモンの相性がいいのに認めようとしない。私には他のΩが現れると!……また一人になろうとするんです。あなたは、パーティの日に、リオの香りを感じなかったと言うんですか?……それと先程"言えないばっかり"と……何が言えないのですか」

責めるような声は棘が含まれている。こんな自分のことで家族を仲違いさせたくない。
だが間に入っていく言葉も浮かばず、開いた口を閉じたり空けたりするしかできなかった。
ジークハルトは息子の叫びをただ浴びた。
そして一つ長く息を吐くと、力んでいた方の力が抜ける。隣に寄り添うセシリアの顔を覗き込み、ポツリとつぶやいた。

「セシリア。もう……いいかな」
「ジーク」
「私の行いが、二人を分つ原因にはなりたくない」

ジークハルトはそう言うと、ソファから席を立つ。
そしておもむろに長く重たいジャケットを脱いだ。

「私の父は亡くなるのが早くてね、兄弟もいなかったから必然的に国王には私がなるしか無かったんだ」

脱いだジャケットから現れた体は、少し小さく見えた。見た目通り重たそうなジャケット。口の端を上げたジークハルトは、内側めくって見せる。
綿がふんだんに込められて、盛り上がっていた。

「父上、それは」
「これはセシリアと古くから働く者しか知らないことだ……レオンにも勿論セレノスにも伏せていた」

足首まであるブーツも紐を解いて脱いでしまう。
レオンハルトと同じくらいあったと思った背丈が頭一つ分は下がった。

「体型はやはりバースらしくてね。こればっかりは着飾るしかなかった」

そして自身のシャツに手をかける。
首までピッチリ止められていたボタンが外されて中のインナーが現れる。
後ろを向いたジークハルトは、そのシャツを潔く脱いだ。

「私からは、Ωが感じるαのフェロモンはでないんだ」

少しかかっていた金髪を払い、現れたそこ。
ジークハルトのうなじには、小さめな歯型がしっかり強く、そして深く刻まれていた。

「番の跡」
「ジークハルト様は……Ω?」

消えない跡、男でも大きくならない体。
ジークハルトはレオンハルトとエリオスの目をしっかり見つめて頷いた。

「そう……私はΩだ。そして、運命の番であるセシリアこそがαなんだよ」

口元の髭に指を持っていくと、端から捲っていく。のりで張り付いていた作り物の髭が剥がれると、まっさらな顔は少し幼さすら感じた。
セシリアは直ぐにジークハルトの元へ向かうと、労わるように隣へ立つ。
小さくなった背を摩ると、またソファへと導いた。その様子はΩを気遣うαそのものだ。
その様子すらレオンハルトに似ていると、エリオスは思ってしまった。

「パーティの日はジークに私のフェロモンを纏わせて、私の噛み跡はジークに深く噛んでもらったの。夜会だったのもあって、噛み跡はメイクで濃くすれば誤魔化せたわ」

実の両親の様子を驚きつつも、レオンハルトは交互に見つめた。

「全然、なにも知りませんでした」
「すまない。私が王に選ばれる当時は、Ωが王になる前例が無くてね……隠すしかなかったんだ。お腹が大きくなるとバレてしまう。だからレオンに兄弟も作ってやれなかった」

セシリアはジークの悲しみに眉を顰めると、ゆっくりその背を撫でる。
エリオスはハッとして、視線をセシリアに向けた。

「それじゃあ、あのパーティでの香りは……セシリア様の?」

ジークハルトがΩだと分かったとしても、デビューの日に浴びたフェロモンは変わらない。
心も体も求めた運命を、間違えて認識していたことにはなるが、あの香りは確かにあったのだ。
セシリアは目を見開いてジークハルトと視線を合わせるが、答える時はエリオスを見つめた。
慌てることなく、確かめるように口を開く。

「エリオス様。貴方が感じたフェロモンの香りは、どのような香りでしたか?」
「お、俺ですか……」

逆に質問をされてたじろぐも、素直に頷いてあの日を思った。

「えっと……凄く甘くて、なのに爽やかなミントの香りがするんです。美味しい食べ物って感じじゃないのですが、手を伸ばしたく……なる、ような」

フェロモンの当事者にその香りを説明するのはなんとも恥ずかしいし、居心地も悪い。
膝を擦り合わせて、自身の膝を見つめながらなんとか零す。
セシリアは頷いて、殊更優しく問いかけた。

「まったく同じ香りがレオンからもしている……のかしら?」
「そうなんですっ……レオからもしてて……その……俺、薬飲んでたのに、この国に来て初めてレオに会った時も、して……俺、やっぱ薬でおかしくなってるんです、だからあまり気にしなくて、いいかと……」

実の母親に何を言ってるんだという気持ちと、早く答えて帰りたいという気持ちが綯い交ぜになる。
それに自分の鼻は最初から信用していない。不安にさせたくもないから、声はどんどん小さくなる。
しかし、それに言葉を覆い被して話すのはレオンハルトだ。

「私はリオと初めて出会った時、抗えない香りを感じました。頂いたネクタリンからもした、あの甘くて美味しい香りが」

エリオスを抱きしめたまま、熱く語るレオンハルト。
引き離すものならば、親でさえ噛みつく勢いを感じる。
今だってするのだ。エリオスの周りをぐるりと囲むその香りは、この事態を落ち着かせてくれる。
隣に視線をやるとレオンハルトはしっかりエリオスの方を向いていた。
焼き切れてしまうほど、熱い瞳。
父母の前だというのに、目元が潤んでしまう。
瞬いて、その気持ちごと必死に散らす。

少々の沈黙が流れるも、ジークハルトもセシリアも何も言ってこないものだから、ゆっくりとそちらに顔を向ける。
目の前に映ったのは頬を蒸気させたセシリアで、声をかける前にジークハルトの首へ飛びついた。

「まぁっ……まぁまぁ!」
「こらやめないかセシリア……驚いている」
「だって!まさかっ、そんな早くから?」

先が見えず二人のやり取りを見つめるレオンハルトとエリオス。
セシリアは興奮冷めやらないと言った口ぶりで、エリオスに向き直った。

「エリオス様が香ったフェロモンは、私のものではありませんよ」
「セシリアの香りは濃い花の香りなんだ。薔薇の中にいるような華やかなね」

ジークハルトはセシリアの腕から離れようと一度抵抗するが、セシリアはその腕を解くことはない。
仕方ないと力を抜きながら、伴侶の香りをその身に纏わせる。

「そうですよね、私の勘違いです」
「いや、そうではないんだ……フェロモンはしっかり感知しているよ。ちゃんとΩの機能は果たしている」

しかしその話に絶望したのはエリオスだ。ならばあの時香った香りは何なんだ。
鼻の誤作動でないなら、誰がエリオスの番だと言うのだろう。
手に汗をにぎりその手を自身のスラックスに擦り付ける。
レオンハルトが抱きしめながら、エリオスの体を何度も大丈夫だと叩いて宥めさせた。
ジークハルトは二人を交互に見つめると、それはそれは大事そうに自身の下腹部に両手を当てる。
思い出すように瞳を閉じると、意を結したようにまた二人を見つめた。

「あの日エリオス様が私に対して、運命の香りがしたと言う理由はきっと……」

ジークハルトは息を詰めて……そしてそっと吐きだした。そして——

「レオンハルトを、すでに身篭っていたからだと思う」

エリオスは雷に真上から貫かれた気分だった。
思わず、息と一緒に小さく声が漏れる。

「ぇ、」

驚いたまま隣でずっと抱きしめてくれているレオンハルトを見つめると、同じように目を見開いて固まる姿があった。衝撃で口も聞けない状態だと言うのに、追い討ちのようにジークハルトとセシリアは当時の思い出話を語り始める。

「私は常にα性を装うのに着膨れ状態だったからね。側から見たらお腹は目立ってなかったと思うんだが、胎動を感じるくらいにはレオンは大きかったよ」
「そういえばパーティの時、すごくお腹を蹴ったってジークが言った時があったわよね」
「まさか、レオンも運命に気づいていたと言うことかな。バースというものは本当にわからないことだらけだな」

二人の会話はもう耳に入っても流れていってしまう。気を抜くと呼吸が乱れそうで、必死に吸って吐いてを繰り返す。
エリオスはその存在を確かめるようにレオンハルトの腕に何とか縋り付くと、レオンハルトもしっかり抱き留めた。

「れお、レオっ」
「はいっ」
「お……俺たちって、運命、だったんか?」

目の前に置かれた話を素直に飲み込める年月はとうに過ぎている。エリオスは確かめるように何度もレオンハルトに問いかけた。それでも変わらず微笑み、そして泣きそうな顔でエリオスを見つめたレオンハルトは、甘く砂糖菓子みたいな声音で何度も呟く。

「ずっと言ってるでしょう。運命です。私たちは唯一無二、運命の番です」
「だって、まさか……本当かっ?嘘じゃないよなぁ……っ」
「嘘じゃないです、嘘じゃない。私のエリオス……私のΩ」

父母の前など言っている場合ではない。エリオスはもう耐えられないと、目にいっぱい涙を溜める。
レオンハルトが「運命」だと呟くたびに、涙は一つ一つと溢れていく。
ジークハルトもセシリアもそんな二人を、何とも幸せそうに見つめて手を取り合う。

「うぁ、……おれの、俺の運命、ちゃんといたぁ……」
「ずっと、いましたよ」
「ごめんなぁ、俺おっさんで、」
「違います。私を待っていてくれて、ありがとうございます……エリオス」

鼻水と涙でぐちゃぐちゃの顔は綺麗とは到底程遠い。
だがレオンハルトは、その溢れる涙を何度も指で拭って、「綺麗です、すごくかわいい」と呟いた。

拗れた運命の糸が解け、しっかりと真っ直ぐ繋がった瞬間であった。
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